1. 日本禁煙学会の作田学理事長が交付した診断書が名誉毀損に問われる高い可能性、

横浜・副流煙裁判に関連する記事

2020年07月30日 (木曜日)

日本禁煙学会の作田学理事長が交付した診断書が名誉毀損に問われる高い可能性、

横浜副流煙裁判で、作田医師が原告の求めに応じて交付した診断書が話題になっている。

横浜副流煙裁判とは、同じマンションの1階と2階に住む家族が煙草の副流煙をめぐって争っている裁判である。2階の住人で原告一家(夫妻と娘)が、1階の住人・ミュージシャンの藤井将登さんを訴えたものだ。請求額は4500万円。

藤井さんが自室で吸った煙草により受動喫煙症などに罹患したとして、藤井さんに4500万円の金銭支払いを求めたものである。

藤井さんは、喫煙者であるがヘビースモーカーではない。しかも、仕事がら外出していることが多く、自宅で喫煙する際も、防音装置がほどこされた自室を使うので、煙が外部へ漏れることはない。

一方、原告のひとりは25年から30年の喫煙歴があり、歩き煙草をしている姿も目撃されている。しかし原告は、3人の受動喫煙症は、藤井さんが吸った煙草の副流煙で引き起こされたと主張している。

横浜地裁は、原告の訴えをすべて棄却した。そのうえで作田医師の医師法20条違反を認定した。同法は、患者を診察せずに診断書を交付することを禁止している。作田氏は、3人の原告のうちひとりの診断書を診察せずに交付したのだ。そのことが裁判の中で発覚して、20条違反の認定となった。

◆◆
控訴審は東京地裁で8月20日に始まる。控訴審で作田医師の医師法20条違反を裁判所がどう認定するかに最大の関心が集まっている。地裁の判決内容からして、判決そのものが覆ることはまずあり得ない。(ただし、最近はやりの報告事件に指定された場合は別)

しかし、作田氏の診断書問題を読み解く視点は、医師法20条違反以外にもある。それは診断書の記述内容である。作田氏は、診断書の記述としては、通常、ありえないことを明記しているのだ。

「1年前から団地の1階にミュージシャンが家にいてデンマーク産のコルトとインドネシア産のガラムなど甘く強い香りのタバコを四六時中吸うようになり、(黒薮注:原告が)徐々にタバコの煙に過敏になっていった。煙を感じるたびに喉に低温やけどのようなひりひりする感じが出始めた。(略)」

診断書とは、「診断内容等の証明書」のことである。ジャーナリズムの記述ではない。それゆえに通常は、病状を簡潔に記入するだけだ。その病状について、詳しい説明書が必要なときは、診断書とは別に意見書を書く。

ちなみに法律事務所・MIRAIOのウエブサイトによると、診断書とは:

『診断書とは、医師が、傷病名・障害名、医師の所見、治療の経過や現症、結果などが記載されている証明書の一種で、実際に診察にあたった医師と歯科医師のみが発行できます。法律により、医師が患者から診断書の交付の請求があった場合、正当な理由がなければ拒んではならないとされています(医師法第19条2項)。』

藤井さんが、今後、「反訴」で作田氏に対して名誉毀損裁判を起こせば、作田医師は、この「証明書」の記述が真実であることを証明しなければならない。しかし、事実ではないから証明はできない。

診断書の記述で名誉毀損に問われた前例はないのでは。

診断書について、わたしが取材したA医師は次のように話す。

「たとえばDVの診断書を書くときに、医師は加害者を特定して明記することはできません。それと同じでだれが煙の発生源かを決めるのは医師の役割ではありません。それは警察の仕事でしょう。医師は病状だけを客観的に書きます。ところがこの診断書では、作田先生が『水戸黄門』のようになって、煙の発生源が藤井さんだと指摘しているわけです」

◆◆◆
なお、原告の山田義雄弁護士が、原告の診断書の1通が無診察によるものであった事実や原告の長い禁煙歴を、提訴前に知っていたかどうかも、今後の検証項目になる。と、いうのもこの裁判は、作田氏が作成した診断書を根拠に提起されて、4500万円の金銭請求が行われたからだ。

 

【参考記事】横浜副流煙裁判のまとめ、提訴の経緯から判決まで