【バックナンバー】再掲載、権力構造に組み込まれた新聞業界、変わらぬ政界との情交関係、新聞人として非常識な1998年の渡邉恒雄氏の言動
【バックナンバー】(2022年06月15日 付け)権力構造に組み込まれた新聞業界、変わらぬ政界との情交関係、新聞人として非常識な1998年の渡邉恒雄氏の言動
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新聞業界と政界の癒着が表立って論じられることはあまりない。わたしは新聞社は、日本の権力構造の一部に組み込まれているという自論を持っている。新聞業界の業界紙『新聞之新聞』のバックナンバーを読んで、改めてそれを確信した。
次に紹介するのは、1998年1月6日付の記事である。タイトルは、「正念場 迎える新聞界」。全国紙3社の社長座談会である。この時期、公正取引委員会は加熱する新聞拡販競争や「押し紙」問題を理由に、新聞再販の撤廃を検討していた。
これに朝日、読売、毎日の社長が抗する構図があった。次に引用するのは、読売の渡邉恒雄社長の発言である。言葉の節々に新聞業界と政界の癒着が露呈している。日本が抱えてきた諸問題にメスが入らない原因と言っても過言ではない。日本にジャーナリズムが存在しない不幸を改めて痛感した。
渡邉氏の発言を読む限り、わたしの自論には根拠がある。以下、記事の引用である。
エスカレートする新聞人による政界工作、何が問題なのか? 「中川先生に恩返しをする機会が近づいております。」
新聞業界の業界紙『新聞情報』(2023年3月8日付け)が、日販協政治連盟(日本新聞販売協会の政治団体)の新理事長に就任した深瀬和雄氏の集会での発言を紹介している。その内容は、同政治連盟が、内閣府や政界との交渉を通じて、業界の利益を誘導する方向で動いていることを示している。図らずも政界・官界と新聞業界の関係を露呈している。
重要部分を引用しておこう。
日販協政治連盟設立の目的は、業界に必要な政治活動の実施だが、平成8(1996)年4月に発足して以来、27年にわたり自民、公明両党の新聞販売懇話会所属の議員を中心に、新聞販売業界との連携強化が図られていることは、ご承知と存じる。また、縦の系統会に対し、業界を横につないだ日本新聞販売協会は、内閣府認定の公共活動を推進している。
一方、本同盟は、行政府に対し再違反制度と特殊指定の重要性周知と、新聞業界にかかわる政策要望が目的だ。最近(のテーマ)は、消費税軽減税率の適用問題だったが、それらを伏せ、国政選挙を応援することが目的なので、全国の会員の声をしっかりと聞き、それを衆参両院議員にお伝えし、国政の場に反映させ、販売店の皆さんが働きやすい経営環境作りにつなげることが、最大の事業理念だと認識を深めた。
新聞に対する消費税の優遇措置や再販制度を堅持するために、政界と親密な関係を構築する方向で活動していることを自ら認めているのである。言葉をかえると新聞業界の経済的な繁栄を政治家の手に委ねているのだ。当然、こうした関係の下で、公権力機関と一線を画した報道ができるのかという致命的な疑問が浮上してくる。
◆「中川先生に恩返しをする機会が近づいております。」
新聞業界から政界へ政治献金598万円、103人の政治家へ「お小遣い」のばら撒き、21年度の政治資金収支報告書で判明
昨年の11月に総務省が公開した2021年度の政治資金収支報告書によると、新聞業界は政界に対して、総額で598万円の政治献金を行った。献金元は、新聞販売店の同業組合である日本新聞販売協会(日販協)の政治連盟である。さすがに日本新聞協会が政治献金を支出するわけにはいかないので、パートナーの日販協が献金元になっているのである。
わたしが知る限り、献金が始まったのは1990年代の初頭である。当時は、元NHKの水野清議員や、元日経新聞の中川秀直議員らに献金していた。
2021年度の献金先は、延べ103人の政治家(政治団体)である。献金先が100件を超えたのは、同年の秋に衆院選が実施されたことが影響している。実際、献金先の政治家の大半は衆院選の候補者だった。
献金先の候補者が所属する政党の大半は自民党だった。公明党の候補と立憲民主党の候補も若干含まれていた。
次に示すのが献金の実態である。(掲載の都合上、2つの表に分割して表示した)
だれが読売の白石元会長をスイス大使に任命したのか?すでに日本の民主主義は崩壊か?読売裁判の公平性にも疑問が
共同通信が興味深い記事を配信している。「白石スイス大使が辞職 元読売新聞グループ本社会長」と題する記事である。(11月25日付け)。読売新聞の社長や会長を務め、日本新聞協会の会長も兼任したことがある白石興二郎氏が「駐スイス兼リヒテンシュタイン大使」辞職することが決定したとする内容である。
そもそもわたしは白石氏が2019年に、「読売新聞グループ本社会長からスイス大使に起用」されたことを知らなかった。安倍晋三内閣の時代である。共同通信の記事を読んで、わたしは改めて読売という企業が公権力機関と特別な関係を持っていることを認識した。
白石氏は外交の専門家でもなんでもない。ジャーナリストの視点から、外交戦略を展開してもらおうという政府の意図があったとも思えない。白石氏にはわたしが知る限り、ジャーナリストとしての国際報道の際立った実績は何もないからだ。
米国のGHQが残した2つの負の遺産、天皇制と新聞社制度、公権力が「押し紙」にメスを入れない理由
「押し紙」問題が社会問題として浮上したのは、1970年代である。80年代の前半には、共産党、公明党、社会党が超党派で、国会を舞台に繰り返し「押し紙」問題を取り上げた。しかし、結局、メスは入らなかった。
今世紀に入って、「押し紙」の存在を認定する司法判断も下されているが、依然として解決するまでには至っていない。日本新聞協会に至っては、現在も「押し紙」の存在そのものを否認している。公正取引委員会や警察による摘発の動きも鈍い。政治家も新聞研究者も「押し紙」問題とのかかわりを避ける傾向がある。
わたしはこうした状況の背景に、新聞社が権力構造の歯車として機能している事情があると考えている。次に紹介するインタビューは、1998年にわたしが成城大学の有山輝雄教授に行ったものである。(『新聞ジャーナリズムの正義を問う』に収録)
有山教授は、現在の新聞制度は、GHQが戦前戦中の新聞制度をそのまま移行したものである旨を述べている。公権力が「押し紙」を放置して、新聞社に便宜を図ってきた背景がかいま見える。
権力構造に組み込まれた新聞業界、変わらぬ政界との情交関係、新聞人として非常識な1998年の渡邉恒雄氏の言動
新聞業界と政界の癒着が表立って論じられることはあまりない。わたしは新聞社は、日本の権力構造の一部に組み込まれているという自論を持っている。新聞業界の業界紙『新聞之新聞』のバックナンバーを読んで、改めてそれを確信した。
次に紹介するのは、1998年1月6日付の記事である。タイトルは、「正念場 迎える新聞界」。全国紙3社の社長座談会である。この時期、公正取引委員会は加熱する新聞拡販競争や「押し紙」問題を理由に、新聞再販の撤廃を検討していた。
これに朝日、読売、毎日の社長が抗する構図があった。次に引用するのは、読売の渡邉恒雄社長の発言である。言葉の節々に新聞業界と政界の癒着が露呈している。日本が抱えてきた諸問題にメスが入らない原因と言っても過言ではない。日本にジャーナリズムが存在しない不幸を改めて痛感した。
渡邉氏の発言を読む限り、わたしの自論には根拠がある。以下、記事の引用である。
2022年01月04日 (火曜日)
読売新聞社と大阪府の包括連携協定、残紙問題が提示する読売グループの実態、読売に「道徳」を語る資格があるのか?
昨年(2021年)の12月27日、読売新聞社と大阪府は記者会見を開いて、両者が包括連携協定に締結したことを発表した。大阪府の発表によると、次の8分野について、大阪府と読売が連携して活動する計画だという。特定のメディアが自治体と一体化して、「情交関係」を結ぶことに対して、記者会見の直後から、批判があがっている。
連携協定の対象になっている活動分野は次の8項目である。
(1)教育・人材育成に関すること
(2)情報発信に関すること
(3)安全・安心に関すること
(4)子ども・福祉に関すること
(5)地域活性化に関すること
(6)産業振興・雇用に関すること
(7)健康に関すること
(8)環境に関すること
(1)から(8)に関して、筆者はそれぞれ問題を孕んでいると考えている。その細目に言及するには、かなり多くの文字数を要するので、ここでは控える。
新聞業界が自民党の清和政策研究会(安倍晋三代表)の議員らへ政治献金、山谷えりこへ40万円、中川雅治へ40万円、菅義偉にも10万円
総務省は11月26日、2020年度分の政治資金収支報告書を公表した。それによると新聞業界が、自民党の清和政策研究会(安倍晋三代表)の議員を中心に146万円の政治献金を行っていることが分かった。
これらの政治献金の支出元は、日本新聞販売協会(日販協)の政治団体である日販協政治連盟である。日販協は新聞協会と連携して、再販制度を維持するロビー活動や新聞に対する軽減税率を適用させる活動の先頭に立ってきた団体である。両者は車の両輪関係にある。政治献金の詳細は次の通りである。(オレンジの背景で表示した議員は、清和政策研究会のメンバーである。)【続きはデジタル鹿砦社通信】
日本新聞協会と文部科学省の親密な関係、売れない新聞を学校の教育現場へ(1)
読者は、NIE(教育の中に新聞を)運動をご存じだろうか?
これは学校教育の中で、新聞を教材として使うことがを推奨する運動である。日本新聞協会が主導して、文部科学省の支援を受け、全国規模で進めている運動だ。新聞ばなれが急激に進む中で、新聞関係者は生き残りをかけてNIEに熱を上げているのである。いわば新聞販売活動でもある。
この運動により日本新聞協会は、2020年度からはじまった新しい学習指導要領に、新聞を学校教育の教材として取り扱う方向性を明文化させることに成功した。
新聞業界から高市早苗議員に対して政治献金、3年間で40万円
新聞関係者から自民党の高市早苗議員に対して、政治献金が提供されていることが判明した。2019年度の政治資金収支報告書によると、全国の新聞販売店で構成されている日販協政治連盟から、20万円の献金が高市氏が支部長を務める自由民主党奈良県第2選挙支部へ行われている。
また、2018年度には、10万円が自由民主党奈良県支部連合に献金されている。自由民主党奈良県支部連合の住所は、奈良県大和郡山市筒井町940-1となっており、高市氏の事務所の住所と一致している。これは献金の受け取り人が高市氏であることを示している。
さらに2017年度にも10万円の献金を受けている。
献金の目的は不明だが、新聞に対する軽減税率適用の継続、再販制度の継続、学習指導要領に新聞の使用を義務付ける方針の継続などである可能性が高い。
新聞業界から政界へ373万円の政治献金、菅義秀首相に10万円、山谷えりこ議員に30万円、消費税の軽減税率適用に対する「謝礼」の疑い
2020年11月に公表された2019年度の政治資金収支報告書で、日本新聞販売協会の政治連盟を通じて、新聞業界から政界へ373万円の政治献金が行われていることが分かった。内訳は、セミナー代として述べ24人に283万円が、寄附金として18人に90万円が割り当てられている。
このうちセミナー代の支払い先は、次の通りである。この中には、菅義秀首相への10万円の献金も含まれている。また、高市早苗議員に対して20万円が、山谷えりこ議員に対して30万円が贈られている。内訳は次の通りである。
2020年06月14日 (日曜日)
2017年度の政治献金が874万円に、新聞業界から政界へ、金で買った新聞に対する軽減税率適用
新聞業界から政界へ政治献金が行われている。献金元は日販協(日本新聞販売協会)の政治連盟である。日販協政治連盟という名称だ。新聞協会から直接、政界へ献金するのは、いくらなんでも問題があるので、昔から献金元は常に日販協政治連盟だった。
献金の見返りは、新聞特殊指定(再販制度とテリトリー制度)の維持と、新聞に対する軽減税率の適用である。学校など教育の現場で新聞を教材として使う方針を盛り込んだ学習指導要領の策定にも、政治献金が一定の役割を果たした可能性がある。
日販協政治連盟が総務省へ提出した2017年度分の政治資金収支報告書を検証してみよう。検証の裏付けとなるのは、次の資料である。
新聞業界から政界へセミナー参加費として309万円の政治献金を支出、軽減税率適用と再販制度の維持政策に対する「謝礼」の可能性
総務省は11月29日に2018年度の政治資金収支報告書を公開した。それによると新聞業界からは、日販協(日本新聞販売協会)の政治団体を介して、総額で309万円の政治献金(名目は議員が主催するセミナーの参加費)が支出された。
しかし、政治活動費の中に「その他の支出」として332万円が支出されているにもかかわらず、その使途の明細は公開されていない。
また、4月6日に東京共済会館の使用量と弁当代として109万円4220円が支出された事実は政治資金収支報告書に記録されているが、「その他の支出」に分類されている232万4543万円の明細は分からない。
全体に中身がわかりにくい報告書となっている。
新聞業界が参院選で自公の26人を推薦していた、世耕弘成、山口那津男ら
新聞業界が参院選で自公の26人を推薦していた、世耕弘成、山口那津男ら
新聞業界の政界工作は、日本新聞販売協会を通じて行われてきたが、先の参院選でも、同協会が自民党候補者13人、公明党候補者13人を推薦していたことが分かった。意外に知られていないが新聞業界による政界工作は、1987年ごろから行われてきた。
当時は、事業税の軽減措置の継続が目的だった。元NHKの水野清氏や元日経新聞の中川秀直氏らが、政界側の窓口になっていた。
その後、再販制度の維持、そして今は、新聞に消費税の軽減税率を適用されることを主要な目的に、政界工作を行っている。
政治献金も送ってきた。参考までに次の記事を紹介しよう。
【参考記事】山本一太議員 新聞業界から3千万円献金、見返りに露骨な業界保護活動
推薦を受けたのは、次の面々。
新聞販売店に選挙候補者のポスター、店主が選挙カーの運転手に、販売現場から内部告発が相次ぐ
渡邉恒雄氏が安倍首相と会食を繰り返している実態に象徴されるように、新聞関係者と政界の癒着は、もはやジャーナリズム企業の資質を問われるほど進んでいる。が、癒着の現象は、新聞発行本社サイドだけではなく、新聞販売の世界にも見られる。それが「内部告発」のかたちで外部へもれるようになった。
販売店の業界団体・日販協(厳密には日販協政治連盟)から、高市早苗議員ら自民党議員に政治献金が行われている問題は繰り返し報じてきたが、選挙運動に販売店が組織的に動員させられているとの告発が、メディア黒書にあった。
2017年度 安倍首相と大手メディアの会食回数が15回に、ジャーナリズムの腐敗が進む、暑気払いと忘年会の疑惑も?
2017年度に安倍首相と会食した新聞人と放送人の一覧を『しんぶん赤旗』(2017年12月31日付け)が報じている。それによると、安倍首相と大手メディア幹部との会食回数は、15回を記録した。会食回数が最も多いのは、読売関係者の8回である。
7月13日と12月26日には、主要メディアの関係者が顔を揃えており、それぞれ暑気払いと忘年会の可能性が高い。これには朝日関係者も参加している。
会食そのものは、取材を兼ねることもあるので、頭から否定するわけにはいかないが、会食による情交関係の深まりが、報道内容や「会社」経営に影響を与えると大問題である。たとえば、安倍首相は、昨年の通常国会の場で、「読売新聞を熟読して」と発言しており、これは両者の度を超えた親密な関係の裏返しと推測される。また、「押し紙」問題が黙認されているのも、同じ事情がありそうだ。
次に示すのが、一覧表である。
「読売新聞をぜひ熟読して」、新聞社が政府の広報部になった背景に絶望的な政界工作、事実を示す生資料を公開!
安倍首相の国会答弁が失笑をかっている。憲法改正の考え問われて、
「読売新聞をぜひ熟読して」
と、答弁したのだ。
政界と新聞業界の関係は古くて新しい。手短に歴史を振り返ってみよう。
次に紹介する資料については、何度か単行本などで内容を紹介したが、生資料をインターネットで公開するのは今回がはじめてだ。
資料のタイトルは、「第四十回 通常総会資料」。1991年7月26日に日販協(日本新聞販売協会)が東京の如水会館で開いた通常総会の資料である。
この中に当時、新聞関係者の政界工作の受け皿になっていた自民党議員の一覧表が出ている。有力な議員が続々と名前を連ねている。小泉、小沢、森、石原・・・・。議員一覧(自民党新聞販売懇話会)は次の通りである。
「番記者」が安倍首相に誕生日プレゼント、安倍内閣との癒着を露呈、Twitterが報じる
左の写真はTwitterやFacebookで紹介されたものである。投稿者によると、安倍晋三首相の誕生日に、番記者たちがプレゼントを贈った場面なのだという。
不思議なことに、若い女性ばかりである。ここに映っているのは、たった5人の記者なので、全社の「安倍番」が、首相にプレゼントを贈ったわけではないようだが、日本の新聞・テレビの実態を考えるうえで、無視できない場面である。
新聞に対する軽減税率の適用問題と安保法制の審議が同時進行している理由
【サマリー】新聞に対する軽減税率の適用問題で、読売の渡辺恒雄氏が政界工作の必要性を語っている。しかし、新聞の本来の役割は、政界工作など公権力を監視することである。新聞人みずからが政界工作の先頭に立っていては話にならない。
こうした状況になっているのは、新聞社の収益構造が国の政策に左右される体質であるからだ。軽減税率問題の他に、「押し紙」問題や再版制度の問題でも、同様の収益構造の問題がある。
安保法制の問題と軽減税率の問題がセットで登場しているのも、背景にメディアコントロールの力学が働いているからにほかならない。
昨年の衆院選で新聞関係者が自民を中心に139人の候補者を推薦していた、新聞に対する軽減税率適用と引き替え
ジャーナリズムの役割を放棄して、情報産業に変質した日本の新聞社の実態を如実に示す2つの事実を紹介しよう。もっとも「情報産業に変質した」といっても、これは昨今に起こった現象ではなく、枝葉末節の新聞肯定論は否定しないとしても、基本的に日本の新聞社は創業以来、公権力と本気で戦ったことはない。特に、ここ数年のデタラメぶりは目にあまるものがある。
まず、最初に紹介する事実は、昨年暮れに行われた衆議院議員選挙で新聞関係者が選挙活動を行ったことである。業界紙の報道によると、日本新聞協会と協同して新聞に対する消費税の軽減税率の適用を求めている日本新聞販売協会(日販協)が、衆院選で139人の候補者を推薦し、このうち131人が当選したという。
支援の対象となった候補者は、業界紙によると、「新聞への軽減税率適用に協力する候補」である。当選した議員の政党別内訳は、自民が102人、公明が19人、民主が9人、無所属が1人である。詳細は次の通りである。
結果として新聞関係者は、安倍政権下で進む新自由主義の再起動と軍事大国化の流れを、後押ししたことになる。安倍政権のサポーターになることで、新聞に対する軽減税率の適用を勝ち取る道を選んだのだ。
改めていうまでもなく、政治献金も支出している。
■参考記事:新聞業界から150人を超える議員へ献金、背景に軽減税率の問題、90年代には「新聞1部につき1円」の献金も
ちなみ新聞関係者は、なぜ、軽減税率適用にこだわりを見せるのだろうか。それは「押し紙」(販売店へ搬入される読者数を超えた新聞で、卸代金の徴収対象になる。「押し紙」は独禁法に違反する。)にも、消費税がかかるからだ。
読者から購読代金が集金できない「押し紙」の消費税を負担すれば、新聞販売店がつぶれて、販売網は崩壊しかねない。本来、「押し紙」政策をやめれば、軽減税率適用は不要だが、新聞社は、公称部数をかさ上げすることで、紙面広告の収入を増やそうとしている。それゆえに「押し紙」政策をやめない。
「1部も『押し紙』はない」と開き直ってきたのである。
第2の事実は、軽減税率に関する密約存在の可能性である。
安倍首相が「共同通信加盟社編集局長会議」に参加、進むマスコミと政府の病理、背景に新聞に対する消費税の軽減税率適用問題など
蛙(かえる)を入れた器に冷水を注ぎ、コンロにかけて緩やかに加熱すると、蛙は水温の上昇を知覚できず、死にいたる。環境に順応すると神経が麻痺して、とんでもない悲劇を招きかねない。
10月24日、共同通信に加盟する新聞社編集局長らが集う「共同通信加盟社編集局長会議」が開かれ、安倍晋三首相が参加した。権力監視の役割を担っている新聞社の編集局長の会議に一国の長が参加するという非常識なことが起きたのである。世界に類なき異常事態である。
共同通信の加盟社は次の通りである。
北海道新聞、道新スポーツ、室蘭民報、東奥日報、デーリー東北、秋田魁新報、山形新聞、岩手日報、河北新報、福島民報、福島民友、下野新聞、茨城新聞、上毛新聞、千葉日報、神奈川新聞、埼玉新聞、日本経済新聞、産経新聞、SANKEI EXPRESS 、夕刊フジ、The Japan Times 、毎日新聞 、スポーツニッポン 、報知新聞 、日刊スポーツ 、サンケイスポーツ 、東京新聞 、東京中日スポーツ 、山梨日日新聞 、信濃毎日新聞 、新潟日報 、静岡新聞 、中日新聞 、中日スポーツ 、中部経済新聞 、伊勢新聞 、岐阜新聞 、北日本新聞 、富山新聞 、北國新聞 、北陸中日新聞 、福井新聞 、日刊県民福井、大阪日日新聞 、京都新聞 、奈良新聞 、神戸新聞 、デイリースポーツ 、山陽新聞 、中國新聞 、日本海新聞 、山陰中央新報 、四國新聞 、愛媛新聞 、徳島新聞 、高知新聞 、西日本新聞 、西日本スポーツ 、大分合同新聞 、宮崎日日新聞 、長崎新聞 、佐賀新聞 、熊本日日新聞 、南日本新聞 、沖縄タイムス 、琉球新報
首相官邸のウエブサイトに掲載された安倍首相のあいさつによると、「皆さんの前でこうやってお話をさせていただくのは3年連続」だという。わたしは安倍首相が3年前から編集会議に参加していた事実は知らなかった。
一国の長が全国の新聞社が共同で開催する編集会に参加した例を、わたしは知らない。軍事政権の国でも、こうしたことはあり得ない。それどころか軍事政権下の新聞社の中には、命がけで戦っているところも少なくない。
安倍首相自身がマスコミの影響力、あるいは世論誘導の道具としてのマスコミの利用価値を十分に自覚していることは、編集会議の場における次の発言でも明らかだ。
本日お集まりの加盟社の皆さんを全部合わせると、発行部数はなんと3000万部であります。日本の全世帯の半分以上が、皆さんの新聞をとっている計算になります。社会への影響力は、凄まじいものがあると思います。
編集会議に参加した首相側も、参加を許可した新聞社側も、まったくジャーナリズムのルールをわきまえていないことになる。
新聞人の感覚は完全に麻痺(まひ)している。30年も40年も報道の仕事に携わってきて、一体、何を学んで来たのだろか?ここにも別の深刻な社会病理がある。
出版物に対する消費税の軽減税率問題、適用は「確実」、既得権がメディアコントロールの道具に
新聞や書籍、それに雑誌などを対象とした消費税の軽減税率の適用問題が山場を迎えている。業界紙の報道によると、日本新聞協会と日本新聞販売(日販協)が協同で、「100万人署名」を展開している。
出版物に対する軽減税率の問題は、MEDIA KOKUSYOで繰り返し報じて来たように、適用される可能性が極めて高い。マスコミは「適用は難しい」という見方をしているが、わたしは99%適用されると考えている。
理由は以下の通りである。
【1】日販協を中心とした政界工作により、既に幅広い国会議員や官僚の支持を取り付けている。たとえば、日販協の政治連盟から、150人を超える議員に政治献金が支出されている。次に示すのは、高市早苗総務大臣に対する政治献金の証拠である。
参考:高市早苗総務大臣への政治献金(2009年度・奈良県選挙管理委員会)
高市氏への政治献金は、ほんの氷山の一角に過ぎない。
新聞発行本社と日販協が一体化した運動を展開、消費税の軽減税率適用問題で、150人を超える政治家に献金も支出
新聞に対する消費税の軽減税率適用をめぐる運動がエスカレートしている。新聞発行本社と、政界に政治献金を行ってきたことで知られる日販協(日本新聞販売協会)が共同歩調を取っている。
業界紙『新聞情報』(6月18日付け)によると、日販協の中部地区本部が17日に名古屋市の朝日会館で開いた「平成26年総会」に、次の新聞発行本社の関係者が出席したという。
毎日新聞、朝日新聞、読売新聞、岐阜新聞。
同紙によると、日販協の志村会長は、軽減税率について次のように述べている。
日販協は新聞協会とも消費税率10%時に軽減税率5%を適用するという旗を降ろしていない。世界にもまれな新聞の戸別配達システムは民主主義のインフラ。その旗を降ろすことはこの正当性、妥当性を損なう恐れがある。
新聞関係者は、「新聞を読む人=知的」とか、「戸別配達制度=民主主義のインフラ」とか、いささか論理が飛躍して失笑を誘いかねない主張を繰り返している。発達心理学の専門家でもない者が、軽々しく「新聞を読む人=知的」などと主観的な発言を繰り返している。
「戸別配達制度=民主主義のインフラ」という理論に至っては、我田引水に描き出した理想のイメージと事実の違いを認識する姿勢が欠落しているとしか言いようがない。少数の新聞社が巨大部数を支配すれば、新聞社の主筆の気分ひとつで世論が誘導される危険性があり、それがエスカレートすると新聞は、国策をPRする道具と化す。ちょうど国民を戦争に駆り立てた戦中の新聞のように。
少数新聞社による読者の独占は、危険極まりない。戦後、GHQはあえて、このような体制を残したのである。
安倍内閣の下でエスカレートする内閣とメディアの癒着 アメとムチの政策の背景に「押し紙」問題の汚点
『しんぶん赤旗』(3月27日付け・電子版)が、安倍内閣が消費増税に反発する世論を抑えるために政府広報に12億6000万円を支出していたことを報じている。
同紙によると、「政府広報はテレビスポット、新聞・雑誌広告、新聞折り込み広告、ラジオCM」のほか、「インターネット上の広告にあたるウェブバナーや駅貼りポスター、コンビニ有線放送CM」など、「あらゆる階層にいきわたるように広報を展開した」という。
政府広報を受注したメディア企業各社に対して12億円6000万円がどのように配分されたかは不明だが、この支出には不適正な要素がある。改めて言うまでもなく、それは新聞の紙面広告の価格が、実態のない部数データに基づいて決められているために、不当に高い広告費を手にした新聞社が存在する可能性である。周知のように紙面広告の価格は、ABC部数(印刷部数)に準じて決められる。
たとえば、次に例として示すのは、代表的な公共広告のひとつである最高裁がスポンサーになった公共広告でみられる支払い配分の実態である。
ABC部数が全国1位の読売がトップで、以下、朝日、毎日、産経の順番になっている。ABC部数の序列も同じである。
新聞業界が新聞に対する軽減税率求め大規模な政界工作、289の地方議会から安倍首相宛の意見書
新聞に対する軽減税率の適用を求めて、日本新聞販売協会(日販協)が、地方議会を巻き込んだ大掛かりな政界工作を進めていることがわかった。地方議会に「新聞への消費税の軽減税率適用を求める意見書」を採択させ、それを安倍首相に送付させているのだ。
地方議員との交渉で使う意見書の例文には、「内閣総理大臣 安倍晋三様」の記述まである。これまでに採択した地方議会は全国で289にのぼった。その一方で安倍首相や高市・自民党政調会長など、160人余の国会議員に対し政治献金を支出。
新聞協会が定めた新聞倫理綱領には、新聞は公正な言論を守るために「あらゆる勢力からの干渉を排するとともに、利用されないよう自戒しなければならない」。メディア対策に余念がない安倍政権のもと、政界との癒着を深めながら公正・中立な報道を貫けるのか。新聞が報道できない、軽減税率問題をめぐる自らの陳情活動の実態を追った。
【写真】読売新聞東京本社の新社屋
「新聞に軽減税率」推進の公明党から、新聞社系印刷会社に14億4千万円――新聞社は“公明新聞・聖教新聞の下請け印刷会社”
なぜ公明党は新聞の消費税軽減税率適用を強く主張するのか――不可解に思う人もいるだろうが、新聞・TVがタブーとする裏事情がある。それは第一に、印刷委託を通じた一体化だ。公明党の政治資金収支報告書(2012年)を調査すると、毎日新聞を筆頭に18の新聞社系印刷工場で「公明新聞」が印刷され、同党から計14億4千万円にのぼる印刷費と包装費が支払われたことが分かった。
創価学会の機関紙「聖教新聞」にも同じ構造があり、もはや新聞社は“公明党・創価学会の下請け印刷会社”に成り下がった。そして第二の事情が、莫大な発行部数を誇る機関紙(公明新聞、聖教新聞)に軽減税率を適用させ自身の負担を免れよう、という企み。新聞社サイドは同年、計220万円を公明党に献金し、政治家個人に対しても、安倍首相や谷垣法相など約160人の議員個人に献金。まさに新聞と政治の癒着で、新聞への軽減税率が実現しようとしている。(2012年に献金を受けた国会議員氏名と金額一覧はPDFダウンロード可)
【Digest】
◇新聞18社が公明新聞を印刷
◇読売、毎日、神戸などが公明党に寄付金
◇政党機関紙も、軽減税率の対象に?
◇谷垣法相らへ20万円の献金
◇寄付金を受けた154人の議員リスト
◇セットで登場した秘密保護と軽減税率問題
新聞業界による軽減税率の要求 その前に「押し紙」、チラシ水増し、裁判多発などの検証を③
「押し紙」回収の際には、人目を避けるために、コンテナ型のトラックも登場している(写真・読売VS新潮の「押し紙」裁判で、新潮社が提出した証拠写真。東京高裁の設楽隆一裁判官は、「押し紙」は1部も存在しないと認定した)。まさに水面下で進行している問題である。
私的なことになるが、わたしは1980年代の大半は海外に在住し、1990年に帰国した。そして最初に日本で遭遇した異様な光景が、景品を多量に使った新聞拡販だった。押し売りとジャーナリズムが結びつかなかった。
景品を提供しなければ売れない新聞では、まったく存在価値がないのではと思った。
次に異常を感じたのが、「押し紙」だった。新聞記者が結束して、内部告発しないことを不思議に感じた。何のためのジャーナリズムなのかと思った。
新聞業界による軽減税率の要求 その前に「押し紙」、チラシ水増し、裁判多発などの検証を②
「押し紙」は1部たりとも存在しないというのが新聞社の一貫した主張である。つまり販売店で過剰になっている新聞は、販売店主が自分で買い取ったものであって、新聞社が押し売りしたものではないという論理である。
裁判所も新聞社の見解を全面的に是認している。
具体的に「押し紙」について、新聞社がどのような主張を展開しているかを紹介しよう。例に引くのは、読売がわたしと新潮社に対して5500万円を請求した「押し紙」裁判の証人尋問である。
読売の宮本友丘副社長(当時・専務)は、代理人である喜田村洋一・自由人権協会代表理事の質問に応えるかたちで、次のように証言している。
新聞業界による軽減税率の要求 その前に「押し紙」、チラシ水増し、裁判多発などの検証を①
3日付け読売新聞がスペインのラホイ首相への単独インタビューを掲載している。その中で読売は、軽減税率についての首相の考えを次のように紹介している。
(略)軽減税率について、「ぜいたく品とパンのようなものは扱いが違ってしかるべきだ」と述べ、生活必需品に軽減税率導入は必要との認識を示した。首相はまた、同国で最低4%の軽減税率を適用している品目の例として、「食料品、本、新聞」を挙げ、「それらが一番重要なものだ」と明言、食料品や知識への課税は慎重にすべきとの考えを明らかにした。
あえて新聞を対象とした軽減税率の話をラホイ首相から引き出して、記事にしているのだ。そこに恣意的なものを感じないだろうか。
周知のように日本新聞協会は、新聞に対する軽減税率導入を主張している。新聞は文化的な商品であるから、他の商品と同一に扱うべきではないとの論理である。
たとえば読売の白石興二郎社長は、今年の6月に新聞協会の会長に就任したさいに、軽減税率の新聞への適用について、「政府や政党関係者だけでなく、広く国民の理解を求めるべく、丁寧に説明する作業を進めたい」と述べている。
わたしは軽減税率の導入そのものには反対しない。消費税率を上げる一方で、法人税を軽減する安倍内閣の方針そのものが完全な誤りだと考えているからだけではなくて、新聞販売店の経営が悪化の一途をたどっているからだ。