2人の元裁判官に尋ねてみた――「報告事件(ペテン裁判)は本当に存在するのか」
「報告事件」と呼ばれるペテン裁判は、果たして実在するのだろうか。そうした疑問を胸に、7月24日、東京・千代田区の連合会館で開かれたシンポジウムに参加した。この企画は、『司法が原発を止める』(旬報社)の出版に合わせて行われたものである。
「報告事件」とは、最高裁事務総局が裁判の行方を水面下でコントロールする仕組みを指す。たとえば、公権力にとって不都合なテーマが裁判の争点となった場合、最高裁事務総局は当該裁判所の書記官に審理内容を報告させる。そして、国家の意に沿わない判決が下される可能性が浮上すると、人事異動を口実に裁判官を交代させ、判決を誘導するというのだ。こうした「報告事件」の噂は、かねてから裁判所関係者の間で絶えない。
この日の登壇者は、現在は弁護士として活動する井戸謙一氏と、同じく元裁判官で原発訴訟を支援している樋口英明氏。聞き手はジャーナリストの後藤秀典氏と、反原発運動家の武藤類子氏であり、司会は本書の企画・編集を担った鹿野健一氏が務めた。
シンポジウム後半の質疑応答で、私は挙手して次のように質問した。
日本新聞協会と「押し紙」を放置する公正取引委員会の密約疑惑、1999年の謎
日本新聞協会と公正取引委員会の「押し紙」をめぐる密約疑惑をレポートした記事の転載である。出典は、『紙の爆弾』(6月7日号)。
裁判所は、弱者にとって「駆け込み寺」なのだろうか。こんな自問を誘う判決が、「押し紙」裁判で続いている。「押し紙」裁判とは、新聞社が販売店に対して課している新聞の仕入れ部数のノルマが独禁法の新聞特殊指定に違反するとして、販売店が損害賠償を求める裁判である。今世紀に入るころから急増したが、わたしが把握している限りでは、販売店が勝訴したケースは2件しかない。しかも、この2件は、政界に対する影響力が弱い地方紙を被告とした裁判である。朝日・読売・毎日・産経・日経の中央紙を被告とした裁判では、ことごとく新聞社が勝訴している。
「あなたがたが、わたしどもを訴えても絶対に勝てないですよ」
新聞社の担当員から、面と向かって釘を刺された販売店主もいる。が、それにもかかわらず「押し紙」裁判は絶えない。その背景に、販売店主たちが裁判官を水戸黄門と勘違いしている事情がある。しかし、裁判所は弱者を救済するための存在ではない。権力構造の維持を合法化するための機関にほかならない。
◆ブラックリストの野村武範・裁判官が大阪地裁へ
去る4月20日の朝、わたしは新幹線で東京から大阪へ向かった。元販売店主の濱中勇志さんが読売新聞大阪本社に対して、約1億2400万円の支払いを求めた裁判の判決がこの日の午後に予定されていたからだ。濱中さんの販売店では、搬入される新聞の約五〇%が、俗にいう「押し紙」になっていた。
金竜介弁護士らが金銭請求している5億8,000万円に道理はあるのか? 892人を被告とする損害賠償裁判、弁護士大量懲戒請求事件、東京地裁も困惑か?
3月初旬、わたしは2人の弁護士が起こした損害賠償訴訟で、被告にされたAさん(男性)を取材した。この訴訟の背景には、一時期、メディアがクローズアップした一連の弁護士大量懲戒請求事件がある。現在では報道は消えてしまったが、しかし、水面下で事件は形を変えて続いている。
被告・Aさんによると、自らが被告にされた裁判では、被告の人数が892人にもなるという。Aさんは、その中の1人である。
この裁判を起こしたのは、金竜介弁護士(写真:出典=出典=台東協同法律事務所HP)と金哲敏弁護士の2名である。2人の原告の代理人は高橋済弁護士である。訴状は、2021年4月21日に東京地裁で受理された。
請求額は約5億8,000万円である。まもなく提訴から1年になるが、未だに口頭弁論が開かれていない。わたしが3月に東京地裁に問いあわせたところ、担当書記官は、「何もお答えできることはありません」とあいまいな返事をした。Aさんも、自分の答弁書を提出したが、その後、裁判所からの連絡はない。他の被告がどのような対応をしているのかも、知りようがない。
わたしは東京地裁で裁判資料の閲覧を求めたが、これも認められなかった。理由はわからない。
◆大量懲戒請求への道
事件の発端は、インターネット上のサイト「余命三年時事日記」に特定の弁護士に対して懲戒請求を働きかける記事が掲載されたことである。同ウエイブサイトからは懲戒請求のために準備した書式がダウンロードできたという。その書式に自分の住所や名前などを記入して、「まとめ人」に送付すると、集団による大量懲戒請求の段取りが整う。
高橋弁護士が作成した訴状によると、「少なくとも平成29年(2017年)11までに」は懲戒請求を働きかける記事が掲載されていたという。懲戒請求の理由は、次のとおりである。訴状から引用する。
情報公開請求の不透明な実態、最高裁事務総局が裁判官人事に関する書類の開示を拒否
情報公開制度が形骸化している。開示請求を受けた公的団体が、自分たちにとって不都合な情報は開示しない、あるいはたとえ開示しても、肝心な部分は黒塗りで公開することが半ば当たり前になってきた。
情報の透明化を求める世論が広がる一方で、情報を密室に閉じ込めてしまおうとする力も強まっている。その具体的な実態を最高裁事務総局に対する情報公開請求を例に紹介しよう。
◆「報告事件」とは何か?
2021年11月29日、筆者は最高裁事務総局から1通の通知書を受け取った。それは、筆者が同事務総局に対して開示を求めていた裁判官人事に関する文書類を開示しない決定通知だった。
今年の3月22日、筆者は次の文言の情報公開請求を申し立てた。
「裁判官の人事に関する文書の全タイトル。期間は、2018年4月から2021年2月。」
この情報公開請求の目的は、最高裁事務総局による「報告事件」についての調査である。「報告事件」というのは、最高裁事務総局が下級裁判所に対して審理内容の報告を求め、国策などにかかわる判決が下る可能性が浮上すると、担当裁判官を交代させることで、判決の方向性をコントロールする裁判を意味する。元裁判官らが、この種の制度が存在すると話しており、筆者は、その信ぴょう性を確認するために「報告事件」の調査を始めたのである。【続きはデジタル鹿砦社通信】
最高裁長官を退任後に宮内庁参与へ、竹崎博允・元長官ら、「勤務実態」は闇の中、最高裁に関する2つの情報公開調査のレポート
石棺のような窓のない建築物。出入口に配備された警備員。
外界とは厚い壁で隔てられ、通信手段は郵便だけに限定され、メールもファックスも通じない。
最高裁判所には不可解なグレーゾーンがある。その中で何が進行しているのか──。
今年に入って、わたしは最高裁の実態を調べるための一歩を踏み出した。情報公開制度を利用して、複数の「役所」から最高裁に関連する情報を入手した。
最高裁事務総局による「報告事件」の存在が判明、対象は国が被告か原告の裁判
「報告事件」の存在を示す文書を最高裁事務総局が保管していることが判明した。
「報告事件」というのは、最高裁が下級裁判所(高裁、地裁、家裁など)に対して、審理の情況を報告させる事件のことである。それにより、国策の方向性と異なる判決が下される可能性が浮上すると、最高裁事務総局が人事権を発動して、裁判官を交代させ、国策と整合した判決を導き出す事件とされている。
しかし、その制度の詳しい実態は分かっていなかった。「報告事件」は、単なる噂なのか、それとも客観的に実在する制度なのかは、闇の中だった。
最高裁事務総局による報告事件の調査、情報公開請求に対して3回目の開示延長通知
今年の3月22日付けで最高裁事務総局に対して請求した情報公開請求で、9月27日、わたしは3回目の開示延長通知を受けた。この情報公開請求は、一部の元判事らが証言している「報告事件」の有無を調査することが目的だ。
「報告事件」とは、権力構造(省庁、大企業、マスコミなど)の崩壊にかかわるような事件で、現体制にとってダメージとなる判決の方向性が浮上すると、最高裁事務総局が判決の方向性を変えるために、裁判官を交代させる策略のことである。下級裁判所の書記官から、この種の裁判の審理情況を報告させて対策を打つことから、「報告事件」と呼ばれている。軍事裁判と同様に司法国家の恥部とされている。
今回、請求している情報公開の内容は次の通りである。
最高裁事務総局、情報開示の通知期限を大幅に延長、司法の暗部「報告事件」の調査
昨年の秋ごろから、最高裁事務総局による報告事件の調査をしている。報告事件とは、最高裁事務総局が、裁判官人事をコントロールすることで、判決の方向性を決める事件のことである。国策にかかわる事件が、報告事件に指定されてることが多いと聞く。
たとえば次のような実態は、今年の1月に報告した。。
【参考記事】 産経「押し紙」裁判にみる野村武範裁判長の不自然な履歴と人事異動、東京高裁にわずか40日
もちろんどの裁判が報告事件に指定されているかのは、誰も知りようがない。従って取材も困難を極める。しかし、調査を開始しなければ、永遠に真相は解明できない。裁判の訴状と判決を垂れ流すだけが司法ジャーナリズムではない
中京大・大内裕和教授とジャーナリスト・三宅勝久氏の記述盗用をめぐる係争、中京大は取材拒否
JBpress が大学教授による記述盗用疑惑を報じている。タイトルは、前編が「まさかあなたが――『弱者の味方』有名教授 にパクリ疑惑発覚」、後編が「教授の『盗用疑惑』にも中京大学は『調査不要』でスルーの構え」である。
盗用被害を訴えているのは、ジャーナリストの三宅勝久氏である。一方、「パクリ疑惑」の舞台に立たされたのは中京大学国際教養学部の大内裕和教授である。マスコミでも活躍している著名人である。
JBpressの記事によると、問題となっているのは、大内教授の著書『奨学金が日本を滅ぼす』(朝日新書)である。三宅氏が執筆した『日本の奨学金はこれでいいのか!』(共著、あけび書房)と類似した記述が、大内氏の『奨学金が日本を滅ぼす』の中に複数件あるという。たとえば、次の比較表で具体例が確認できる。
「報告事件」についての調査、最高裁事務総局に対する2件の情報公開請求、回答を3カ月延期
筆者は4月22日、最高裁事務総局から2件の通知を受け取った。「通知期限の延長について」と題する文書で、筆者が3月22日付けで行った情報公開請求に応じるか、それとも拒否するかの回答期限を3カ月程度先送りするという内容である。
筆者は今年に入ってから、俗にいう「報告事件」を調査している。「報告事件」とは、下級裁判所が審理している事件のうち、審理の進捗を最高裁事務総局に報告するように指定した事件のことである。
野村武範判事の東京高裁での謎の40日、最高裁事務総局が情報公開請求を拒否、透明性に疑惑がある事務局運営の実態
今年の1月19日付けで筆者が、最高裁事務総局に対して申し立てた2件の情報公開請求を拒否する通知が到着した。通知の交付日は、3月24日である。情報公開請求の内容と通知内容は、次の通りである。
《請求A》
1、開示しないこととした司法行政文書の名称等
野村武範判事が東京高裁に在任中(令和2年4月1日から令和2年5月10日)に、担当した事件の原告、被告、事件の名称、事件番号が特定できる全文書
2、開示しないこととした理由
1の文章は、作成又は取得していない。
《請求B》
1、開示しないこととした司法行政文書の名称等
野村武範判事が令和2年5月11日に東京地裁に着任した後に担当した事件の原告、被告、事件の名称、事件番号が特定できる全文書
2、開示しないこととした理由
1の文章は、作成又は取得していない。
【参考記事】最高裁事務総局に対して3件の情報公開請求、産経新聞「押し紙」事件の野村武範裁判長の職務に関する疑問、東京高裁在任が40日の謎