博報堂による「過去データ」の流用問題検証(続編)、画像が示す「流用」の事実
博報堂による「過去データ」の流用問題検証の続編である。前編は、30日付けのメディア黒書に掲載している。
メディア黒書が検証しているは、通販のアスカコーポレーション(本社・福岡市)が博報堂に制作させていた情報誌である。詳細は、後述するとして、読者は、以下に掲載した画像を注意深く観察してほしい。
それぞれ11月号(2011年)と12月号(2011年)の情報誌のページを比較したものである。左が11月号、右が12月号である。
両者の違いを発見するには、そうとう注意を払わなくてはならない。つまり全部とはいわないまでも、ほとんどのデータが11月号から「流用」されているのだ。
もちろん前号のデータを「流用」することを前提とした契約を結んでいたのであれば、問題はない。ところが見積書の内容はそうはなっていない。情報誌の全ページで「新規」あるいは「リライト・リデザイン」の約束になっている。
「新規」の定義は、改めて言うまでもなく、過去データの「流用」は一切行わずに、まったく新しい内容に仕上げることである。また、「リライト・リデザイン」は、少なくとも50%のデータを変更しなければならない。
以下、実際の画像である。ここに表示したものは、ほんの数例である。
博報堂による「過去データ」流用問題、編集の実態、アスカ側は情報誌のページ制作費だけで7億円の過剰請求を主張
電通のオリンピック「賄賂」の疑惑や、博報堂による過去データの流用問題など、大手広告代理店の業務の実態が輪郭を現してきた。
既に述べたように、博報堂と通販のアスカコーポレーション(本社・福岡市)の間で、請求額を巡る大規模な係争が勃発している。昨年、博報堂がアスカに対して約6億1000万円の未払い金を請求する裁判を起こしたのに対して、アスカも今月になって、博報堂に対して約15億3000万円の過剰請求費の返済を求める裁判を起こした。
■参考記事:博報堂に対して約15億3000万円の不当利得返還請求、通販のアスカコーポレーションが提訴
本稿では、アスカが起こした裁判で、同社が指摘している情報誌制作に見る過去データの流用問題を検証してみよう。もちろん、以下に紹介するのはアスカ側のデータに基づいた記述である。しかし、筆者が検証した限りでは、信憑性が高い。後に紹介するように、画像の証拠はごまかせない。
なお、博報堂の広報部に対してもたびたび取材を申し入れているが、係争中を理由に拒否している。
博報堂に対して約15億3000万円の不当利得返還請求、通販のアスカコーポレーションが提訴
広告代理店大手の博報堂から過剰な請求を受けていたとして、通販のアスカコーポレーション(本社・福岡市)が、5月20日、同社を相手に約15億3000万円の支払いを求める訴訟を福岡地裁へ提起した。
訴状によるとアスカは、2006年ごろから2015年3月ごろまで、博報堂に情報誌の制作やホームページの更新、さらにコマーシャルを含む通信販売番組の制作と放送などの業務を依頼していた。ところが博報堂側が実際には行っていない作業などの費用を請求していたという。
五輪委の竹田恆和会長が東京都へ約27億円の補助金を請求していた、オリンピック招致問題で電通が関与している可能性を海外紙が報道
2020招致計画委員会の竹田恆和委員長が、「平成23年9月1日」から「平成25年4月1日」までの間に、計7回、東京都に対して、総額27億円の補助金を要求していたことが分かった。
この問題に言及する前に、海外紙が報じているオリンピック招致を巡る「賄賂」疑惑の概要を説明しておこう。
最高裁から電通へ8億600万円、裁判員制度のPRで、表面化する大手広告代理店による「ぼったくり」と「偽装」
最高裁から電通に約8億600万円の金銭が、裁判員制度の企画費用として支払われていたことが、会計検査院の資料で判明した。支出の時期は、2005年から、2007年。裁判員制度のPRが盛んに行われていた時期である。
電通への支出の中には、入場者にサクラを使っていたことが発覚した「裁判員制度タウンミーティング」に関する出費約3億4000万円も含まれている。
この企画には地方紙も絡んでおり、改めて電通と地方紙の関係が確認できる。
■参考記事:電通の役員に福山正喜・共同通信社長と西澤豊・時事通信社長、博報堂の役員に松田昇・元最高検察庁刑事部長、2015年6月提出の有価証券報告書で判明
最高裁から電通に対する約8億600万円の支払いを裏付ける資料は次の通りである。
電通の役員に福山正喜・共同通信社長と西澤豊・時事通信社長、博報堂の役員に松田昇・元最高検察庁刑事部長、2015年6月提出の有価証券報告書で判明
企業の役員構成をみると、その企業の体質や方向性が見えてくる。とりわけ外部から役員に加わった人物は、なんらかの戦略上の方針に則して選ばれている可能性がある。
かつて公正取引委員会の委員長を務めた根来泰周氏が電通に再就職(広義の天下り)していたが、電通が根来氏を受け入れた背景には、電通による広告業界の寡占に公取委のメスを入れさせない戦略があった可能性が高い。
■参考記事:機能不全の公取委 歴代委員長が電通はじめ「寡占企業」に堂々と天下り
筆者の手元に電通と博報堂の有価証券報告書(2015年6月提出分)がある。その中に役員に関する記述がある。両社の役員人事の中で、特に気になる箇所を指摘してみよう。
※ただし、電通に関しては、2015年11月に公表の新人事が筆者の手元にある。
参考資料:電通人事
東北博報堂が岩手県の複合施設でアルバイトを使って入館者数を水増し、同県大槌町の記録誌制作では他誌からパクリ
このところ新聞の実配部数の水増し問題(「押し紙」)が再浮上して崖っぷちへ追い込まれている新聞業界だが、同じメディア業界で大手広告代理店による不正行為も次々と明るみに出ている。
岩手県盛岡市にある県の複合施設「アイーナ」の総括責任者を務めていた東北博報堂の男性社員が、入館者数を水増しして県に報告していたことが分かった。情報提供した住民によると、今年の3月22日に、NHKのローカル局がこの事件を報じた。
幸いインターネット上にニュースが残っていたので、「アイーナ」に内容を確認したところ、「HNKが報じたとおりです」と答えた。
入館者数を水増した手口は、「アルバイトのスタッフら数人が入館者数をカウントしている3階の出入り口を往復」して、カウント数を増やす幼稚な手口だった。
NHKニュースの全文は次の通りである。
写真で見る博報堂によるデータの流用(パクリ)① メディア黒書が内部資料を入手
大手広告代理店による業務の実態を示す資料を紹介しよう。
博報堂と通販のアスカコーペレーションの係争を取材する中で、メディア黒書は、アスカコーペレーションから内部資料を入手した。アスカが毎月発行している通販情報誌の制作費、制作内容などに関する資料である。
博報堂はアスカのPR活動を独占的に請け負っていた。しかし、請求内容に疑義が生じて係争になった。昨年、博報堂がアスカに未払金を請求する訴訟を起こしたのに続いて、アスカも近々に博報堂に損害賠償を請求する大型の訴訟を起こす。
取材に応じたアスカから入手した資料を精査したところ、2つの注目すべき問題が浮上した。過去テータの流用(俗にいうパクリ問題)が観察できるのだ。
『ZAITEN』が博報堂によるパクリ(過去記事の転用)を報道、不可解な見積書の実態
1日に発売の『ZAITEN』(財界展望社)に、「博報堂ベンチャー社長を喰った広告マンの『不適切請求書』」(黒薮が執筆)と題するルポが掲載された。不可解な点が多々みうけられる博報堂の請求書の中身を検証したもので、今回、被害者として例を引いたのは、通販のアスカコーポレーション(本部は福岡市)。
博報堂は、アスカコーポレーションの宣伝活動を独占的に請け負っていた。業務内容は、CMから新聞広告、それに情報誌の制作まで多岐に渡っていた。
まず、筆者が奇妙に思ったのは、博報堂が見積書を発行していた時期である。普通の商取引では、企画を提案する段階で見積書を取引先の会社へ提示する。その内容を見て、企画を実行に移すかどうかを決める。
黒塗りで公開された朝日広告の公共広告、制作費だけで6000万円は妥当なのか?
メディア業界の「闇」の領域-外部からではなかなか見えない謎のひとつが大手広告代理店による広告関連業務から発生する費用の見積もりの実体である。彼らは何を基準として、広告制作費などの価格を設定しているのだろうか。
たとえばわたしの手元に(株)朝日広告が最高裁に対して送付した請求書の写しがある。業務の名目は、「裁判員制度広報のメディアミックス企画及び実施業務」である。これはわたしが情報公開制度を利用して入手したものである。
裁判員制度をPRすることを目的とした広告制作に関する請求だ。
総額は6億8663万7400円(2008年4月のデータ)。