1. 広義の「しばき隊事件」の大阪地裁判決が認定した事実、暴力は客観的な事実

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2018年03月27日 (火曜日)

広義の「しばき隊事件」の大阪地裁判決が認定した事実、暴力は客観的な事実

広義の「しばき隊」事件。差別と闘っているグループの中で、2014年12月、集団暴力があったとされる事件である。被害者のMさんが、刑事処分のあと、民事裁判で損害賠償を求めた裁判の判決が、19日に大阪地裁で下された。現場にいた5人のうち、3人に対して損害賠償命令が下された。

この裁判は客観的にみれば原告の勝訴である。しかし、原告・被告とも判決内容には不服があるようだ。双方が控訴することはまず、まちがいない。

ところでメディア黒書で既報したように、判決が下った19日の夜、被告の李信恵氏の代理人を務めている神原元弁護士(自由法曹団常任幹事)が、次のようなツィートを投稿した。

「しばき隊リンチ事件」「主水事件」「M君事件」等と称された事件に判決が下りた。結論は、共謀なし。李信恵さんの責任はなし。一部に誤った認定はあったが、原告のストーリーは全て否定された。「しばき隊がリンチ事件を起こした」等とデマに踊った人々は猛省すべきである。今後、誹謗中傷は許さない

ツィートの出典

神原弁護士は、「原告のストーリーは全て否定された」と述べている。わたしは真意を確かめるために、同弁護士に取材を申し入れたが、現時点では返事がない。わたしが、「原告のストーリーは全て否定された」という記述に違和感を感じたのは、判決の中で裁判所が認定した事実を確認したところ、暴行の事実が複数認定されていたからだ。

神原弁護士は、「李信恵さんの責任はなし」と述べているが、判決文の事実認定は次のようになっている。Mさんが事件の現場となったワインバーに到着した直後の状況である。

(ア)被告普鉉が原告を迎えに出て、同月17日午前2時頃、原告及び被告普鉉が本件店舗内に入ったところ、出入口に最も近い席に坐っていた被告信恵が、原告に対して「なんやのお前」などと言いながら、原告に詰め寄り、その胸倉をつかんだ。これに対し、被告普鉉が、直ちに「まあまあまあ、リンダさん、ごめんな。」と言い、被告金も「店やし、店やし。」などと言いながら、被告信恵を制止して、原告から引き離した。

◇顔を20回程度殴打し、1回足蹴りをするなどの暴行

これが裁判所の事実認定である。李信恵氏に暴力的な言動はあったが、Mさんが危害を受けるほどのダメージではなかったから、損害賠償の対象にはならなかったのである。

一方、エル金の暴行は次のように認定されている。

(略)以上のとおり、被告金は、本件店舗内において原告の顔面を1回平手で殴打し、本件通路において原告の顔面を両手拳及び平手で少なくとも20回程度殴打し、1回足蹴りをするなどの暴行を加えた(被告金本人)

ここにあげた暴力の認定は一部分である。近々に、判決について詳しく評論したいと考えているが、引用した2つの事実認定を確認するだけで、神原弁護士のツィートが事実を踏まえていないことが分かるだろう。

参考までに、暴力の現場を録音した音声を紹介しよう。Mさんを「しばく」ときの骨が砕けるような乾いた「しばき音」を確認してほしい。

ジャーナリズムの貴重な記録である。この事件を隠蔽しようとしている知識人たちは、この記録を無視するのであれば、ジャーナリストや評論家を名乗る資格はない。

まして自由法曹団常任幹事の肩書を付したツイッターで、神原弁護士が、「原告のストーリーは全て否定された。」などとコメントしたことは、自由法曹団の信用そのものにかかわるのではないだろうか。自由法曹団に敬意を表してきた筆者としては残念だ。

これでは南京事件はなかった、あるいはナチスのガス室はなかったと言っている人々と同じレベルなのである。客観的な事実関係を踏まえた上で、弁護活動をされるべきだろう。

 

なお、メディア黒書は、常に反論を歓迎します。希望がある方は、お知らせ下さい。