1. 李信恵氏が鹿砦社を反訴、『カウンターと暴力の原理』など4冊の書籍の販売禁止などを求める、誰が言論出版の自由を殺すのか?

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2018年04月30日 (月曜日)

李信恵氏が鹿砦社を反訴、『カウンターと暴力の原理』など4冊の書籍の販売禁止などを求める、誰が言論出版の自由を殺すのか?

李信恵氏(文筆業)が、16日付けで、鹿砦社に対し、同事件を記録した『カウンターと暴力の原理』など4冊の書籍の販売禁止や550万円の損害賠償などを求める裁判を大阪地裁に提起した。

発端は、2017年9月に、鹿砦社が李氏に対して、ツイッターなどで名誉を毀損されたとして、300万円と謝罪広告などを求める裁判である。今回の李氏による提訴は、それに対する反訴である。代理人は上瀧浩子弁護士と、自由法曹団常任幹事で元「しばき隊」の隊員の神原元弁護士である。

神原元弁護士には、『ヘイトスピーチに抗する人々』(新日本出版社)というタイトルの著書があり、在日韓国人に対する反差別運動にもかかわっている。また、植村隆氏が櫻井よしこ氏を訴えた裁判では事務局長を務めている。

◆鹿砦社が李氏に起こした裁判

鹿砦社が起こした裁判については、『デジタル鹿砦社通信』に次のような報告が掲載されている。

既に9月12日の本通信で予告しましたように当社は9月28日、大学院生リンチ事件加害者側当事者で、この夏連続して当社とこの代表・松岡に対し誹謗中傷、侮辱、名誉毀損発言を行った李信恵氏を「被告」として大阪地裁に損害賠償300万円と謝罪広告等を求め提訴いたしました(第13民事部。平成29年ワ第9470号)。ようやく訴状が李信恵氏本人に送達されましたのでここにご報告させていただきます。これに先立つ本通信8月2日、同30日、9月12日号をも併せてご参考にしてください。

鹿砦社が問題としている李氏の表現や発言には次のようなものがある。

「鹿砦社はクソですね。」

「鹿砦社の人は何が面白いのか、お金目当てなのか、ネタなのかわかんないけ
ど。ほんまに嫌がらせやめて下さい。(中略)私が死んだらいいのかな。死にたくないし死なないけど。」

「クソ鹿砦社の対立を煽る芸風には乗りたくないなあ。あんなクソに、(以下略)」

「鹿砦社からの嫌がらせのおかげで、講演会などの告知もSNSで出来なくなった。講演会をした時も、問い合わせや妨害が来ると聞いた。普通に威力業務妨害だし。」

「この1週間で4キロ痩せた!鹿砦社の嫌がらせで、しんどくて食べても食べても吐いてたら、ダイエットになるみたい。」

「鹿砦社って、ほんまよくわかんないけど。社長は元中核派?革マルは?どっち?(中略)クソの代理戦争する気もないし。」

■出典:デジタル鹿砦社通信

◆M君リンチ事件とは

鹿砦社と李氏の係争の原点は、メディア黒書でも既報したM君リンチ事件である。「しばき隊リンチ事件」、あるいは「主水事件」とも呼ばれている事件だ。この事件に関するツィートを含む表現が争点になっているのである。従って係争の構図を理解するためには、まず、M君リンチ事件そのものを把握しておかなければならない。

事件は、2014年12月、在日韓国人に対するヘイトスピーチなど差別に対する反対運動を展開しているカウンターグループ(広義のしばき隊)の内部で、金銭疑惑に関する問題が引き金となり、Mさんが集団リンチを受け、ひん死の重傷を負ったというものである。リンチの現場には、5人がいた。そのうちのひとりが李信恵氏であった。


金銭疑惑というのは、ヘイトスピーチを繰り返す極右勢力から、カウンターメンバーが金銭を受けたとする噂だ。Mさんがそれを指摘したところ、謝罪を求められたのである。

警察は事件を重くみて、5人のうち、李氏を含む3人を検察に書類送検した。このうち李氏を除く2人は、刑事処分を受けたが李氏は、処分を受けなかった。

Mさんは、これに納得できず5人に対して損害賠償を求める裁判を大阪地裁へ起こした。大阪地裁は、3月19日に、5人のうち3人に損害賠償を命じる判決を下したが、この3人に李氏は含まれていなかった。また、5人による共同不法行為も認められなかった。

形のうえでは、Mさんの勝訴であったが、李氏に対する損害賠償が認められなかったことや、共同不法行為が否定されたことにMさんは納得できずに控訴した。

Mさんの主張は、最初に襲いかかったのは、李氏であるというものである。一方、李氏はそれを否定している。

しかし、ここからが肝心なのだが、李氏に対する損害賠償が認められなかったとはいえ、李氏の次の言動は、判決で事実認定された。以下の引用文にある「原告」とは、改めていうまでもなく、Mさんである。Mさんは、深夜に5人により酒場に呼び出されたのである。

被告普鉉が原告を迎えに出て、同月17日午前2時頃、原告及び被告普鉉が本件店舗内に入ったところ、出入口に最も近い席に坐っていた被告信恵が、原告に対して「なんやのお前」などと言いながら、原告に詰め寄り、その胸倉をつかんだ。これに対し、被告普鉉が、直ちに「まあまあまあ、リンダさん、ごめんな。」と言い、被告金も「店やし、店やし。」などと言いながら、被告信恵を制止して、原告から引き離した。 

金銭疑惑について話し合うために来たのであるから、6人が深夜に酒場で「会議」を行ったことになる。リンチが発生した状況だけを見ても、尋常ではない。

ちなみに、引用した李氏の行為が、暴力に該当するかどうかは、検討してみる
必要がある。現場にいた他のメンバーが、Mさんの「胸倉をつかんだ」李氏を、M君から「引き離した」わけだから、少なくとも暴力に訴えようという意図があったたことは間違いないだろう。

ところが李氏ら被告が敗訴した3月19日の夜、見方によっては一種病的なツィートが投稿されたのだ。投稿の主は、神原元・自由法曹団常任理事だった。神原氏は、自身のツイッターでM君リンチ事件があったこと自体を全面的に否定したのだ。

  「しばき隊リンチ事件」「主水事件」「M君事件」等と称された事件に判決が下りた。結論は、共謀なし。李信恵さんの責任はなし。一部に誤った認定はあったが、原告のストーリーは全て否定された。「しばき隊がリンチ事件を起こした」等とデマに踊った人々は猛省すべきである。今後、誹謗中傷は許さない  ■出典


神原弁護士は、「原告のストーリーは全て否定された」、「『しばき隊がリンチ事件を起こした』等とデマに踊った人々は猛省すべきである。」と述べているのである。集団による暴力があった事実を否定したのだ。


神原弁護士はこのツィートを酒場から発信したのである。

以上が事件の概要である。つまり整理すると、関連する2つの事件が同時進行しているのである。まず、鹿砦社と李氏の表現をめぐる裁判。それから、その発端となったM君と李氏を含む5人のカウンターメンバーによる暴力事件。今回の提訴は、前者に属する反訴であるが、その前提となっているのは、M君リンチ事件をめぐる報道だ。

 

◆李氏からの請求内容

李氏の反訴の請求内容は、次の通りである。

(1)550万円と金利の支払

(2)M君リンチ事件を記録した4冊の書籍の販売禁止。(『ヘイトと暴力の連鎖』、『反差別と暴力の正体』、『人権と暴力の深層』、『カウンターと暴力の病理』)

(3)『デジタル鹿砦社通信』に掲載された17箇所の記述の削除

(4)訴訟費用の負担と、仮執行宣言

◆李氏が名誉毀損と主張している表現

李氏は、訴状の中で、どのような表現を名誉毀損の対象としているのだろうか。詳細は、改めて報告するが、わたしが興味を覚えた記述をいくつか紹介しよう。

「上の写真は、『リンチ事件』に関わった李信恵」

「M君が店に到着すると、李信恵から『なんやねん、お前!おら!』と怒鳴りつけられ、顔面を一発殴られる」

「李信恵が加害者となった『M君リンチ事件』」

「この‘内部リンチ事件´の発生のきっかけを作ったのは、これまで世に出た数々の証拠から考えて、李信恵が被害者M君に最初に手を出した‘暴行’だったと推測される」

「M君リンチ事件加害者の李信恵」

「李信恵ら対リンチ加害者5人との訴訟」

「リンチがあったという事実ははっきりしましたが、主犯格の李信恵(誰が見ても伊藤が主犯格とは思えないでしょう)の共同不法行為が認められなかったのは大いに疑問です」

名誉毀損裁判では、訴えられた側が、記述の真実性、または真実相当性を立証する責任が負わされる。わたしの見解を述べれば、いずれの記述も、少なくとも真実相当性はある。Mさんが起こした裁判の中でも、暴力事件が発生して、その現場に李氏がいて、Mさんの胸倉を掴むなど不穏当な言動に及んだことは認定されているのである。

◆言論活動に対する挑戦状

李氏が起こした裁判の請求事項に、書籍の販売禁止が含まれていることは極めて重大だ。しかも、それが4冊にも及ぶ。書籍の普及は、出版社の使命である。販売を禁止するなどということは、最大の侮辱であり、独裁者の国でさえも、そうした事態が起きれば、しばしば国際問題になる。書籍の販売禁止の要求をすることは、言論活動に対する挑戦状にほかならない。

まして、李氏は文筆家である。表現の自由に関しては、寛大でなければならない。

また、この裁判の代理人を務めている神原元弁護士は、自由法曹団の常任理事である。自由法曹団は、本来、言論の問題に関しては、慎重な姿勢を取ってきたはずだと理解しているのだが、方針が変わったということなのだろうか。

一体、誰が言論の自由を殺しているのだろうか。