1. 滋賀医科大病院事件、朝日新聞が「カルテ流出事件」を報じる、エスカレートする岡本バッシング

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2019年11月20日 (水曜日)

滋賀医科大病院事件、朝日新聞が「カルテ流出事件」を報じる、エスカレートする岡本バッシング

滋賀医科大付属病院が、(前立腺癌に対する)小線源治療のパイオニア・岡本圭生医師を職場から追放しようとしている事件で、新事実が発覚した。

大学病院が、岡本医師の患者らのカルテを、同医師や患者らの許可を得ることなく、勝手に病院外の医師へ郵送し、評価を依頼していたことが分かったのだ。目的は、岡本医師による治療成績に瑕疵(かし)を発見することにより、岡本医師を病院から追放する方針を正当化することにあったようだ。11月9日付けの朝日新聞(電子)が、このカルテ流出事件を報じた。

同大病院が外部の医師に見せていたのは、同大病院で前立腺がんの小線源治療を行っている岡本圭生医師(59)が担当した患者のカルテ。同大病院の「事例調査検討委員会」が今年8月にまとめた報告書によると、小線源治療で合併症が発生した可能性があると考えられた20症例(21事例)のカルテのコピーを16人の外部委員の医師に送り、評価を依頼した。直腸出血や血尿などが起きた13事例が、濃厚な処置や治療を必要とする「重篤な合併症」と判断されたという。

 報告書には外部委員の名前は記載されていないが、評価を担当した複数の医師が匿名を条件に朝日新聞の取材に応じた。それらの医師によると、今年6月ごろ、患者数人分の電子カルテのコピーが個人情報を秘匿しないままの状態で郵送されてきた。外部委員が集まっての検討は行われず、他の外部委員の名前や評価内容は知らされていないという。出典

「外部委員が集まっての検討は行われず、他の外部委員の名前や評価内容は知らされていない」わけだから、岡本医師を追放するための口実づくりが目的で、「最初に結論ありき」だった可能性が高い。インシデントでもないものをインシデントとでっち上げた可能性もある。事実、大学病院は裁判で、これらの外部評価を根拠に、岡本医師による治療では過去にインシデントが発生していたと主張している。

◆◆
しかし、ここで紹介した岡本バッシングは、氷山の一角に過ぎない。このところ度を超えた事実のねつ造が始まっている。もうひとつバッシングの具体性を紹介しよう。ブラックユーモアめいた滑稽な例である。

前立腺癌の有無を調べるための検査、ぞくにいう「針生検」がある。大学病院は、この針生検ができる医師であれば、誰でも岡本医師レベルの小線源治療が可能だと主張し始めたのだ。

かりにそれが事実であれば、小線源治療を受けるために、わざわざ北海道や沖縄から滋賀医科大を受診する必要はないだろう。地元の病院でまにあう。また、岡本医師がわざわざ後継者を育てるための講座を開く必要もないはずだ。

それに裁判の被告になっている成田充弘准教授は、みずから小線源治療の手術を計画した際に、岡本医師に立ち会いを依頼した事実も明らかになっている。が、これも必要なかったはずだ。(もっとも成田医師には、針生検の治療経験すらなかった可能性もある)

ちなみに大学病院側がインシデントと主張している13の事例が、たとえ事実であっても、岡本医師が実施した手術件数は、1200件を超えているわけだから、成功率は99%を超えている。
他の医師とは比較にならない成績を残していることになる。

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この裁判の発端は、もともと成田医師が所属する泌尿器科が、小線源治療を希望して来院した前立腺癌患者に対し、インフォームドコンセントの際、岡本医師による小線源治療を受ける選択肢もあることを隠して、自分たちで小線源治療を実施しようと企てことである。もちろん自分たちに治療経験がないことも隠していた。患者をモルモット扱いにしていたのだ。こうした状況をみかねた岡本医師が、泌尿器科の企てを止めたことが引き金になっている。

「マルタ(731部隊のモルモット)」にされかけた患者は怒りが収まらない。患者会を結成して、大学病院に謝罪を求めた。これに対して大学病院は、事件をもみ消すと同時に、患者らに苦痛(手術後の経過観察が受けられなくなる)を味あわせるために、岡本医師の追放に乗り出したのだ。

こうした流れの中で、根拠のない岡本バッシングが始まったのである。

しかし、裁判の争点は、成田医師に説明義務違反があったかどうかという点であって、岡本医師の治療成績の評価ではない。大学病院は、争点を外すことで、逃げ切りをねらっているようだ。

 

事件の全記録は、拙著『名医の追放』(緑風出版)に詳しい。