1. 「保守速報」の広告はがし事件、筆者のもとに再び協力要請、心を規制する愚策

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2018年07月26日 (木曜日)

「保守速報」の広告はがし事件、筆者のもとに再び協力要請、心を規制する愚策

保守速報というウエブサイトがある。これは作家の李信恵氏から名誉毀損裁判を起こされているサイトである。1審と2審は原告の李氏が勝訴し、現在、係争は最高裁に属している。

メディア黒書で既報したように、この保守速報に対して、「広告はがし」の動きがあり、同サイトから既に全広告が消えている。残っているのは、筆者が窓口になっている「NO残紙(「押し紙」)キャンペーン」のバナーだけだが、これは広告ではない。保守速報が自主的に張り付けたものである。

去る22日(日曜日)に、筆者のところに、おそらく「広告はがし」運動を展開している人物から、次のようなメールが送付されてきた。全文を紹介しよう。

お世話になっております。

このたび、貴社が提供されていらっしゃいます「なくそう、残紙」のバナー広告が、人種差別を煽動しているとして社会問題になっている悪質なウェブサイト「保守速報」(URL: http://hosyusokuhou.jp/ )に掲載されているのを確認いたしました。

貴社では、i-mobile、A8.net、マイクロアド、nend、グッドライフ等といったASPやSSPを通じて広告配信をされていらっしゃいませんでしょうか。これらの業者によるチェック漏れのために、本来ならば広告が配信されてはならないような差別的・反社会的なウェブサイトに広告が表示されてしまっている可能性があるようです。

報道などによりますと、これまでに少なくとも「エプソン」「U-NEXT」「通販生活」が、ユーザーから「差別サイトに広告が掲載されている」と指摘を受け、その種のサイトへの広告配信を停止する手続きを取っているとのことです。

参考1:「保守速報」への広告停止 エプソン販売「社内規定に反する」と即日対応 https://www.j-cast.com/2018/06/08330931.html

参考2:保守速報への広告掲載をやめたエプソン 「嫌韓、嫌中の温床」との通報がきっかけに https://www.buzzfeed.com/jp/kotahatachi/hoshusokuho?

貴社におかれましても、重大な人権侵害を繰り返しているサイトに広告が表示されてしまっていることは、さぞ不本意でいらっしゃるのではと思いましてご連絡させていただきました。

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差出人の名前が明記されてないので、このメールを作成した人物は特定できない。先月も同じ趣旨のメールを繰り返し受けた。こちらのメールについては、実名を名乗ったものもあったし、匿名のものもあった。関西大学の宇城輝人教授も、バナーの撤去を求め、メールを送付したひとりである。

◇心を規制する間違い

一連の「広告はがし」は、どうやら組織的に行われているようだ。必ずしも広告主が自主的に広告掲載を中止したとは限らない。外圧が働いている可能性が高い。

「NO残紙キャンペーン」のバナーを残すか撤去するかは、筆者の独断で決められる性質のものではないが、筆者個人としては撤去する意思はまったくない。

まず、第1に、このバナーは、「NO残紙キャンペーン」側から不特定多数の人々に、貼り付けを依頼したものであるからだ。従って、技術的に削除は不可能だ。バナーは広告ではないので、当然、広告費も払っていない。

第2に、「NO残紙キャンペーン」は思想信条の違いを乗り越えて展開している運動であるからだ。販売できる見込みのない新聞を強制的に買い取らせる新聞社の販売政策がおかしいと思えば、それが参加の条件となる。左派であろうが、右派であろうが、暴力集団でさえなければ参加できる。

第3に、日本は民主主義の国であり、特定の思想を基準にして、それと対立関係にあるメディアを外圧で解体する行為自体が受け入れがたいからである。

世界観や人生観は、ひとそれぞれ異なっている。育った環境や読書体験が個人個人で異なるので、思考方法も異なってくるのだ。そして誰もが自分の思想信条が最も崇高だと信じている。と、なれば自分を疑い、さまざな情報に接しない限り、世界観や人生観は変化しない。自分を客観的に観察するためには、多様な言論に接することが必要だ。

人間の内面を、法律や外圧で規制することには反対だ。

戦前・戦中の天皇制国家が犯した過ちのひとつは、言論を統制したことである。それは心の統制でもあった。現在、朝鮮にも同じ問題がある。

「広告はがし」に協力することは、言論統制への道を開くことになりかねない。広告主が自分の判断で、広告を引き上げるのは自由である。しかし、第3者による「広告はがし」運動に協力することはできない。