2018年07月03日 (火曜日)

7月1日に投票が行われたメキシコ大統領選で、初めての左派大統領が誕生した。 アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(国民再生運動)が、圧勝して、2018年12月から左派政権が誕生することになった。

メキシコで左派大統領誕生へ 対立候補が敗北宣言

ラテンアメリカでは、今世紀に入るころから、次々と左派政権が誕生してきたが、このところ右派が再度勢力を挽回する兆しが見えていた。メキシコは北の大国・アメリカ合衆国と国境を接しており、左派政権の誕生は、反米色が濃いラテンアメリカ全体に大きな影響を及ぼしそうだ。

ただ、筆者はアンドレス・マヌエル・ロペスオブラドール氏の経歴をほとんど知らない。したがって現時点での評価は避けるが、メキシコの国柄については、詳しい。

筆者がはじめてメキシコへ行ったのは、1984年である。それから1994年までの間、述べ日数にして3年ぐらいメキシコに滞在した。当時は、PRI(制度的革命党)の保守政権だったが、言論の自由も保障されていた。そのためか社会運動が活発で、亡命者に対しても極めて寛大だった。

かつてのラテンアメリカは、軍事政権の国が多く、それに伴い迫害された人々が、同じスペイン語圏のメキシコへ亡命するケースも多かった。

1984年の滞在は、スペイン語の習得が目的だった。メキシコ市からバスで1時間ほどの所に位置しているクエルナバカ市にある語学学校へ通っていた。授業が終わる14時ごろになると、エルサルバドルからの難民がミニコミ紙を持参してやってくることがよくあった。自分たちの国での人権侵害の実態を、外国人に訴えることが目的だった。

スペイン語学校もこうした活動に協力していた。

軍事政権下のグアテマラやチリから亡命してきた人々にもあった。メキシコはラテンアメリカでは、亡命者には寛容なのだ。

1989年は、スタートしたばかりのホンダ技研の工場で通訳として働いた。在職中に、工員のストライキが発生した。ストライキの首謀者を捜す際にも、当然、通訳するのだが、その時のメモを自宅へ持ち帰り、文章に起こす作業を続けた。在職中に大量の記録を取った。この記録が、拙著『バイクに乗ったコロンブス』(現代企画室)である。

単行本にまとめるのに時間を要し、1994年に『朝日ジャーナル』の別冊に掲載(原題は、「説教ゲーム」)された。そのときは、メキシコ日産の工場通訳をしていたのだが、ホンダ技研のルポ掲載が発覚して解雇された。しかし、日産の記録はほとんどない。

当時のメキシコは人件費が安く、日系企業が次々と工場進出を始めていた。筆者は、メキシコで働きながら、断続的に中米紛争(ニカラグア、エルサルバドル)を取材していたのだが、これら2つの地域を見ることで、多国籍企業と海外派兵の構図がはっきりと見えるようになった。

当時、中米には、米国のレーガン政権が軍事的な介入を強めていた。理由は単純で、多国籍企業(特にドール社などの果実会社)の権益を守るためである。左派政権の誕生を阻止しなければ、多国籍企業の権益が侵されるからだ。海外派兵の本質は、日本の場合も同じだ。国際貢献というのは口実で、多国籍企業の権益を守るために、派兵が行われているのだ。

メキシコでも、中米紛争に関する関心は高かった。大きな公園に行くと、中米紛争の実態を知らせる出版物などが、露店で販売されていた。一応価格は設定されているが、運動目的の販売なので、割引が当たり前になっていた。

メキシコには数多くの多国籍企業が進出している。特に米国との国境沿いには、大きな工場地帯がある。今後、左派政権が多国籍企業に対してどのような政策を採り、米国や日本がどう反応するのか目が離せない。北米自由貿易協定(NAFTA)の扱いも大きな注目の的だ。

繰り返しになるが、他のラテンアメリカ諸国への影響も注視する必要があるだろう。

【写真】 アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール氏(出典:Prensa Latina)

2018年07月02日 (月曜日)

メディア黒書でたびたび取りあげてきた東京オリンピック・パラリンピックの選手村建設予定地(中央区晴海5丁目)が、地価の約10分の1、約1200億円の値引きで大手ディベロッパーに廉売された事件を、大手新聞がほとんど報じない決定的な理由が明らかになった。

【参考記事】東京都内にこんなに安い土地はない、東京オリ・パラの選手村建設用地、元東京都職員が三井や住友へ続々と天下り

報じない理由は、オリンピックの歓迎ムードに水を差したくないといった心理から来る自粛の問題ではない。もっと決定的な理由がある。

それは、新聞社が自らオリンピックのスポンサーになっているからである。スポンサー企業のリストを調べたところ、朝日、読売、毎日、日経の4社が、「東京2020オリンピックオフィシャルパートナー」になっていることが判明した。

これではオリンピックに関連した問題を取りあげることはほぼ不可能だ。ジャーナリズム企業がオリンピックのスポンサーになるという常識では考えられないことが、現実に起こっているのである。日本の新聞人は、ここまで堕ちたのである。

ちなみに東京都から土地を地価の10分の1で譲り受けたデベロッパーの関連会社の名前もスポンサーのリストにある。次に示すのがスポンサー一覧である。

■スポンサー一覧

◇民間へ丸投げの商業オリンピック

オリンピックは、ロサンゼルス大会から、民間主導の商業オリンピックになった。そのためにスポンサーを募る。スポンサーになると、オリンピック関連のロゴやエンブレムを使用する権利を得る。スポンサーになっていない企業が、勝手にオリンピックに便乗した宣伝活動をすることは禁止されている。

スポンサーの種類は、契約金などの金額の違いにより、次の4段階がある。

①ワールドワイドオリンピックパートナー
②東京2020オリンピックゴールドパートナー
③東京2020オリンピックオフィシャルパートナー
④東京2020オリンピックオフィシャルサポーター

①の場合、年間契約額は25~30億円。国際規模で宣伝活動を展開することが出来る。ちなみに25~30億円という額は、大企業にとってはほとんど負担にならない。たとえば、トヨタ自動車の年間の広告宣伝費は4487億円(2016年4月~2017年3月)だから、全体の0.5%にも満たない。
「投資」が少ない割には、大きな宣伝効果が期待できるのだ。

②③④は、年間契約額は安くなるが、活動範囲も国内に限定されるなど、権利行使の範囲も限定される。

2018年06月30日 (土曜日)

今世紀に深刻化が予想されている公害のひとつが電磁波である。携帯電話、スマートメーター、自動運転車、リニア新幹線、兵器・・・あらゆるところで電磁波利用が進んでいるが、その高い健康リスクは報じられない。マスコミの広告主である産業界の権益に著しく反するからだ。その結果、大半の人は何も知らないまま、毎日、大量の電磁波を被曝している。

問題は、5年先、10年先、あるいは15年先。危険性を知った時には、癌になっている、といった悲劇と向き合うはめに。

次のバックナンバーは2017年12月18日 に掲載した。

【バックナンバー】自動運転の開発に隠された大問題、使用されるセンサーが道路沿線の住民に、電磁波による健康被害を誘発するリスク」は

 

近い将来に車の自動運転が実現するのではないかと言われている。早ければ、2020年ごろに、遅くても2025年ごろには、ロボットが自家用車を「運転」して、人間を目的地へ運ぶ時代が実現するのではないかと言われている。マスコミも盛んに、自動運転を賞賛し、あたかもテクノロジーがもたらす生活の快適化のような報道を展開している。

が、自動運転に伴い予測される「公害」には全く言及しない。「公害」とは、自動運転車のセンサーから発せられる電磁波による人体影響である。とりわけ幹線道路の沿線住民は、原因を自覚しないまま、深刻な健康被害を受ける可能性が高い。

◇自動運転とセンサー

自動運転と電磁波の関係で特に問題になるのは、「センサー」である。これは、言うまでもなく、自動運転車が障害物などを感知するための道具である。たとえば車の数十メートル前を人が横切るのをセンサーが感知すると、ブレーキが反応して速度を落とすという風に。

センサーの仕組みについての説明は、ネット上に溢れている。簡潔なものを紹介しておこう。

自動運転システムを支える技術の1つとして外せないのが、「センサー」です。自動運転車の開発に力を入れいているテスラモーターズ(以下テスラ)では、オートパイロットを搭載した車を開発していますが、車体には10個以上ものセンサーが内蔵。「カメラビュー」「レーダー」「超音波センサー」など様々なセンサーが機能し、オートパイロットのシステムを支えています。 出典
「センサー」に使われるのが電磁波である。しかも一種類ではない。さまざまな電磁波が使われるようだ。代表的なものとしては、赤外線とミリ波がある。

自動運転車から赤外線やミリ波を発することで、自動運転車が走行している付近の状況を、人間の視覚に劣らないレベルで感知するのだ。

電磁波が人体に悪影響を与える事実は、1980年ごろから徐々に明らかになり、今日ではほぼそのリスクを疑う余地がなくなっている。電磁波は、人体に有害と考えるのが、世界の研究者の間では、すでに定説となっている。

昔は原発のガンマ線やレントゲンのX線などエネルギーが極めて高いものは危険だが、家電などエネルギーが低いものは安全とされていたのだが、今日では、長期間にわたって被曝した場合、エネルギーが低い電磁波(放射線)にも人体影響があるとする解釈が主流になっている。とりわけ遺伝子毒性、つまりDNAを傷つけ、癌や奇形の誘因することが問題視されているのだ。

◇赤外線とミリ波

赤外線は暖房として日常生活の中で当たり前に使われているが、長期に渡って被曝した場合、網膜を傷つけ、白内障の原因になると言われている。

「ミリ波」とはマイクロ波の中でも高い周波数(30GHz以上)を示す電磁波のことである。波長が短く、極めて危険だ。遺伝子毒性がある。

ちなみにマイクロ波とは、電子レンジやスマホに使われる電磁波の総称で、IARC(国際癌研究機関)は、2011年に発癌性の可能性があることを認定した。

マイクロ波の人体影響については、メディア黒書でもたびたび取りあげてきたので、次の記事を参考にしてほしい。

マイクロ波による人体影響、ブラジルの疫学調査で顕著に

日本人の3%~5・7%が電磁波過敏症、早稲田大学応用脳科学研究所「生活環境と健康研究会」が公表 
◇日本の異常な規制値

日本の総務省が定めたマイクロ波の規制値は次の通りである、。

日本の基準:1000 μW/c㎡ (1.8GHz)

これに対して世界の著名な研究者たちでまとめたバイオ・イニシアティブ報告(2012年)では、次のような数値を推奨している。

バイオ・イニシアティブ報告:0.003~0.0006μW/c㎡ (1.8GHz)

「 μW/c㎡」という専門用語にこだわらず、数値の違いに注目してほしい。日本の数値はまったく規制値になっていないことが分かる。

しかし、不思議なことに、携帯電話基地局の周辺で電磁波の密度を測定してみると、筆者の体験では、1 μW/c㎡を超えたことはほとんどない。つまり1 μW/c㎡でも、十分に会話は可能なのだ。0.01 μW/c㎡でも通信はできる。それにもかかわらず日本政府は、1000 μW/c㎡ という馬鹿げた数値を改めようとしない。なぜだろうか?

◇軍事兵器開発と規制値

私の推測になるが、車の自動運転や将来の軍事兵器開発で、マイクロ波を利用する場合、 バイオ・イニシアティブ報告が推奨している数値(0.003~0.0006μW/c㎡ )を規制値としたのでは、開発が不可能だからではないか。国民の健康よりも、産業界を優先しているのだ。まさに「エコノミック・アニマル」の論理である。

近い将来、幹線道路の沿線に住んでいる住民の間に、相対的に癌の発症率が高いといった状況が生まれるのではないか。が、だれもその原因を指摘しないだろう。

マスコミは、この問題を大々的に取り上げるべきだろう。公害で人的な被害が発生た後では、もう手遅れなのだ。ジャーナリズムは、近未来を予測しなければならない。

 

2018年06月29日 (金曜日)

言論の自由がじわじわと包囲されてきた。水面下で、言論活動の統制が始まっている。これに関する6つの事実を紹介しよう。

①李信恵裁判

大阪高裁は28日、フリーライターの李信恵氏が、「保守速報」を訴えた裁判の控訴審判決を言い渡した。大阪高裁は1審を支持して被告に200万円の支払いを命じた。

これによりネット上の言論が、今後、著しく制限される可能性がさらに高まった。出版界全体の深刻な問題である。

インターネット上の投稿をまとめたサイト「保守速報」の差別的な表現で精神的苦痛を受けたとして、在日朝鮮人のフリーライター李信恵さん(46)が運営者の男性に2200万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、大阪高裁(江口とし子裁判長)は28日、男性に200万円の支払いを命じた一審大阪地裁判決を支持し、双方の控訴を棄却した。■出典

②関大・宇城教授による広告はがし事件

メディア黒書で既報したように、関西大学の宇城輝人教授が筆者(黒薮)に対して、「保守速報」が張っていた「押し紙」をやめさせるキャンペーンの「バナー」(NO残紙キャンペーン)を引き揚げるように、メールで申し入れてきた。宇城氏は、「バナー」を広告と勘違いしていたのである。

「押し紙」をやめさせる運動は、思想信条の違いを超えて展開している「シングルイシュー」である。事実、左派系から右派系の人まで、幅広い人々が参加している。「保守速報」も協力者である。

宇城氏とは別の人物(その大半は匿名)からも、筆者に対して次々と同じ要請がきた。この事実は、カウンター関係者が、「保守速報」に出稿していた広告主に対して個別に、広告の引き揚げを要請した可能性を示唆する。つまり広告主が必ずしも自主的に広告を引き揚げたとは限らないのだ。「外圧」があった可能性を示唆する。この点を、多くのメディアは正確に報じていない。

【参考記事】関西大学の宇城輝人教授らが、黒薮に対して『保守速報』が張った「NO残紙キャンペーン」のバナー撤去を要求
 

③差別を理由に書籍18冊が出荷中止に

アニメ化が決まっていたライトノベル「二度目の人生を異世界で」の原作者が、中国や韓国に対する差別的な発言をしたとして、出版元のホビージャパンは6日、これまでに刊行された計18巻を出荷停止にすることを決めた。アニメの公式サイトも、放送及び制作の中止を発表した。■出典

④新宿区がデモを規制

東京新聞(6月28日)によると、「騒音などへの苦情を理由に、東京都新宿区が、区立公園の使用基準を見直し、デモの出発地にできる区立公園を現在の四カ所から一カ所に減らすことを決めた。区は『要望に迅速に対応した』と説明するが、開かれた議論のないまま区長と職員だけで決定したことに、反発が広がっている」という。■出典

新宿区が規制に乗りだした背景には、ヘイトスピーチを伴ったデモが原因らしい。ヘイトスピーチに対して、カウンター側も応戦するので、「近所迷惑」になるということだ。両者に原因があるのだ。

⑤カウンターグループが右派の集会を妨害

6月3日に川崎市で予定されていた瀬戸弘幸(右派系の論客)氏の講演会がカウンターグループの抗議で中止に追い込まれた。この様子を神奈川新聞は次のように報じている。

ヘイトデモの現場でレイシストと対峙(たいじ)してきたカウンターの怒声を合図に、地域住民や市内外から集まった市民、市民運動のメンバーが一人一人を取り囲んでいく。民族虐殺をうたい、在日コリアン集住地区の桜本の街を標的にした「日本浄化デモ」をはじめ、市内外で行われてきたヘイトデモの常連参加者。県警が別の入り口に誘導しようとしたが、体を横たえるシット・インで行く手をふさいだ。1時間半にわたった非暴力の直接行動。警察官に促され引き返していったレイシストは十数人に上った。■出典

【参考記事】川崎市でヘイトスピーチがらみの言論妨害事件、カウンターグループが物理的に右派の集会開催を妨害

⑥名誉毀損裁判の多発

このところ名誉毀損裁判が多発している。これに関しては、わざわさ例を引くまでもなく、スラップが大問題になってる事実をあげれば十分だろう。筆者も、読売新聞社から、1年半の間に3件の裁判を起こされたことがある。請求額は総額で約8000万円だった。

名誉毀損の刑事事件も、いまや特に珍しくない。ウエブサイト「弁護士ドットコム」は、刑事告訴の相談ページまで開設するありさまだ。次のサイトである。

 ■「名誉毀損 刑事訴訟」の法律相談

◇みずから言論の幅を制限する愚

「1」から「6」の事実から見えてくるのは、表現者の側がみずから言論の自由を葬り去るための墓穴を掘っている実態である。

李信恵氏は、「保守速報」に対してだけではなく、あちこで裁判を起こしてきた。差別されたという悔しさは理解できる。裁判を提起する権利もある。しかし、李信恵氏はジャーナリストである。なぜ、自分のペンで戦わないのだろうか。他の表現者が判決の影響を受け、言論を制限されかねないのだ。

言論には何の制限も設けないのが本当の言論の自由だ。そのために対抗言論があるのだ。言論で反論すればいいだけの話ではないか。表現の評価により世論が形成され、社会秩序は維持されるはずだ。

また、李信恵氏の弁護団は、自分達の行動が、言論の抑圧を狙っている公権力に逆手に取られていることを認識していないのだろうか。法律解釈だけの世界に閉じこもり、取り返しのつかない愚策に走っているのではないか。

2018年06月27日 (水曜日)

新聞ばなれに歯止めがかからない。日本新聞協会のデータによると、2000年の一般紙の発行部数は、4740万部だった。これが2017年には、3876万部にまで落ち込んでいる。864万部の減部数だ。

しかも、新聞協会のデータには、「押し紙」が含まれているから、それを差し引くと実際に新聞を読んでいる人の数は、さらに少なくなる。

朝刊と夕刊のセット版の発行部数に至っては、もっと顕著に凋落ぶりが観察できる。2000年には1818万部だったが、2017年には970万部に減った。夕刊を廃止した新聞社が多いことがその主要な原因である。夕刊はメディアとしての価値がほとんどないから、読まないのである。

◇生存するメディア、滅びるメディア

若い世代の大半は、パソコンやスマホで必要な情報を得ている。紙の媒体とは疎遠というのが実態のようだ。そうなると新聞の次は、週刊誌が消える可能性が極めて高い。現にそういう話は筆者の耳にも入ってくる。

月刊誌については、ある程度は生き残る可能性が高いと筆者は予測している。ムックのようなかたちで生存するのではないか。長編の調査報道が掲載されるからだ。長い文章をパソコンやスマホを読むのは、若い人々にとっても苦痛だ。ブルーライトで眼が障害を受けるリスクも高い。

出版ジャーナリズムは完全に生き残るだろう。文字数が多いので、パソコン・スマホには適さない。それに何よりも新聞や週刊誌とは比較にならないほど、ジャーナリズムの質が高いからだ。

結局、将来のメディアは、パソコン・スマホを中心としたインターネットと書籍に二分化される可能性が高い。

たとえ新聞が生き残っても販売のかたちは、駅売りか、牛乳屋さんのようなイメージになるのではないか。新聞販売店の統合がすでに始まっており、将来的に新聞社は、系統を超えた合売店化を進めざるを得ないだろう。

新聞社は紙から電子への切り換えが必要になるが、従来のような戸別配達制度が維持できないわけだから、まったく別のビジネスモデルを構築しなければ生き残れない。新聞記者と専門家が協力関係を構築するなどして、よほど質の高い記事を提供しなければ、幅広い人々がかなり質の高い情報を発信しているインターネットの世界では、生き残れないのではないか。

2018年06月23日 (土曜日)

『山は果てしなき緑の草原ではなく』は、軍事独裁政権を倒した1979年のニカラグア革命に至る運動の渦中にいたFSLN(サンディニスタ民族解放戦線)の戦士による手記である。世界を変えるとはどういうことなのかという重いテーマが伝わってくる。しばき隊の面々の生き方とは、根本から異なった人々が描かれている。キューバのカサ・デ・ラス・アメリカス賞受賞作。

■ニカラグア革命36周年、『山は果てしなき緑の草原ではなく』の再読(2015年9月18日のバックナンバー)。

【サマリー】 『山は果てしなき緑の草原ではなく』は、ニカラグアのFSLN(サンディニスタ民族解放戦線)に加わった戦士が著した記録文学である。大学生だった著者は、当時、ソモサ独裁政権に対峙していたFSLNに加わり、軍事訓練を受けるためにFSLNが拠点としているニカラグア北部の山岳地帯へ入る。そこで著者を待っていたのは、都会とは異質の過酷な生活だった。

『山は果てしなき緑の草原ではなく』は、ニカラグアのFSLN(サンディニスタ民族解放戦線)に加わった戦士が著した記録文学である。1982年にキューバのカサ・デ・ラス・アメリカ賞(El Premio Casa de las Américas)を受けた作品だ。

7月19日は、ニカラグア革命の36周年にあたる。この時期に改めてこの作品を読み返して、西側メディアが創りだしている定型化されたゲリラ像と、元戦士による独白が描きだしたゲリラ像の違いを痛感した。

大学生だった著者は、当時、ソモサ独裁政権に対して武装闘争を展開していたFSLNに加わり、軍事訓練を受けるためにFSLNが拠点としているニカラグア北部の山岳地帯へ入る。ソモサ独裁政権は、ラテンアメリカ史の中でも、軍部と一体化した最も悪名高い独裁政権のひとつだった

山岳地帯で著者を待っていたのは、都会とは異質の過酷な生活だった。

辛いのは孤独だ。孤独に比べれば他はたいしたことないのさ。孤独こそは恐ろしく、その感情はちょっと言いようがない。実際、ゲリラには深い孤独がある。仲間がいないこと。それに都会の人間にとってあたりまえのように身の回りにあった一連のものがないこと。

忘れ始めた車の騒音の孤独。夜になって電気を懐かしく思い出すことの孤独。色彩の孤独、山には緑色と黒っぽい色しかないんだ、緑は自然そのものだ。オレンジ色はどうした?青い色がない、水色がない、紫色や藤色もない。そういった現代の色がないんだ。

君の好きな歌がない孤独。女がいない孤独。セックスがない孤独。家族に会えな孤独。君のお母さん、君の兄弟、学校の仲間に会えない孤独。教授たちに会えない、労働者にあえない、隣人に会えない孤独と喪失感。街を走るバスへの孤独、街の暑さや埃への孤独、映画に行けないという孤独。

だが、君がどんなにこれらのものを望んでも手に入れることはできないのだ。欲しいと望んでも手に入らないという意味で、それは君自身の意思に対する孤独の強制だ。なぜなら、君はゲリラを捨てることはできないからだ。君は戦うためにやってきた。そして、それは君の人生の決断だからだ。その孤独、孤独こそが、最も恐ろしいもの、最も辛く、苦しいものなのだ。

◇自由な祖国か死

本書の『山は果てしなき緑の草原ではなく』というタイトルは、示唆に富む。
「山は」単に「果てしなき緑の草原ではなく」て、新しい価値観をもった人間を生み出していく場であるという暗示である。が、それは決してユートピアの類ではない。

ニカラグア革命には、「Paria Libre o Morir」(自由な祖国か死)というスローガンがあった。選択肢は2つしかない、自由な祖国で生きるか、死を選ぶかという意味である。

自由のない祖国とは、独裁者ソモサによる強権政治が支配する国だった。

◇世代から世代へ

しかし、思想だけでは社会変革はできない。『山は果てしなき緑の草原ではなく』には、命を懸けて戦っている若者たちに協力する人々の姿も描かれている。

著者は、「山」での経験を積んだ後、都市部のオルグ活動を担当する。しかしFSLNが勢力を広げていくにつれて、ソモサ独裁政権による弾圧も激しさを増していく。「山」とは異なり、都市部では隠れ家が必要だ。食糧も手に入れなければならない。

そんな時に著者をかくまってくれたのが大学の友人たちであり、教会の神父だった。さらにはFSLNのシンパたちがあちこちにいた。これらの人たちは、年老いてすでに戦闘には参加できないが、40年前に米国海兵隊がニカラグアを占領した時代に、民族主義者・アウグスト=セサル=サンディーノが指揮するゲリラ戦に加わった人々だった。

『山は果てしなき緑の草原ではなく』を読むと、民族自決の戦いが世代から世代へと受け継がれてきたことが読み取れる。しかも、FSLNに協力する民衆の姿も描かれている。ラテンアメリカ民衆とは何かを考える恰好の書だ

■『山は果てしなき緑の草原ではなく』(オマル=カベサス、大田昌国・新川志保子訳、現代企画室)

2018年06月22日 (金曜日)

深刻な問題であるにもかかわらず日本のマスコミがめったに報じない情報のひとつにマイクロ波による人体影響(遺伝子毒性)がある。マイクロ波は、携帯電話やスマホなどの移動通信機器に使われてきたが、最近はスマートメーター( 電力のデジタル計測器)にまで使用範囲が広がった。

スマートメーターを各家庭に取り付けることで、電力会社は、事業本部にいて各家庭における電力使用状況を把握できる。しかも、東電のチラシによると「2つの指示数を10秒ごとに切り替えて表示」するのだという。10秒に1回の情報更新であるから、常時、マイクロ波による通信が行われていることになる。

筆者の住んでいる住居にも、東電からスマートメーター設置の案内があった。もちろん筆者は、設置を断った。幸いに設置を希望しない世帯には、現在のところ設置を控えているようだ。強制的な設置はやっていない。その理由は、欧米ではマイクロ波による人体影響が否定できなくなっているからである。同じ流れは日本にもやってくるだろう。

具体的にどのような人体影響があるかについては、次の記事を参照にしてほしい。

日本人の3%~5・7%が電磁波過敏症、海外では常識として認識されている遺伝子毒性、早稲田大学応用脳科学研究所「生活環境と健康研究会」が公表

◇「この国に絶望した」

さて、筆者は電磁波問題を取材していることもあって、時々、メディア黒書の読者から相談を受ける。先日も、知りあいの元大学理学部の先生から電話があった。次のような内容だった。

「自宅マンションにスマートメーター設置の告知チラシが配布された。マイクロ波の危険性を知っているので、マンションの管理組合で問題点を指摘したが、誰もマイクロ波が何であるかすらもまったく知らなかった。スマートメーター設置に反対する以前に、マイクロ波が何であるかを説明するだけで大変な労力を要する。いくら説明しても誰も信じない。あまりにも無知な人が多い。この国に絶望した」

筆者も似たような体験がある。2014年に拙著『電磁波に苦しむ人々』(花伝社)を出版した直後、PRのためにあるメーリングリストで、自著をPRした時のことだった。本のサブタイトルを「携帯基地局の放射線」としていたのだが、「放射線」は間違いだと指摘されたのである。「放射線」ではなく、「電磁波」だというのだ。

確かに日本では、周波数が低い電波を「電磁波」と呼び、高いものを「放射線」と呼んでいる。これに対して、欧米ではすべての電波を総称して「放射線」と呼んでいる。電波(電磁波)は周波数の高低とは無関係に危険という認識が定着しているからだ。「電磁波」は安全で、「放射線」は危険という見方はしていない。

しかし、こうした説明をメーリングリストで繰り返しても、理解してもらえなかった。結局、とんでもない嘘が書いてある本という評価になったようだ。

原発に反対している人々でさえ、原発は危険だが、携帯電話基地局や高圧電線は安全だと勘違いしている人が大半を占めている。

◇電波利用の拡大、電器・自動車・軍事

このところ「電磁波(放射線)」の使用範囲が急激に拡大している。自動運転も、ある種の電波を利用した仕組みになっているし、リニア新幹線にいたっては、走行中、乗客と乗務員は極めて危険なレベルの被曝にさらされる。電磁波問題の認識がある人は、まず乗車しないだろう。

将来は、軍事産業にも電磁波・放射線が応用される可能性が高い。つまり電波利用は電器産業、自動車産業、軍事産業などとの権益と密接に連動しているのだ。それゆえにマスコミが報じないと言っても過言ではない。日本のマスコミの悪質さだ。

ちなみに化学物質による環境や食品の汚染もかなり深刻になっている。化学物質に汚染された人体に電磁波を被曝すれば、複合汚染のかたちになり、長期的に深刻な人体影響を受けるリスクが極めて高くなる。

日本で癌が急激に増えている背景に、電磁波や化学物質による汚染があると筆者は考えている。短期の影響は少なくても、長期に渡る被曝では、深刻な影響が浮上してくるのだ。

無知ほど恐ろしいものはない。その責任はマスコミにある。

 

2018年06月21日 (木曜日)

ある2つの新聞記事を検討してみると、「社会主義圏」の興味深い動きが見えてくる。2つの記事とは、時事通信とキューバのプレンサ・ラティナ紙(Prensa Latina)の記事である。

時事通信は、20付けで「北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン、Kim Jong Un)朝鮮労働党委員長が20日、3度目の中国訪問を終えた」と報じている。このニュースは日本でも大きく報じられた。■出典

一方、プレンサ・ラティナ紙は、19日付け(日本時間では20日)で、「ボリビア大統領であるエボ・モラレスが本日、中国訪問を終えた」と報じている。■出典

つまり金委員長とモラレス大統領がまったく同じ時期に中国の習近平主席と接触しているのである。報道はされていないが、秘密裏に3者の会談が行われた可能性が極めて高い。

◇ボリビア・北朝鮮間には国交が存在しない

今世紀に入るころから、ラテンアメリカでは次々と左派、あるいは中道左派の政権が誕生した。その主要な原因は、新自由主義による政策の失敗である。

このうちボリビアでは、2006年にモラレス政権が誕生した。中卒、労働者階級出身の大統領である。

ラテンアメリカの中では、このモラレス政権とベネズエラのチャベス政権が、キューバのカストロ政権と極めて親密な関係にあった。その関係は、現在も変わらない。一方、中国とキューバとの関係も良好だ。

今回、モラレス大統領の訪中を機に、中国・北朝鮮・ボリビアでなんらかの意思統一が行われた可能性が高い。内容については、分からないが、「社会主義圏」の結束を高める方向で会談が行われたと推測する。

ちなみにボリビアと北朝鮮は、現在、国交が存在しない。中国が北朝鮮の国際的な孤立を解消しようと努力している時期だけに、ボリビアとの国交の樹立の仲介をしている可能性もある。

ちなみに筆者は、北朝鮮は社会主義国とは考えていない。

【写真】自伝の中国語訳を手にしたモラレス大統領(出典:プレンサ・ラティナ)

2018年06月20日 (水曜日)

メディア黒書(18日付け)で取りあげた記事、「関西大学の宇城輝人教授らが、黒薮に対して『保守速報』が張った『NO残紙キャンペーン』のバナー撤去を要求」 を巡り、ネット上でいわゆる「炎上」が起きている。「保守速報」が、自社のウエブサイトに同記事を転載したところコメントが2500件(20日7時の時点)を超えた。

ひとつのメディア企業を外圧で経済的に破産させようとした事件に対する関心の高さを示している。

ところで関西大学・宇城輝人教授による「広告(実際は、『NO残紙キャンペーン』のバナー)」剥がし事件は、メディアを媒体として自らの「学問」の成果を世に問うはずの研究者が、特定のメディア企業を破綻させることを目的とした行為に及んだという側面のほか、「押し紙」を排除する運動に対する挑発行為を行ったという側面も持っている。

宇城氏が、「押し紙」という社会問題の実態を知っていたかどうかは不明だ。おそらく知らなかったのではないかと思う。しかし、たとえ知らなかったとしても、狙いを定めたバナーが、どのような目的で張られていたのかを確認すべきだったのではないか。

「保守速報」を破綻させること以外に頭が働かず、その結果、『NO残紙キャンペーン』の中味を確かめないまま、攻撃してきた可能性が高い。「保守速報」に「広告」を張ってる団体は、自分の敵にほかならないという単純な発想しかないのではないか。それが今回の軽率きわまりない行為に及んだ可能性が高い。

◇「押し紙」のシュミレーション

ちなみに「押し紙」とは、簡潔に定義すれば、新聞社が販売店に搬入する新聞のうち、過剰になっている部数のことである。当然、配達されることなく、回収される。しかし、卸代金だけは徴収する。つまり販売店は、販売できる見込みがない新聞を強制的に買い取らされているのだ。

「押し紙」の実態は凄まじく、たとえば2002年10月の段階で、毎日新聞の場合、搬入される新聞の約36%が「押し紙」になっていたことが、外部へ流出した内部資料で判明している。

毎日新聞社が「押し紙」でいかに不正な利益を上げてきたか、以下、この資料を使ってシュミレーションしてみよう。

◇「朝刊 発証数の推移」

この資料によると2002年10月の段階で、新聞販売店に搬入される毎日新聞の部数は約395万部である。これに対して発証数(読者に対して発行される領収書の数)は、259万部である。差異の144万部が「押し紙」である。

当然、シミュレーションは、2002年10月の段階におけるものだ。

■裏付け資料「朝刊 発証数の推移」

かりにこの144万部の「押し紙」が排除されたら毎日新聞は、どの程度の減収になるのだろうか。シミュレーションは次の通りである。大変な数字になる。

◇シミュレーションの根拠

事前に明確にしておかなければならない条件は、「押し紙」144万部の内訳である。つまり144万部のうち何部が「朝・夕セット版」で、何部が「朝刊だけ」なのかを把握する必要がある。と、いうのも両者の購読料が異なっているからだ。

残念ながら「朝刊 発証数の推移」に示されたデータには、「朝・夕セット版」と「朝刊だけ」の区別がない。常識的に考えれば、少なくとも7割ぐらいは「朝・夕セット版」と推測できるが、この点についても誇張を避けるために、144万部がすべて「朝刊だけ」という前提で計算する。より安い価格をシミュレーションの数字として採用する。

「朝刊だけ」の購読料は、ひと月3007円である。その50%にあたる1503円が原価という前提にするが、便宜上、端数にして1500円の卸代金を、144万部の「押し紙」に対して徴収した場合の収入は、次のような式で計算できる。

1500円×144万部=21億6000万円(月額)

最小限に見積もっても、毎日新聞社全体で「押し紙」から月に21億6000万円の収益が上がっている計算だ。これが1年になれば、1ヶ月分の収益の12倍であるから、

21億6000万円×12ヶ月=259億2000万円

と、なる。

ただ、本当にすべての「押し紙」について、集金が完了しているのかどうかは分からない。担当者の裁量で、ある程度の免除がなされている可能性もある。しかし、「押し紙」を媒体として、巨額の資金が販売店から新聞社へ動くシステムが構築されているという点において、大きな誤りはないだろう。同時に「押し紙」によって、販売店がいかに大きな負担を強いられているかも推測できる。

新聞は、一部の単価が100円から150円ぐらいだから、だれても手軽に購入できる商品である。そのためなのか、ややもすれば新聞社の儲けは少ないように錯覚しがちだが、販売網を通じて安価な商品を大量に売りさばく仕組みになっているので意外に収益は大きい。

16年前のデータであるから、現在の「押し紙」率は、50%を超えている可能性が高い。

◇「押し紙」の国会質問

このように「押し紙」問題は、日本のメディアの信用にかかわる大問題なのだ。当然、新聞社としてはふれてほしくない。「押し紙」など存在しないという嘘をベースとした世論を形成したい。そのために筆者も含めて、「押し紙」を告発する人々を裁判にかけたり、嫌がらせの電話を繰り返すなどしてきたのである。

そして今回、関西大学の社会学者が、おそらく何も知らずに、『NO残紙キャンペーン』のバナーを剥がせと求めてきたのである。

なお、「押し紙」は、自民党も問題にしており、6月14日の内閣委員会で、和田政宗議員が「押し紙」問題を取りあげている。

【参考記事】元NHK・自民党の和田政宗議員が「押し紙」問題で公取委を追及、14日の内閣委員会 

【動画】押し紙」の回収風景

 

2018年06月19日 (火曜日)

博報堂の元社員が、業務上横領で逮捕された。時事通信は次のように事件を報じている。短いものなので、全文を引用しておこう。

映画やアニメなどを収録する放送用テープ約7800本(仕入れ価格約1900万円)を着服したとして、警視庁赤坂署は14日までに、業務上横領容疑で、広告大手博報堂の関連会社「博報堂DYミュージック&ピクチャーズ」(東京都港区)の元社員小林宏至容疑者(37)=栃木県栃木市平柳町=を逮捕した。容疑を認め、「中古業者に転売した。高級ブランド服の購入や海外旅行などに使った」と供述しているという。

同署によると、2011年11月から昨年3月にかけ、約1億1400万円分のテープを転売したとみられ、詳しく調べている。

 逮捕容疑は13年1~12月、社内で保管していた放送用テープ約7800本を着服した疑い。■出典

博報堂に関しては、筆者は2016年から17年にかけて詳しく取材したことがある。取材の前半は、民間企業と博報堂の広告取引について、後半は中央省庁(内閣府)との広告取引について取材した。博報堂のイメージは良好なようだが、内部を取材してみるとかなりずさんは業務の実態が明らかになった。

◇民間企業での不祥事①

たとえば2016年、3月16日にNHKのローカル局が次のニュースを報じている。

盛岡市にある県の複合施設「アイーナ」で、運営を委託された指定管理者が 入館者数を水増しして県に報告していたことがわかりました。岩手県は、不適切な行為だとして改善勧告を出すとともに、管理料を減額する措置を決めました■出典

手口は簡単で、アルバイトを雇い、入館者数をカウントしている出入り口
を行ったり来たりさせていたのだ。子どもじみた手口である。

クリエーターとしての職能不足が招いた不祥事もある。メディア黒書のバックナンバー(2016年7月20日付け)から、引用しておこう。ある意味では滑稽でブラックユーモアな事件である。記事のタイトルは、「博報堂が制作した不可解な新聞広告、前代未聞『世界初』のレイアウト」

◇民間企業での不祥事②

新聞のテレビ欄にレイアウトされた奇妙な広告。もともとは横長の長方形の広告なのに、それが新聞紙面上で縦にレイアウトされているので、読者は顔を横に寝かせるか、新聞紙面を反転させなければ、広告のキャチフレーズが読みにくい。写真で紹介されている商品も横転しているよう見える。

この爆笑を誘う前代未聞の広告が掲載されたのは2012年11月15日付け西日本新聞である。広告のクライアントであるアスカコーポレーションが言う。

「確かに弊社が西日本新聞に広告を掲載するように博報堂に依頼しましたが、その後、このような広告が掲載されていたことには気づきませんでした。通常、広告を出したときは、掲載紙が送られてくるのですが、その記憶もありません。こんな広告を掲載すると、読者は『この会社はバカか』と思うでしょう」

広告を制作したのは、博報堂である。次のPDFが問題の広告である。左下の細長い広告、「世界初」の箇所に注意してほしい。

■問題広告の出典

◇「見積書」も後付の前代未聞

博報堂がアスカに送付した「見積書」によると、この広告の価格は75万6000円。

■出典の見積書

奇妙なことに、広告の掲載日は11月15日であるが、「見積書」が発行された日付けは、それより後の11月30日である。本来、見積書は広告掲載日よりも前に提示して、クライアントの許可を得なければならないが、後付けの「見積書」になっているのだ。これについては、現在、原因を取材しているので、今後、詳細を報告する機会があるかも知れない。

◇西日本新聞の見解

念のために西日本新聞の「お客様センター」と広告担当者に事情を尋ねてみた。お客様センターの電話に対応した女性は、次のように話している。

新聞社:「今日はじめてこんなのを見ました(笑)」

筆者:「博報堂がやった広告なんですけど」

新聞社:「ああ、そうなんですね」

筆者:「これだけなんでしょうか。他にも同じようなものがありますか」

新聞社:「いえ、わたしも今日はじめてみました」

一方、広告担当者は次のように話す。

新聞社:「テレビ欄のページはレイアウトが決まっています」

筆者:「そうすると本来はタテの広告を制作する必要があったということですね」

新聞社:「横だと読みにくいので、基本はタテですね。」

◇職能の問題

この奇妙な広告が制作された時期、博報堂はアスカに40名近い人員を送り込んでいた。しかし、調査により現在までに確認できた当時の正社員は、現地採用も含めるとたった2名だけで、名刺は博報堂のものを使っていたものの、クリエータとしての職能が不十分な非正社員が多数混じっていた可能性が高い。

その結果、前例のない奇妙な広告を掲載する事態になったと思われる。

◇民間企業での不祥事③

その他の参考記事も紹介しておこう。

 

【産経】津波記録誌で「怠慢」編集 岩手県大槌町、東北博報堂との契約解除

【毎日】入館者数水増し 県の施設で管理委託グループが4年間で2380人分 /岩手

【メディア黒書】写真で見る博報堂によるデータの流用(パクリ)① メディア黒書が内部資料を入手

◇中央省庁との疑惑

博報堂と中央省庁の取り引きで最も重大な疑惑は、博報堂が中央省庁に対して発行してきた請求書にインボイスナンバーが欠落しているものが多量にある事実である。

インボイスナンバーとは、請求書番号のことである。現在のコンピューターシステムと連動した会計システムの下では、インボイスナンバーを付番することによって、お金の流れを管理しているのである。それはクレジットカードがナンバーによって、コンピューターシステムと連動するのと同じ原理である。

現在では、大企業はいうまでもなく、ほとんど全ての企業が、コンピューターシステムと連動した会計を実施している。例外があるとすれば、八百屋さんやフリーライターなど極めて弱小な個人業者が発行する請求書だ。それをコンピューターシステムと連動した会計システムに組み込む作業は、手間がかかることは言うまでもない。

ところが博報堂が中央省庁に対して発行してきた請求書の中には、昔の八百屋さんタイプの請求書が多量にあるのだ。これは実に不思議なことだ。

その額は、2015年度の新聞広告(政府広報)だけで20億円を超えている。インボイスナンバーが欠落しているわけだから、正規の会計監査・システム監査を受けていない可能性がある。となれば、裏金になっている疑惑があるのだ。

博報堂と中央省庁の間の取引で発行された請求書のうち、インボイスナンバーが外してある請求書の額面総計を紹介しておこう。次のようになる。

内閣府:約64億円(2012年度~2015年度)

防衛省:(陸上自衛隊):約9億円(2008年~2015年度)

文部科学省:約9000万円(2015年度)

復興庁:約2000万円(2015年度)

農林水産省:約300万円(2015年度)

環境省:約1000万円(2015年度)

 

 

 

2018年06月18日 (月曜日)

『保守速報』というウエブサイトをご存じだろうか。右派系のメディアである。このサイトから、広告が完全に撤去されたようだ。この件について、ウエブサイト「ITmedia」は、次のように伝えている。

広告撤去に至ったきっかけは恐らく、エプソン販売が6月5日、ユーザーからの問い合わせを受けて保守速報への広告出稿を停止したこと(参考:保守速報への広告掲載をやめたエプソン 「嫌韓、嫌中の温床」との通報がきっかけに)。これが引き金となって、ネットユーザーによる“広告剥がし(広告主への通報)”が加速し、他の企業にも出稿停止の動きが波及したものとみられています。また、保守速報側も一時、広告バナーをアダルト系に差し替えるなどして対応していましたが、現在はこれも表示されなくなり、全ての広告が完全に消滅した形となっています。■出典

この広告撤去現象に関して、最近、好奇心を刺激する出来事があった。実は、「保守速報」には、わたしが窓口になって展開している「押し紙」をゼロにする運動、「NO残紙キャンペーン」のバナーが張ってあるのだが、このバナーの撤去を求めてきたのである。

「NO残紙キャンペーン」の趣旨は極めて単純で、「押し紙」行為がおかしいと思う人が、思想や信条の違いを乗り越えて、「押し紙」ゼロを実現することである。周知のように、「押し紙」は右派系の人々も反対運動を進めてきた。筆者は、左派のシンパだが、この問題については、右派の人々とも力を合わせて取り組もうという合意で共同戦線を張ったのである。

路上で暴行を受けている人を助けるために思想や信条の違いは障害にはならないだろう。販売できる見込みない新聞を販売店に多量に買い取らしている新聞社を批判することにも、左翼と右翼の違いは障害にはならない。こうした寛大な考えに基づいて、意思統一したのである。

こうした状況の中で、恐らく読売や産経の読者が多い「保守速報」の主宰者が自主的に「NO残紙キャンペーン」のバナーを張って、協力してくれたのである。朝日新聞の「押し紙」だけを批判して、産経や読売の「押し紙」は放置してもいいことにはならないからだ。

「NO残紙キャンペーン」のスタート直後、筆者のところに嫌がらせの電話や無言電話が相次いだ。しかし、やがて「雑音」はなくなった。「雑音」は新聞関係者ではないかと推測するが、抗議が無駄だと分かって静かになった。

◇「Mくんリンチ事件は嘘」

ところがここ2週間ほど、わたしのところに、「NO残紙キャンペーン」の「広告」(注:広告ではなく、保守速報が自主的に張ったバナー)を外すように求めるメールが相次いでいる。その中には、関西大学社会学部教授の宇城輝人教授のメールも含まれている。実名のメールには、全て回答したが、匿名のものには返答していない。

筆者は、宇城氏にメールで、「NO残紙キャンペーン」のバナーは広告ではないことを説明した。その上で、次のように質問した。

「保守速報の広告主に対して広告の執行を控えるようにアドバイスする活動は、宇城さんが個人的に実施されているのでしょうか、それとも組織的に実施されているのでしょうか。他にも同じ趣旨の『アドバイス』が来ましたので、確認させていただければ幸いです。」 

これに対して、次のような返答があった。

「組織的なわけがありません。ごく個人き手にメールを差し上げました。ほかの人が何をしているかはまったく分かりません。恐れながらそれは「邪推」というものです。多くの人が同じ懸念を感じているということなのではないでしょうか。」

カウンターグループが組織を上げて、「NO残紙キャンペーン」のバナーを撤去させようとしているのかと思っていたが、あくまで「個人」でやっているらしい。

筆者は、「押し紙」問題でなにひとつ非難の声を上げない関西大学の研究者が、「NO残紙キャンペーン」の「広告」を外せと言ってきたことに怒りを感じた。身勝手とはこのことだろう。

ちなみに宇城氏は、「反レイシズムメッセージ」なるものをユーチューブで公開している。(冒頭の動画)

他のメールの送付者に対しては、「保守速報」の記事の何が具体的に問題なのかを質問した。これに対して記事の中にあるいくつかの差別的な言葉を例示してきたのに加えて、「Mくんリンチ事件」が捏造だと伝えてきた。次の箇所である。

「また、個人を中傷する記事も、裁判で敗訴になったにも関わらず、そのまま謝罪もなく掲載を続けています。
【速報】しばき隊リンチ事件 被害者の主水氏が李信恵らを大阪地裁に提訴
http://hosyusokuhou.jp/archives/47993328.htmlなどです。記事にある李信恵氏は事件に関わっていないことが、神原元(はじめ)弁護士のツイートによっても確認できます。
https://twitter.com/kambara7/status/975710675434553344

そして何よりこれが重要なのですが、どの記事でもよいので当サイトを閲覧できるようになったら、ぜひともコメント欄をお読みになってみてください。」

◇人間の内面は法律や圧力で矯正できない

筆者にメールを送りつけてきた人々の意図は、「保守速報」から「広告」を撤退させることだった。あるいは、「NO残紙キャンペーン」を破綻させることだった。これは恐ろし行為である。ある意味では、「圧力」である。自分たちの反対言論をつぶすために、「広告主」をねらい撃ちする戦略にほかならない。

最近、名誉毀損裁判が多発したり、名誉毀損の刑事裁判が起きたり、出版物の出荷が出来なくなるなどの言論妨害事件が多発している。

【参考記事】ライトノベル18巻が出荷停止、別件の差別的表現が引き金に、背景に圧力団体が存在する高い可能性

対抗言論に対する寛大さがどんどんなくなっている。言論というものは、人間の内面の反映である。それゆれに個々人の体験や読書から得た知識などで、それぞれ異なっているのだ。それを「圧力」で矯正したり、法律で取り締まったり、「暴力」で封じ込めることは誤りだろう。

対抗言論に対しては、言論で対抗すべきなのだ。

2018年06月16日 (土曜日)

2018年6月14日は、チェ・ゲバラの生誕90年である。ゲバラは1928年、アルゼンチンのロサリオ市で生まれた。ブエノスアイレス大学の医学部を卒業した後、ラテンアメリカを放浪。中米グアテマラで、当時、進行していたリベラル右派による改革に感銘を受けた。「グアテマラの春」と呼ばれる時代である。

1954年に、改革を進めていたグアテマラ政府が、農地改革の中で米国の多国籍企業UFC(ユナイティド・フルーツ・カンパニー)の土地に手を付けたとたんにCIAの謀略による軍事クーデターが起きた。

ゲバラはメキシコへ逃れた。そこで亡命中のフィデル・カストロらと出逢う。軍事訓練を受けた後、12人乗りのクルーザー「グランマ号」に82人が乗り込み、キューバへ潜入した。

次の記事は、2017年07月08日に掲載したバックナンバーである。

■チェ・ゲバラ没50年、プレンサラティナが写真特集

今年はチェ・ゲバラが没して50年にあたる。医師、文筆家、革命家、そして国際主義者。1967年10月8日、ボリビアのアンデス山脈にあるチューロ渓谷の戦闘で捕えられ、翌日、銃殺刑に処された。

このところキューバのプレンサラティナ(紙)が連日、同紙が撮影し保存しているゲバラの写真を掲載している。これまで筆者がほとんど見たことのない写真ばかりである。

冒頭の写真は、オスバルド・ドルティコス大統領(大統領職1959年~1976)とカストロ首相が米国の銀行を国有化するための書類にサインする場に立ち会っているゲバラである。

以下、いくつかの写真を紹介しておこう。


 

◇医学生1000人を受け入れ

5日付けの朝日新聞が、キューバについての記事を掲載している。タイトルは、「元ゲリラの再出発、キューバ手助け 医学生1000人受け入れ、コロンビアから」。

 半世紀続いた内戦の末、6月27日に武装解除の終了を宣言した左翼ゲリラ、コロンビア革命軍(FARC)。今後の課題は元戦闘員をどう社会復帰させるかだ。「医療での国際貢献」が国是のキューバは、元戦闘員ら1千人を医学生として受け入れる意向を示した。(ハバナ=平山亜理)

キューバの国際貢献の重要な柱に、医師や教師の派遣がある。キューバは医師の養成に力を入れており、WHOの調査によると人口1000人あたりの医師の数は、6.723人で世界第2位である。(2010年の調査)

1985年に筆者は、革命から6年を経たニカラグアを取材したことがある。当時は内戦の最中ということもあって、たくさんの医師がキューバから支援に来ていた。メキシコでも、医療研修で滞在しているキューバ人医師らにあった。長期滞在者向けの「下宿屋」で、一緒だった。

教師の派遣にも力を入れている。1985年のニカラグアは、革命後の文盲撲滅キャンぺーが展開されていて、軍事独裁政権の下で教育を受ける機会がほとんどなかった労働者や農民が、仕事が終わった後、読み書きを習っていた。

ちなみにニカラグアに対する支援は、キューバだけではなく、米国の市民による支援も、規模が大きかった。新政府も、外国人の入国を歓迎していた。国の実情を、自分の眼で見てほしいという考えがあったのだろう。

こうした国際間の市民レベルの取り組みが国際主義である。

◇キューバの国際主義

他国の市民をあたりまえに支援する思想はどこから生まれたのだろうか。正確な答えは分からないが、それはゲバラの生きかたでもあった。キューバ革命の後、ゲバラはコンゴやボリビアの革命運動を支援している。

他国におけるゲリラ戦を支援する是非については、さまざまな議論があるが、少なくとも抑圧された民族を支援するという精神は崇高だろう。米国が軍事独裁政権下の軍隊に米国人司令官を送り込んで、軍事訓練を指揮するのとは意味が違う。

プレンサラティナで始まったゲバラの写真特集は、キューバの思想を象徴している。