滋賀医科大の河内教授による公文書偽造疑惑事件で、滋賀県警大津署が書類送検、アンケート用紙の偽造疑惑も検察庁が捜査へ
メディア黒書で報じてきた滋賀医科大事件で新しい動きがあった。滋賀県警大津警察署は、8月21日付けで、泌尿器科の河内明宏教授を有印公文書偽造などの容疑で大津地方検察庁へ書類送検した。
この事件は、昨年の11月で終了した前立腺癌の小線源治療に特化した寄付講座の運営をめぐり、主導権を握ろうとした河内教授が、部下の准教授を講座のスタッフに加えようと企てたのが発端である。自分の部下を講座のスタッフに加えるために必要な公文書を偽造したとされる。
河内教授が公文書を作成して、寄付講座のトップである岡本圭生医師の三文判を勝手に捺印し、この人事についての学長承認を得ていたとされている。
寄付講座は民間の医薬品会社の協力で、2015年1月に設置された。前立腺癌の小線源治療に特化した寄付講座で、岡本医師が開発した岡本メソッドの普及が目的だった。ところが河内教授は、講座の主導権を握ろうとして、部下の准教授をリクルートしたのである。そのプロセスの中で、手続き上必要な「教員が職務を兼ねることについて」と題する公文書の偽造を河内教授が行った疑惑があるのだ。
今後、検察庁が捜査を開始して処分を決めることになる。
◆アンケート用紙の偽造の件でも、書類送検
また、5人の患者が被疑者不詳で告訴した「FACT-P」(一種のアンケート)の偽造事件についても、大津警察署は検察庁へ書類送検した。
訴因となったアンケートは、米国のFACT協会が版権を持つ「FACT-P」と呼ばれる前立腺癌患者に対するQOL調査票である。QOLというのは、Quality of Lifeのことで、文字通りに訳すと「生活の質」という意味である。たとえばなんらかのかたちの前立腺癌治療を受けた後、尿漏れに悩まされて、自宅にこもりがちになれば、手術前に比べてQOLが悪くなったことになる。逆に、尿漏れもなく、職場へ復帰できれば、QOLが良好ということになる。
患者会のプレスリリースによると、「少なくとも2015年1月から2018年2月末までの間、滋賀医科大学附属病院寄付講座で小線源治療を受けた多数の患者に対し、前立腺癌患者に対するQOL調査(FACT-P)が実施された」という。患者らは、入院時と退院時に調査票に記入を求められた。しかし、調査に際して、インフォームドコンセントが実施されていなかったことが明らかになっている。
FACT協会のルールによると、FACT-Pの実施に際しては、調査対象となる患者に対して調査目的を説明したうえで、同意を得なければならない。また、患者の身元を特定する情報を記入しないなどのルールがある。
そのルールが無視されていたために、不信感を抱いた患者のひとりが河内教授に書面で事情を問い合わせたところ、河内医師はあっさりと非を認め、「記入していただいた調査票はカルテより削除させていただきます。以後このようなことのないように各部署に徹底をいたします」と返答した。この時点で河内教授が、FACT-Pに関与していたことが分かったのだ。
こうした状況を踏まえて、23名の患者が、QOL調査票の情報開示請求を行った。その結果、「退院時のものについては、23名全て、自署ではなく、他人が明記」(患者会のプレスリリース)していたことが分かった。また、「5名については、退院時調査票に、本人の考えとは異なることが記載されていた」。さらに、「自署欄に他人が当該人の名前を記載していた」例もあった。