1. 横浜の副流煙裁判、被告準備書面の全面公開、診断書を作田学医師とは別の人物が偽造した決定的証拠

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2019年06月03日 (月曜日)

横浜の副流煙裁判、被告準備書面の全面公開、診断書を作田学医師とは別の人物が偽造した決定的証拠

自分で煙草を吸っていながら、隣家の副流煙で自分や家族が病気になったとして約4500万円の金銭支払いを求めている横浜の副流煙裁判は、18日に、原告・被告の本人尋問(後日、詳細を告知予定)をむかえる。それに先立って被告が準備書面(9)を提出した。

その中で、事件性のある新事実が公表された。原告が化学物質過敏症であることを示す診断書が、偽造されたものである極めて強い可能性が浮上したのだ。詳細については、原告の山田義雄弁護士の言い分を聞いた上で、改めて記事として取り上げ、必要があれば日弁連に処分を申し立てることにして、ここでは概略だけを述べる。

偽造疑惑がある診断書は、3人の原告(夫妻と娘)のうち原告A娘のものである。原告の山田弁護士は、被告の藤井さんを発生源とする副流煙で原告A娘が寝たきりになったなどと主張しているのだが、その裏付けとなる診断書の病名が、あり得ないものになっているのだ。診断書の病名は「化学物質過敏症レベルⅣ、化学物質過敏症」(甲46号証)となっているのだが、化学物質過敏症の診断では、レベルの診断は行わない。従って、「レベルⅣ」という記述はありえない。この診断書は、作田医師の名前が付されているが、医師ではない何者かが作成した可能性が高い。(赤字は筆者)

疑惑の診断書は、「甲第46号証」として提出されている。ところが、証拠説明書は、「甲第46号証」について次のように述べている。

「作田医師が上記の各資料を原告・A妻代及びA男からのヒアリングも含めて作成したA娘についての診断書である。甲3と同一のものである」(赤字は筆者)

「甲3と同一のもの」だというのだ。「甲3」号証も診断書である。そこで2つの診断書を比較検証してみると、たしかに両者は似ているが、病名が微妙に異なっている。整理する記述に関しては次の違いがある。

46号証:化学物質過敏症レベルⅣ、化学物質過敏症
3号証:受動喫煙症レベルⅣ、化学物質過敏症(赤文字は筆者)

繰り返しになるが、証拠説明書は、これら2つの診断書が同じものだと説明している。しかし、実際は病名が異なっている。また、46号証には捺印がなされていない。

「甲3」号証と「甲46」号証を重ねあわせて光に透かしたところ、フォント(ラインの位置など)が一致しないことも分かった。つまり「甲46」号証は、「甲3」のフォントと記述を、何者かがワープロ入力して、作田医師の名を付したうえで提出した可能性が高い。その際、病名の入力を間違えたか、故意に「化学物質過敏症レベルⅣ」というあり得ない病名を付けて、原告・A娘の病状を誇張したのである。

詳細については後日。

この事件では山田弁護士は、神奈川県警とコンタクトを取っている。その結果、神奈川県警が2度も出動するなど、不可解な経緯もある。

また、原告A男が元喫煙者であったことも分かっている。

以下、被告準備書面(9)を紹介しよう。 PDFはここから

◆◆◆◆

被告  藤井 将登

はじめに

平成31年4月16日の口頭弁論で貴裁判所から次のような4つの争点が提示された。

①副流煙の量はどうだったか。
②原告は化学物質過敏症に罹患しているか。
③罹患しているとすれば、その原因はなにか。
④副流煙の発生源は被告宅か。

この書面では、これら4つの争点に沿って原告準備書面(7)に対する反論をおこなう。また被告の主張を補足し、原則として争点とは関係のない原告の主張については言及しない。

Ⅰ 原告準備書面(7)に対する認否

「8 第4の(2)(警察への働きかけ)」(4P)のうち、「喫煙者が被告宅であることが明らかになった」という記述と、「被告が(現在においても被告は平成28年9月6日から9月22日までの喫煙を否定しているが、少なくとも)平成28年9月以降も喫煙をしていると認めたのは、平成29年8月25日の警察官の訪問があったからこそである」という記述を否認し、反論する。

1,フリーライター黒薮氏との面談(原告準備書面6P~7P)

本件裁判の争点とは無関係なので言及しない。

2,作田医師による診断書(甲1~3)作成の経緯(7P~8P)

反論する。

3,「受動喫煙診断基準」の作成経緯と、その内容(ニコチン検出問題)(8P~9P)

「受動喫煙診断基準」の最新版が2016年作成されたものであることについては、原告の主張を認め、原告・A妻と原告・A娘が受動喫煙症レベルⅣであり、化学物質過敏症になっているとの主張には反論する。

4,本人(原告・A娘)と面談せずに診断書を作成することの可否について(9P~10P)

反論する。

5,原告・A男の診断書作成につき、過去に喫煙歴があったことがどのように影響するのか(10P)

反論する。

6,本件団地の大規模修繕工事と本件受動喫煙との関係はどうか(11P)

十分に証拠が提出されていないので不知とする。

7,不法行為の受忍限度の問題(11P)

反論する。

8,裁判例(東京地裁平成30年7月2日判決)について(12P~13P)

上記の「3」の中で言及する。

Ⅱ 被告の反論-副流煙の量と発生源

ここでは、原告準備書面(7)の「8 第4の(2)(警察への働きかけ)」と、「7,不法行為の受忍限度の問題」における原告の主張に反論する。本件裁判の争点、「①副流煙の量はどうだったか」と、「④副流煙の発生源は被告宅か」に関連した被告の見解である。

1、副流煙の発生量と発生源について

原告は、原告準備書面(7)の中で、次のように副流煙の発生源を被告宅と断言しているが、これは誤った事実を前提として組み立てた記述である。以下、その部分を引用する。
「すなわち、原告らが横浜市民として、余りにも受動喫煙による被害が甚大であるために、喫煙者が被告宅であることが明らかになった時点で、まず、被告に話し合いを求め、それでも埒があかないために団地の管理組合、行政、日本禁煙学会、弁護士等々考えられるありとあらゆる途を探し、この被害を止める方法は何かを模索する一環として、警察署へも相談に行ったのであり、これは当然のことである。」(「8、第4の(2)警察への働きかけ」4P~5P)

原告らは、「喫煙者が被告宅であることが明らかになった時点」で行動を開始したと述べているが、そもそも被告が喫煙者であることと、被告の喫煙で生じた副流煙が、原告宅へ流れ込むかどうかは別問題である。流れ込んでいた根拠もなければ、それが原因で原告らが化学物質過敏症になった事実もない。この点の立証は、被告準備書面(8)で記述した通りである。その内容を簡単に要約すると次のようになる。

1 被告と原告は、被告宅から発生する副流煙が原告宅へ届いているか否かを調べるための実験をした。その結果、原告は煙草臭を知覚しなかったことを認めた。また、被告が行った風向を調べる実験でも、副流煙が原告宅へ流れ込む可能性がほとんどないことが明らかになった。(被告準備書面(8)、1P~3P、15P)

被告は、その後、気象庁から横浜市の風向に関するデータを入手(乙27号証の1、乙27号証の2、 乙27号証の3)した。原告らは、「すすき野第二団地においては、ほぼ常に西から東の方向に風が流されており」(原告準備書面(3)5P~6P)、風下にあたる原告宅に副流煙が届くと主張しているが、事実と異なる。

しかし、この点に言及するまえに、気象学における風向とはなにかに若干言及しておく。風向とは風の発生源の方向を意味する。たとえば「北風」という場合、北の方角を発生源として南の方向へ吹く風のことである。

原告は、すすき野第二団地における風向について、「ほぼ常に西から東の方向」と述べているわけだから、西風を意味しているようだが、原告と被告が住む「五街区2号棟」の立地方向を示す地図(乙27号証の2)で明らかなように、「五街区2号棟」は西南西の方向へ位置している。従って、「すすき野第二団地において」「西から東」へ流れるとは、西南西の風を意味する。

それを前提に風向きに関するデータを見ると、平成28年2月から、平成31年4月までの1185日の期間で、西南西の風が吹いたのは29日間である。つまり科学的に見て、被告を発生源とする副流煙が、たとえ被告宅から外部へ漏れていても、風下に位置する原告宅に届くことはほとんどない。煙草の臭いは妄想である可能性が高い。

たとえば、原告は訴状の中で、平成28年「12月30日に至り、深夜1時から朝の7時頃まで、自宅・浅川邸共にタバコの煙が充満するような、激しい刺激臭に見舞われ、原告・A娘は激しい呼吸困難をきたし、心臓も苦しいと訴えることとなった」(訴状4P~5P)と述べているが、12月30日の最多風向は北風である(乙27号証の4-①)。最大瞬間風速も北風だ。風速も「8.0」。最大瞬間風速は「12.7」。副流煙が原告の住む2階自宅へ到達するレベルではない。

さらに原告は、準備書面(3)[12P(5)]でも、平成29年12月30日の状況について、「12月30日においては、午前5時35分、窓を少し開けた途端、タバコの副流煙が大量に流入し、居間の空気清浄機の臭いセンサーが真っ赤に反応した」と述べているが、この日の風向(乙27号証の4-②)も北風である。風速も「5.9」。最大瞬間風速は「10」。前年同日の風ほど強くはないが、無風状態ではない。

もっとも風の流れというものは、建物との位置関係で、遮られたり、微妙に方向を変えることはあるが、少なくとも原告が指摘している平成28年12月30日と平成29年12月30日に吹いたのは北風であるから、原告と被告が住む棟の戸外における風の流れが、「西から東」であったことはありえない。むしろ「東から西」の可能性の方がはるかに高いのである。

当然、「すすき野第二団地においては、ほぼ常に西から東の方向に風が流されており」という、原告の記述は、事実に基づいていない。

2 副流煙の発生源は、そもそも被告の自宅ではなく、自然発生的にできた喫煙場所である可能性もある。(被告準備書面(8)、4P)

3 原告・山田義雄弁護士が行った喫煙調査は、調査対象が5世帯に限られている上に、
バス停付近での不特定多数の人々による喫煙行為を対象にしていないので、副流煙の
発生源が被告宅である根拠にはならない。(被告準備書面(8)、4P)

4 原告・A男は本件係争が発生する2年前まで、煙草を吸っており、彼自身が副流煙の発生源だった可能性が高い。(被告準備書面(8)、5P)

以上の①から④に加え、⑤として副流煙の量に関する記述を若干補足しておく。
原告の甲26号証の見取り図によれば、南側ベランダ沿いの原告宅に最も近い被告の個室(1)と居間からも煙草の煙が流出するかのように示されているが、実際には、両部屋とも内側に家具が置かれているために、出入口が完全に閉鎖されている(乙28号証の1、乙28号証の2-①②および乙28号証の3)。従って副流煙の流出口とはなりえない。

このうち原告のいう居間とされている部屋は被告・長女が使用している。個室(1)は物置として使用している。個室(3)は、2重窓の防音構造になっているので、副流煙が外部に漏れる可能性はない。しかも、窓側は家具で塞がれており(乙29号証の動画参照)、外側は窓ガラスの周りをシーリングで目張りし、音および空気が漏れ出ないようになっている(乙30号証の1,2,3,4)。

被告がこうした措置をしているのは、ミュージシャンという職業柄、室内で音楽を聴くことがあり、その音が外部へ漏れるのを防ぐためにほかならない。近隣に対する配慮である。

北側ベランダについても、乙29号証の動画で示したように、日常的にそこから外へ出ることはない。洗濯物をベランダに干すことはなく、洗面脱衣室に除湿機を設置して、そこで乾かしている。(乙31号証)

被告宅の防音室と原告宅の南側ベランダとの位置関係は乙32号証(正面下3部屋が被告宅、右斜め上が原告宅)のとおりである。ベランダの長さは約8メートルあり、高さを考慮すると防音室と原告宅のベランダまでの距離は8メートル以上になる。仮に副流煙が漏れ出たとしても、その量はごく僅かであり、空気中に拡散されて、8メートル先の原告宅まで到達する可能性は低い。

さらに被告は、副流煙の量と受忍限度の関係を検証するために、次節で自動車教習所(受動喫煙)事件(横浜地裁、平成24年ワ第4393号)の判決に言及する。

2、被告を発生源とする副流煙は受忍限度を超えていない

この節では、原告の「⑦不法行為による受忍限度の問題」(原告準備書面(7)、11P)に対する反論を、本件裁判の争点のひとつである「①副流煙の量はどうだったか」という論点に言及しながら主張する

化学物質過敏症の裁判では、被告が企業などの法人である場合、安全・衛生に対する配慮を十分に行っていたか否かがひとつの争点になる。たとえば自動車教習所(受動喫煙)事件では、原告が、喫煙室と指導員室の間のドアが開いていることがあったのが原因で、化学物質過敏症になったと主張したが、判決は次のように訴えを退けている。

「本件喫煙所内の空気は出入口ドアが開いていると、そこから指導員室内に漏れ出ることはあったものの、その程度は指導員室内の被告従業員において、煙草臭を感じる程度のもので、受動喫煙の急性影響である呼吸器や目の刺激症状を呈すような程度にまでは至っていなかったことが認められる(略)」(乙33号証 10P)

微量であるがドアの開閉の際に副流煙が、喫煙室から外部へもれていたにもかかわらず、その量が僅かなので、安全配慮義務違反には当たらないとする判決である。本件裁判の被告は、喫煙場所が個人宅なので安全配慮義務の対象外であるにもかかわらず、喫煙場所を2重窓の部屋に限定するなど、自動車教習所(受動喫煙)事件の被告よりも遥かに高いレベルの副流煙対策を取っていた。

しかも、原告も被告宅の副流煙が自宅に流入するという思いこみから、厳重に窓を締め切ったうえに、たとえば原告宅の「台所兼食事室や個室(2)の窓は、全てビニールで覆い(甲26写真⑦の3)、原告宅の排気口についても、原告・A男が友人の会社に排気口用の蓋を作成してもらい、排気口の口を塞ぐこととした(甲26写真⑦の4)。また、ベランダについても、北側、南側ともにプラスチックボードで覆い(甲26写真⑦の5ないし⑦の7)、できるだけ煙が原告宅に近づかないように対処もした」(原告準備書面(3)、8P中段)のである。

原告も外部の空気が室内に流入するのを防ぐ措置を取っていたのだから、被告宅を発生源とする副流煙が原告宅に流れ込んでいたとは考えられない。結果として、原告も被告もそれぞれ2重にも3重にも副流煙対策を取っていたのだ。当然、被告の副流煙により原告らが健康を害したという根拠もない。

しかも、被告準備書面(2)(1P)でも述べたように、平成28年9月の時点では、1日に「ガラム」(紙巻きタバコ)について、1日に5~6本程度、「コルツ」(手巻き煙草)について、2~3か月で1袋(40g)程度であり、しかも、職場で吸うことが大半を占めていた。自宅で喫煙する際も、「安全・衛生」に配慮していたわけだから、副流煙の量が受忍限度を超えているという原告の主張はまったく根拠がない。

重ねて言うが、『原告らの主張する「煙」は原告・A男にも原告代理人にも分からないものであり、原告・A妻と原告・A娘だけが感じているものである(被告準備書面(6)及び乙7号証)。しかも原告と被告の居住する団地の300世帯の誰からも苦情が出ていないようなごく僅かな「煙」であるから、常識的に考えて「受忍限度」を超えるものとは言えないのである。

以上、①から⑤の論点と自動車教習所(受動喫煙)事件の判例から、原告宅へ流れ込んでいたと原告が主張する副流煙の量は限りなくゼロに近いうえに、たとえ流れこんでいたとしても、それが受忍限度を超えていることはあり得ない。

3、原告の事実に基づかない表現について

通常、物事の立証は、具体的な事実の検証を重ねることで説得力のあるものになるが、原告の書面は事実を丁寧に積み上げる姿勢に乏しく、「恫喝の叫び」を繰り返すことで、あたかも被告宅が副流煙の源であるかのような悪質な印象操作を行っている。

その典型例が、前述した「喫煙者が被告宅であることが明らかになった時点」といった事実に基づかない事実の摘示である。他にも、深い根拠もなく「実態、事情は直視してほしい」とか、「極めて残酷で気の毒な段階」とか、「ぜひ、理解してあげて欲しいと思います」とか、「せめて現状でできることは、藤井氏側が直ちに自宅でのタバコを完全に止めることなのです」とか、「これだけの被害が出ている以上、喫煙者には大きな決断をして頂きたいと考えます」とか、「これは日本禁煙学会としてのお願いでもあり、また、個人としてのお願いでもあります」とか、さらには「受忍限度を遥かに超える苦痛」とか言った事実に基づかない表現である。(いずれも原告準備書面(7)「不法行為による受忍限度の問題」11P~12P)

これらは具体的な事実を積み上げ、検証した結果として到達した表現ではなく、あらかじめ設定した歪んだ目的を前提に、嘘で固めた表現にほかならない。

 

Ⅲ 被告の反論-原告・A男の喫煙

この節では、原告準備書面(7)の「5,原告・A男の診断書作成につき、過去に喫煙歴があったことがどのように影響するのか(10P)」に対して反論する。その中で被告は、本件裁判の争点のひとつである「③(化学物質過敏症に)罹患しているとすれば、その原因はなにか」、「④副流煙の発生源は被告宅か」という点に言及する。

1、化学物質の長期にわたる蓄積と発症の関係

副流煙による人体影響が能動喫煙によって喫煙者本人が受ける害に劣らないことは、原告が提出している『禁煙学』(甲30号証)にも記述されている。

「非喫煙者はタバコ煙有害物質への感受性が高いため、実際に生じる健康被害は、1日5本~10本の能動喫煙に匹敵する」(79P)

「喫煙者の呼気や衣服、喫煙の行われていた室内・車内では、目に見える煙がないにもかかわらず、『タバコ臭』が残存している。これは屋内構造物の表面に付着していたタバコ煙成分が空間に遊離するためである」(81P)

副流煙の方が毒性が強いとも言われている。と、いうのも煙のおそらく半分以上は、タバコのフィルターを通過せずに拡散するからだ。タバコ煙有害物質への感受性が高い非喫煙者がそれを体内に取り込めば、喫煙者本人よりも深刻な人体影響を受けることもあり得る。

日本生活習慣病予防協会の村松弘康医師も主流煙よりも副流煙の方が有害とする説の持ち主で、両者の比較図を同協会のウェブサイトに掲載している。それによると、たとえばニコチンの含有量は、主流煙を1とした場合、副流煙では2.8になる。(乙34号証)

実際、作田医師は元喫煙者である原告・A男の受動喫煙症レベルを「Ⅲ」と診断し、非喫煙者である原告・A妻と原告・A娘を「Ⅳ」と診断している。かりに被告を発生源とする副流煙が原告らの受動喫煙症の原因であるならば、原告・A男もレベル「Ⅳ」にならなくては整合性がない。しかも、原告・A男は喫煙歴があるのだ。

もっとも後述するように、作田医師の診断書自体は信用できないが、少なくとも原告・A男を発生源とする副流煙やタバコ煙成分が、原告・A妻と原告・A娘の健康に悪影響を及ばした可能性は否定できない。

化学物質過敏症の発症は宮田医師も述べているように、「それまでの化学物質曝露の積み重ねの後に発症してくること」(原告準備書面(6)、7P)もある。また、宮田医師は次のようにも述べている。

「神経組織というのは、一ヵ所痛み出すとだんだん痛むところが広がってくるという傾向がある。ですから、若い頃にシンナー遊びをやった子供たちが、10年後、20年後に、脳の萎縮がさらに進んでいるケースもあります」(乙16号証、188ページ)

さらに、原告らが証拠としてその一部を提出している『化学物質過敏症』(かもがわ出版)の中で、エール大学のカレン教授も、化学物質過敏症発症のプロセスについて「かなり大量の化学物質に接した後、または微量な化学物質に長期に接触した後で、非常に微量な化学物質に再接触した場合に出てくる」(乙第17号証、43P)と述べている。

宮田医師とカレン教授のこれらの記述から、化学物質過敏症は、一度に大量の化学物質に被曝した場合か、もしくは微量の化学物質に長期に渡って被曝した場合に発症するとする説が定説となっている。原告の場合、陳述書などを読む限りでは、一度に大量の化学物質に被曝した生活歴はないようだから、長期に渡って微量の化学物質を被曝した結果、化学物質過敏症に罹患したと考え得る。

原告・A男がいつの時点から煙草を吸い始めたのかは、原告が明らかにしていないので、喫煙持続期間は知りようがないが、かなり以前に原告・A男の喫煙を目撃したという住民の情報が、被告のもとに寄せられている。たとえば訴外・高山勝彦は、本件係争の舞台である横浜市青葉区すすき野第2団地から「5~6年前に移転する以前」に、少なくとも4ヶ所で原告・A男が喫煙しているのを目撃している。(乙4号証)

と、すれば原告と被告の間で副流煙をめぐる係争が始まる2年前に、原告・A男が禁煙に踏み切ったとはいえ、それ以前に原告・A妻と原告・A娘が、原告・A男を発生源とする副流煙や、衣服、それに住居の壁に付着したタバコ煙成分の影響を受けたことを軽視することはできない。もちろん喫煙者だった原告・A男が喫煙期間に受けた人体影響も、禁煙すればただちに消えるわけではない。一般論としては、元喫煙者が非喫煙者と同じがん罹患リスク率になるためには、喫煙期間と同じ禁煙年数がかかると言われている。参考までに国立開発研究法人国立がん研究センターが調べた「日本人における禁煙年数とがん罹患リスク」を提出する。(乙35号証)

なお、被告は、「5,原告・A男の診断書作成につき、過去に喫煙歴があったことがどのように影響するのか(10P)」の中にある作田医師の次の記述が理解できない。論理と文脈が破綻している。

「しかし、止めて1年以上経過していて、しかも、喫煙者側の喫煙が厳然と認められる以上、タバコの副流煙を生じさせているものが8割以上であり、過去の喫煙歴のあるA男氏については、2割程度の寄与割合と考えることが合理的であります。

かりに原告らが化学物質過敏症になった原因の8割は被告にあり、2割は原告・A男だという主旨であれば、被告は改めて反論する。

2、長期に渡る化学物質の蓄積

原告は、原告・A男と原告・A妻の次女だけが原告家族の中で化学物質過敏症に罹患しなかった理由について次のように述べている。

「平成27年9月に結婚し、原告・A男らと同居していた家を出ているが、受動喫煙症にも、化学物質過敏症にも何ら罹患していない。
これは、平成27年以降以前の原告・A男の喫煙歴が、次女には何らの影響を及ぼしていないことを意味するのである。
すなわち、次女が家を出た平成27年10月以降における被告の喫煙が、原告・A男の受動喫煙症、原告・A妻、原告・A娘の受動喫煙症及び化学物質過敏症の罹患に直接影響を及ぼしていることを明らかに示すものである。」(原告準備書面(7)、10P)

原告の主張は、2重の誤りを犯している。まず、化学物質過敏症の原因は、煙草の煙以外にもたくさんあり、日常生活の中でどのような化学物質を被曝したかにより、個人差がある。

そしてどのような化学物質に被曝するかは、職場によっても、食品やシャンプーなどの嗜好によっても異なる。

しかも、ある化学物質が、他の化学物質と連動して、強い毒性を発揮する現象、いわゆる「複合汚染」の状態になる。さらに、携帯電話などの電磁波による人体影響も、考慮しなければならない。同じ住居で生活しているから、体調も同じになるわけではない。化学物質過敏症の原因は、軽々しく断定できないのである。

さらに、「次女が家を出た平成27年10月以降における被告の喫煙が、原告・A男の受動喫煙症、原告・A妻、原告・A娘の受動喫煙症及び化学物質過敏症の罹患に直接影響を及ぼしている」(10P)と述べているが、そもそも被告が煙草を吸い始めたのは、20代のころで、次女が家を出た後に喫煙を始めたわけではない。原告は、基本的な客観的事実の把握を誤っている。

次女の引っ越し後に被告が煙草を吸い始め、それが原告らの化学物質過敏症を引き起こした原因だと主張するのであれば、化学物質過敏症発症のメカニズムを化学物質の蓄積とする観点から説明している宮田医師やカレン教授の説とも整合しない。仮に被告が、次女の引っ越し後に煙草を吸い始めたとしても、その時点から、原告らが体調を崩すまでの期間は、一年程度しかなく、微量の化学物質が体内に蓄積して化学物質過敏症を発症する情況はまず生まれない。

また、かりに被告が20代から煙草を吸っていることが、長期に渡る微量の化学物質の被曝の原因になったと原告が主張するのであれば、被告は次のように反論する。

第一に、被告の喫煙量は極めて少ないうえに、自室を2重窓(一次的な目的は防音)にするなど、副流煙が外部へもれるリスクが極めて少ない環境で喫煙してきた。

第二に副流煙を原告らが化学物質過敏症に罹患した原因だと主張するのであれば、被告よりも、むしろ原告・A男を発生源とする副流煙と、それが原因で住居の壁や衣類に付着したタバコ煙成分の方を問題にすべきである。かりに原告・A男の喫煙歴を短く想定して、10年としても、その影響は大きい。

事実、原告・A男もこの点を認識しているのか、必死にタバコ煙成分を除去する作業を実施している。(甲26号証⑭-1~⑭1-2の写真)。この時の様子は、訴状の中でも、「自宅(自室)をクリーニングしてしみついた煙を除去することにより、自宅に戻ることを決意した」と述べている。しかし、「しみついた煙」は原告・A男の喫煙によって生じたものである。それにもかかわらずその責任を、被告にあるかのような主張を展開しているのである。

ちなみに、原告・A男が使っているスプレー状の洗剤そのものも、化学物質の固まりである。副流煙だけが、化学物質過敏症の原因ではないのである。

仮に原告らが化学物質過敏症に罹患しているとしても、その原因となる化学物質の発生源が被告宅ではないことは言うまでもない。

Ⅳ 被告の反論-診断書の評価と化学物質過敏症の認定

この節では、化学物質過敏症の診断を行うための前提となる医師による診断書の信憑性に言及する。診断書を検証することなしに、原告が化学物質過敏症に罹患しているか否かを論じることが出来ないからだ。すなわち本件裁判の4つの争点のうち、「②原告は化学物質過敏症に罹患しているか」というテーマに関連した論考である。

1、作田医師による無診察の診断書作成

原告は、作田医師が原告・A娘を診察せずに診断書を書いたことが医師法20条に反すると被告が主張したことに対して、否認してきた。その理由は、原告・A娘が来院できない事情があったこと、他の医師が書いた複数の診断書を作田医師が検証したこと、原告・A娘の両親である原告・A男と原告・A妻から原告・A娘の様態について聞き取り調査をしたことなどをあげている。

また、作田医師が往診して診断書を書かなかった理由として、「往診する途中で私自身がタバコ煙に接する」ことで、「揮発タバコ煙」が原告・A娘に「化学物質過敏症」を発症させ、呼吸困難になった場合を考え」往診を回避したと説明している。(原告準備書面(7)、甲43号証)

確かに無診療で診断を下して処方箋を行ったにもかかわらず、当該の医師が医師法20条に抵触しないと認定された判例は存在する。たとえば千葉地方裁判所平成12年6月30日判決(乙36号証)の例である。この裁判は、統合失調症の原告が、医師により本人を直接診察することなく、統合失調症と診断され、水薬を処方されたことが、無診療による診断を禁ずる医師法20条に違反するとして、提訴したものである。

裁判所は、原告の訴えを棄却した。その理由は、原告に統合失調症の病識がなく、家族が原告に精神科を受診するように説得したにもかかわらず、それを頑なに拒否して異常な行動を繰り返した事情があったこと、その打開策として医師が原告の家族から原告の症状について、聞き取りを行っていたこと、さらにはそれにより原告が不利益を被った事実がないことである。

この法解釈を原告・A娘のケースに当てはめてみる。まず、原告・A娘が作田医師を直
接受診できない特別な事情があったかという点である。結論を先にいえば、受診は可能だったと推測できる。

というのも原告・A娘は、作田医師による診断書が無診療のまま交付される約40日前の平成29年3月8日に、宮田医師のそよ風クリニックを受診しているからだ。その後、著しい体調の悪化があったとは思えない。それに結果論になるが、作田医師は原告・A娘の病気のレベルを、原告・A妻とまったく同じ「受動喫煙症レベルⅣ、化学物質過敏症」と診断したからだ。両人とも「受動喫煙症レベルⅣ、化学物質過敏症」と診断されているのに、原告・A娘は寝たきりで、原告・A妻は出歩きができる状態というのは整合性に欠ける。仮に原告・A娘が本当に外出できなかったとすれば、それは化学物質過敏症とは別に原因があったと考えるのが論理的だ。

作田医師が原告・A娘を往診しなかった理由にも瑕疵がある。往診しなかった理由について、作田医師は「往診する途中で私自身がタバコ煙に接すること」が予想でき、それによって発生する「揮発タバコ煙」が、原告・A娘に化学物質過敏症を発症させるリスクがあるからと述べているが、(甲43号証の3ページ)病院が所有する自動車かタクシーで原告・A娘の自宅へ赴けば「揮発タバコ煙」の発生を防ぐことは十分可能だった。

2、化学物質過敏症の認定と診断書の評価

たとえ原告・A娘を作田医師が直接診察することが不可能で、それに代わって第3者による情報提供に基づいて診断を下すにしても、前提となる情報に信憑性がない。第一、原告らはより高レベルの受動喫煙症のお墨付きがほしいわけだから、原告・A娘の客観的な病状なり、生活習慣を作田医師に伝えるとは思えない。

また、他の医師による情報提供、たとえば、倉田文秋医師による診断書(甲44号の3)は、「非喫煙者であり、受動喫煙環境、経過、自覚症状より受動喫煙症(分類レベル3)と診断します」という主文があるだけで、それを裏付ける資料は提出されていない。従って記述に根拠があるのか否かの判断のしようがない。他の診断書(甲45の3号証~46の4号証)についても同じことがいえる。

宮田医師が作成した診断書(甲38号証)については、原告・A娘に対する綿密な質問項目と回答から構成されており、他の診断書とは同列に扱えないが、化学物質過敏症と原告・A娘が持つ基礎疾患との識別については問題がある。これについては後述する。

作田医師が作成したとされる原告・A娘の診断書(甲3号証)は、宮田医師による問診記録から、原告・A娘が訴える症状を、表現を変えて転載しただけの記述が、その大半を占めている。そのために「団地の一階からのタバコ煙にさらされ」といった記述が、事実かどうかの裏付けも示されていない。本来、こうした事実摘示が真実であることを立証する責任は、原告の側にあるのだが、それも行われていない。被告からすれば、こうした記述は、まったくの嘘である。

無診療による診断書の作成を正当とするためには、無診療で診断書を作成する医師に対する正確な情報提供が前提になるが、宮田医師の診断書は別として、他の診断書はまったくその要件を満たしてない。判断材料とはなりえない。

3、化学物質過敏症にみる診断の難解さ

さらに、千葉地方裁判所平成12年6月30日判決では提示されてないが、次の点も無診療の診断書作成が医師法20条に抵触するかどうかを判断する上で考慮すべきだと、被告は考える。周知のように千葉地方裁判所平成12年6月30日判決の中でテーマになっている統合失調症の診断基準は、既に定まっている。統合失調症は広く認識された病気で、精神科医も多い。

これに対して化学物質過敏症の診断基準は、まだ流動的で定説がなく、極めて診断が難しいという事情がある。とりわけ基礎疾患との境界線があいまいで、病院が「化学物質過敏症」という病名を付した診断書を交付することは極めて限られている。と、すれば統合失調症のケースで無診療による診断と処方箋が認められた判例をもって、原告・A娘に対する作田医師の無診療を正当化することはできないと考えるのが常識だ。

4、訴訟を前提とした診断書の作成依頼

作田氏の無診療によって、原告・A娘が被害を被ったか否かという点にも言及しておく。もともと作田氏が無診療による診断書の作成に踏み切ったのは、原告・A娘が委任状を提出したからにほかならない。つまり原告・A娘の希望により、無診療の診断書が交付されたのだ。当然、原告・A娘は不利益を被っていない。逆に利益を得たことになる。

そこで問題になるのは、原告・A娘はなにが目的で、作田医師の診断書の入手を希望したのかという点である。治療目的であれば、来院するはずだ。

結論を先に言えば、作田医師の診断書を訴訟の根拠にすることが目的だった可能性が高い。実際、原告らは作田医師の診断書を提出している。(甲1号証、甲2号証、甲3号証)
しかし、これら3通の診断書のうち、原告・A娘の診断書は、本件裁判の原告代理人・山田義雄弁護士か彼のスタッフが、作成にかかわった強い疑惑がある。次に、その根拠を示す。

5、診断書を作田医師とは別の人物が作成した強い疑惑

山田弁護士らは、「作田医師による原告らの診断書(甲1~3号証)作成の経緯」(原告準備書面(7)、7P)の記述の裏付けとして「甲46号証の6」と付番した診断書を提出している。原告証拠説明書(9)にある「甲46号証の6」の立証主旨は、次のようになっている。

「作田医師が上記の各資料を原告・A妻代及びA男からのヒアリングも含めて作成したA娘についての診断書である。甲3と同一のものである」

「甲46号証の6」と「甲3号証」は同じものだと述べているのだ。ところが2つの書面を注意深く比較すると、「病名」欄の記述が異なっている。「甲46号証の6」では、「化学物質過敏症レベルⅣ、化学物質過敏症」と入力されているが、「甲3号証」では、「受動喫煙症レベルⅣ、化学物質過敏症」と入力されている。

化学物質過敏症の診断においては、レベルの判定は行わないので、「化学物質過敏症レベルⅣ」という記述はそもそもあり得ない。医師ではない人物が記入した可能性が高い。

さらに「甲46号証の6」と「甲3号証」は、書式が同じように見えても、完全に異なっている。被告が、これら2枚の診断書を重ねて、光にかざしてみたところ、文字の配置が異なっていることを発見した。

つまり「甲46号証の6」は、作田医師が作成したとされる「甲3号証」を基に山田弁護士か彼のスタッフが作成した可能性が高い。これは文書の偽造にあたる。

なぜ、「化学物質過敏症レベルⅣ」」という実際にはあり得ない「病名」を記したのかは不明だが、原告・A娘の病状を誇張することが目的だった可能性が高い。一種の印象操作にほかならない。

ちなみに「甲46号証の6」には、捺印もなされていない。診断書自体が疑わしく、信用できないのである。

その「甲46号証の6」を真正、真実のもの(原告準備書面(7)2P)」として提出したことは、人を欺き、裁判所を騙す行為であり、言語道断と言わざるを得ない。

6、花王裁判で採用された化学物質過敏症の認定基準

既に述べたように化学物質過敏症に罹患しているかどうかを診断することは容易ではない。原告準備書面(4)によると、化学物質過敏症の診断方法として宮田医師は、「診断に一番重要なのは問診です。問診の重要性に鑑み、私は診察前に11ページの問診票を患者さん宅に送り、記入して頂いたその問診を確認しながら診断を行っております」(甲第41号証、1P)と述べている。

さらに宮田医師は、問診に加えて、「自律神経、平衡機能、眼球追従運動の3検査」(原告準備書面(4)8P)を行ったと述べている。
宮田医師はこれらの診断を根拠に原告・A娘を化学物質過敏症と診断した。しかし、
「このような検査所見の異常は有機リン殺虫剤、シンナー、アルコールなどの微量慢性中毒でも検出されています」(原告準備書面(4)9P)とも述べ、原因については副流煙に限定しているわけではない。まして、副流煙の発生源が被告宅とは言っていない。原告・A男を発生源とする副流煙について言っているわけでもない。副流煙の害を指摘するにしても、それは副流煙一般について論じているのである。

原告の書面の書き方が、事実に基づかないことを前提にしているので、宮田医師があたかも被告の喫煙について語っているような印象を受けるが、宮田医師は単に煙草と化学物質過敏症について、持論を述べているに過ぎない。

化学物質過敏症を認定した判例(甲49号証)としては、大手化学メーカー「花王」に勤めていた元社員が、有害物質を扱う仕事の影響で化学物質過敏症になったとして損害賠償を求めた裁判がある。当然、なにを根拠に裁判所は原告を化学物質過敏症に認定したのかを検証しなければならない。

判決によると原告は、化学物質そのものを扱う現場で働いていたために、化学物質に被曝する環境にいた。それを前提として、裁判所は次の記述で述べられている検査で異常が認められた事実を重視して、原告の化学物質過敏症を認定したのである。

「これらの診断は、赤外線瞳孔検査機による自立神経機能検査、眼球追従運動検査(F医師による診断。甲46)、眼球電位図による眼球運動評価、電子瞳孔計による瞳孔対光反応評価(H医師による診断。甲52)等、厚生省長期慢性疾患総合研究事業アレルギー班が提示した診断基準(認定事実(1)オ(イ))」の検査所見に対応する検査方法を用いているから、化学物質過敏症の病態等がいまだ完全に解明されていないことを考慮しても、信頼するに足りるものである。」(甲49号証、22P中段)

さらに原告は、神奈川労災職業病センターのウェブサイトで、次のように化学物質過敏症に認定された要因を説明している。

「(略)この就労環境での有機溶剤等暴露とCS発症との因果関係との証明ですが、これは5名の専門医による診断結果と、うち3名の専門医による意見書、これら内容の全てが同じ方向性を示し、原告の主張と矛盾しなかったことで、裁判官に『急性有機溶剤中毒を繰り返した結果、慢性有機溶剤中毒へと悪化し、更にCSに罹患した。』と認めていただく事ができました」(乙37号証)

つまり「5名の専門医による診断結果と、うち3名の専門医による意見書」が「全てが同じ方向性」を示したからである。この認定基準を基に、原告らの診断書を検証してみると、原告・A男と原告・A妻は、「厚生省長期慢性疾患総合研究事業アレルギー班が提示した診断基準の検査所見に対応する検査方法」を採用した診断をまったく受けていない。化学物質に被曝する際の情況も、化学物質を扱う作業現場と、原告らごく一般的な生活環境の自宅ではまったく異なっている。

原告・A娘のケースも部分的にしか「厚生省長期慢性疾患総合研究事業アレルギー班が提示した診断基準の検査所見に対応する検査方法」の要件を満たしていない。

原告らは、複数の診断書を証拠として提出しているが、宮田医師の診断書を除いて、裏付け資料が添付されていない杜撰なものばかりである。作田医師名義の診断書に至っては、偽造の疑惑すらあるのだ。

宮田医師が原告・A娘を化学物質過敏症と判断したことには、一定の信頼度はあるが、基礎疾患との区別が完全に欠落している。化学物質過敏症で寝たきりになったという症例は、前例がないので、それの原因が本当に化学物質なのかという点も検証しなければならない。

とりわけ、被告準備書面(8)(Ⅱ8、14P)でも述べたように、精神病の際に処方されるデパス(乙第23号証)、パキシル(乙第24号証)、メイラックス(乙第25号証)を原告・A娘が常用してきた事実や、乳がんによる適応障害があることを原告・A娘が認めている点を考慮に入れて、どこまでが基礎疾患の影響で、どこまでが化学物質過敏症の影響なのか、という最も肝心な点を検証しなければならない。

原告らがこの点をまったく明らかにしていないわけだから、原告・A娘を化学物質過敏症と認定するのは無理がある。