1. 滋賀医科大病院事件、岡本圭生医師が法廷で証言、事件の背景に日本型ビラミッド社会の闇

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2019年11月23日 (土曜日)

滋賀医科大病院事件、岡本圭生医師が法廷で証言、事件の背景に日本型ビラミッド社会の闇

前立腺癌の治療方針を決める際に説明義務違反があったとして、4人の患者が元担当医の成田准教授と、彼の上司である河内教授に対して損害賠償を求めた裁判で、21日、岡本圭生医師(現在の担当医)が証人尋問に出廷した。

デジタル鹿砦社通信によると、岡本医師から自身が開発した小線源治療・岡本メソッドについて説明があった。これは被告の成田医師ら病院側が、針生検の技能を持つ医師であれば、だれでも小線源治療は可能だと主張してきたことに対する反論である。泌尿器科の医師であれば、病院側の主張が暴論であることが分かる。

岡本医師:「私のやっている施術は、被膜ギリギリに穿刺をする、理想的な針の配置をするものです。ポジショニングからシードを置いていくのは、ミリ単位の精度を要する技術です。単純に前立腺の組織を針を刺して取ってくるのとはまったく異なる、まったく違うものです」

また、岡本医師が過去に治療をおこなった患者のカルテの一部を、大学病院側が当事者の許可なく病院外の医師に郵送して、評価を求めた事件も取り上げられた。裁判の争点とは直接関係がないが、4人の被告に対する説明義務の軽視でも明らかになった病院側の法律軽視の姿勢が、ここでもクローズアップされた。朝日新聞も、19日付の電子版でこの件を取り上げている。

【参考記事】患者同意なくカルテを示す 滋賀医大、外部の医師に

 

証人尋問の詳細は、デジタル鹿砦社通信に掲載されている。次のURLでアクセスできる。

 ■デジタル鹿砦社通信

 

◆中日新聞が報道

ところで滋賀医科大で起きているこの事件は、関西ではかなり報じられている。マスコミ各社が報道してきた。この日も尋問に先立って、裁判所はメディアに対して法廷撮影を許可した。

21日の尋問については、デジタル鹿砦社通のほか、中日新聞などが報道している。中日新聞も記事の中で、岡本メソッドに言及している。

この日、岡本医師は自身の治療法について「高リスクの患者で非再発率が95・2%という突出した成績がある」と説明。熟練を要するミリ単位の治療は、未経験者にはむつかしいとした上で、説明義務違反の疑いを「患者さんの命より、組織のメンツが優先させることに深い懸念を感じます」と批判した。

◆生体手技訓練への参加・協力を拒否

この事件の背景には、日本的な組織の在り方がある。縦の人間関係を軸に動くピラミッド型の組織がいたるところに根を張っており、滋賀医科大病院もそのひとつである。大学病院内の上下関係が、事件を誘発したのだ。

医師とか研究者は、本来は実績だけで評価されるべきなのだが、上下関係の中でそれが無視されている事情があるのだ。

岡本医師は、マルタ(人間モルモット)を使った成田医師による手術の実質的な手技訓練への参加・協力を断ったために滋賀医大を追われることになったのだ。それを理由に職場を追われるのは、理不尽としかいいようがない。責任を取るべきは、成田医師と、彼の上司である河内医師なのである。ここに日本型組織の闇があるのだ。

日本社会の中に、滋賀医科大の悲劇を生む土壌がある。その土壌は戦前・戦中に比べるとかなり改善されたが、「令和」に入っても依然として残っている。これが新しい医療技術を開発するうえで大きな障害になるのは言うまでもない。

2019年11月26日、岡本医師は最後の小線源治療をおこなう。