【投稿】読売新聞は何を恐れているのか 、―判決文の閲覧制限申立に関して―
執筆者:江上武幸(弁護士)
既報のとおり、読売新聞大阪本社と西部本社は、一審で全面勝訴判決を受けたにもかかわらず、判決文の閲覧制限の申立を行いました。読売が閲覧制限を求めたのは、原告販売店の購読部数や供給部数が記載された個所です。
当事者以外の第三者、例えば、新聞や週刊誌の記者、フリーのジャーナリスト、大学の学者・研究者等が、押し紙問題を調査報道し、研究発表するために判決の閲覧謄写を請求しても、肝腎の部数については黒塗りした判決文しか入手できないことになります。もちろん、全面開示を求める訴えをする道は残されていますが、そのためには多大な労力と時間と経費を費やす覚悟が求められます。
国民にかわって憲法上の知る権利を行使する使命を担う新聞社が、自社を当事者とする裁判の判決について閲覧制限を求めるという身勝手な姿勢を示したことは、厳しく非難されるべきです。
押し紙問題はインターネット上ではすでに公知の事実となっており、何ら隠しだてするところはありません。
2023年07月05日 (水曜日)
多発する携帯電話の基地局設置をめぐるトラブル、楽天モバイル、人命よりもビジネス優先
携帯電話の基地局設置をめぐる電話会社と住民のトラブルが絶えない。この1年間で、わたしは40~50件の相談を受けている。今月に入ってからも2件の相談を受けた。両方とも、問題を起こしている電話会社は楽天モバイルである。相談者はいずれも、知らないうちに基地局が設置されていたと訴えている。
宮城県丸森町のケースでは、町が所有する土地に楽天が基地局を設置した。工事中はシートで工事現場が覆われていたので、その内側で工事が行われていることには気づかなかったという。筆者は、工事を請け負った業者に事情を聞くために何度も電話したが、一度も応答することはなかった。
わたしに情報を提供した町民によると、地方都市に特有の閉鎖的な空気があり、町役場の方針に反旗を翻しにくいという。町会議員に相談するようにアドバイスした。裁判所に調停を申し立てる方法があることも伝えておいた。
◆東京都大田区のケース
『人権と利権』の「差別本」認定事件、Colabo代表・仁藤夢乃氏と週刊金曜日・植村隆社長に質問状を送付、具体的にどの箇所を問題視したのか?❷
社団法人Colabo代表・仁藤夢乃氏が『週刊金曜日』に接触して、同誌が掲載した『人権と利権』の書籍広告に対して、「差別」を助長する本と認めさせ、株式会社・週刊金曜日が謝罪告知を行った事件の続報である。連載❶で述べたように、この広告スペースには、わたしの新刊書『新聞と公権力の暗部』の広告も掲載されていた。これら2冊の版元はいずれも鹿砦社である。当然、「押し紙」を告発したわたしの本のイメージダウンも招いてしまった。
そのことが主要な理由ではないが、わたしはこの問題を調査することにした。言論の自由、あるいは寛容性を考える上で看過できない問題を孕んでいるからだ。純粋なジャーナリズムの旗をかかげた週刊金曜日が特定の書物に対して、十分な調査をしないまま、仁藤氏からの外圧により特定の出版物に「差別本」のレッテルを張った事実は考察に値する。
2023年07月03日 (月曜日)
集合住宅で多発する携帯電話基地局の設置をめぐるトラブル、対策のノウハウ、事前に管理会社に申し入れを
携帯電話基地局の設置をめぐるトラブルが絶えない。わたしのところへ相談が殺到している。電磁波による人体影響についての知識が住民の間に浸透してきた反映であるから、ある意味では歓迎すべき事態である。とはいえ相談者にしてみれば、基地局問題は深刻なテーマであるから、理想的には、問題が起こる前段で対策を取るのが望ましい。本稿は、そのためのノウハウである。
よくある相談のひとつに、「住宅を留守にしている間に基地局が設置されていた」という苦情がある。具体的にどのような状況なのだろうか。
Aさんは、集合住宅の最上階に住んでいる。長期の海外出張から自宅に戻ると自分のマンションの真上に基地局が立っていた。それに気づいたのは、深夜、ブーンという唸るような振動音で眠りを妨げられたことである。屋上に何か機械でも放置されているのではないかと思い、翌日、管理人に尋ねてみると、基地局が立ったと知らされた。
実際、マンションの外から、自分の部屋を見上げてみると、真上に巨大なアンテナが立っていた。深夜に眠りを妨げた音は、基地局が発する低周波音だった。
※低周波音は、感知の度合いに個人差があり、聞こえる人も聞こえない人もいる。
風車による公害も、原因は同じ低周波音である。
通常、集合住宅(分譲マンション)に基地局を設置する場合、マンションの管理組が総会を開いて4分の3の議決を得なければならない。ところが、住民の大半は総会に参加する代わりに、管理組合の理事長に委任状を託す。その理事長は、電磁波についてはまったく知らない場合が多い。しかも、電話会社やマンション管理会社から接待を受けていることが多い。その結果、基地局の設置を承諾してしまう。
Aさんは、自宅に住めなくなり、自宅を売却しようとしたが、買い手がみつからない。結局、自宅を放置して、賃貸住宅へ引っ越さざるを得なくなったのだ。電話会社と管理会社に抗議したが、「総務省の規制値を守っているので問題ない」とはねつけられてしまった。その規制値は、たとえば欧州評議会に比べて1万倍もゆるいのだが。
このような事例が実際に何件も起きている。
次に紹介するのは、トラブルを回避するために、ある男性が自分が住むマンション管理会社に充てて事前に送った申入書である。ひな型として使えるので、多少修正したものを掲載する。著作権を放棄しているので、自由に使える。
2023年07月01日 (土曜日)
『人権と利権』の書籍広告をめぐる『週刊金曜日』植村社長の謝罪、市民運動に忖度してジャーナリズムを放棄❶
『週刊金曜日』(6月30日付け)に、同社の植村隆編集長の名前で「おわび」と題する告知が掲載された。森奈津子編著の『人権と利権』(鹿砦社)の書籍広告を同誌に掲載したことに対する謝罪の弁である。告知によると、この本は「『Colabo問題、LGBT問題について提起する』としておりますが、その内容は当社の広告掲載基準(内規)で、『掲載できない』としている『差別、プライバシーの侵害など基本的人権を侵害するおそれのあるもの』に該当するものと考えられます」と述べた上で、「Colaboの仁藤夢乃代表やLGBT関係者の皆様の人権を傷付け、その尊厳を否定する結果となってしまいました」と謝意を表明している。
実はこの件に関して、わたしには無関心ではいられない事情がある。と、いうのも『人権と利権』と並列するかたちで、わたしの新刊書『新聞と公権力の暗部』(鹿砦社)の広告が掲載されていたからだ。厳密に言えば、鹿砦社が発行する『紙の爆弾』と『季節』の広告もセットになって、『週刊金曜日』の裏表紙に掲載されたのだ。
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