1. 読売が朝日を批判するリーフレットとチラシをポスティング、朝日を上回る部数激減の歯止めになるか?

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2014年09月24日 (水曜日)

読売が朝日を批判するリーフレットとチラシをポスティング、朝日を上回る部数激減の歯止めになるか?

昨日(23日)、郵便ポストに『朝日「慰安婦」報道は何が問題なのか』と題するリーフレットと「読売新聞は真実を追求する公正な報道で信頼に応えます」と題するチラシがセットになって投函されていた。

読売の読者ではないわたしの自宅ポストにこれらのPR媒体が投函されたことから察して、全戸配布の結果ではないかと思われる。ただし、配布の範囲が一地方に限定したものなのか、全国的規模なのかは分からない。

『朝日「慰安婦」報道は何が問題なのか』は、サイズが「A4版」で19ページ。朝日報道を徹底批判した後、メディアが報道内容に責任を持つ重要性を訴えている。

一方、チラシも報道機関としての責任の重要性を強調し、次のように結んでいる。

今ほど、報道に誠実さが求められているときはありません。
 読売新聞も過去に重大な誤報をしています。2012年にはiPS細胞をめぐり「日本人研究者が世界ではじめて臨床応用を行った」と誤った報道を行い、報道2日後に誤報であったことを紙面でお伝えし、おわびを掲載しました。報道に誤りがあったとき、さらには誤りを指摘されたときの迅速な対応が何よりも大切だと考えています。読売新聞は事実に忠実であること、そして誤りに対して誠実であることを読者の皆様にお誓いします。

■チラシの全文

◇なぜ、PR媒体のポスティングなのか?

読売によるリーフレットとチラシのポスティングの目的は不明だが、次の3点が考え得る。

読売は昨年の11月から、ABC部数を77万4000部も減らしている。そこで読者の信頼回復を求めようとしている可能性。減部数の比は、朝日とは比較にならないほど大きい。

余談になるが、ABC部数が正確とすれば、週刊誌や月刊誌が盛んに報じている朝日の減部数(それは、慰安婦問題の影響と報じている)は、完全に誤っている。事実に反している。

「①」を前提として、朝日と読売の質の違いをPRし、今後の新聞拡販戦略を有意に進める意図がある可能性。少なくとも、そのような戦略は可能になる。

従軍慰安婦問題で、旧日本軍の戦争犯罪に対する評価の見直しをはかろうとしている可能性。歴史修正主義の反映である。

◇読売の「押し紙」を認定した福岡高裁判決

既に述べたように読売は、配布したチラシの中で「読売新聞は事実に忠実であること、そして誤りに対して誠実であることを読者の皆様にお誓いします。」と述べている。

わたしが今後、読売に明らかにしてほしいのは次の点である。

 読売のABC部数は、実配(売)部数を正しく反映しているのか?

読売の宮本友丘副社長は、同社が週刊新潮とわたしを訴えた裁判の中で、以下に引用するように、「押し紙」の存在を全面否定する証言をしているが、その一方で、読売の「押し紙」政策を認定した福岡高裁の判例(真村裁判)が存在する。そこでわたしは、「押し売りした証拠が残っている新聞」は存在しなくても、店舗で過剰になっている新聞は存在するのかを尋ねたい。

宮本氏の証言は次の通りである。読売代理人である喜田村洋一弁護士(自由人権協会代表理事)の質問に答えるかたちでの発言である。

喜田村:この裁判では、読売新聞の押し紙が全国的に見ると30パーセントから40パーセントあるんだという週刊新潮の記事が問題になっております。この点は陳述書でも書いていただいていることですけれども、大切なことですのでもう1度お尋ねいたしますけれども、読売新聞社にとって不要な新聞を販売店に強要するという意味での押し紙政策があるのかどうか、この点について裁判所に御説明ください。

 宮本:読売新聞の販売局、あと読売新聞社として押し紙をしたことは1回もございません。

喜田村:それは、昔からそういう状況が続いているというふうにお聞きしてよろしいですか。

宮本:はい。

喜田村:新聞の注文の仕方について改めて確認をさせていただきますけれども、販売店が自分のお店に何部配達してほしいのか、搬入してほしいのかということを読売新聞社に注文するわけですね。

宮本:はい。

(略)

喜田村:被告の側では、押し紙というものがあるんだということの御主張なんですけれども、なぜその押し紙が出てくるのかということについて、読売新聞社が販売店に対してノルマを課すと。そうすると販売店はノルマを達成しないと改廃されてしまうと。そうすると販売店のほうでは読者がいない紙であっても注文をして、結局これが押し紙になっていくんだと、こんなような御主張になっているんですけれども、読売新聞社においてそのようなノルマの押しつけ、あるいはノルマが未達成だということによってお店が改廃されるということはあるんでしょうか。

宮本:今まで1件もございません。

この裁判では、村上正敏裁判長(東京地裁)が読売の「押し紙」が存在しないことを認定しているが、既に述べたように福岡高裁判例は、読売の「押し紙」を認定している。たとえば次のように。

このように、一方で定数と実配数が異なることを知りながら、あえて定数と実配数を一致させることをせず、定数だけをABC協会に報告して広告料計算の基礎としているという態度が見られるのであり、これは、自らの利益のためには定数と実配数の齟齬をある程度容認するかのような姿勢であると評されても仕方のないところである。

■福岡高裁判決の全文

現在の状況はどうなのか?ABC部数は、正しく読売新聞の実配部数を反映しているのか? 昔から新聞業界全体で問題になってきた広義の「押し紙」問題について、読売は見解を示すべきだろう。

◇ABC部数が実配(売)部数を正しく反映する必要があるのか?
なぜ、ABC部数が実配(売)部数を正しく反映する必要があるのだろうか?それは、公共広告(新聞の紙面広告)の価格設定が、ABC部数を基準に行われてるからだ。次に示すPDFは、裁判員制度PRの紙面広告の価格である。

ABC部数1位の読売が、年間で約1億円、2位の朝日が約7000万円である。

■裁判員制度のPR広告の新聞社別価格比較

参考記事:読売が朝日を批判するリーフレットとチラシをポスティング、朝日を上回る部数激減の歯止めになるか?