
筆者のツイッター(https://twitter.com/kuroyabu?lang=ja)が一時的にロックされた。現在は、回復しているが、対象となったツィートは、昨日のメディア黒書の記事、「三宅雪子・元衆議院議員のツィキャスでの言動について、事実とは著しく異なる情報をふりまく、訂正放送を要求」を紹介したものだった。他にも1ツィートが削除の対象になった。日本の政治家と海外の政治家の質がいかに異なるかを述べたものだ。
ロックされた原因は、記事の中に、三宅雪子氏のツィキャスをリンクした事と、三宅氏の写真を使ったことのようだ。現在、ツィキャスのリンクを解除して、写真も変更した。そして言論妨害を象徴する黒の画像に差し替えた。
ツィキャスのリンクと写真使用は、ツイッターのルールと著作権法に違反しているというのが、ツイッター社にロックを申し立てた人の主張のようだ。
◇ジャーナリズム目的の使用
しかし、著作権法の41条では、ジャーナリズム目的の使用は認められている。
【41条】(時事の事件の報道のための利用)
第四十一条 写真、映画、放送その他の方法によつて時事の事件を報道する場合には、当該事件を構成し、又は当該事件の過程において見られ、若しくは聞かれる著作物は、報道の目的上正当な範囲内において、複製し、及び当該事件の報道に伴つて利用することができる。
三宅雪子という元国会議員で、今は憲法国民投票の公正な実施を目指す運動の先頭に立っている公人の人間性を知るために、削除したツィキャスは格好の材料だった。それゆえに筆者は、ジャーナリズム目的で使ったのである。
とはいえ、三宅氏は毎日のようにツィキャスをやっているので、読者は、自分の眼で、彼女の人間性を確認することができる。どのように評価しようが、それは個人の自由だ。
このツィキャスでは、わたしの取材方法について、事実とは著しく異なることが語られている。まさか酒を飲みながらの暴言とまでは思わないが、あまりにも事実が異なっている。筆者が取材せずに、記事を書こうとしているような印象を読者に与えているのだ。しかも、そのやりとりが口答で行われたような物言いだ。
が、実際にはツイッターのDMだけのやり取りである。当然、DMのやり取りは全部記録として残っている。その中で、三宅氏は筆者の取材を断っているうえに、落合弁護士への取り次をも断っている。筆者は、落合弁護士に電話連絡して、伝言を残したが、折り返しの電話連絡はなかった。
そこで筆者は、15日に公開質問状を送付したのである。昨日のメディア黒書で引用したものだが、再度、引用しておこう。
三宅様
たびたびすみません。三宅さんの本日のツイッターを見ました。誤解があるので、お伝えしておきます。記事は「紙の爆弾」の次号に掲載されます。従って、わたしとしては、取材を希望しています。少なくとも次の3点についてだけでも、教えていただけないでしょうか。
①5人を刑事告訴したのは事実か。
②本当に告訴したのであれば、どこの警察署、あるいは地検なのか。
③何を根拠とした告訴なのか?
質問状は、公開を前提にしております。
◇日本の政治家の資質
筆者のツイッターがロックされたもうひとつの原因も、別のツィートにリンクしていた同じツィキャスである。このツィートの投稿内容は、日本の政治家と海外の政治家の質的な違いを述べたものである。
日本の政治家(とはいえ現在は落選中)の例として、三宅氏のツィキャスを紹介した。あまりにも嘘が多かったからだ。これもジャーナリズムとしての使用である。
海外の例としては、1973年に軍事クーデターで亡くなったチリのアジェンデ大統領の最後の1日を証言で構成した動画を使った。多くの人々に見ていただきたい記録だ。政治家とは何かが極めてよく分かる。冒頭の動画(13:45~)
◇2度の起訴猶予処分
なお、昨日の記事で、三宅氏が少なくとも過去に2度、刑事事件で告訴され、起訴猶予になった旨を記したが、これは紛れもない事実である。内容については、現時点では言及しないが、それを示す公文書を確認しているので、間違いない。
ちなみに起訴猶予とは、犯罪は成立するけれども、起訴しない処分のことである。刑罰の執行が猶予される場合があるように、起訴も猶予されることがあるのだ。
起訴猶予は、三宅氏が今後、選挙に出馬する際には公開すべき重要な事実である。起訴猶予だからダメ人間というのではなく、問題は、事件の具体的な中味である。
実は三宅氏が起訴猶予となった刑事事件では、ツイッターが利用されていたのだ。この事実をツイッター社はどう考えるのか、取材してみたい。
また、三宅氏は憲法改正国民投票を進める運動を担っているが、これに関しても、起訴猶予処分が運動へ与える影響を懸念する。公人であるから、起訴猶予処分を受けたことを自ら公表にした上で、運動すべきだというのが、筆者の考えだ。共産党、立憲民主党、社民党、自由党はこうした事実を知っているのだろうか。
筆者は、ツイッターは情報発信の道具として利用価値が高いと思う。しかし、使い方には注意すべきだろう。感情をそのまま文字にするから、雑談のレベルになる投稿が多いのだ。
しかも、品性のない投稿をしている人々の多くが、中高年の世代なのだ。これは深刻な社会病理にほかならない。
【写真】左:安倍晋三 右:サルバドール・アジェンデ

三宅雪子という元衆議院議員をご存じだろうか。彼女のツイッターによると、次のような経歴である。
反原発・富の再分配・福祉の充実・困窮者救済 ・食の安保・表現規制反対・国民投票に備える!穏健派リベラル。デマ&パクツイ研究家 非正式引用(スクショ)お断り。ネット無料相談中。■出典
◇事件の概要
筆者が取材している三宅氏関連の事件の概要を説明しておこう。
①2017年5月10日、午後5時59分、三宅氏は次のような「告知」をインターネット上のツィッターに投稿した。
「本日、以下のアカウントに対して名誉毀損で告訴状を提出致しました。@gachktmama0113,@torch2012,nanachan77,@makimakiia,@him_beereほか二名 私の名前を出してのツイート、家族知人、仕事先への接触を固くお断りします」
「告訴状」とあるから、刑事事件である。名誉毀損の刑事事件で5人を告訴したのである。告訴先は記されていないが、警察か検察である。
②これら5人は、かつては三宅氏の熱心な支援者だった。ツィッターなどネット上で、三宅氏と「議論」していた。
③5人は、捜査機関から呼びだされることを覚悟して、不安な日々を送っていた。籠池夫妻が長期拘留されていた時期とも重なり、豚箱に入った自分を想像して精神的な苦痛を強いられ、体調を崩す人も出た。
④しかし、告訴からまもなく15カ月になる現在も、捜査機関からの5人に対する出頭要請はない。どの捜査機関がこの事件を扱っているのかも分からない。
⑤筆者は、第3者を介してこの事件を知り、取材をはじめた。当然、三宅氏も取材の対象になる。そこで最初にツイッターのDMを使って三宅氏に接触した。
⑥これに対して三宅氏は、7月11日の深夜にみずからが主宰するツィキャスで、わたしの取材申込みの件に言及した。
⑦そのツィキャスの内容と事実が大きく異なっている。
⑧また、この件に関して、三宅氏は事実とは異なる内容のツィートを繰り返している。
⑨三宅氏は、数日にわたり自分のツィッターのタイトルを「三宅雪子(黒薮哲哉氏の掲載ありきのやり方に抗議します)に変更して、あたかも筆者が取材せずに記事を書こうとしているかのような印象を拡散した。
⑩さらに別のツィッターでは、「『こわいものしらず』黒薮哲哉氏の掲載ありきの取材に抗議します」というタイトルを付し、事実とは異なる情報を拡散している。次のツィッターである。
■「こわいものしらず」黒薮哲哉氏の掲載ありきの取材に抗議します」
⑪三宅氏のフォロアーは、約5万8000人。これを拡散すると少なくとも、15万人から、20万人の読者に、筆者が取材しないライターであるような印象を与えている可能性がある。
◇何が事実と異なるのか?
三宅氏のツィキャス上での発言と事実はどう異なるのか、何点か例を上げてみたい。
①筆者は三宅氏とは面識がなく、最初の手段として、ツィターのDMを使った。その中で、対面取材も申し入れている。DMだけで取材しようとしたわけではない。
②これに対して、三宅氏は、落合洋司弁護士と同伴でもいいかと、尋ねてきた。結構だと答えると、落合弁護士とは連絡がつかない、と逃げの姿勢に入った。
そこで筆者は、自分の携帯電話の番号を教え、落合弁護士に知らせるようにお願いした。三宅氏は、これを拒否した。
③そこで筆者は、11日に落合弁護士に電話した。留守だったので、要件を伝えた。内容は、取材に応じていただきたいこと、落合氏が三宅氏の代理人でないのであればこの伝言は無視してもらってもかまわないことの2点。落合弁護士からは、連絡がなかった。
④三宅氏は、MDでの取材は認めないとの事だったので、三宅事務所宛に次のようなメールを送付した。
黒薮哲哉です。
取材の件です。三宅さんは、DMメールでの回答は認めないという立場のようなので、普通のメールで再度
質問させていただきます。
【質問】5人の元支援者を刑事告訴された件につきお尋ねします。
告訴の原因は何でしょうか。どのような内容なのでしょうか?
このメールは、念のために同日に再送している。
⑤さらに、15日には、公開質問状を三宅事務所宛に送付している。
三宅様
たびたびすみません。三宅さんの本日のツイッターを見ました。誤解があるので、お伝えしておきます。記事は「紙の爆弾」の次号に掲載されます。従って、わたしとしては、取材を希望しています。少なくとも次の3点についてだけでも、教えていただけないでしょうか。
①5人を刑事告訴したのは事実か。
②本当に告訴したのであれば、どこの警察署、あるいは地検なのか。
③何を根拠とした告訴なのか?
質問状は、公開を前提にしております。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
⑥こうした取材の手続を踏んでも、三宅氏は、ツイッター上で、わたしの取材に関して、事実とは異なるツィートを続けた。たとえば15日には、次のような投稿をしている。

自分で取材を拒否していながら、「取材しろ」と言っているのだ。
◇せめて告訴先の捜査機関だけでも分かれば・・・
取材せずに記事を書いているという誤った情報が拡散されると、今後、取材活動そのものが出来なくなる。ライターにとっては致命傷である。その意味で、今後、三宅氏には、訂正放送と訂正ツィート、それに謝罪を要求することになる。
なお、事件そのものは調査中なので、現時点では言及しない。内部告発も次々と寄せられ、その中には、三宅氏が過去に少なくとも2度、刑事事件で起訴猶予の処分を受けているとの情報がある。これに関しては事実の確認が取れた。
起訴猶予処分とは、罪は認定するが、起訴しないという処置である。
メディア黒書は、裏付けが取れないことは報じない。
刑事告発された5人のかたの心痛は、頂点に達しているようだ。通常、告訴人は、事件が重大なものであれば、記者会見を開いて告訴内容を公開するものだが、この事件では告訴人は、取材を拒否している。守秘義務があるのは、捜査機関であって、当事者ではない。
せめて告訴先の捜査機関だけでも分かれば、5人の方は、自分でそこへ問い合わせ、弁護士を介して進捗を知ることができるのだが、その手段も断たれているのだ。
かりに刑事告訴がまっかな嘘であれば、三宅氏は恫喝事件を起こしたことになる。国会への復帰は難しくなるだろう。日本の政治家のレベルを知るためにツィキャスの一部ではなく、全部を見てほしい。
■問題のツィキャス
※リンクしていたツィッターがロックされたので、暫定的に削除しました。
【写真】ツィキャス中の三宅雪子氏

『戒厳令下チリ潜入記』(岩波新書)という本をご存じだろうか。チリの映画監督で、1973年の軍事クーデターで海外へ亡命したミゲル・リティンが、1985年に、祖国に潜入して軍事政権下の実態を動画で記録したときの体験を、コロンビアのノーベル賞作家・ガルシア=マルケスが、聞き書きしたものである。当然、筆者はこの本は実話(ルポルタージュ)だと思っていた。
ところがミゲル・リティン監督が制作した動画のドキュメンタリーと、『戒厳令下チリ潜入記』の内容が異なっていることが最近分かった。この本は、半分創作である。その是非はともかくとして、実話の意味を再考する必要があるようだ。
両者の違いが典型的に現れているのは冒頭である。動画では、変装したリティン監督が、早朝にチリの空港に到着する。動画をみれば、それが早朝であることがすぐに分かる。
ところがガルシア=マルケスの本では、リティン監督が深夜に空港に到着する設定だ。そして予想に反して、ネオンが輝く繁栄したチリの姿に戸惑う様が描かれる。どうやらガルシア=マルケスは、新自由主義の光と影を対比させるために、リッテン監督が深夜に到着して闇の中にネオンの輝きを見る設定にしたようだ。この本は、創作である。
次に紹介するのは、2016年9月12日のバックナンバーである。
【バックナンバー】チリの軍事クーデターから43年、映像ジャーナリズムの最高傑作『チリ潜入記』
【前半】
【後半】
チリの軍事クーデターから、43年が過ぎた。
ラテンアメリカの諸紙によると、クーデターで亡くなった「サルバドール・アジェンデ元大統領と1973年の軍事クーデターを記憶するための儀式、オマージュ、それに記念行事が9月11日に各地で行われた」(チリの国営新聞『LaNacion』)。
1970年にチリは、大統領選挙で社会党のサルバドール・アジェンデが当選して、社会党、共産党、キリスト教民主党の連立政権(UP)が成立した。これは世界史上ではじめて、選挙によって成立した社会主義をめざす政権だった。
しかし、米国のニクソン政権は、チリに多国籍企業が進出していることなどから、アジェンデ政権に猛反発して、経済封鎖などさまざまな策略をめぐらせる。資本家の〈ストライキ〉まで起こり、チリ経済は混乱に陥った。
しかし、1973年の総選挙でUPが勝利して合法的にアジェンデ政権を倒せないことが明らかになると、米国CIAがピノチェット将軍と共謀して、軍事クーデターを断行。アジェンデ政権の支持者に銃弾が襲い掛かった。国立サッカースタジアムでは、連行されてきた多くの人々が命を落とした。歌手のビクトル・ハラも銃弾に倒れたひとりである。
◇政治家とは何か?
テロは全土に広がり、ピノチェットによる軍事政権が敷かれた。チリはスパイの眼が光る国になったのである。
不幸中の幸いで死を免れ、国外追放になった人物のひとりに、映画監督ミゲル・リティンがいた。クーデターから13年を経た1985年、リティン監督は、パラグアイ籍のビジネスマンに変装し、偽のパスポートを所持して、空港から堂々とチリに潜入した。
潜入に先立つて、CM撮影を口実として、3つの撮影部隊をチリに送り込んでいた。リティン監督は、撮影部隊と連絡を密にしながら、軍事政権下のチリの実態をカメラで記録したのである。
『チリ潜入記』は、映像ジャーナリズムの最高傑作のひとつだ。とりわけ後半が圧巻だ。たとえば、クーデターの中でなくなったパブロ・ネルーダ(1970年のノーベル文学賞受賞者でアジェンデの親友)の家が立ち入り禁止になっている様子を撮影している。当時、ピノチェットに対峙して武装闘争を展開していたマヌエル・ロドリゲス愛国戦線(FPMR)との会見も実現し、その映像を収録した。さらにクーデターの勃発からアジェンデの死までを秘書や主治医など側近たちの証言で再構成している。
歴史の事実は、映像や文字で記録しておかなければ消えてしまう。その意味で、『チリ潜入記』は、ラテンアメリカの歴史の中で、極めて貴重なジャーナリズムの功績なのである。
日本の政治家にアジェンデの最後の1日を証言で構成した部分をよく見ていただきたい。自民党だけではなく、大衆の顔色ばかり気にしている野党にも見ていただきたい。政治家とは何かがよく分かる。政治家が豪邸に住んだり遊び人ではだめなのだ。
【写真】左:ミゲル・リィティン 右:ガルシア=マルケス
2018年07月13日 (金曜日)

憲法改正の是非を問う国民投票。それが実施される際に新聞社とテレビ局は莫大な広告・CM収入を手にすることになる。投票に先立って、賛否両派がPR作戦を展開するからだ。
そのPR作戦の規制に関して、民放テレビ局で組織する民放連(日本民間放送連盟)の見解が明らかになった。時事通信の報道によると、「民放連は規制に慎重な姿勢を示した」という。
衆院憲法審査会は12日の幹事懇談会で、憲法改正国民投票をめぐり、テレビCMなど有料広告規制の在り方について日本民間放送連盟(民放連)から意見を聴取した。
民放連は法規制に慎重な姿勢を示した。一方、立憲民主党など野党側は規制強化を主張しており、本格議論は秋に想定される臨時国会に持ち越された。■出典
民放連は規制を設けないことで、テレビ局が莫大なCM収入を得られる条件を整えようという魂胆のようだ。
そんな野心に加勢するかのように、この記事は最も肝心な情報を隠している。
◇肝心な点を隠した報道
改憲派(自民・公明)は、これまでの慣例からすると電通をパートナーとして改憲を是とするPR作戦を展開する。電通と組むことで圧倒的に優位な作戦を展開できる。
テレビCMには、時間帯による「放送枠」というものがあるのだが、それを所有している割合が圧倒的に多いのが電通であるからだ。しかも、「放送枠」は、少なくとも3カ月前に予約しなければ確保できない。
そうなると改憲派の与党は、国民投票の実施日を秘密裏に計画し、それにそって国会を運営し、同時に電通を使ってかなり早い時期から、CM「放送枠」を押さえることができる。これに対して、護憲派は野党が中心なので、国民投票の実施日を事前に知ることが出来ず、しかも、「放送枠」そのものが少ない。結局、ほとんどCM戦略を展開できないことになる。
憲法改正国民投票の問題は、改憲派と電通が手を組んで、潤沢な資金をバックに大がかりなCM作戦を展開する一方で、護憲派は準備段階から遅れを取り、ほとんどPR活動が出来ない点にある。
それを是正しようという声が国民の間からあがっているのである。
しかし、時事通信の記事は、この肝心な点を隠して、「民放連は法規制に慎重な姿勢を示した」とだけ報じているのだ。新聞社とテレビ局が莫大な広告収入をほしがっているから、最も大事な情報を隠したのである。
ここにも日本のジャーナリズムの深刻な構造的問題がある。
この問題は、作家の本間龍氏が詳しい。参考までにインタビュー記事を紹介しておこう。
【参考記事・ビジネスジャーナル】憲法改正と電通、国民投票の危険な欠陥…巧妙な情報操作でメディアと国民は改憲に傾く

ジャーナリズムの分野といえば、新聞、放送、雑誌、書籍、インターネットと多岐に渡るが、相対的に見て最も健全でレベルが高いのは書籍である。取材にかなりの時間を要する上に、情報量が多いので、制作する際に読者に読ませるための技術を駆使しなければならない。それだけに書籍の価値は、記事や映像とは比較にならない。極論すれば、映像などはイメージの世界なので、どうにでもごまかし(印象操作)ができる。
日本の出版ジャーナリズムは、優れた作品を数多く生み出してきた。
その出版ジャーナリズムがメディアコントロールにさらされる危機に直面している。書籍に対する消費税の軽減税率の適用を求めて、出版関係の業界団体が、政界と「交渉」に入っているのだ。政界もそれに理解を示している。両者の関係が親密さを増している。
去る6月11日には、国会議員で構成する活字文化議員連盟(細田博之会長)と子どもの未来を考える議員連盟(河村建夫会長)が、合同総会を開き、書籍に対して軽減税率を適用する方針を決めた。新聞と同様に、書籍についても消費税8%に据え置く方向を打ち出したのである。
新聞に対する軽減税率の適用はすでに決定している。この種の優遇措置としては、他にも再販制度などがある。これらの制度と引き換えに、新聞は「政府広報」に変質しているのである。新聞がジャーナリズムになりえない最大の要因である。
ところが軽減税率の適用問題を通じて、今度は出版業界も新聞業界と同じ道を進もうとしている。癒着の構図が生まれようとしているのだ。6月の合同総会には、日本出版書籍協会の相賀昌宏理事長をはじめ200名を超える出版関係者が参加したという。
◇言論抑圧の具体的な手口
安倍政権下で言論を抑圧する動きがますます活発になっている。その手口は単一ではない。次のようなものがある。
①政治家が出版社(新聞社を含む)の経営上の弱点を把握した上で、それを救済する政策を打ち出すことで、癒着関係を構築する。例としては、新聞に対する軽減税率の適応、再販制度の維持、「押し紙」の放置。
②法整備を進める。例としては、特定秘密保護法や共謀罪法の制定。
③名誉毀損裁判を多発させる空気を形成して、法的に表現の枠を規制する。例としては、ヘイトスピーチをめぐる一連の裁判。原告らは、この構図には気づいていないようだ。
ちなみに政治家と出版人の会食などは、枝葉末節にすぎない。また、出版物の内容を批判されても、新聞社・出版社は何の痛痒も感じない。「見解の相違」と言えばすむからだ。ところが既得権益や法整備など、客観的なもので攻撃されると、抗し切れない。
【写真】自民党の細田博之議員(活字文化議員連盟会長)

2018年5月度の新聞のABC部数が明らかになった。それによると、各社とも大幅に部数を減らしている。前年同月比でみると、朝日は約31万部、読売は約35万部、毎日は約21万部、日経は約29万部を減らしている。中央紙5紙は、この1年で、約120万部を減らしたことになる。詳細は次の通りである。
朝日:5,903,454(-312,681)
毎日:2,791,678(-212,136)
読売:8,441,979(-351,575)
日経:2,424,004(-292,079)
産経:1,466,881(-54,060)
ABC部数の減少傾向にまったく歯止めがかかっていないことが判明した。ただ、ABC部数には、「押し紙」(偽装部数)が含まれており、ABC部数が減少している背景には、新聞社が「押し紙」を減らし始めている事情があるようだ。必ずしも、新聞の定期購読者が激減しているとは限らない。
しかし、読者が微減を続けていることも事実である。特に高齢者が健康上の理由で購読を中止したり、死亡による購読停止が増えている。いずれ紙の媒体としての新聞が歴史を閉じることは間違いない。
【動画】「押し紙」の回収現場
2018年07月10日 (火曜日)

マイクロ波による人体影響を考慮して、ヨーロッパでWi-Fiを規制する動きが広がっている。サイゾー(CYZO Inc.)のウエブサイトが、9日に報じた。
マイクロ波は、放射線(電磁波)の一種で、スマホやワイヤレスPCのほか、電磁レンジでも使われている。WHOの外郭団体である国際がん研究機関(IARC)は、2011年5月、マイクロ波に発癌性がある可能性を認定している。マイクロ波を24時間発している基地局周辺に住む住民の間で、癌の発症率が高いことも、海外の疫学調査で明らかになっている。
【参考記事】携帯電話のマイクロ波と発ガンの関係、ドイツやブラジルの疫学調査で危険性が顕著に、問題多い日本の安全基準
ところが日本では、マイクロ波による人体影響は、ほとんど報じられていない。それどころか国策として、マイクロ波を利用した無線通信網の整備が進んでいる。その結果、Wi-Fiが公立学校まで、普及しているのが実態だ。
マイクロ波の危険性を大半の人がまったく知らないのが実態だ。しかし、欧米では、いよいよその危険性が否定できなくなってきたのである。その結果、次のようなことが起こった。
Wi-Fi規制の動きは徐々に広がりを見せ、今ではベルギー、スペイン、イスラエル、オーストラリア、イタリア、スイス、ドイツ、オーストリア、インド、フィンランド、キプロスなども追随している。
◇日本でますます進むマイクロ波の利用
ヨーロッパの動きとは対象的に、日本の「IT産業界はひたすら5Gの技術革新を目指している」のが実態だ。
5Gとは、高速かつ大量のデータ送受信がこれまで以上に可能になるIT技術だが、密集している多数の端末と基地局が効率よく通信できるよう、ビームを分割多重して発射し、これまで使われていなかった高周波数帯であるミリ波帯を主に使い、多数のアンテナ素子を用いて電波を目的の方向に集中させる「ビームフォーミング」なるものだ。
その通信速度は従来の100倍。全てのインターネット接続装置を一まとめにつないでしまう、まさに、電磁波の集大成である。アメリカでは5Gの普及を目指し30万個のアンテナを新たに設置するという。
しかし、アメリカ国内でもマイクロ波のリスクを指摘する声があがりはじめた。
こうした中、IT産業のリーダー国であるアメリカでさえ、次第に眉をひそめるエンジニアたちが現れている。シリコンバレーのエンジニアから、行き過ぎたIT技術の蔓延による健康被害を守る活動家に転身したジェレミー・ジョンソン氏のTEDスピーチが、アメリカで話題を呼んでいる。
彼は人体が受ける電磁波を図で示しながら、「IT産業がここまで盛んではなかった時代、僕はこんなに頭痛持ちではなかった」、「電磁波にまみれた普通の生活を営み続け、健康を害した人たちを多く見てきた」などと述べている。
アメリカ・コロンビア大学で生理学の教壇に立つマーティン・ブランク博士は世界中の科学者たちと手を組み、5Gタワーの設置を抑制するよう、国連に働きかけている。電磁波と生殖機能、脳腫瘍発生リスクを懸念しているのだ。■出典
◇災害時の通信網という嘘
このようなニュースがウエブサイトで紹介された意義は大きい。日本のマスコミは、産業界の権益に反する記事は掲載しないからだ。伝えなければならないことは伝えない。伝えなくてもいい、プライバシーの曝露には世界一熱心だ。メディアのあり方に構造的な問題があるのだ。
ちなみに総務省と電話会社は、無線通信網を整備する口実として、災害時の通信網として有効というプロパガンダを流しているが、電話ケーブルが切断されると携帯電話も使えない。電波に乗った情報は、基地局からはケーブルで運ばれるからだ。嘘を平気で流布しているのが実態だ。
【動画】バリー・トラウアー博士に特別インタビュー

7月6日の午前、松本智津夫死刑囚ら7人のオウム関係者に対する死刑が執行された。これを機に、死刑の是非をめぐる議論が盛り上がっているようだ。1日の7件もの死刑を執行し、しかも、その日、西日本の大水害とも重なったにもかかわらず、安倍首相ら自民党の関係者が宴会を開いたことも、批判に拍車をかけた要因のようだ。
死刑についての是非は、国際的には、否定的な傾向が強まっている。アムネスティ・インターナショナルのデータによると、1970年の段階では、死刑制度を持たない国は、たったの13カ国だったが、2017年には106カ国に急増している。
アジアでは、韓国は既に死刑制度を廃止している。これに対して、中国は死刑制度を維持している。中米ニカラグアでは、1979年の革命までは死刑制度があったが、革命後、廃止され、内戦時の戦争犯罪を裁く裁判では、最高刑が懲役30年という前提で行われた。グアテマラも廃止しており、2013年には、元独裁者リオス・モントに対して禁固80年の判決が下っている。
世界的には、民主化と連動して、死刑制度も廃止の方向へ向かっているのだ。
死刑を廃止した国数は次のように変遷してきた。
1970年:13カ国
1980年:23カ国
1990年:46カ国
2000年:75カ国
2005年:86カ国
2010年:96カ国
2011年:96カ国
2012年:97カ国
2013年:98カ国
2014年:98カ国
2015年:102カ国
2016年:104カ国
2017年:106カ国
(出典:アムネスティ・インターナショナル)
◇冤罪の多発と死刑制度
日本には死刑制度がある。刑の執行は、2008年度(福田内閣・麻生内閣)の15件という例外はあるものの、10件を超えることはない。安倍政権下で劇的に増えた事実もない。これが客観的な死刑執行の実態である。
死刑について考える場合の視点は複数ある。たとえば、裁判で人が人を裁く権利があるのかという哲学的な問題である。人を裁く権限を国から与えられた裁判官は、ただならぬ特権を持つ職であるが、政治に配慮しながら、判決を下している人が多いのが実態だ。
また冤罪も多く、無実の人に対して刑を執行するリスクがある。たとえば飯塚事件では、無実の人に対して刑を執行したのではないかとの強い疑惑が浮上している。日本で最も問題視しなければならないのは、冤罪の問題だと思う。特に冤罪という観点を優先して、緊急に死刑制度を考えてみるべきだろう。
ちなみに8日夜に、松本智津夫死刑囚らが、NHKに事件の真実を語っていたとする趣旨のドキュメントをNHKが放送したらしい。「真実を語らないまま死刑が執行された」という世論の批判に対する政府側の反論を代弁したのかも知れない。
【写真】松本智津夫元死刑囚

本日、発売の『紙の爆弾』に、「東京五輪選手村1200億円 官製談合疑惑」と題する筆者のルポが掲載されている。オリンピック・パラリンピックをめぐる水面下の汚職疑惑の手口を解説している。
以下、冒頭の部分を紹介しよう。
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新聞研究者の故・新井直は、『ジャーナリズム』(東洋経済新報社)の中で、ある貴重な提言をしている。
「新聞社や放送局の性格を見て行くためには、ある事実をどのように報道しているか、を見るとともに、どのようなニュースについて伝えていないか、を見ることが重要になってくる。ジャーナリズムを批評するときに欠くことができない視点は、『どのような記事を載せているか』ではなく、『どのような記事を載せていないか』なのである」
新井の提言を念頭に、新自由主義が大手を振って歩きはじめた二一世紀初頭の報道検証をするとき、ある大がかりな官製談合事件疑惑が浮上してくる。
その現場は、東京オリンピック・パラリンピックの選手村を建設中の晴海五丁目。東京湾の埋め立て地で、銀座から三キロという好立地でもある。かつてはモーターショーがコミックマーケット(コミケ)が行われていた「東京国際見本市会場」の跡地だ。また、石原慎太郎知事時代には「二〇一六東京五輪」のメインスタジアムが計画された〝ワケあり″の土地でもあった。
選手村にあてるエリアは、一三〇〇億円に相当する一三.四ヘクタールの都有地だが、驚くべきことに、この土地がたった一二九億六〇〇〇万円で、ディベロッパー(開発業者)に譲渡されたのだ。
一平方メートルあたりに換算すると約一〇万円である。なんと約一二〇〇億円の値引きである。森友学園の「八億円値引き」とは比較にならない。桁違いの数字なのだ。なぜ、こんな土地取引が可能になったのだろうか。その謎を追ってみよう。
二〇一八年六月一四日、筆者は疑惑の現場に足を運んだ。大小のコンクリート・ブロックを散りばめたような遠方の市街地と高層ビル群を背に、赤と白のクレーンの細長い腕が、幾本も空に向かって背伸びしている。作業現場のあちこちで黄色い重機が玩具のように動いている。東京湾を渡ってくる風の音に、重機のうなるようなエンジン音や、車両を誘導する警備員の笛の音が混入する。これが選手村の工事現場である。【続きは、「紙の爆弾」8月号】
【参考ビデオ】【動画】東京オリ・パラの選手村予定地の売買をめぐる重大疑惑、東京都が1200億円の値引き、払い下げ先は、三井・住友・三菱など大口ディベロッパー

「押し紙」に関連した情報を集めているツイッターがある。「世直し神@押し紙告発アカウント 」(https://twitter.com/yonaoshigami?lang=ja)で、「押し紙」に関する興味深い情報が集まっている。もちろん情報というものは、充分な裏付けがなくてはならいが、少なくとも新聞業界の腐敗した実態を反映していることは間違いない。
参考までに2,3紹介しよう。
①イオンの株主総会で、新聞の押し紙が取り上げられたようです。 http://www.henkou.org/archives/9945378.html … イオンとしてはそれを認識しており、相当厳しく確認して部数を配布しているとの事、来年は数字を確認して、新聞社がそれを知っているか聞けばよい。 これが出ると押し紙訴訟で有利になる。(渡邉哲也)
②うちのアパートに入居していた配達員の方が押し紙について告発して販売店はその方を解雇したことを覚えています。我が家に宝島社の取材がありました。しばらく後、大学の朝日新聞OBの講義で『新聞のこれからの課題』のレポートで押し紙について書いたら講師はスルー…。(神戸市会議員 うえはた のりひろ)
③押し紙の最終処分か?リサイクルセンターで見つけた未読の新聞の山。沖縄二紙は購読数を公表していませんが、実数を偽り広告をとり、売れ残りを廃棄してるならマズイのでは?さてどこの新聞か判りますか?(ボギーてどこん)
◇臭いものにはフタする日本の国民性
「押し紙」の実態は、かつてに比べると改善しているが、依然として販売店の経営を圧迫している。1981年から85年にかけて、共産・公明・社会の各党が15回に渡って新聞販売問題を取りあげ、その中で「押し紙」の実態も曝露されたが、その後、国会質問は絶えた。2017年になって、共産党の清水忠史議員が2度に渡り国会質問を行った。今年に入ってからは、自民党の和田政宗議員が「押し紙」問題で公取委の姿勢を批判した。
再び「押し紙」問題が国会で審判にかけられる兆候があるが、議員と接触している知人によると、「押し紙」の存在を知っていても、いざ巨大メディアと対峙するとなれば、腰が引けてしまうらしい。「新聞社=恐いもの」という感覚に襲われ、おじけづいてしまうようだ。
しかし、先に紹介した渡邉哲也氏のツィートにもあるように、「押し紙」は企業間でも問題になり始めているのである。「押し紙」があれば、それとセットになっている折込広告も、秘密裏に廃棄されるリスクが高いからだ。
日本新聞販売協会の会報に記された記録では、 「押し紙」問題は、戦後まもない時期からあった。しかし、半世紀にもわたってこの問題が放置されてきた事実は、日本人の人間性を考える上で、重大な意味を持つ。「臭いものにはフタをしてしまえ」という文化が根付いてるのではないか。
実際、政治家も新聞人も、戦後、日本がアジアで犯した戦争犯罪の徹底検証を避けた。逃げたのだ。その姿勢が、その後、「臭いものにはフタをしてしまえ」という国民性を生んだ。それは現在もかわらない。広義のしばき隊によるM君リンチ事件も報じられない。隠蔽に協力している面々も多い。圧力に屈して途中で言説を曲げたダメな研究者もいた。
オリンピック選手村の建設用地の1200億円「値引き」問題もほとんど報じられない。マスコミが報じない社会問題の数は果てしがない。
ラテンアメリカやアジアから、日本はどんどん遅れている。

海外メディアによると、4日(現地時間)、フランスでフェイクニュースを取り締まるための法改正が成立した。大統領選挙を含む選挙時に、ラインなどでフェイクニュースを拡散する戦術が問題になり、マクロン大統領が自ら対策に乗りだした結果である。
しかし、何をもってフェイクニュースと定義するのか、今後、議論が白熱しそうだ。■出典
この問題は、今年の1月に、日本版の『ニュース・ウィーク』も取りあげている。冒頭部分を紹介しておこう。
フランスのマクロン大統領は1月3日、偽(フェイク)ニュース対策を進めるため、年内にメディア法を改正する方針を示した。ソーシャルメディアに拡散する偽ニュースは自由民主主義を脅かすとしている。
同氏は、昨年の大統領選で自身の陣営が偽ニュースや大規模なハッキングの被害を受けたと主張。昨年5月の就任後、ロシアの政府系メディアを名指しし、仏大統領選期間中に自身をめぐる偽ニュースを流し、選挙に影響を及ぼそうとしたと非難している。
同氏は新年の記者会見で「自由民主主義を守りたいなら、強力な法制が必要だ」と発言。メディアの規制機関である視聴覚最高評議会(CSA)の役割変更を検討していることも明らかにした。(中略)
偽ニュースが掲載された場合の緊急手続きとして、判事がコンテンツの削除、アカウントの閉鎖、サイトへのアクセス阻止を命じられる体制を整えるとしている。■出典
◇何がフェイクニュースなのか??
法律で言論を制限する動きは、日本だけではないようだ。おそらく同じ流れが日本にも入ってくるだろう。そのための前段なのか日本では、名誉毀損裁判で名誉毀損を認定する動きがますます活発になっている。昨日のメディア黒書でも述べたように、名誉毀損裁判の判決に政治判断が介入してくる温床がますます広がっているのだ。
フェイクニュースが社会秩序を乱すことはいうまでもないが、何をもってフェイスニュースとみなすのかという言論の自由にかかわる重大な問題は解決していない。フェィクニュースの定義があいまいなので、特定の情報にフェイクニュースのレッテルを張って言論統制が強化されるリスクもある。
たとえばM君リンチ事件の報道も、広義しばき隊の人々から見れば、フェイスニュースである。裁判所もそれを認定しかねない状態だ。「押し紙」報道にしても、読売新聞社や新聞協会から見れば、「押し紙」報道はフェイクニュースである。携帯電話に使われるマイクロ波による人体影響を指摘する報道も、日本の総務省からみればフェィクニュースなのである。
筆者は、フランスの国会はとんでもない過ちを犯したと考えている。こんな法律を作るよりも、メディアリテラシーの教育をしっかりすれば、どのようなメディアが信用するに値して、どのようなメディアが信用できないかを自分で判断できる人々が増えるのだが。多様な言論の中から、情報は自分で選ぶものだ。国家が定めた法律に選んでもらうものではない。
言論を法律で取り締まる愚かさを認識すべきだろう。
【写真】マクロン大統領

裁判の判決の中には、政治判断が色濃く反映したものが時々みられる。たとえば特定秘密保護法を合法とする判決などは、その典型である。
筆者が取材した裁判の中にも、この種の判決がある。第2次真村裁判がそうだった。日本の権力構造の歯車に組み込まれている新聞社を守るという観点から、販売店主を敗訴させたと推測される例である。この裁判がいかに不自然なものであったかは、拙著『新聞の危機と偽装部数』に詳しく記録している。
携帯電話の基地局撤去をめぐる裁判でも、ユビキタス社会の実現という国策を優先して、ことごとく原告が敗訴させられている。
ちなみに、 ユビキタス社会とは、「『いつでも、どこでも、何でも、誰でも』がコンピュータネットワーク、インターネットを初めとしたネットワークにつながることにより、 様々なサービスが提供され人々の生活をより豊かにする社会である」。(ウィキペディア)
今、わたしが政治判断が働いていると感じている裁判は、李信恵氏が起こしてきた差別的な表現をめぐる一連の裁判である。もちろん客観的に見て、被告の言動が名誉を毀損していることは否定できないので、政治判断による誤った判決とはいえないが、それにもかかわらず次のような力関係が働いていることはほぼ間違いないだろう。
つまり公権力としては、言論を規制する判例を次々と作ることで、言論の許容範囲を狭くしたい。表現を統制したい。これを政策の獲得目標として据えたとき、表現を争点とした裁判は、公権力にとって極めて利用価値が高いのだ。言論の幅を狭くする格好の機会であるからだ。
それゆえに表現をめぐる裁判は公権力にとっては大歓迎で、李の勝訴は記者クラブを通じて華々しく報じられるのだ。
ちなみに李氏は、自分が被告となったM君リンチ事件の裁判でも、免責されている。控訴審でどうなるかは今のところ不明だが、裁判にはめっぽう強い人物ということになる。
◇「釘バット」と凶器準備集合罪
言論をめぐる裁判や運動に対する公権力のスタンスには、注意する必要がある。利用価値があるものは、容赦なく利用する。裏面があるのだ。
公安警察と広義しばき隊の関係も要注意である。元しばき隊隊員の神原元弁護士は、ツイッターで、自身に対する懲戒請求者の個人情報を公安警察に提供することを提案しているが、他の側面からも公安警察と広義しばき隊の関係を検証する必要がある。
たとえば、広義のしばき隊が公安警察の監視対象になっているという話をよく聞く。インターネット上でもこの種の記述を時々みかける。しかし、筆者は、この話はかなりあやしいと感じている。
監視対象ではなく、むしろ彼らを放置する方針を取っているというのが実態ではないか、というのが筆者の考えである。仮に公安警察が、広義しばき隊を本気で取り締まりたいと考えているのであれば、口実はあるはずだ。たとえば凶器準備集合罪である。
二人以上の者が、他人に害を加える目的で凶器を準備したり、凶器の準備があることを知って集合する罪。刑法第208条の3の第1項が禁じ、2年以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられる。 (デジタル大辞泉)
次の写真は、いわゆる「釘バット」である。
取り締まらない理由は実に単純で、左派のイメージダウンに貢献してくれるからだ。
◇日本のカウンター運動
日本のカウンター運動を客観的に見たとき、民主主義を前へ進めるどころか、ブレーキをかけているような印象を受ける。もちろん、ヘイトスピーチなど相手を侮辱する行為そのものは誤りであると、筆者は感じる。しかし、それに対する反対運動の方法も間違っている。言論統制を進めるために、特定秘密保護法や共謀罪法案を設けた公権力に、彼らは上手に利用されているのではないか。
自分たちが正義のつもりでやっていることが、社会にどのような負の影響を及ぼすかのかまでは気づいていないようだ。
