「市民運動=善」という幻想 市民運動のあり方を考える「別冊! ニューソク通信」の2つの番組
9月に筆者が出演した番組を2本紹介しよう。いずれも須田慎一郎氏がキャスターを務める「別冊! ニューソク通信」の番組である。ここで取り上げた2件の事件に初めて接する人にも理解できるように編成されている。
◆週刊金曜日と鹿砦社の決別をめぐる事件
7月初旬に週刊金曜日と鹿砦社が決別しておよそ3カ月になる。週刊金曜日に掲載された森奈津子編著『人権と利権』(鹿砦社)の書籍広告に対して、週刊金曜日が差別本のレッテルを張り、今後、鹿砦社の広告を拒否することを告知したことが決別の原因だった。
しかし、この決定の背景にある事情を調査したところ、週刊金曜日に対して、鹿砦社の書籍広告を掲載しないように求める声が、SNSなどで炎上していたことが明らかになった。SNS上の暴言・苦言が週刊金曜日の植村隆社長にプレッシャーを与え、一方的に鹿砦社に決別を宣言したのである。
これら一連の経過は、デジタル鹿砦社通信やメディア黒書が報じてきた。また『紙の爆弾』(10月号)は、筆者が執筆した「『週刊金曜日』書籍広告排除事件にみる『左派』言論の落日」と題する記事を掲載した。さらにインターネット放送局である「別冊! ニューソク通信」が取り上げた。
「別冊! ニューソク通信」の須田慎一郎氏はこの問題に着目した。と、いうのもコラボ問題についての須田氏と森奈津子氏の対談が『人権と利権』に収録されているからだ。その本が「差別本」と烙印されたのだから、ある意味では須田氏も当事者である。
「閾値」を隠した日本のマスコミ報道、中国を敵視、福島の汚染水問題
8月24日に福島原発の汚染水を海に放出し始めたのち、中国から激しい批判の声が上がっている。これに対して、外務省は9月1日に反論を発表した。中国の主張を「科学的根拠に基づかないものだ」と決めつけ、国際原子力委員会(IAEA)のお墨付きがあるので、安全性に問題はないという趣旨である。
マスコミはALPSを通過する水を「処理水」と表現するなど国策に寄り添った方向で報道を続けている。テレビは連日のように福島沖で捕獲させる魚介類をPRしている。「汚染水」という言葉は絶対に使わない。売れない魚を学校給食で使う案も出始めているらしい。
政府や東電、それにマスコミの主張は、「規制値を遵守しているから絶対に安全」だというものである。しかし、この考え方は、放射線や化学物質の安全性には「閾値」がないことを隠している。
「閾値とは、ある値が所定の水準を超えると特定の変化が生じたり判定・区別が変わったりする、という場合の『所定の水準』『数値的な境目』『境界線となる値』を意味する語である」(Weblio)
放射線の人体影響に閾値がないことについて、岡山大学の津田敏秀教授は次のように指摘している。
(日本では)「100ミリシーベルト以下ではがんが増加しない」ことになってしまっている。2013年5月27日付けで出された「国連特別報告者の報告の誤りに対する日本政府の修正」と題された日本国政府代表部の文書にも、「広島と長崎のデータに基づき、放射線被ばくによる健康への影響は、100ミリシーベルト以下の水準であれば、他の原因による影響よりも顕著ではない、もしくは存在しないと信じられている」と記されている。これは100ミリシーベルトの放射線被ばくが、発がんの「閾値(しきい値)」のように考えられていることを意味する。
よく知られていることだが、国際X線およびラジウム防護委員会IXRPは1949年に、放射線被ばくによる癌の発生に閾値はないことを結論づけ、この結論は現在に至るまで変えられていない。(『医学的根拠とは何か』津田敏秀著、岩波書店)【続きはデジタル鹿砦社通信】
遠慮・忖度一切なし!《本音の対談》黒薮哲哉×田所敏夫〈08〉販売店は新聞社の奴隷なのか? 新聞社社員個人への振り込みを強要された販売店主
◆ABC部数は数字自体に「押し紙」が含まれている
田所 ではABC部数はどうなのでしょう。ABC部数は新聞社が自己申告するのですよね。
黒薮 ABC部数にも「押し紙」が含まれています。ABC部数が減っていることを捉えて「新聞が衰退している」と論じる人が多いのですが、正確ではありません。ABC部数は数字自体に「押し紙」が含まれているからです。「押し紙」を整理しなければABC部数は減りません。正しくは実売部数が減少しているかどうかで、「新聞が衰退している」かどうかを判断する必要があります。このような観点からすると、新聞社の経営は相当悪化しています。
田所 新聞は自分ではそのようなことを書きませんね。
◆販売店は奴隷のような扱いを受けている
黒薮 本当に販売店は奴隷のような扱いを受けています。たとえば販売主さんが、新聞社の担当社員の個人口座にお金を振り込まされたケースもあります。この事実については、店主さんの預金通帳の記録で確認しました。
田所 個人口座へですか。
黒薮 新聞社の口座に振り込むのであればいいけども、その店を担当している担当社員の個人口座に振り込んでいます。平成30年だけで少なくとも300万円ほど振り込まされています。それくらい無茶苦茶なことをされています。
田所 売り上げの全額ではないですね。一部を「私に寄こせ」と。
黒薮 証拠があるからその新聞社の広報部に資料を出して、内部調査するように言っているのですが、調査結果については現時点では何も言ってきていません。足元の問題には絶対に触れません。
横浜副流煙事件(反訴)、藤井敦子さん支援についての真実と誤解
最近、横浜副流煙裁判(反訴)の原告である藤井敦子さんに対すツイッターによる攻撃が許容範囲を越えている。攻撃してくるのは、喫煙撲滅運動を推進している作田学医師や、化学物質過敏症の権威として知られている宮田幹夫医師の患者らである。
作田医師は、藤井さんが起こした裁判の法廷に立たされ、宮田医師は、4月末でみずからが経営してきたそよ風クリニックを閉鎖する。
後者の原因は、宮田医師の医療行為を批判する記事を書いたわたしにあると考えている人もいるようだ。
ツイッターによる攻撃対象は、副次的にわたしや、わたしの記事を掲載してきた鹿砦社にも及んでいる。さらに作田医師や宮田医師の医療を批判している舩越典子医師も攻撃対象になっている。
攻撃に加わっている人物の中には、元毎日新聞の辣腕ジャーナリストも含まれている。この先生は、なぜかわたしと鹿砦社に絡んでくる。
攻撃者らは、連携プレーのようなかたちで次々と攻撃を仕掛けてくる。ネットウヨやカウンター運動の面々によるSNS攻勢を同じパターンである。
これに対して藤井さんは、裁判の支援者などによる加勢を得て応戦している。後に引かない姿勢だ。
わたしはツイッターによる議論には積極的ではないが、コミュニケーションを図るという観点からすれば、まったく無意味なことだとは考えていない。しかし、議論の前提事実が間違ってしまうと、議論そのものが実のないものになってしまう。
◆わたしが藤井さんに行った支援
遠慮・忖度一切なし!《本音の対談》黒薮哲哉×田所敏夫〈06〉日本のタブー「押し紙」問題の本質を探る
◆日本の新聞がデタラメだと感じた瞬間
黒薮 思い出すことがあります。日本の新聞がおかしいと最初に思ったのは、20代の終わりです。わたしは20代の大半を海外で暮らしたのですが、日本に帰って東京でアパートに入った、その日に驚くべき体験をしました。ドアを開けると、拡販員がいきなり洗剤を押し付けて「新聞を取ってくれ」と言ってきたのです。こうした新聞拡販を知らなかったので、「これで新聞記者の人は平気なのかな」と思いました。これが日本の新聞はどこかおかしいと感じた最初です。
田所 そこから黒薮さんはライフワークの「押し紙」の取材にとりかかられたのですか。
黒薮 東京で普通の会社に就職したんです。そこに2年くらい居ましたがバブル崩壊で会社が潰れたので、それからメキシコで、メキシコ日産の通訳をした後、日本に戻り新聞業界の業界紙に入りました。「押し紙」に関わりだしたのはそれからです。
田所 新聞業界の業界紙だから、ど真ん中にいらっしゃった。内部事情が分かりますね。
黒薮 業界団体の中で不正経理事件があって、それを調べようとしたら業界紙の社長さんらがみんなで、「これは取材してはいけない」と決めてしまいました。そこで「それはおかしいのではないか」と言っていたら、クビになったんです。
田所 解雇ですか。【続きはデジタル鹿砦社通信】
遠慮・忖度一切なし!《本音の対談》黒薮哲哉×田所敏夫〈05〉「押し紙」は新聞にとって致命的
◆日本の新聞とニューヨークタイムズの違い
田所 新聞は批判勢力では決してない。拡声器であったり補完勢力と思います。新聞の「押し紙」問題を長年取材なさっている黒薮さんが、今もう新聞を取っていらっしゃらないんですよね。
所 私は50代ですが、同じ世代を見回しても、新聞は取っていない人のほうがたぶん多いです。
黒薮 新聞はインターネットと違って検索機能がありません。記事にリンクが張れない。ネット上のニュースは関連した情報を引き出すことができるけども新聞にはそれできない。情報の量で新聞はネットに圧倒的に劣っています。【続きはデジタル鹿砦社通信】
元販売店長が内部告発、「押し紙」と表裏関係、折込広告の水増し問題、古紙回収業者の伝票が示す凄まじい実態
事実を裏付ける資料は、報道に不可欠な要素のひとつである。新聞や雑誌などの紙媒体はスペースに制限があるので、資料を全面公開するには物理的な限界があるが、インターネット・メディアには限界がない。この当たり前の原理を最も有効に生かしたメディアは、恐らくジュリアン・アサンジが設立したウィキリークスではないか。生の資料を公開することで、記事の記述の裏付けを提示している。
先日、筆者は読売新聞販売店の元店長から、膨大な量の内部資料を入手した。その中で注目した資料のひとつに、古紙回収業者が販売店に発行した伝票がある。そこには業者が回収した残紙量と折込広告の量が明記されている。
残紙の実態は、「押し紙」裁判などを通じて、かなり明らかになってきたが、水増しされ、廃棄される折込広告の数量が伝票上で明らかになったのは、筆者の取材歴の中では今回が初めてである。抜き打ち的に伝票を写真付きで紹介しよう。
◆過剰になった折込広告を裏付ける伝票
まず伝票で使われている用語について事前に説明しておこう。「残新聞」とは残紙(広義の「押し紙」)のことである。「色上」とは、折込広告の事である。年月日の表記は、元号で表記されている。従って本稿でも例外的に元号を使用する。ただし(括弧)内に正規の年月日を示した。
元店長によると、古紙回収業者は月に2回から3回、残紙と折込広告を回収していたという。
■平成27(2015年)年8月26日
残新聞:6480kg
色上(折込広告):1210Kg
■平成28年(2016年)11月21日
残新聞:7320kg
色上:1250Kg
■平成30年(2018年)7月5日
残新聞:7010kg
色上:810Kg
《インタビュー》国境なき時代、日本語は国際語として通用するのか? 日本語教育の専門家、江原有輝子氏に聞く
国際化の波が日本にも押し寄せている。ビジネスの世界でも政治の世界でも、国境の感覚が薄れ始めている。その中で浮上しているのが、コミュニケーションの問題である。世界の人口80億人のうち、日本語を話す人口はわずかに1億3000万人程度である。日本語は、グローバル化の中で生き残ることできるのか。
語学教育はどうあるべきなのか。国際化にどう対処すべきなのか。海外で長年にわたって日本語教育に取り組み、牧師でもある江原有輝子氏に、異文化とコミュニケーションの体験について話をうかがった。[聞き手・構成=黒薮哲哉]
◆世界の5か国で日本語を指導
── 海外で日本語を教えるようになるまでの経歴を教えてください。
【続きはデジタル鹿砦社通信】
遠慮・忖度一切なし!《本音の対談》黒薮哲哉×田所敏夫〈04〉問題すり替えに過ぎない“SDGS”の欺瞞
◆SDGsに無批判なマスメディア
田所 国連が提唱するSDGsという「持続可能な成長」。耳障りは良いです。しかし本音は「持続可能」ではなく「成長」=「経済成長」です。成長を実現するために紛争をなくす、貧困をなくす、二酸化炭素を減らすといろいろ言いますがそのための市場や商品が国連により推奨され、あたかも人類や地球環境や生態系に良い効果をもたらすと札付きを与えている。たとえば電気自動車や二酸化炭素を出さないもののが、良いものだとされる。けれども二酸化炭素がなければ新しい空気ができません。この基本的な議論がSDGsからは見事に抜け落ちている。
黒薮 環境をよくすることは大事だけども、それをビジネスに変えるのはおかしいでしょう。環境問題を企業に委ねれば、目的が達成できると考えるのは誤りです。
田所 綺麗な言葉で国連が新自由主義を擁護している。国連が発するのですからもう学校教育の場でも子どもたちに刷り込みが既に始まっている。
黒薮 「企業コンプライアンス」という言葉が重視されていますが、新自由主義の下で格差が広がり、様々矛盾が噴出してきたから、それをなんとなく誤魔化すための言葉だと思います。資本主義の枠内で、欠点を多少「手直し」して、基本的には同じ路線を突き進むための世論誘導です。現在の体制を巧みに維持するための戦略です。
田所 これは政策ではなくイメージです。そこがたちが悪い。イメージだから直接的に誰かが傷ついたり即座に誰かが困ったりはしない。けども分析すれば「貧困をなくす」のは企業がではないです。利益を追求しないと成立しえない集合体が企業であり利益を最大化したいのがもとからの企業の存在意義です。
黒薮 だからイメージをコントロールして世論を誘導する戦略が、非常に重視されるわけです。こうした財界の戦略に協力しているのがマスメディアです。
田所 マスメディアはSDGsにまったく無批判です。イメージでは我々よりも意識が進んでいるだろうと思いがちな欧州の国々でも、この問題に異議を唱える人が多くはなさそうで、右から左までがSDGsを認証することにより、新自由主義=格差拡大を地球規模で拡大させることにより事態がさらに悪化してゆくことは目に見えている。
◆「誰にでも起業のチャンスがある」というのは幻想
遠慮・忖度一切なし!《本音の対談》黒薮哲哉×田所敏夫〈03〉禁煙ファシズムの危険性 ── 喫煙者が減少したことで肺がん罹患者は減ったのか?
◆禁煙ファシズムと複合汚染
田所 違う角度で伺います。タバコについては昨年ニュージーランドで首相が、近い将来18歳以下の人に喫煙をさせないとの法律を作ると報道されました。たしかにタバコは健康への一定の害はあるでしょう。私は現在タバコを吸いませんがかつては喫煙者でした。私が大学生時代は男女含め6~7割の人間はタバコを吸っていた記憶があります。黒薮さんは喫煙歴はないですか。
黒薮 20代の初めの頃、合計3年くらい吸っていました。
田所 ですから継続的な喫煙者は減少しているにしても、タバコを吸う習慣は100年、200年ではなく、相当大昔から習慣としてあったですね。嗜好品としては世界的に酒と同様に嗜まれていた。今はタバコが「健康に悪いから止めましょう」と言われていますが、一方、肺がん罹患者の数が減っていません。タバコが直撃する臓器は肺だと言われています。喫煙者が減り副流煙もほとんどないのに肺がんが増えている。これを医学的に説明している証拠はあるのでしょうか。
黒薮 医学的な説明はないけども、一般的に考えればそれだけ化学物質による空気の複合汚染が進んだ結果、肺がんが増えた可能性が高いでしょう。
横浜副流煙事件の本人尋問、「俺、食い逃げかよ?」、作田医師の証言に疑問が続出
横浜副流煙裁判の本人尋問が2月9日に横浜地裁で行われた。筆者は、これまで何度も尋問を傍聴したことがあるが、この日の尋問は恐らくブラックユーモアとして記憶に刻まれるだろう。(事件の概要は、後述)
問題の場面は、日本禁煙学会の作田学理事長(医師)が、証人席に付いているときに起きた。作田医師の弁護人は、藤井敦子さんと酒井久男(写真)さんによる「作田外来」(日本赤十字センター内)への「潜入取材」を取り上げた。2019年7月のことである。
潜入取材の目的は、藤井さんにとっては情報収集である。4518万円の損害賠償を求められたわけだから、その原因を作った作田医師についての情報を集める必要があった。そこで藤井さんは、作田医師による診断書交付の実態を自分の眼で確認するために、酒井さんに付き添って「作田外来」を訪れたのである。診断書交付の様子を確認する必要があった。新聞社やテレビ局に40年勤務しても出来ない取材を、普通の主婦が自分の判断で簡単にやってのけたのである。
たまたま酒井さんには、衣類の繊維に対するアレルギーがあり、藤井敦子さんの目的とも合致したので、2人で東京都渋谷区の日本赤十字センターへ向かったのである。
この件は、筆者が『禁煙ファシズム』の中で暴露したので、作田氏らはこの本を通じて、入念な情報収集が行われていたことを知った可能性が高い。
◆作田医師、「ニコチン検査」に応じず
遠慮・忖度一切なし!《本音の対談》黒薮哲哉×田所敏夫〈02〉横浜副流煙事件裁判のその後
◆裁判を起こされて何もしなければ、同様のスラップ裁判が起きる可能性がある
田所 結局高裁勝訴で藤井さんは上告なさらなかったのですね。
黒薮 そうです。原告被告双方上告しませんでした。
田所 あの裁判は確定しましたが、逆に藤井さんが原告になり裁判を提訴されていると伺っています。
黒薮 藤井さんが被告の裁判をやっていた時から、もし勝つことが出来たら損害賠償請求をやりましょう、と話はしていました。その理由はこのような裁判を起こされて何もしなければ、同様のスラップ裁判が次々と起きる可能性があると考えたからです。ですから藤井さんにけじめはしっかりつけましょうと話はしていました。ただ裁判のことですので勝訴できる確信はありませんでした。幸いに横浜地裁と東京高裁で勝訴したので、前訴が終わった後、藤井さんが元被告を不当訴訟(訴権の濫用)で提訴に踏み切った訳です。
◆日赤病院のウェブサイトから作田氏の名前が消えた理由
遠慮・忖度一切なし!《本音の対談》黒薮哲哉×田所敏夫〈01〉「スラップ訴訟」としての横浜副流煙事件裁判
2023年を展望という大上段な気分ではなく、現状確認とこれからの方向性を探るために、一度黒薮哲哉さんとじっくり時間をかけて直接お話がしたい、と昨年後半から感じていた。1月20日私の希望は実現した。3時間半にわたって休憩をはさむことなく、「横浜副流煙事件裁判」、「押し紙」、「中南米情勢」など各論から「ジャーナリズム」の課題や新自由主義の諸問題まで話題は広がった。3時間半あれば深くはないにせよ一応語り尽くすことはできるだろう、との計算はわたしのミスだった。時間が圧倒的に足りなかったのだ。だぶん黒薮さんも同様にお感じではないだろうか。
いずれにせよ、以下は黒薮さんにわたしが伺う形を基本とした、2023年1月における「現状確認」と「方向性」の模索である。お忙しい中時間を割いていただき、原稿の校正にも快く応じてくださった黒薮さんに感謝するとともに、この対談(インタビュー?)が、読者のみなさんにとって何らかの示唆となれば、幸いである。(田所敏夫)【続きはデジタル鹿砦社通信】
化学物質過敏症をめぐるツイッター「炎上」、知的な人々による軽い言葉の発信、毎日新聞の元記者も
デジタル鹿砦社通信(1月14日付け)で紹介したYouTube番組に、SNS上で波紋が広がっている。ニューソク通信が配信した須田慎一郎さんの下記インタビュー番組である。既にアクセス数は、10万件を超えた。
配信直後からSNS上で、出演者に対する批判が広がった。それ自体は、議論を活性化するという観点から歓迎すべき現象だが、ツィートの内容が事実からかけ離れたものがある。わたしに対する批判のひとつに、「取材不足」という叱咤があった。化学物質過敏症がなにかを理解していないというのだ。【続きはデジタル鹿砦社通信】
西日本新聞を提訴、「押し紙」裁判に新しい流れ、「押し紙」の正確な定義をめぐる議論と展望
「押し紙」裁判に新しい流れが生まれ始めている。半世紀に及んだこの問題に解決の糸口が現れてきた。
11月14日、西日本新聞(福岡県)の元店主が、「押し紙」で損害を被ったとして約5700万円の損害賠償を求める裁判を福岡地裁へ起こした。訴状によると元店主は、2005年から2018年までの間に3店の販売店を経営した。「押し紙」が最も多い時期には、実配部数(実際に配達する部数)が約1300部しかないのに、約1800部の新聞が搬入されていた。
他の「押し紙」裁判で明らかなった「押し紙」の実態と比較すると、この販売店の「押し紙」率は低いが、それでも販売店経営を圧迫していた。
この裁判には、どのような特徴があるのだろうか?
◆多発する「押し紙」裁判、読売3件・西日本2件・日経1件
「押し紙」裁判は、今世紀に入ることから断続的に提起されてきた。しかし、新聞社の勝率が圧倒的に高い。裁判所が、新聞社の「押し紙」政策の存在を認定した例は、わたしが知る限りでは過去に3例しかない。2007年の読売新聞、2011年の山陽新聞、2020年の佐賀新聞である。
※2007年の読売新聞の裁判は、「押し紙」が争点になったが、地位保全裁判である。
現在、わたしが取材している「押し紙」裁判は、新たに提起された西日本新聞のケースを含めて次の6件である。
・読売新聞・東京本社VS販売店(東京高裁)
・読売新聞・大阪本社VS販売店(大阪地裁)
・読売新聞・西部本社VS販売店(福岡地裁)
・日経新聞・大阪本社VS販売店(大阪高裁)
・西日本新聞VS販売店1(福岡地裁)
・西日本新聞VS販売店2(福岡地裁)
「『しばき隊がリンチ事件を起こした』等は、根拠のないデマ」とツイートした高千穂大学の五野井郁夫教授、事実の認識方法に重大な欠陥
研究者の劣化が顕著になっている。大学の教え子にハラスメントを繰り返したり、暴力を振るったり、ジャーナリストの書籍を盗用したり、最高学府の研究者とは思えない蛮行が広がっている。事件にまでは至らなくても、知識人の相対的劣化は、ソーシャルメディアなど日常生活の中にも色濃く影を落としている。
11月8日に「Ikuo Gonoï」のアカウント名を持つ人物が、ツイッターに次の投稿を掲載した。
こちらの件ですが、担当した弁護士の神原元先生@kambara7の以下ツイートの通り、「しばき隊がリンチ事件を起こした」等は、根拠のないデマであったことがすでに裁判で証明されており、判決でもカウンター側が勝利しています。デマの拡散とわたしへの誹謗中傷に対する謝罪と削除を求めます。
「しばき隊」が起こした暴力事件を「根拠のないデマ」だと摘示する投稿である。
◆2014年12月17日の事件
「しばき隊」というのは、カウンター運動(民族差別反対運動)を進めていた組織で、2014年12月17日の深夜、大阪府北区堂島の北新地で複数のメンバーが飲食した際に、大学院生をめった打ちにして、瀕死の重傷を負わせた事実がある。
この日、カウンター運動の騎士として著名な李信恵を原告とする反差別裁判(被告は、「保守速報」)の口頭弁論が大阪地裁であった。
閉廷後、李らは飲食を重ね、深夜になって事件の舞台となる北新地のバーに入った。そして「しばき隊」の仲間であるM君を電話で呼び出したのである。M君の言動が組織内の火種になっていたらしい。
M君がバーに到着すると、李はいきなりM君の胸倉を掴んだ。興奮した李を仲間が制したが、その後、「エル金」と呼ばれるメンバーが、M君をバーの外に連れ出し、殴る蹴るの暴行を繰り返し、全治3週間の重傷を負わせたのである。
M君は事件から3カ月後の2015年2月に、警察に被害届を出した。2016年3月、大阪地検は李信恵を不起訴としたが、エル金に40万円、それに他の一人に10万円の罰金を言い渡した。
「エル金」は、M君に対して次のような書き出しの謝罪文を送付している。【続きはデジタル鹿砦社通信】
日本経済新聞の「押し紙」裁判と今後の課題── 露呈した公権力機関による新聞社保護の実態
2022年7月時点における全国の朝刊発行部数(一般紙)は2755万部(ABC部数)である。このうちの20%が残紙とすれば、551万部が配達されることなく無駄に廃棄されていることになる。30%が残紙とすれば、827万部が廃棄されていることになる。
1日の廃棄量がこの規模であるから、ひと月にすれば、おおよそ1億6530万部から、2億4810万部が廃棄されていることになる。年間に試算すると天文学的な数字になる。「押し紙」は重大な環境問題でもある。
しかし、裁判所も公正取引委員会も、いまだに「押し紙」問題に抜本的なメスを入れようとはしない。新聞社の「押し紙」政策を保護していると言っても過言ではない。新聞社を公権力機関の歯車として取り込むことによりメディアコントロールが可能になるから、「押し紙」を黙認する政策を取っている可能性が高い。
4人のオランダ人ジャーナリストの殺害から40年、元防衛大臣らを逮捕、エルサルバドルで戦争犯罪の検証が始まる
「戦後処理」とは、戦争犯罪の検証と賠償のことである。現在、進行しているNATO-EU対ロシアの戦争は、いずれ戦後処理の傷を残すことになる。戦争が終わる目途は立っていないが、和平が実現した後も憎悪の記憶は延々と続く。
1980年から10年に渡り続いた中米エルサルバドルの内戦の戦後処理をめぐる興味深い動きが浮上している。去る10月13日に、エルサルバドルの裁判所が、内戦時に防衛大臣を務めたギジェルモ・ガルシア将軍と警察のトップだったフランシスコ・アントニオ・モラン大佐に対する逮捕状を交付したのだ。そして翌日、2人を拘束した。
さらに数人の元軍関係者にも逮捕状を交付した。この中には米国に在住する人物も含まれており、エルサルバドル政府は米国に対して身柄の引き渡しを要求するに至った。
大津市民病院の新理事長に滋賀医科大の河内明宏教授、過去の有印公文書偽造事件は不問に、前近代的な人事制度の弊害
赤色に錆び付いた人事制度。人脈社会の腐敗。それを彷彿させる事件が、琵琶湖湖畔の滋賀県大津市で進行している。
大津市の佐藤健司市長は、9月9日、大津市民病院の次期理事長の名前をウェブサイトで公表した。新理事長に任命されるのは、滋賀医科大付属病院の泌尿器科長・河内明宏教授(写真、出典=九州医療新報)である。河内教授の理事長就任は、今年の6月に既に内定していたが、今回、任命予定者として公開されたことで、近々、公式に理事長に就任することが確実になった。任期は、2022年10月1日から25年3月31日である。
デジタル鹿砦社通信でも報じてきたように、河内教授は滋賀医科大病院の小線源治療をめぐる事件に関与した当事者である。はたして公立病院の理事長に座る資質があるのか、事件を知る人々から疑問の声が上がっている。
佐藤市長に対して、新理事長選任のプロセスを公開するように求める情報公開請求も提出されている。
左傾化するラテンアメリカ、1973年の9.11チリ軍事クーデターから49年、新しい国際関係の登場
チリの軍事クーデターから、49年の歳月が過ぎた。1973年の9月11日、米国CIAにけしかけられたピノチェット将軍は、空と陸から大統領官邸に弾丸をあびせ、抗戦するサルバドール・アジェンデ大統領を殺害して軍事政権を打ち立てた。全土にテロが広がり、一夜にしてアジェンデ政権の痕跡は一掃された。
チリのガブリエル・ボリッチ大統領は、11日に行われた記念式典で、半世紀前のこの大事件の意味を語った。
「拘束され、今だに行方が分からない人が1192名いる。それは受け入れがたく、耐えがたく、なかったことにはできない。」
「49年前、サルバドール・アジェンデ大統領とその協力者たちは、忠誠心、実績、さらに尊厳について、歴史的教訓をわれわれに示した」(ベネズエラのTeleSur)
2022年09月05日 (月曜日)
稲盛和夫の「名言」と基地局問題、露呈したKDDIの企業エゴイズム
優れた経営者として名を馳せてきた稲盛和夫氏が、8月24日に亡くなった。ウィキペディアによると、同氏の経歴は次の通りである。
稲盛 和夫(いなもり かずお、1932年〈昭和7年〉1月21日 - 2022年〈令和4年〉8月24日)は、日本の実業家。京セラ・第二電電(現・KDDI)創業者。公益財団法人稲盛財団理事長。「盛和塾」塾長]。日本航空名誉会長。
京セラやKDDIの創業者で、経営に関する著書も多い。ビジネスマンの間で評価が高く、松下幸之助と並んで、経営の神様としてもてはやされていきた。金策に富んだ経済人だった。日本航空のリストラに大鉈を振るったという批判も浴びた。
この人物について書くとき、わたしには許せないことがある。
◇電磁波という新世代の公害
2020年の夏、わたしが住む埼玉県朝霞市の城山公園(市の所有地)に、KDDIが携帯電話の基地局を設置した。土地の賃料は、月額で約360円。無料同然の賃料を納金し、朝霞市でも電話ビジネスを拡大している。だが、基地局が放射するマイクロ波を1日24時間、365日にわたって被曝させられる近隣住民はたまったものではない。モルモット同然だ。立派な迷惑行為である。
わたしは基地局設置の工事に気づき、KDDIの子会社・KDDIエンジニアリングに工事の中止を求めた。欧米では、電磁波による人体影響を考慮して、基地局の設置には一定の制限を設けている。設置された基地局を撤去するように裁判所が判決を下した例もある。
KDDIエンジニアリングは、わたしの要請に応じて、一旦工事を中止した。そして現場から機材を搬出した。さらに現場を木の柵で囲って、立ち入り禁止にした。
その後、わたしは何度かKDDIエンジニアリングの担当者や朝霞市の職員と話し合った。しかし、KDDIエンジニアリングは、結論に達していないのに、一方的に工事を再開して基地局を完成させたのである。朝霞市もそれを黙認した。住民よりも企業に便宜を図ったのである。後日、富岡勝則市長に電磁波に関する公開質問状を送ったが、電磁波問題そのものを分かっていない様子だった。
重なる選挙汚職、懲りない地方議会の面々、町議が選挙人名簿を盗撮しSNSで共有、選挙運動に悪用
神奈川県湯河原町の土屋由希子町議が、隣接する真鶴町の選挙人名簿をタブレット端末で盗撮し、SNSを介して2人の政治仲間と共有(左写真)していた事件を神奈川新聞(8月24日)が報じた。昨年秋から批判の対象になっている選挙人名簿をめぐる汚職が新局面をむかえた。
選挙人名簿とは、投票権を有する住民を登録したリストのことである。選挙権は成人になれば自動的に得ることができるが、投票権を得るためには、居住期間などの必要要件を満たして、選挙人名簿に氏名が登録されなければならない。この登録作業は、選挙管理委員会が選挙の直前に住民基本台帳などを基に実施する。
選挙人名簿はだれでも閲覧権があるが、複写や持ち出しは公職選挙法で禁止されている。選挙管理委員会は、選挙人名簿の悪用を避けるために厳重に管理している。
しかし、土屋議員は、監視の眼をかいくぐって真鶴町の投票権者に関する情報を持ち出したのである。
「不当裁判」認定の高い壁、憲法が提訴権を優先も「禁煙ファシズム」を裏付ける物的証拠の数々、横浜副流煙裁判「反訴」
幸福の科学事件。武富士事件。長野ソーラーパネル設置事件。DHC事件。NHK党事件。わたしの調査に間違いがなければ、これら5件の裁判は、「訴権の濫用」による損害賠償が認められた数少ない判例である。(間違いであれば、指摘してほしい)
「訴権の濫用」とは、不当裁判のことである。スラップという言葉で表現されることも多いが、スラップの厳密な意味は、「公的参加に対する戦略的な訴訟」(Strategic Lawsuit Against Public Participation)」で、俗にいう不当訴訟とは若干ニュアンスが異なる場合もある。
それはともかくとして、日本では不当裁判を裁判所に認定させることはかなり難しい。日本国憲法が、裁判を受ける権利を優先しているからだ。第32条は、「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない」と提訴権を保証している。
2022年06月06日 (月曜日)
朝霞第二小学校の正門前でマイクロ波を測定、欧州評議会の勧告値の74倍、危険領域に、朝霞市は「基地局に関する情報は把握していない」
人命よりも経済を優先する電話会社の方針が露骨になっている。際限なく事業を拡大して、小学校の児童にまで電磁波による健康被害のリスクが及んでいる。
5月29日、わたしは朝霞第二小学校(埼玉県朝霞市)の正門前で、通信基地局から放射されているマイクロ波の測定を実施した。マイクロ波は、携帯電話の通信に使われる電磁波で、人体影響が懸念されている。特に幼児に対する影響が深刻とする見方があり、欧米では学校などで、年少者が携帯電話を使用することに一定の制限を設けている国もある。
そんなこともあって、わたしは自宅近くの朝霞第二小学校でマイクロ波を測定することにした。測定の結果、危険領域に入る数値が測定された。
マイクロ波の値は、μW/c㎡などで表示することになっている。数値が高ければ高いほど人体への影響が懸念される。そのことを念頭に以下、①日本の総務省が定めている規制値、②朝霞第二小学校の正門前の測定値、③欧州評議会の勧告値を紹介しよう。
①総務省の規制値:1000μW/c㎡ (マイクロワット・パー・ 平方センチメートル)
②朝霞第二小学校の測定値:7.35μW/c㎡
③欧州評議会の勧告値:0.1μW/c㎡
※測定に使ったのは、TM195という測定器である。この測定器でカバーできる電磁波の周波数領域は3GHzまでなので、5Gのマイクロ波やミリ波が使われていれば、測定値はさらに高くなる可能性がある。
※通信基地局から発せられる電磁波は、様々な周波数のものが混合されている。変調電磁波と呼ばれ、マイクロ波は言うまでもなく、厳密にいえば、低周波の電磁波も交じっている場合が多い。デジタルで瞬間的に高いエネルギーを放出する。それを延々と繰り返す。【続きはデジタル鹿砦社通信】
2022年05月31日 (火曜日)
楽天モバイル、「障害者」との確認同意書を逆手に通信基地局を増設、問われる企業倫理
新世代公害の代表格といえば、化学物質による汚染と電磁波による汚染である。両者とも汚染が自覚できるとは限らず、透明な牙が知らないうちに人々の体を蝕んでいく。医学的根拠は迷宮の中。電話会社はそれを逆手にとって、「危険という確証はない」との詭弁をかかげて、大規模な電話ビジネスを展開している。NHKなどのマスコミがそれを全面的にサポートする。が、その裏側では、健康被害が広がっている。
東京都目黒区中央町は、中層ビルと民家が広がる都市部の住宅街である。最寄り駅から都心の渋谷まで5分。利便性が高い静かな街である。その街で楽天モバイルの基地局をめぐる係争が起きている。事業拡大に走る楽天と、生活環境を守りたいある女性のトラブルである。
両者の攻防は、わたしの眼には、かつて海外でエコノミック・アニマルと呼ばれた日系企業と現地住民の対立のように映る。外部から侵入してきて、開発と文明化を口実に資源を収奪する「よそ者」と、被害者意識と憎悪を抱く住民の壁である。日本製品に対する不買運動も起きた。
楽天モバイルとと女性の対立にも同じような構図がある。
伊藤香さんは、自宅の一部を改造して「はなちゃんカフェ」を主宰している。「はなちゃんカフェ」とは、化学物質過敏症や電磁波過敏症に悩む人々を救済するための憩いのサロンである。
2017年12月19日、伊藤さんの愛猫、はなちゃんが息を引き取った。化学物質による複合汚染が引き金だった。とりわけ猛毒のイソシアネートがはなちゃんを直撃したようだ。米国では厳しく規制され、日本では野放しになっている化合物である。化学物質過敏症の代表的因子である
町長が自らを刑事告発、第三者委員会が報告書を公表、神奈川県真鶴町の選挙人名簿流出事件
神奈川県真鶴町の松本一彦町長が町職員だった2020年2月、選挙人名簿抄本などを盗み出し、みすからが出馬した町長選で利用した問題を調査していた「選挙人名簿等流出に係る第三者委員会」は、4月28日、「報告書」を公表した。報告書は、松本町長と元職員、それに松本町政が誕生した後に選挙人名簿を受け取った町議らを刑事告発することが相当と結論ずけた。
これを受けて真鶴町は、「関係当事者に対する刑事告発及び損害賠償請求を行います」とする談話を発表した。談話の発信者は、「真鶴町長 松本一彦」となっており、型式上は松本町長が自身を含む関係者に対して刑事告発することになった。起訴される可能性が高い。【続きはデジタル鹿砦社通信】
2022年05月04日 (水曜日)
《書評》マーティン・ブランク著『携帯電話と脳腫瘍の関係』── スマホの通信基地局の近くほど発がん率が高い
現代社会で最も普及している文明の利器は、スマートフォンである。電話会社は、スマートフォンの普及を押し進め、それに連動して通信基地局をアメーバ状に拡大している。総務省も全面的に電話会社の事業を支援し,マスコミは広告主である電話会社に配慮して、電磁波問題の報道を控えている。大学の研究者も、企業や国策をさかなでする電磁波による人体影響を研究テーマに選ぼうとはしない。巨大な相手を敵に回したくないからだ。電磁波問題はタブーなのである。
こうした風潮に逆行するかのように、『携帯電話と脳腫瘍の関係』(マーティン・ブランク、飛鳥新社)は、電磁波による人体影響を容赦なく指摘している。電磁波に関する欧米での研究成果を分かりやすく紹介している。
著者のマーティン・ブランクが最も懸念しているのは、電磁波が原因と推測される癌の増加である。従来、レントゲンのX線や原発のガンマ線は発癌を促す原因として認識されてきたが、それ意外の電磁波は安全とする考えが定説となっていた。たとえば日本の総務省は、この考えに基づいて1990年に、現在の電波防護指針を定めた。それを根拠として電話会社の携帯ビジネスにお墨付きを与えてきたのである。
ところがその後、特に欧米で電磁波の毒性に関する研究が前進し、現在ではエネルギーが高いX線やガンマ線だけではなく、マイクロ波や超低周波電磁波(送電線や家電からもれる電磁波)にもDNAを傷つけて発癌を促すリスクがあることが明らかになってきたのだ。それに伴い、たとえば欧州評議会は、日本の電波防護指針よりも1万倍も厳しい勧告値を設けた。電磁波による人体影響に関する従来の認識を大幅に改めたのである。
たとえば本書では、次のように通信基地局と発癌の関係に警鐘を鳴らしている。
「ブラジルでの研究でも同様の結果が報告されている。そこでがんの累積症例数がもっとも多かったのは、40.78μW/c㎡という高い電力密度の放射に曝露した人々だった。その発がん率は1000人当たり5.38件。より遠方に暮らし、曝露の電力密度が0.04μW/c㎡の人々は、がん発生率がもっと低く、1000当たり2.05人だった。こうした研究は、基地局が携帯電話に関連したリスクの大きな要素であることを示している」【続きはデジタル鹿砦社通信】
石川県中能登町で町長選をめぐる不正疑惑が浮上、候補者が無理心中、真相解明を阻む「100日裁判」の壁
石川県中能登町で行われた町長選をめぐって、選挙管理委員会が絡んだ不正選挙疑惑が浮上している。皮肉なことに「100日裁判」と呼ばれる司法の壁が、事件の真相解明を阻んでいる。そこから、権力構造の歯車としての司法の立ち位置と、形骸化した日本の議会制民主主義の実態が輪郭を現わしてきた。
事件の発端は、2021年3月21日に投開票が行われた町長選である。この町長選で落選した林真弥(前町議)氏は、選挙管理委員会に対して選挙の無効を申し立てたが、選管はこれを棄却した。そこで林前町議は、石川県選挙管理委員会に対して審査を申し立てた。しかし、石川県選挙管理委員会は、それを棄却した。
そこで林前町議は昨年の9月29日に、石川県選挙管理委員会を相手に選挙の無効を求める裁判(名古屋高等裁判所・金沢支部、合議体)を起こしたのである。裁判は現在、林前議員側が忌避(裁判官の交代を求める手続きで、現在は最高裁で継続している)の手続きを行っているために中断している。
このところ地方議会を舞台とした不祥事が相次いでいる。たとえば以前に筆者がとり上げた神奈川県真鶴町の事件である。町長(当時は町職員)が選挙管理委員会の職員と結託して選挙人名簿などの複写を持ち出し、自らの選挙に使用した事件である。現在、住民グループが町長らを横浜地検へ刑事告発している。
◎[参考記事]すでに崩壊か、日本の議会制民主主義? 神奈川県真鶴町で「不正選挙」、松本一彦町長と選挙管理委員会の事務局長が選挙人名簿などを3人の候補者へ提供 http://www.rokusaisha.com/wp/?p=40794
この記事を読んだ石川県中能登町の住民が、同町で起きた事件についての情報を筆者に提供したのである。
◆町長選の候補者が母親と無理心中
疑惑は、昨年の3月21日に投開票が行われた町長選で浮上した。この選挙には当初、尾田良一(前町議)氏、林真弥(前町議)氏、それに廣瀬康雄氏(前副町長)の3名が立候補した。このうち廣瀬氏は、杉本栄蔵前町長の後継者とみられていたらしい。
ところが廣瀬氏は、選挙選がスターとする前に変死を遂げる。【続きはデジタル鹿砦社通信】
2022年03月07日 (月曜日)
5G通信基地局の設置をめぐる電話会社とのトラブルが急増、マンション管理会社が仲介、電磁波による人体影響は欧米では常識に
2月中旬のことである。東京都内に住むわたしの友人Aさんが相談ともぼやきとも受け取れるメールを送付してきた。家族が居住する350世帯ほどの集合住宅の管理組合に対して、マンション管理会社が楽天モバイルの携帯基地局を、同マンションの屋上に設置する計画を打診してきたというのだ。Aさんは、5Gで使われる電磁波による人体影響を懸念している。
わたしは2005年から携帯電話の基地局設置をめぐる電話会社と住民のトラブルを取材してきた。その関係で、わたしのところに住民からの相談が相次いでいる。1年半ほど前から、平均すると月に2、3件の相談が寄せられている。今週も1件。こうした現象の背景に電話会社が、競い合うように通信基地局を設置している事情がある。特に、電話ビジネスへの参入が遅れた楽天に関するトラブル相談が多く、全体の9割を占める。
Aさんは電気工学の専門家である。退職するまで有名大学で教鞭を取っていた。電磁波問題を取材しているわたしが、助言をお願いしている研究者である。電磁波による人体影響の評価がどう海外で変化しているかについてもよく把握されている。
実はAさんが基地局問題に巻き込まれたのは、今回が初めてではない。静岡県のリゾート地に所有している別宅のマンションでも、数年前に同じ体験をした。電話会社が屋上に基地局を設置する計画を持ち掛け、しかも、事前に管理組合の理事らと懇意な関係を築き、強引に基地局を設置したのだ。
Aさんは居住者たちに、電磁波による人体影響を説明しようとしたが、大半の住民が電磁波については全く何も知らず、健康上のリスクを理解してもらえなかったという。
「無知とは恐ろしいものだ」と、呟き、泣き寝入りしたのである。
選挙人名簿流出事件に揺れる神奈川県真鶴町、松本町長ら4人を刑事告発へ、超党派の運動が始まる
何年にも渡って君臨した独裁政権が崩壊した後に選挙を実施する場合、国際監視団が現地入りして、選挙を厳しく監視する体制が敷かれることがある。汚点のない選挙の実現。わたしが知っている先駆け的な例としては、1984年のニカラグアがある。軍事独裁政権が崩壊した後、外国からの選挙監視団やマスコミが続々と乗り込んできて、この中米の小国は、初めて公正な自由選挙を実施したのである。
同じような制度と原理を導入するために、真鶴町の住民らが動きはじめた。住民の橋本勇さんが言う。
「外部の選挙監視団を入れて公正で清潔な選挙を実施できる制度を作る必要があります。その制度を真鶴から全国へ広げたいものです。そのために、汚職に関与した松本町長や選挙管理委員会の書記長など、4人の刑事告発を超党派で検討しています。また、選挙管理委員会も総入れ替えをする必要があります。不正を犯した書記長の残党が残っていますから」
橋本さんは、会社勤務を経て約40年前に真鶴に移り住み、光の海が一望できる岬に旅館とレストランを開業した。その真鶴が一部の人々の手で壊されていくことに心を痛めている。それが住民運動を始めた動機である。
◆広がる選挙管理委員会に対する不信感、選挙監視団制度の導入が不可欠
汚職事件は昨年の秋、ひとりの勇敢な男性の内部告発にはじまる。森敦彦氏。真鶴町の役所に勤務した後、2017年に町議になった。しかし、再選を目指した2021年9月の町議選では落選した。
その後、選挙運動の残務整理をしていると、1通の大きな封筒が出てきた。開けてみると、中に真鶴町の選挙人名簿や住民基本台帳などが入っていた。森さんが言う。
「この封筒は、町の選挙管理委員会の尾森書記長(当時)が届けたものですが、事前に松本一彦町長から、あなたの選挙に活用できる資料を届けさせると連絡を受けていたので、中身は町長が作成した自分の支援者名簿だと思っていました。そのようなものは必要なかったので、わたしは封も切らずにそのまま放置していました。自分の基礎票だけで再選できると思ったのです。選挙が終わってから、封を切ったところ、中から選挙人名簿や住民基本台帳が出てきたのです。わたしはびっくりして、警察に届け出ました」
知人の勧めで、マスコミにも通報した。中央紙はほとんど報じなかったが、地元の神奈川新聞やローカル紙が熱心にこの事件を取り上げた。その結果、松本町長は10月26日に記者会見を開いて、自らの責任を認めた。選挙管理委員会の尾森書記長に選挙人名簿や住民基本台帳などをコピーさせ、外部に持ち出させたことを認め、辞任を表明したのである。また、その後、これらの書面を青木健議員と岩本克美議員(議長)にも配布したことを公表した。
不祥事により政治家が辞任すること自体は特に珍しいことではない。しかし、松本町長は、辞任した後、お詫び回りを続け、町長選がはじまる直前に再出馬を表明した。そして次点候補と88票の僅差で町長選に勝利したのである。この88票も、開票の最終ステージで逆転したものだという。そのために選挙管理委員会に対して再び不信感を募らせる市民もいた。【続きはデジタル鹿砦社通信】