佐賀県西日本新聞店押し紙訴訟の裁判官交代について、モラル崩壊の元凶-押し紙-
福岡・佐賀押し紙弁護団 弁護士江上武幸(文責)2025年7月31日
長崎県販売店の地裁裁判官の交代については、2024年12月26日(木)投稿の「西日本新聞福岡地裁敗訴判決のお知らせ」で報告したとおりです。
今回は、佐賀県販売店の押し紙訴訟の担当裁判官の交代について報告いたします。
佐賀県販売店の押し紙訴訟は、令和7年5月20日に原告本人尋問と販売部長の証人尋問が実施され、即日結審し、来る9月9日が判決言渡期日と定められました。
前回の4月15日の期日において日景聡裁判長は「裁判官変更の予定はありません。」と告げました。裁判官の異動は4月1日付で行われますので、日景裁判長がそのようなことを当事者双方の代理人に告げたのは、今の合議体で本件事案の審理を終え判決を作成することを宣言したに等しい出来事でした。
ところが、5月20日の人証調べの日に、廊下の掲示板に日景裁判長の名前が記載されていることを確認して、法廷で裁判官の入室を待っていたところ、裁判官席の後方の扉から入ってきた裁判長は日景裁判長ではなく、三井裁判官でした。三井裁判官の任官後最初の転勤は、福岡地方裁判所久留米支部であり、読売新聞YC久留米中央の荒木さんの販売店地位保全仮処分決定と間接強制金一日3万円の支払いを命じる裁判を下した裁判官です。この仮処分決定は異議申立がなされ3人の裁判官による合議体によって取り消されました。
その後、三井裁判官とは熊本地裁玉名支部や佐賀地裁本庁等の裁判で顔を合わせることがありましたので、その人柄はよくわかっているつもりです。
人証尋問が終り、9月9日に判決言い渡しと決まり閉廷しましたので、廊下に出てから他の弁護士に、三井裁判官は久留米支部配属時代にYC久留米中央の地位保全の仮処分決定を出してくれた裁判官であることを話しました。
しかし、4月15日の期日に日景裁判長が双方代理人に対しわざわざ裁判官の交代はないと伝えていたことや、5月20日の期日の廊下の掲示板には日景裁判官が、裁判長として記載されており、三井裁判官の名前がなかったことから、なんとなく違和感を感じ、念のためネットで二人の裁判官の経歴を調べてみました。
今はネットで裁判官の氏名を検索するだけでその裁判官の経歴がわかるようになっており、便利な時代になったものです。
三井裁判官の経歴をみたところ、令和7年4月1日付で佐賀地裁民事部総括から福岡高裁第3民事部判事に移動し、5月20日に福岡地裁2部民事総括に配属されていることがわかりました。
日景裁判官の経歴をみたところ、5月20日に福岡地裁第2民事部総括から福岡地裁第4民事部総括(破産再生執行保全部)に配属されておりました。
廊下の掲示板には日景裁判長の名前が書かれており、三井裁判官の名前は書かれていませんでしたが、裁判所事務官あるいは裁判書書記官に対しては、裁判長の交代については当日朝までは伝えられていなかったのではないかという疑念が浮かんできました。
三井裁判官は、佐賀地裁から一旦、福岡高裁に転勤し、その後、すぐに福岡地裁の本件裁判の担当裁判長に配属になっています。福岡高裁に転勤になったのは昇進の関係で暫定的に処置したもので、実際は当初から本件事件の裁判長を担当させるための人事ではないのかという疑いです。
そうであれば、4月15日時点で裁判官の交代はありませんと話しておられた日景裁判長の他の部への配属替えも突然決まったと考えられるので、気の毒な気がします。
去る6月20日に井戸謙一元裁判官と樋口英明元裁判官の共著『司法が原発を止める』という本が旬報社から発行されました。裁判官経験者でなければ知りえない裁判所内部の様々な出来事について対話されており、大そう勉強になりました。
両裁判官の後輩裁判官に対する熱い期待が行間にあふれております。御一読をおすすめします。
押し紙裁判については、販売店敗訴判決の判決文の論理構成の類似性や同一性、あるいは担当裁判官の奇妙な人事異動などにより、かねてから最高裁事務総局より報告事件に指定されていることが疑念されてきました。先の西日本新聞長崎県販売店の裁判と本件佐賀県販売店の裁判についても、報告事件として最高裁事務局に逐次審理の進行状況が報告されていないか気になるところです。
本件佐賀県西日本販売店の押し紙裁判の裁判長の交代についても、上記のような気になる点が出てきましたので、判決前に投稿しておくことにしました。裁判長交代が9月9日の判決で吉と出るか凶とでるか、皆様と一緒に見守りたいと思います。
* 福岡地裁久留米支部配属当時の三井裁判官の販売店地位保全仮処分決定と間接強制金支払命令の判決文を参考資料として添付しておきます。ご参照ください。