1. 最初の司法判断は岡本圭生医師の完全勝訴――滋賀医科大の小線源治療をめぐる事件で法的措置が多発

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2019年05月29日 (水曜日)

最初の司法判断は岡本圭生医師の完全勝訴――滋賀医科大の小線源治療をめぐる事件で法的措置が多発

大津地方裁判所の西岡繁靖裁判長は5月20日、癌患者と主治医が申し立てた癌治療の妨害を禁止する仮処分申立に対して、人命優先の決定を下した。

午後1時35分。裁判所の玄関から2人の患者が小走りに駆けだしてきて、曇り空の下で持ち受ける報道陣や支援者らの前で、「待機患者の救済認められる!」と書いた紙を広げた。カメラのシャッター音が一斉に響いた。

「どうでしたか?」

「勝ちました」

「よし!」

拍手が起こった。

「認められたのは、(申立人の)7人だけですか」

「岡本先生が治療される患者全員です」

岡本圭生医師による最新の癌治療を妨害されていた33人の患者を、司法が救済したことが判明した瞬間であった。患者らの多くは、癌の転移リスクが高く、岡本医師による最先端医療を受ける以外に完治できる可能性が低い人達である。治療を妨害され、命を裁判所の判断に委ねていた待機患者である。

仮処分の判決は、法廷で宣告されることなく、裁判所の事務局で決定書を受け取る慣例になっている。

申立人のひとりである宮内伸浩さんは、患者代表として裁判所の事務局で決定書を受け取る前に、顔に微笑を浮かべながら、

「受験の合格発表を待つような心境です」

と、筆者に話していた。自分を励ますかのように、

「大丈夫だと思いますがね」

とも、繰り返していた。常識的に考えれば、宮内さんらの請求は、まず認められる。しかし、日本の裁判には、「報告事件」と呼ばれる理不尽なケースがあり、これに指定されると、最高裁事務総局の政治判断で判決が下される。その前近代的な実態を繰り返し取材してきた筆者は、宮内さんらの勝訴に確信が持てなかった。暗い想像も脳裏をよぎった。

微笑を浮かべた宮内さんとは裏腹に、鳥居浩さんは、能面のように顔を強ばらせたまま裁判所の庁舎に消えた。筆者は、鳥居さんが癌告知を受けたときも、同じ表情だったに違いないと思った。

しかし、20分後に宮内さんと一緒に裁判所の玄関に姿を現した鳥居さんは、安堵の笑みを浮かべていた。記者に取り囲まれて、口を開いたときは、思わず顔をゆがめて涙をこらえた。顔の輪郭が何度もゆがんだ。が、涙がにじみでた。その表情は、これまで待機患者らが耐えてきた日々を物語っていた。

◇大津地裁の画期的な判断

「前例のないケースについて画期的な判断をしていただいた」

仮処分の申し立てを行った岡本医師と患者らの代理人を務めた小原卓雄弁護士は、判決後に開いた記者会見で、裁判所に敬意を表した。

ひとつの事件で民事裁判や刑事告訴が連続して提起されることは特にめずらしくはない。滋賀医科大を舞台とした事件も例外ではない。いくつもの法的措置が連鎖している。治療妨害を禁止するこの決定は、数ある係争の最初の認定である。その意味で、最初の「勝訴判決」を受け、しかもそれが完勝だった岡本医師と患者ら、それに弁護団の喜びの大きさが想像できる。

実際、岡本医師も、決定を高く評価した。

「担当医として裁判所の適正な判断に敬意と感謝を表します。今回の仮処分において そもそも医療は誰のものか?医療とは誰のために行われるものか?という根本的なことが問われたと考えています。いうまでもなく医療は患者さんのために存在し、患者さんを救うために行われるべきです。【続きはMyNewsJapan】