テレビ番組に潜む世論誘導の危険な道具、CM型ルポルタージュからサブリミナル効果まで
テレビのあり方を考える作業が、複雑化している。かつては番組内容を批評するたけで十分だったが、最近は視聴者が認識できない部分で、さまざまなトリックが使われている。フェイクニュースの問題も含めて、世論誘導の手口は巧妙化している。
たとえば、タレントが特定の飲食店を訪問して、目玉商品を食して、「おいしいですね」と大げさに驚いてみせる。形式上は現地取材の「ルポ」であるから、視聴者はその内容を鵜呑みにする可能性が高い。「おいしくない」とは絶対に言わない。
この種の「ルポ」は、取材対象の飲食店の側が料金を負担するケースも少なくないという。いわば番組の顔をしたCMなのだ。しかし、視聴者はそれに気づかない。
公共の電波を使ってこのような「CM」が広がっている。
ちなみに新聞記事の中にも、記事の形式をした広告が紛れ込んでいるのは周知の事実である。
時事ニュースが間接的にCMの役割を果たすこともある。たとえばテロに関するニュースを世界中から集めて、それを次々と放映する。その結果、国民の間で、テロ対策や軍事大国化を望む空気が生まれる。防衛費が膨張する。それにより莫大な利益を得るのは、日米の軍事産業である。現在の日本が、まさにこのような状況に置かれている。
生活保護の不正受給のニュースを次々と垂れ流して、福祉を切り捨てる手口も、かつて使われた。
テレビが放映するドラマそのものの中にも、「CM」が紛れ込んでいる。たとえば、シナリオに組み込まれたドライブの場面で、特定メーカーの車を使う。特定の家電を使う。
こんなふうに視聴者がほとんど認識できないところに、「CM」が紛れ込んでいるのである。
◇サブリミナル効果
さらに洗脳のための特殊な技術がテレビ番組の中で使われているとも言われている。「サブリミナル効果」を狙った手口である。
「サブリミナル効果」については、『電通-洗脳広告代理店』(苫米地英人著、CYZO)に詳しいので、引用しておこう。
例えば、アニメを見ていて、そのアニメの途中に1/30秒とか1/60秒などの意識では認識できないほど短時間、ある商品の画像や有名人が楽しく使用している映像を挿入したとする。すると、視聴者の無意識に強くその商品を認識し、別のところでその商品を見た瞬間、本人の意識としてなぜかわからないが強い興味を覚えてしまうということが起こる。
このサブリミナルはあまりにも危険な手法なので、ほとんどの場合、使用が禁止されている。
ところが、日本のテレビでこのサブリミナルが使用されたことがあった。しかも、あの悪名高き犯罪集団オウム真理教を宣伝するために行われたのである。当然、オウム真理教側からテレビ局に取引が持ちかけられたようだ。もちろん、何もわかっていない現場の担当者がやってしまったのかも知れない。
日本テレビ系列のアニメの1シーン(1フィールド)にオウム真理教(当時。現ALEPH)代表の麻原彰晃の顔が挿入されていたり、TBSテレビのオウム真理教関連の番組で麻原の顔写真が話と関係のない場面で何度もサブリミナルとして挿入されていたりしたのだ。実際、TBSは番組テーマを際だたせるための映像表現としてサブリミナルを用いたことを認めている。
テレビが世論誘導の危険な道具になっている。
こうした状況の下で、番組内容を批評するだけでは、すでにテレビの検証は不十分になっている。