2025年08月14日 (木曜日)
新聞社と公共機関の蜜月構造 ― ジャーナリズムの独立性を脅かす「特権と利権」
新聞社や関連会社が公共機関と取引を行うことで、ジャーナリズム本来の役割が損なわれる構図は、これまでも『メディア黒書』が繰り返し指摘してきた。主な構図は以下の通りである。
1. 公共機関による「押し紙」の黙認によって得られる莫大な新聞販売収入
2. 新聞に対する軽減税率の適用
3. 再販制度による価格維持
4. 記者クラブを通じた情報入手の優遇
5. 公共広告の出稿
これらの便宜に加え、新聞社や系列の印刷会社が公共機関から受注する折込媒体の印刷収入も巨額に上る。
2025年08月13日 (水曜日)
参院選選挙公報、首都圏で新聞社系が印刷を独占,神奈川新聞は1億4000万円で落札
7月2o日に投票が行われた参議院選挙の選挙公報について、首都圏の一都三県(東京・神奈川・千葉・埼玉)を対象に印刷業者を調査した結果、いずれの自治体も新聞社系列の印刷会社に発注していたことが判明した。詳細は順次公表予定。
神奈川県では、神奈川新聞社が選挙公報の印刷を担当。入札情報によれば落札額は1億4,460万円(144,647,814円)。
新聞、止まらぬ部数減 読売41万部減、毎日29万部減――最新のABC発表で浮き彫りになった「新聞崩壊」の現実
2025年6月度のABC部数が明らかになった。これは日本ABC協会が公表する最新の新聞発行部数であり、新聞業界の動向を示すひとつの指標である。
この1年間で、中央紙各社はいずれも大幅な減部数となった。最新のABC部数と、前年同月比(▲)は以下の通りである。
読売新聞:5,442,550部(▲413,770部)
朝日新聞:3,234,313部(▲156,690部)
毎日新聞:1,213,572部(▲285,999部)
日経新聞:1,288,439部(▲86,975部)
産経新聞:798,252部(▲51,539部)
佐賀県西日本新聞店押し紙訴訟の裁判官交代について、モラル崩壊の元凶-押し紙-
福岡・佐賀押し紙弁護団 弁護士江上武幸(文責)2025年7月31日
長崎県販売店の地裁裁判官の交代については、2024年12月26日(木)投稿の「西日本新聞福岡地裁敗訴判決のお知らせ」で報告したとおりです。
今回は、佐賀県販売店の押し紙訴訟の担当裁判官の交代について報告いたします。
佐賀県販売店の押し紙訴訟は、令和7年5月20日に原告本人尋問と販売部長の証人尋問が実施され、即日結審し、来る9月9日が判決言渡期日と定められました。
前回の4月15日の期日において日景聡裁判長は「裁判官変更の予定はありません。」と告げました。裁判官の異動は4月1日付で行われますので、日景裁判長がそのようなことを当事者双方の代理人に告げたのは、今の合議体で本件事案の審理を終え判決を作成することを宣言したに等しい出来事でした。
新興政党が台頭する中で、急がれる押し紙問題の解決、モラル崩壊の元凶―押し紙―
福岡・佐賀押し紙弁護団 弁護士 江上武幸(文責)2025年7月28日
衆議院に続き、参議院でも自民・公明の与党両党が過半数を割りました。一方、国民民主党や参政党が大きく議席を伸ばし、これに維新、れいわ新選組、日本保守党などを加えた新興勢力が、今後の政治の行方を大きく左右する存在となりそうです。
今回の選挙では、30年に及ぶ経済の停滞と、それに伴う社会全体の閉塞感に対する、若者世代の強い反発と怒りが背景にあると考えられます。
若者たちは、国民民主党の玉木代表の不倫問題、参政党・神谷氏の偏った女性観、元維新・橋本氏のハニートラップ疑惑など、SNSを賑わせた政治家のスキャンダルには目もくれず、変革への強い衝動に突き動かされているように見えます。財務省解体デモに象徴されるように、政治変革を求めるエネルギーは今後さらに拡大していくでしょう。
参政党が発表した「新日本国憲法構想案」により、この党の思想的傾向が明らかになり、既存メディアも批判的に報じ始めました。
新聞やテレビが新興政党に対し、党首や所属議員の女性問題、金銭スキャンダル、運営上の問題点などを積極的に報道するようになれば、これらの政党は、既存政党とは異なる立場から、新聞の「押し紙問題」を政治問題化し、メディアに対する強力な攻勢を仕掛けてくる可能性があります。
熊本日日新聞や新潟日報など一部の例外を除き、多くの新聞社は、押し紙による収入を前提に経営を続けているのが現状です。押し紙とは、新聞社が販売店に対し、実際に販売されない部数を強制的に仕入れさせる行為であり、これは独占禁止法に違反する不公正な取引方法で、資源の浪費であり、広告主に対する詐欺でもあります。
若者たちは新聞を購読していませんが、Google検索やSNSを通じて、押し紙の存在についてはよく知っています。新聞社がこの問題の存在を認めようとしない姿勢は、大人社会の「二面性」として受け取られ、若者から「正義を語る資格があるのか」と批判される原因になり得ます。
公取委が「押し紙」に関する公文書を黒塗り、情報公開請求で新聞協会との談合疑惑が浮上、迷宮の中、新聞特殊指定を骨抜きにした理由
公正取引委員会は、6月27日付で、筆者に対して行政文書開示決定通知書を送付した。この文書は、筆者が公正取引委員会に申し立てた情報公開請求に対する通知である。これを根拠として筆者は、開示された文書を入手したが、公取委は、解読を困難にするために肝心な分部を黒く塗りつぶしていた。(全文は、文末からダウンロード可)
公正取引委員会に対して筆者が、「押し紙」に関連した文書の情報公開請求を申し立てたのは、今年の4月21日である。請求内容は次の通りだ。
『1997年(平成9年)1月に公正取引委員会が下した(株)北國新聞社に対する「押し紙」の排除勧告の後、1999年(平成11年)8月に公正取引委員会が新聞特殊指定を改訂して、従来の「注文部数」を「注文した部数」に変更(「新聞業における特定の不公正な取引方法」の箇所)するまでの期間に、公取委と新聞公正取引協議会の間で行われた話し合いの全記録。』
請求内容を説明する前に、情報公開請求に至る経緯を説明しておこう。
2025年07月18日 (金曜日)
【YouTube動画】動画で見る参院選・選挙公報の水増し現場、税金の騙し取りもお咎めなし、新聞人は「知らぬ、存ぜぬ」
ユーチューブ動画で紹介したのは、廃棄される前段の参院選・選挙公報である。撮影日は、7月13日の21時。撮影場所は、千葉県流山市のASA(朝日新聞販売店)の前である。撮影者は、大野富雄・元流山市議。税金で制作された選挙公報が大幅に水増しされ、新聞に折り込まれないまま廃棄される前段を記録した動画を撮影した。
参院選の選挙公報は、7月12日に新聞折込のかたちで配布された。その翌日にあたる13日に大野議員はかねてから観察拠点としていた「押し紙」や折込媒体の収集場所を確認した。選挙公報は、12日に新聞に折り込まれたわけだから、本来であれば、13日に大量の選挙公報が積み上げられているはずがない。ところが収集場所には、大量の選挙公報が残っていた。(動画:1分10秒~)。大野元市議は、選挙公報の水増しの決定的な証拠を掴んだのである。
2025年07月17日 (木曜日)
参院選の選挙公報、全国で水増しが起きている可能性、流山市のケースは氷山の一角、背景に新聞社による「押し紙」政策
7月14日付けのメディア黒書で既報したように、新聞に折り込む参院選の選挙公報が、新聞の配達部数を大幅に超えて、新聞販売店に搬入されていることが千葉県流山市で発覚した。過剰になった選挙公報が山積みされている現場を、筆者は確認して、新聞販売店の店長に事実関係を確認した。
実は、流山市では4,5年前から、「押し紙」とそれに連動た折込媒体の水増しが発覚して、地元の市議が市議会で繰り返しこの問題を追及してきた。
たとえば、2021年10月時点での流山市のABC部数(新聞の公称部数)は、36,815部だったが、同市はこの数字をはるかに上回る50,128部の広報紙(流山市発行)を広告代理店に発注していた。その結果、たとえ「押し紙」が1部も存在しないとしても、1万3000部ほど折込媒体が過剰になっていた。これについて市当局は、広告代理店から指示された部数を発注しているだけと回答した。こうした問題は放置された。状況は改善しなかった。
2025年07月14日 (月曜日)
【速報】参院選の公報を水増し、千葉県流山市で発覚、住民が通報、背景に「押し紙」問題
7月20日に投票の参議院議員選挙の選挙公報が、ASA(朝日新聞販売店)で水増しされていることが分かった。筆者は、同市に在住する男性から通報を受け、14日の午後、男性と一緒にASAに急行した。店舗の外側に残紙や包装物(折込チラシの可能性が高い)に交じって、参院選の選挙公報の束が山積みになっていた。
目視できたのは、2包装。その下にも、包装束が積まれており推測で4包装から、5包装の公報が古紙回収の対象になっていた可能性が高い。
西日本新聞押し紙訴訟福岡高裁判決(敗訴)のお知らせ -モラル崩壊の元凶 押し紙-
福岡・佐賀押し紙弁護団 弁護士江上武幸(文責)2025年(令和7年)7月8日(火)
去る7月3日(木)に、長崎県西日本新聞販売店の押し紙訴訟の福岡高裁判決が言い渡されました。地裁判決に続き販売店の敗訴判決でした。(なお、福岡地裁の佐賀県西日本新聞販売店の押し紙訴訟の判決言い渡し期日は、9月9日(火)午後1時10分に指定されています。)
この二つの裁判については折々に投稿させて頂いていますので、今回の高裁判決と併せて御覧ください。
【YouTube配信9】西日本新聞 4月と10月に「押し紙」を増やす変則的な手口
「4・10増減」(よんじゅう・そうげん)と呼ばれる変則的な「押し紙」の手口がある。4月と10月に「押し紙」を増やす販売政策である。なぜ、4月と10月なのか。
結論を先に言えば、4月と10月のABC部数が、折込広告の設定枚数(折込定数)を決めるための有力なデータになるからだ。4月の数値は、6月から11月の折込定数に反映し、10月の数値は、12月から翌年の5月までの折込定数に反映する。新聞社は、それを知っているから「4・10増減」に走るのである。
控訴審判決を前にして モラル崩壊の元凶 -押し紙-
福岡・佐賀押し紙弁護団 江 上 武 幸 (文責)2025(令和7)年7月16日
7月3日(木)午後1時25分の西日本新聞押し紙訴訟福岡高裁判決の言渡期日が迫ってきました。既報のとおり、福岡地裁判決は前年の4月1日に東京高裁・東京地裁・札幌地裁から転勤してきたいわゆる「東京組」と呼ばれる3人の裁判官達による判決でしたので、敗訴判決が出る可能性はある程度予期せざるを得ませんでした。
しかし、この裁判では、西日本新聞社が原告販売店に毎年4月と10月に前月より200部も多い部数を供給し続けていること、その目的は、原告の押し紙の仕入代金の赤字を補填するために折込広告部数算定の基礎となるABC部数を大きくするためであること、つまり、押し紙政策を続けるために西日本新聞社が主導して折込広告料の不正取得(詐欺行為)を行わせていたことが明らかでした。
また、押し紙を行っている新聞社は、西日本新聞社に限らず押し紙の責任を販売店に押し付けるために、販売店の実配数は知らないし知り得ないと主張します。しかしこの点についても、西日本新聞社は販売店の実配数を把握しており、毎月、実売部数を記載した部数表を作成し、外部に知れないように本社で厳重に管理している事実を認めました。
この裁判は販売店が勝訴する条件が充分に揃った裁判でしたので、敗訴判決を聞いた瞬間、東京組の裁判官3名を福岡に派遣した最高裁事務総局の、新聞社の押し紙敗訴判決は出させないという強い意志を感じました。
* 福岡地裁判決の問題点については、5月25日に投稿した「控訴準備書面(全文)」をご覧ください。
福岡高裁の裁判官達が九州モンロー主義が支配した時代にみられた「最高裁なにするものぞ」という気概に満ちた判決をくだしてくれるかどうか、皆様と共に期待しながら待ちたいと思います。
なお、近時、司法試験合格者の裁判官希望者が少なくなっており、若い裁判官の中途退官も増えていると聞いています。外部からはこれらの情報はなかなか知ることはできませんが、幸い、岡口基一元裁判官がフェイスブックで裁判の独立と裁判官の果たすべき役割について積極的に発信しておられますので、それらの様子を伺い知ることができています。
裁判所内部からも岡口元裁判官と同じ危機意識をもった人たちの動きが表面化してくれることを期待しています。
【YouTube】読売新聞社の「押し紙」を認定した真村訴訟、読売代理人として喜田村洋一弁護士も登場
007年12月、読売新聞の「押し紙」を認定した判決が最高裁で確定した。この裁判は、新聞販売店が地位保全を求めて起こしたもので、販売店の残紙が「押し紙」か否かが争われた。裁判所は、残紙を「押し紙」と認定。その後、雑誌による「押し紙」報道が本格化するが、読売は、裁判提起により反撃した。読売裁判には、自由人権協会代表理事の喜田村洋一弁護士が、延々とかかわってきた。喜田村弁護士は、読売に「押し紙」は、一部も存在しないと主張してきた。
新聞特殊指定に関する情報公開期限を延長、公取委が通知
2025年4月21日付けで筆者が公正取引委員会へ申し立てた新聞特殊指定に関する情報公開請求に対して、同委員会は、5月27日付けで「開示決定等の期限の延長について(通知)」と題する文書を筆者宛てに送付した。延長の期間は、開示請求があった日から60日以内である。延長の理由は、「行政文書の精査及び開示の可否の検討に時間を要するため」としている。
通知文書の全文は次の通りである。
【YouTube 配信7】 徹底検証「押し紙」、新聞業界から政界へ政治献金、2021年度は598万円、100名を超える自民党議員へ
2021年度の政治資金収支報告書によると、新聞業界は政界に対して、総額で598万円の政治献金を行った。献金元は、新聞販売店の同業組合である日本新聞販売協会(日販協)の政治連盟である。さすがに日本新聞協会が政治献金を支出するわけにはいかないので、パートナーの日販協が献金元になっている。 政治献金という観点から、新聞業界と政界の関係を検証する。
【YouTube版】レイバーネットTVが「押し紙」問題を特集
レイバーネットTVで「押し紙」問題について黒薮が解説した。出演者は次の通りである。
出演者:黒薮哲哉(フリージャーナリストメディア黒書主宰)
岩本太郎(ライター、週刊金曜日)
中川紗矢子(元毎日新聞記者、イギリス在住/オンライン)
アシスタント:馬場朋子
放送日 2025年5月28日(水)19:30~20:40(70分放送)
西日本新聞佐賀県販売店押し紙訴訟結審のお知らせ、モラル崩壊の元凶―押し紙―
福岡・佐賀押し紙弁護団 江上武幸(文責)2025(令7)年5月22日
福岡地裁の西日本新聞佐賀県販売店の押し紙訴訟は、5月20日に原告本人尋問と販売部長の証人尋問が実施され、9月9日(火)1時10分に判決言渡しと決まりました。一審で敗訴した長崎県販売店の福岡高裁の判決は、既報のとおり、7月3日(木)1時25分に言渡し予定です。
二つの訴訟は、主張と証拠はほぼ同一ですので、担当する裁判官によって、それぞれどのような判断が示されるのか興味が持たれるところです。
なお、佐賀県販売店の原告本人と販売部長の尋問の結果とその評価については、近日中に報告させていただくことにします。
* 追記
長崎販売店の控訴審において、提出済みの書証について説明した準備書面を提出しましたので、興味のある方は御覧ください。なお、個人名は黒塗りしております。
元店主側が控訴準備書面(1)を提出、新聞特殊指定でいう「注文した部数」の定義をめぐる主張、拡大解釈に反論
西日本新聞社に対する「押し紙」裁判(原告:長崎県の元店主)で、元店主の弁護団は、5月12日、控訴準備書面(1)を提出した。第1審は、元店主の敗訴だった。12日に提出された書面は、前半で「押し紙」問題の概要を、おもにこれまで証拠として提出した文献を紹介するかたちで概略し、後半で元店主側の主張を展開している。
【YouTube配信6】徹底検証 産経、読売の「押し紙」、新聞特殊指定の何が問題なのか?
「配信6」では、産経新聞と読売新聞の「押し紙」の実態を紹介する。「押し紙」は1999年の新聞特殊指定の改定を機に急激に増えた。搬入される新聞の
40%が「押し紙」といった例も当たり前になった。
「押し紙」の元凶である1999年の新聞特殊指定の改定について、イラストを使って具体的に説明する。「押し紙」問題の核心に外ならない。この改定は、北國新聞に対する公取委による「押し紙」の排除勧告を受けて、公取委と新聞協会の間で対策を協議した結果行われたものなのだが、なぜか新聞社の「押し紙」政策に加勢する内容になった。
かえって「押し紙」がしやすくなったわけだから、独禁法の主旨や方個性とも整合していない。
28日(水)に「押し紙」問題を考えるインターネット番組を生放送、レイバーネットネットTVが企画
古くて新しい社会問題----「押し紙」問題を検証するインターネットの番組が5月28日、午後7時30分から、生配信される。タイトルは、「新聞『押し紙』のヤミ」。レイバーネットTVが企画した番組で、出演者は次の通りである。
出演者:黒薮哲哉(フリージャーナリスト、「メディア黒書」主宰)
岩本太郎(ライター、週刊金曜日)
中川紗矢子(元毎日新聞記者、イギリス在住/オンライン)
アシスタント:馬場朋子
放送日 2025年5月28日(水)19:30~20:40(70分放送)
・視聴サイト https://www.labornetjp2.org/labornet-tv/216/
(YouTube配信 https://youtube.com/live/mKSHrurEzXs?feature=share)
企画の発端は、レイバーネットTVによると、昨年末に同事務所宛てに「一枚のFAXが届いた」ことである。「送り主は「読売新聞東京本社管内 読売新聞販売店 店主有志一同」。『34店を代表してやむにやまれずお伝えします』の書き出しで、『読売新聞の予備紙(押し紙)率が40%を超えていて、その負担に耐えきれず倒産、破産とともに一家離散などの悲劇が各所で生まれている。事実を知らせ世論喚起をしてほしい』という内容だった」。
番組の詳細については、次のURLを参考にしてほしい。
http://www.labornetjp.org/news/2025/0528kokuti
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西日本新聞押し紙訴訟の福岡高裁判決言渡期日と福岡地裁尋問期日のお知らせ -モラル崩壊の元凶-押し紙-
福岡・佐賀押し紙弁護団 江上武幸(文責) 2025年(令和7年)5月15日
西日本新聞社を相手方とする押し紙裁判は、長崎県の販売店主の一審敗訴判決を受けて福岡高裁に控訴申立をした控訴審裁判と、佐賀県販売店主の地裁の裁判の2件が継続中です。
長崎県の販売店の福岡高裁第1回裁判期日が、15日、午前10時から、チームスと呼ばれるビデオ会議で開催され、双方から提出した書面と証拠の取り調べを行い即日結審して、次回、判決言い渡しとなりました。判決の期日は、7月3日(木)、午後1時25分である。
それから、佐賀県販売店の福岡地裁の裁判は、来週、5月20日(火)午後1時半から、地裁902号法廷で、原告販売店主と被告販売部長の尋問が実施され、その日で、結審予定です。
以上、日程をご報告します。
公取委に対して情報公開請求、新聞社の「押し紙」政策に便宜を図った背景の解明へ、当時の公取委員長がプロ野球コミッショナーに
公正取引委員会に対して、4月21日付けで、送付した情報公開請求の申立書の中味を公開しておこう。この申立書は、1999年に公正取引委員会(公取委)が行った新聞特殊指定の改訂に関する内容である。
公取委と日本新聞協会の間で、「押し紙」対策の考案と策定にあたり、談合が行われた疑惑があり、全容を解明することが情報公開請求の目的である。
発端は、1997年に公取委が石川県の北國新聞社に対して行った「押し紙」の排除勧告である。勧告の際に公取委は、他の新聞社についても、「押し紙」が存在するとの情報を把握していることを根拠として、日本新聞協会に対しても「押し紙」問題を喚起した。
こうした状況の下で、公取委と日本新聞協会は、問題解決に向けて協議を重ね始める。ところが不思議なことに、話し合いの果実として公表された新聞特殊指定の改訂版(1999年)は、旧来のものよりもはるかに「押し紙」が自由にできる内容となっていた。
改訂前の新聞特殊指定の下では、「実配部数+予備紙2%」を超える部数は、原則的に「押し紙」と見なされていたが、改訂後は従来の「押し紙」を「予備紙」と言い換えることで、問題を放置したのである。残紙は、すべて販売店側が購入した「予備紙」と見なすようになったのだ。
その結果、今世紀に入るころから、残紙が爆発的に増えた。いくら残紙があっても、それを「予備紙」と見なすことで、法律の網の目を潜り抜けるようになったのだ。どのような経緯で、従来の「押し紙」を「予備紙」に変更したのかを解明することは不可欠である。
情報公開請求の申立書は次の通りである。
【YouTube】徹底検証「押し紙」の量、北田資料から北國新聞事件まで
【配信5】「押し紙」の量を1970年代にま遡って検証する。1977年に日本新聞販売協会がアンケート調査、1981年に読売新聞の「北田資料」が公に。そして1997年に公正取引委員会が北國新聞社に対して、「押し紙」の排除勧告を行うが、その後、不思議なことが起こる。
【YouTube】徹底検証「押し紙」 廃棄される地方自治体の広報紙
新聞の公称部数を示すABC部数を詳細に解析すると、新聞社の「押し紙」政策の足跡が確認できることがある。そのABC部数に基づいて、折込広告の定数を決める基本原則がある。
しかし、最近ではABC部数をはるかに上回る定数の折込媒体が販売店に搬入されているケースがままある。東京23区のうち、12の区でこのような現象が確認できた。そのデタラメな実態をYouTubeで報告する。
2025年2月度のABC部数、読売は前年同月比で-40万部、毎日新聞は-28万部
2025年2月度のABC部数が明らかになった。前年同月比で、最も減部数が多いのは読売新聞で、-40万部だった。毎日新聞は-28万部、さらに朝日新聞は、-18万部となった。
中央紙の部数内訳は次の通りである。
朝日新聞:328万部(-18万部)
毎日新聞:130万部(-28万部)
読売新聞:560万部(-40万部)
日経新聞:133万部(-7万部)
産経新聞:81万部(-6万部)
「押し紙」をめぐる疑惑の新聞特殊指定「改正」が行われた1999年は、どんな年だったのか?
新聞特殊指定(平成11年公取委告示第9号)の「改正」をめぐる疑惑が浮上している。既報したように、この件は1997年12月に公正取引委員会が、北國新聞社に対して、「押し紙」の排除勧告を行ったことに端を発している。公取委がはじめて新聞業界の「押し紙」にメスを入れたのである。
これを機として日本新聞協会と公取委は、解決策を話し合う。ところが不思議なことに話し合いを重ねた結論として生まれた1999年の改正・新聞特殊指定は、独禁法を骨抜きにして、新聞社がほとんど自由に「押し紙」ができる内容になっていたのである。
当時の公取委員長は根来泰周氏で、日本新聞協会の会長は渡邉恒雄(読売)氏だった。当時、渡邉氏は、「読売1000万部」に執着していた。一方、根来氏は退任後、プロ野球のコミッショナーに就任した。
これら一連の経緯は、この問題を調査した江上武幸弁護士が、次の記事に詳しく書いている。
押し紙(その1)平成11年の新聞特殊指定「改正」の謎-モラル崩壊の元凶 -
【配信2】YouTube 徹底検証「押し紙」、35年ベースで3兆円超の不正収入、メディアコントロールの温床に
メディア黒書のYouTube版【配信2】をリンクする。
今回の配信では、【配信1】の訂正について説明した後、「押し紙」が生む不正金額が35年ベースで3兆円を超えている事実を紹介した。毎日新聞の内部資料「朝刊 発証数の推移」についても検証した。
それによると2002年10月の段階で、販売店への搬入部数は約395万部だった。これに対して発証数は251万部。差異の144万部が「押し紙」という試算が成り立つ。
新聞1部の卸価格が月額1500円と仮定すると、「押し紙」からひと月で21億6000万円の販売収入が発生している計算になる。これを1年に換算すると295億2000万円になる。
このような汚点に公権力機関が着目すれば、新聞紙面への暗黙の介入が可能になる。
押し紙(その1)平成11年の新聞特殊指定「改正」の謎-モラル崩壊の元凶 -
福岡・佐賀押し紙弁護団 弁護士 江上武幸(文責)2025年(令和7年)4月15日
(年号は、西暦と和暦をランダムに用いることをあらかじめお断りしておきます。)
・新聞倫理綱領(2000(平成12)年6月21日制定)
「編集、制作、広告、販売などすべての新聞人は、自らを厳しく律し、品格を重んじなければならない。」・「新聞は、公共の利害を害することのないよう、十分配慮しなければならない。」・「販売にあたっては節度と良識をもってひとびとと接すべきである。」
・新聞販売綱領(2001(平成13)年6月20日制定)
「新聞販売に携わるすべての人々は、言論・表現の自由を守るために、それぞれの経営の独立に寄与する責任を負っている。販売活動においては、自らを厳しき律し、ルールを順守して節度と責任ある競争の中で、読者の信頼と理解を得るよう努める。」
日本の新聞は明治・大正・昭和と軍国主義日本の台頭と歩調を一にして発展してきました。戦前、1000社を超えた新聞社は、戦争に向けて国論を統一するために50数社に整理統合され、戦時中は大本営発表を垂れ流す軍の広報紙に成り下がりました。戦後は、多くの若者を戦地に送り出して無駄死にさせた責任をとることもなく、新聞経営者らは、一転して占領軍の手先となって、鬼畜米英の対象だったアメリカを美化する役割を引き受けました。
讀賣新聞の正力松太郎氏や朝日新聞の緒方竹虎氏らがCIAのスパイ、あるいは協力者となったことは戦後日本の歴史的事実です。戦前の戦意高揚の記事の氾濫の中、戦地に送られて亡くなっていった若者達や、銃後に家族を残したまま最前線で餓死状態で死んでいった壮年兵達、あるいは内地で空襲や原爆でなくなっていった人達、沖縄で断崖から飛び降りていった人達など、多くの戦争の犠牲者の方達の無念の思いはどこに行ったのでしょか。
ウクライナやイスラエルのガザでは今でも戦争が続いており、数え切れないほどの尊い命が失われています。せっかくこの世に生を受けてきた幼い子供たちも大勢殺されています。21世紀に生きる私達は、宇宙から地球を見ることができる神の目を持ちえた最初の人類です。地球が広大な漆黒の闇に浮かぶチリほどの存在にすぎないことを知っています。同時にこの地球を滅ぼすことが出来る大量の核兵器を製造し貯蔵していること、原子力発電所を多数稼働させていること、それらがいったん暴走を始めたら誰のもとめることが出来ないことを知っています。
ネット上で巨石文明の写真をみると、人類は滅亡と誕生を繰り返してきたとの説もあながち嘘とは思えません。祖父母の世代は日清・日露戦争、父母の世代は太平洋戦争を経験しています。私たちの世代だけが戦争のない平和な時代を過ごせていいのだろうかという思いを抱えてきました。人生は長くてせいぜい7~80年程度です。残された時の間に私達の世代も同じ体験することになっても不思議ではありません。
しかし、高齢の私はともかく、次世代の子供や孫達の時代に戦争を体験することにならないようにしなければなりません。戦争の準備が着々と進んでいるかのように見えてきており、人間の愚かさをしみじみと感じるようになりました。
戦後民主主義教育を受けた世代で、新聞・テレビ等のマスメディアに対しては漠然とした信頼感がありました。まさか嘘はつかないだろうと思ってきました。しかし、ひょんなことから押し紙問題に首を突っ込むようになり新聞業界の闇を覗いたことから、はたして新聞・テレビが果たしている役割とはなんだろうという疑問と不安を覚えるようになりました。戦前と同じ過ちを新聞・テレビのマスメディアが繰り返す心配はないか。せめて、日本は戦争をせず、他国の戦争にも巻き込まれない、平和な国であって欲しいものです。
アメリカ並みの軍産官界複合体のもとマスコミを動員して戦争熱を掻き立てたるようになれば、その行き着く先は第二次世界大戦以上に恐ろしい光景しか見えてきません。幸い、今のところネット上でも公然と戦争熱をあおる番組には出会っていませんが、鬱積した失われた30年に対する若者の怒りが爆発したとき、そのエネルギーがどこに向かうのか心配です。
統一教会の霊感商法による被害額は35年間で1237億円、「押し紙」による不正金額は3兆2620億円、公権力が新聞社を保護する理由
東京地裁は25日、統一教会に対して解散を命じた。このカルト集団が不正に集めた資金は、全国霊感商法対策弁護士連絡会によると、35年間で1237億円になる。しかし、それをもってして日本の司法制度が正常に機能しているとまでは言えない。と、いうのもおそらくは最高裁事務総局の指示で意図的に、介入を避けている事件が他にもあるからだ。
その代表格が「押し紙」問題である。霊感商法による1237億円に対して、「押し紙」が生む不正資金は、筆者の試算によると35年換算で3兆2620億円になる。「押し紙」商法は、その規模と悪質性では、統一教会のカルト商法と比較にならない。
32兆6200万円の裏付けについては、『新聞と公権力の暗部』(鹿砦社)に詳しいが、概要は次の通りである。2021年度の全国の朝刊発行部数は約2590万部だった。このうちの20%にあたる518万部が「押し紙」と仮定する。また、新聞1部の卸代金を月額1500円と仮定する。「押し紙」による販売収入は、次の計算式で導きだせる。
518万部×1500円×12カ月=年間932億円
霊感商法による35年間の被害額と比較するために、「押し紙」の不正金額・年間932億円を35倍すると、3.2兆6200万円になる。
ただし、「押し紙」20%の仮定は控え目に設定した数字である。最近の「押し紙」裁判では、多いケースになると40%から50%が「押し紙」になっている。また、新聞の卸価格1500円も過少に見積もっている。さらに「押し紙」によるABC部数のかさ上げにより、上昇する紙面広告の価格は考慮していない。
【書評】喜田村洋一の『報道しないメディア』、著者の思想の整合性に疑問
『報道しないメディア』(喜田村洋一著、岩波書店)は、英国BBCが点火したジャニー喜多川による性加害問題の背景を探った論考である。著者の喜田村氏は、弁護士で自由人権協会の代表理事の座にある。メディア問題への洞察が深く、出版関係者や大学の研究者からありがたがられる存在だ。
その喜田村弁護士が著した本書は、ジャニーズ問題がほとんど報じられなかった背景に、報道すれば返り血を浴びる構図があったと結論づけている。喜田村氏は、ジャニーズ問題を報じてきたマスコミが『週刊文春』と『週刊現代』の2媒体だけであった事実を指摘した上で、次のように述べている。
ジャニー喜多川氏の性加害だけでなく、マスメディアにジャニーズ事務所の気に入らない記事が掲載されたりすれば、ジャニーズ事務所は、当該メディアを出入り差し止めにしたり、そのメディアの発行会社の雑誌全部にジャニーズ事務所の所属タレントを出演させなかったり、さらにはそのメディアの上層部に直接不満を言いつけるということをやっていた。
報道に踏み切ることで、不利益を被る構図が存在したという説である。改めて言うまでもなく、そのような構図を構築したのは、報道対象であるジャニーズ事務所の側である。