1. 4500万円の不当請求の根拠になった「受動喫煙症」という病名は国際的には認められていない、横浜副流煙裁判「反訴」へ

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2021年02月11日 (木曜日)

4500万円の不当請求の根拠になった「受動喫煙症」という病名は国際的には認められていない、横浜副流煙裁判「反訴」へ

横浜副流煙裁判の新しい視点を紹介しておこう。既報してきたように、この事件は副流煙が原因で「受動喫煙症」を発症したとして、Aさん一家が同じマンションの下階に住む藤井将登さんに対して4500万円の金銭支払いを求めたものである。

裁判はすでに昨秋に藤井さんの勝訴が確定している。裁判所は、Aさん一家の請求を認めなかった。さらに、裁判に深くかかわった日本禁煙学会の作田学理事長による医師法20条違反(診察せずに診断書を交付する違法行為)を認定(横浜地裁)した。

審理の中で藤井さん側が、診断書の交付に関するさまざまな疑惑を指摘した結果だった。

その後、わたしは医療関係者らを中心に取材を続けるなかで、この事件についての専門家の意見を聞く機会が何度かあった。その中で興味深い意見を得た。作田氏が作成した診断書に明記されている「受動喫煙症」という病名そのものが無視できない大問題だというのだ。この病名が公式には認められていないからだ。

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病気の分類は、「ICD10」と呼ばれるコードで行われている。「ICD10」コードを付すことによって、国境を越えて病気に関する統計を取ることを可能にする仕組みになっているのだ。従って「ICD10」コードで認定されていない病名を診断書に記することはできない。

この点を念頭に「受動喫煙症」という病名を検証してみる。結論を先に言えば、「ICD10」に「受動喫煙症」という病名は見あたらない。「化学物質過敏症」という病名は日本では一応は認められているが、「受動喫煙症」という病名は国際的に認定されていない。

この点を考慮してたとえば、「ICD10」にない「電磁波過敏症」と診断された患者の診断書には、化学物質過敏症という病名を記す。実際、そのような例は多数存在する。

もっとも、健康増進法などが成立した時勢であるから、例外的に「受動喫煙症」という病名が認められている可能性がまったくないというわけではないが、原則論からすれば、国際的には「受動喫煙症」という病名は認められていない。

それにもかかわらずAさん一家と山田義雄弁護士らは、この診断書を根拠として、藤井さんに対して4500万円を請求したのである。しかも、作田氏は、この病名を根拠とした診療報酬も請求している。

メディア黒書では、作田氏が医師法20条違反に至るプロセスばかりを問題視してきたが、「ICD10」で認められていない病名を診断書に記した問題も再検証する必要がある。

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それがいかに異常なことかといえば、次の状況を想定すると理解できるだろう。たとえばわたし(黒薮)が医師で、医師仲間や市民運動家を集めて、第2禁煙学会という市民団体を立ち上げ、「空気汚染クロヤブ病」という病名を作り、その診断基準を設ける。患者から診断書交付の依頼があり、黒薮医師は本人を診察しないまま、「空気汚染クロヤブ病」という病名の診断書を交付した。

患者はその診断書を弁護士に持参した。弁護士はそれを根拠に、加害者に内容証明を送付し、警察を動かし、あげくの果てに高額訴訟を起こした。

この場合、最も問題になるのは、「空気汚染クロヤブ病」というあり得ない病名である。それを診断書に付した医師である。

繰り返しになるが、「受動喫煙症」という病名が例外的に認められているのであれば問題はないが、そんな話は今のところ聞いたことがない。このあたりを今後、重点的に取材したいと考えている。

藤井さんによる「反訴」の準備は着実に進んでいる。