2018年09月26日 (水曜日)

新聞の折込広告が水増しされていることは、いまや周知の事実となっている。しかし、広告主の中には、折込広告の発注枚数を減らさない者も少なくない。その理由として、最近、販売店から興味深い情報提供を受けた。広告代理店から広告主企業の担当員へ、キックバックが行われているというのだ。(もちろん一部の新聞である)
メディア黒書で繰り返し報じてきたように、「押し紙」率が5割を超えている販売店も珍しくはない。当然、広告主が自主的に折込広告の発注枚数を減らさなければ、「押し紙」と一緒に折込広告も廃棄される。それを承知のうえで、配布予定のない折込広告を発注し続けているわけだから、常識的に考えれば、騙されていることになる。
ところが実は騙されているのではないという。広告代理店から、裏金をキックバックしてもらうことで、広告主企業の担当者が私腹をこやしているというのだ。
◇新聞社販売局や広告代理店は伏魔殿
改めていうまでもなく、「押し紙」の存在を知りながら、発注枚数を減らさない広告主の代表格は地方自治体である。自治体の広報紙を新聞折込のかたちで配布するのだが、「押し紙」の存在を知っていながら発注枚数を減らさない。
減らさない理由は、ABC部数に準じて発注枚数を決めているからというのが、彼らの共通した言い訳だが、誰かにキックバックされている疑惑がある。
新聞社の販売局や広告代理店はクリーンな職場ではない。裏金づくりをしていたケースもある。1986年に発覚した毎日新聞不正経理事件がその代表格といえるだろう。これは販売局が、販売店に支出する補助金の一部を銀行の裏口座にプールして、遊興などに使っていた事件である。
当時、『週刊現代』がこの事件を報じた。しかし、『週刊現代』は書店に配本されたあと、たちまち回収された。後日、筆者がこの事件を取材した際に、関係者のひとりが、
「他の新聞社でも同じことをやっているから回収になったんですよ」
と、話していた。
新聞社販売局や広告代理店は伏魔殿といっても過言ではない。裏金づくりや詐欺が業務のひとつになっている可能性もある。全社とはいわないが。
折込広告の業務を通じたキックバックを証言する販売店主が現れても決して不思議ではない。調査する意義はあるだろう。とりわけ地方自治体のケースを調査する必要がありそうだ。

個々の新聞販売店における「押し紙」の実態は、「押し紙」裁判などを通じて明らかになったケースが数多くあるが、特定の新聞社の広域における「押し紙」の詳細も徐々に暴露され始めた。
最初に広域における「押し紙」の実態が表沙汰になったのは、2005年の毎日新聞社のケースである。社長室からもれた内部資料を『FLASH』などがスクープした。毎日新聞の全国における「押し紙」の実態が暴露されたのだ。それによると2002年10月段階で「押し紙」率は36%だった。
2016年には、北九州の地方紙(厳密にはブロック紙)である西日本新聞の佐賀県全域における「押し紙」の実態が明らかになった。この資料(2009年8月度)については、まだ認知度が低いので、再度紹介しておこう。
次に示すエクセルがその資料である。
【表の見方】
1、表の最左の縦列は、佐賀県下の新聞販売店を示している。
2、黄色の縦帯は、新聞販売店が西日本新聞に注文した部数を意味する。たとえば鳥栖中央店では、1,802部を注文したことを意味する。
3、緑の縦帯は、新聞社が実際に搬入した部数を示している。鳥栖中央店のケースでは、2,158部である。
つまり鳥栖中央店は、1802部を注文したにもかかわらず、新聞社は注文部数を超えた2,158部を搬入したことになる。
佐賀県下における「押し紙」率は17%である。新聞社サイドがこの資料を作成して販売店と共有していたわけだから、新聞社は注文部数を超えた部数を販売店に搬入していることになる。当然、誰が見ても独禁法の新聞特殊指定に抵触している。
残紙は予備紙という詭弁も成り立たない。残紙が回収された事実があるわけだから、予備紙としては使われていなかったことになる。

文部科学省の汚職が次々と明るみに出ている。
文部科学省の戸谷(とだに)一夫事務次官が、業者から不適切な接待を受けていたとして減給処分となり、きのう辞職した。
前任の前川喜平氏も天下りあっせん問題で辞職している。事務方トップが不祥事で続けて役所を去る。異常な事態だ。
次官だけではない。小中高や大学の教育をつかさどる局長2人と、官房の総務課長も同じ業者から接待を受けていた。省庁や政界にパイプを築き、情報がほしい大学や企業と行政をつないで利益を得る、ブローカーのような存在とみられている。
この業者との関係をめぐっては、別の幹部2人がすでに収賄の罪で起訴されている。(朝日新聞)
文部科学省の実態については、メディア黒書でも報じてきた。筆者が調査したのは、広告代理店との謎めいた取り引きである。
たとえば「日本人の海外留学促進事業」について言えば、たった9ページのごく普通のウエブサイトの制作で、博報堂に対して2100万円を支出していた。企業を対象として価格の相場は、300万円程度である。個人であれば50万円程度だ。
次に示すのが、裏付け資料である。
以下、文部科学省の疑惑を扱ったバックナンバーを紹介しよう。筆者は、これらの記事の裏付け資料を多くのマスコミにも提供したが、取りあげなかった。筆者一人で、この程度の報道ができるのに、人材が豊富な大手メディアが取材できないはずがないのだが。感覚がおかしいのではないかと本気で思う。
【バックナンバー】
■加計学園事件への関与が疑われている文部科学省、情報公開制度の運用にも大きな問題、審議会の命令にすみやかに従わず
■総務省の情報公開・個人情報保護審査会、文部科学省に対して黒塗りにした文書の一部公開を命じる
■環境省と文部科学省が国家予算を使ってメディア対策、博報堂のレクチャーを受ける、「取材対応演習」に36万円
■文部科学省、“どんぶり勘定”で国家予算を博報堂へ支出、800万円の仕事と8000万円の仕事の違いに疑問
■博報堂から自民党へ政治献金、深まる文部科学省と博報堂の闇、本当に必要なのか4件のウエブサイトに制作費・約4000万円
■文部科学省が黒塗りにした情報公開資料の中身が判明、博報堂や博報堂プロダクツなどに3つのウエブサイト制作依頼のデタラメ、総額1780万円に
2018年09月21日 (金曜日)

東京都が東京オリンピック選手村の建設予定地(中央区晴海5丁目、都有地)を時価の9割引きで、大手デベロッパーに売却した事件を裁く裁判に新しい動きがあった。既報したように、建設予定地は時価で約1300億円。一方、土地の売買価格は、約130億円だった。叩き売り同然である。
被告の東京都は、これまで原告住民らが主張してきた時価1300億円は推論であり根拠に乏しいと主張してきた。そこで原告は、不動産鑑定士に鑑定を依頼した。鑑定評価書は、すでに原告代表に届けられたという。
ミニコミ紙『臨海かわら版』(9月18日)によると、原告らは10月2日に都庁記者クラブで、午後2時から、記者会見を開き、鑑定結果を公表するという。『臨海かわら版』は、現時点では公式の鑑定額こそ公表していないが、「当初原告が周辺の公示価格や売買価格などから1300億円と想定していた額を大幅に上回ることになる」と述べている。
建設予定地の地価が鑑定士によって評価されたとなると、東京都は売買価格を10分の1(約130億円)に値引きした根拠を示さなくてはならない立場に追い込まれる。
大手デベロッパーとの間に、どのような話し合いがあったのかを明らかにしなければならない。小池知事は苦境に立たされそうだ。
◇オリンピックをめぐる不正の数々
東京オリンピックをめぐる様々な疑惑や問題点が次々に噴き出している。オリンピック関連の仕事で電通などがぼろもうけするにもかかわらずボランティアがただ働きさせられる件、読売・朝日などのメディア企業がオリンピックのスポンサーに名を連ねている件、高価なスタジアムが建設される一方で、いまだに東北地方で仮設住宅に住んでいる住民がいる件、そして公有地の叩き売り。
まるでかつてのメキシコなみの腐敗ぶりだ。三権分立もすでに崩壊の途にある。マスコミも大事なことは報じない。従って、「晴海都有地たたき売り裁判」で、住民が勝訴するとは限らない。
写真:舛添前東京都知事

このところ筆者のもとへ新聞販売店の廃業に関する情報が数多く寄せられている。昨日(19日)も、一通の匿名メールーを受け取った。次のような内容である。
東京都町田市のXX新聞の店、同時に3店やめました。
まだ裏付けは取っていないが、最近の情勢から判断して、特に驚く情報ではない。筆者は、ここ1年ぐらいの間に、新聞販売網の整理統合が急速に進むと予測している。
◇真村裁判・福岡高裁判決の意味
新聞の衰退がメディアで本格的に報じられるようになったのは、2007年の秋からだ。雑誌が、次々と「新聞没落」、あるいはそれとよく似た題の特集を組み始めた。筆者がなんらかのかたちでかかわったものだけでも、次のような特集がある。
「新聞没落」(週刊ダイヤモンド)2007年9月22日号
「新聞の余命」(SAPIO)2007年11月
「ジャーナリズム大崩壊」(SAPIO)2008年11月
「新聞・放送に未来はあるのか」(マスコミ市民)2009年10月
その他にも、「週刊東洋経済」がこの種の特集を組んだ。週刊誌も断続的に「押し紙」を取りあげている。
しかし、2009年7月に『週刊新潮』の「押し紙」報道に対して、読売が名誉毀損裁判を起こしたのを機に、「押し紙」報道は萎えていった。この裁判では、筆者も被告だった。筆者はこの裁判の他に、読売から2件の裁判を起こされ、総計で約8000万円を請求された。
読売の主張は、「押し紙」は1部も存在しないというものだった。これが真実であると、読売代理人の喜田村洋一弁護士(自由人権協会代表理事)らが、法廷で主張したのである。
たとえば週刊新潮の裁判で、読売の宮本友丘専務は、喜田村弁護士の質問に答えるかたちで、次のように証言した。
喜田村弁護士:この裁判では、読売新聞の押し紙が全国的に見ると30パーセントから40パーセントあるんだという週刊新潮の記事が問題になっております。この点は陳述書でも書いていただいていることですけれども、大切なことですのでもう1度お尋ねいたしますけれども、読売新聞社にとって不要な新聞を販売店に強要するという意味での押し紙政策があるのかどうか、この点について裁判所にご説明ください。
宮本:読売新聞の販売局、あと読売新聞社として押し紙をしたことは1回もございません。
喜田村弁護士:それは、昔からそういう状況が続いているというふうにお聞きしてよろしいですか。
宮本:はい。
喜田村弁護士:新聞の注文の仕方について改めて確認をさせていただきますけれども、販売店が自分のお店に何部配達してほしいのか、搬入してほしいのかということを読売新聞社に注文するわけですね。
宮本:はい。
◇筆者の主張は、「押し紙」は存在する
一方、筆者の主張は読売にも「押し紙」が存在するというものだった。
判決は読売の勝ちだった。しかし、筆者は、判決は間違いだと今も確信している。これから販売網の崩壊がはじまるわけだが、筆者としてもこの時期に改めて、過去の「押し紙」問題を検証していきたい。
2007年に「新聞没落」の特集が始まって11年。多くの読者が、「新聞社はしぶとく、没落は始まらないではないか」と感じていたのではないかと思う。しかし、いま本当に始まっている。
◇渡邉と喜田村の重い責任
2007年に「新聞没落」の報道が始まった引き金は、読売・真村裁判の福岡高裁判決である。
この裁判は、「押し紙」裁判ではなく、販売店の地位保全の裁判だったが、その中で読売の「押し紙」政策が認定されたのである。ABC部数の水増しの手口も、判決の中で認定されている。
読売の「押し紙」が認定された事実を、筆者が『月刊HANADA』で指摘したところ、読売の滝鼻広報部長が抗議文を送付してきた。
次に紹介するのは、滝鼻氏に対する筆者の反論だ。抗議文を読んでいない人にも、理解できるように構成している。
■読売の滝鼻広報部長からの抗議文に対する反論、真村訴訟の福岡高裁判決が「押し紙」を認定したと判例解釈した理由
福岡高裁判決の判例があるからこそ、その後、徐々に「押し紙」にメスが入ったのである。数々の裁判を起こしてきた渡邉恒雄氏と喜田村弁護士は、今後、「押し紙」と関連がある過去の数々の訴訟について、説明責任を果たす必要があるだろう。裁判で数多くの人々を傷つけている。
新聞崩壊を前に、彼らが販売店に対してやったことを記録として残す必要がある。物事の終わりは、始まりでもある。情報を求む。
【情報提供の窓口】048-464-1413 (秘密厳守)
2018年09月19日 (水曜日)

朝日新聞本社(東京・築地)で先月(2018年8月)、関西発で全国1千店弱の家電店をフランチャイズ展開するアトム電器が、朝日販売店主向けに加盟説明会を開催した。
新聞の表向き刷り部数であるABC部数が凄まじい勢いで減るなか、業界全体で会社の垣根を越えた販売店の統廃合計画(1つの販売店で全紙を配達)を水面下で進めざるをえなくなり、多くの店主が廃業・業態転換を迫られているのだ。
いわば、切り捨てられる販売店主向けに、朝日が転職活動を斡旋しているのである。「私のところにも案内状が来ました。大谷選手(MLBエンジェルス)と同様、“二刀流”はむつかしいです」(参加を見送った店主)。
1年間の研修を受けられるとはいえ、新聞屋から“町の電器屋さん”への転換は容易ではない。だが、それも選択肢に入れねばならないほど、新聞業界の将来に光は見えない。既に、エアコン掃除などの事業を副業で始めた店主もいるという。新聞崩壊の内情をレポートした。【続きは、 MyNewsJapan】
2018年09月18日 (火曜日)

このところスポーツ現場におけるパワハラ問題が次々と報道されている。女子レスリング、ボクシング、体操、野球、陸上競技、そしてウエイトリフティング。こんな現象は、スポーツジャーナリズム史上かつてなかった?
が、パワハラの問題は、今にはじまったことではない。昔からあった。筆者が高校生だった1976年ごろは、スポーツにパワハラはつきもので、国士舘大学を卒業したばかりの柔道部の教員が、椅子を振り回して、それが生徒の側頭部に命中し、口角から血を流しながら、ほうほうのていで床を滑るように逃げる事件もあった。新任教員はさすがに職員会議で注意されたそうだが、特に大きな問題にはならなかった。
体育と暴力が結びついた悪しき構図が、日本のスポーツ界にはびこり、現在でも完全にはなくなっていない。それゆえにパワハラが報じられるようになったのは、歓迎すべきことだ。
しかし、パワハラ批判の報道の背景にある構図を想像すると、釈然としないものを感じる。オリンピックを前にして、政治的な力が働き、それにメディアが協力している構図である可能性が高いからだ。
おそらく東京オリンピックを前に、スポーツ界から不祥事を一掃することで、日本の国際的な信用を高めようという意図があるのだろう。オリンピック成功のための準備である。だから必ずしもメディアが問題意識を持ち、自主的にパワハラを報じはじめた結果ではないだろう。
一方、視聴者の側は、これまでメディアがパワハラをあまり報じなかったために、最近パワハラが横行しているように錯覚しているだけの話である。
メディアの独立性ということを考えると、パワハラ報道を喜んでばかりもいられない。だれが日本のメディアを支配しているのかを、オリンピックを前に改めて見せつけられた。
生活保護制度の運用を抑制したいときは、メディアが生活保護を受けている人々の不祥事を盛んに報じる。安保関連法案を成立させたいときには、中国や朝鮮の脅威論をメディアを通じて拡散する。日本の大半のメディアは権力構造の歯車に組み込まれ、その中で広報活動をしているに過ぎない。
そういう力学が働いているのである。
何を報じ、何を報じないかは、各メディアの自由だ。それが編集権である。その編集権をどう行使するかで、メディアの性格が決まるわけだが、NHKを筆頭にだれが編集権を握っているのかよく分からないメディアが多い。
パワハラ報道は画期的であると同時に、日本特有のメディアの構図を典型的に露呈している。
2018年09月15日 (土曜日)

地方自治体の予算の使い方に疑義がある場合、地元住民は訴訟という手段で抗議することができるが、国家予算の疑義については、訴訟を提起する制度がないことを、読者はご存じだろうか。筆者は2016年から17年にかけて、中央省庁の予算の使い方を徹底取材し、その中でずさんな出費の例を数多く見つけた。
そこで裁判を起こすことを視野に入れて弁護士に相談したところ、そのような制度は日本にはないことを知った。国家予算の使い方を司法で正すことはできないのだ。
次の記事は、内閣府から大手広告代理店に対して実施された疑惑の出費の一例を紹介したものである。2016年06月09日 の記事の再録だ。
日本のメディアの2大汚点は、新聞部数の「偽装」と、テレビ視聴率の「偽装」である。
新聞とテレビは、日本においては系列関係にある。彼らの共通した収入源のひとつに公的機関からの広告費、CM費、それに企画費などがある。その額は膨大になる。庶民感覚からすれば、公的資金の「ぼったくり」と評価されてもやむを得ない。
このようなビジネスを仲介しているのが大手広告代理店である。
筆者の手元に、2通の内部資料がある。読売新聞社が民間企業A社に提示した広告提案書と、株式会社読売エージェンシーが発行した公共広告の請求書である。
結論を先に言えば、両者の書類にはいずれも紙面広告の価格が提示され、しかも、両者間に凄まじい価格差がみられる。
◇民間企業A社の広告価格は1300万円
まず、民間企業A社が2011年6月に読売新聞東京本社から打診された広告の提案書を紹介しょう。この企画は、朝刊と夕刊に広告をそれぞれ4回掲載することを提案したものである。広告のスペースは選択できる。朝刊の場合、最大で全面広告(15段)にすることが可能だ。一方、夕刊は最大で10段のスペースである。
広告価格は、朝刊と夕刊が連動していたり、あるいはシリーズ広告にすることで提案価格に幅が生じる傾向があることを若干考慮する必要があるけれど、単純に朝刊の全面広告を1回掲載した場合の試算価格は、1269万6000円である。これに若干の「企画運営費」が請求されるので、おおむね1300万円ぐらいの価格になる。
ただし、既に述べたように、この広告企画は、4回シリーズ、朝刊と夕刊の連動であるから価格幅がある。そうはいいながらも、筆者が取材した限りでは、全国紙の民間企業向け全面広告の相場は500万円から1000万円前後という答えが多いので、上記の試算に大きな間違いはないだろう。
◇内閣府の広告価格は約3200万円
一方、公共機関が読売新聞の朝刊に全面広告を掲載する場合は、どの程度の価格が設定されるのだろうか。これを知る恰好の資料が筆者の手元にある。
2011年3月11日に掲載された内閣府の「自殺対策」の全面広告である。
読売エージェンシーが内閣府に送付した請求書によると、この広告の掲載価格は、3194万5500円(消費税を含まない)となっている。
民間企業Aに対して提案している価格の3倍近い価格が請求対象になり、実際に支払われているのである。公共広告が新聞社や広告代理店の大きな収入源になっている実態があるのだ。
ちなみに読売に「自殺対策」の広告が掲載されたのとほぼ同じ時期、3月1日に朝日新聞にはやはり内閣府の「消費税および地方消費税」をテーマとする全面広告が掲載されてる。
価格は3092万8275円である。さらに毎日新聞にも、「消費税および地方消費税」の全面広告が掲載されており、こちらの価格は1921万5000円である。
民間企業A社に提示された価格、約1300万円が適正だとすれば、公的機関に対して提示される価格は、極めて高額だと言わなければならない。しかも、役所の側はおそらく慎重な検討も経ずに承認しているのである。
こうして公共機関がメディアの大きな収入源になってしまったのである。

(本稿は、『紙の爆弾』(9月号)に掲載したルポ、「三宅雪子元衆議院の支援者「告訴」騒動にみるTwitterの社会病理」をウエブサイト用に修正したものである。)
「心理作戦」という戦法がある。相手に精神的なゆさぶりをかけて、自分に有利な状況を作る戦術のことである。たとえば仮病で同情を惹く。暴力団員を装って交渉を優位に進める。その中でも最近、とりわけ増えているのが、裁判提起など法的措置をほのめかして、相手を恫喝する手口である。それは著名人についても例外ではない。
2017年5月10日、1件の「告知」がインターネット上のツイッターに投稿された。
「本日、以下のアカウントに対して名誉毀損で告訴状を提出致しました。@gachktmama0113,@torch2012,@nanachan77,@makimakiia,@him_beereほか二名 私の名前を出してのツイート、家族知人、仕事先への接触を固くお断りします」
これを投稿したのは、元衆院議員の三宅雪子である。刑事告訴が事実であるにしろ、単なる「心理作戦」であるにしろ、告知に自分のアカウントがあった5人は動揺した。
三宅のツイッターのフォロワーは、約5万8000人。ツィートの拡散が繰り返されると少なくとも15万人ぐらいの人の目に「告知」が知れるだろう。
◆刑事告訴は事実なのか?
5人のうちのひとり主婦の新垣里美が当時の心境を打ち明ける。
「電話が鳴るたびに、警察からの連絡ではないかと緊張しました。取り調べを受けるときにそなえて、資料を準備し、説明の順序も頭の中で整理していました。たまらない心理状態でした。告知を受けた5人の中には、緊張で体調がおかしくなった人もいます」
が、警察からも検察からも連絡はなかった。2018年8月で、「告知」から15カ月になるが、告訴の真相を知る手がかりはない。新垣が続ける。
「果たして三宅さんは本当にわたしたちを警察に刑事告訴したのか、単なる脅しだったのか、今でもわかりません。」
筆者は三宅に対して、5人を告訴した理由をツイッターのDMで問い合わせた。すると夫の会社に対する嫌がらせが原因で、証拠もあるという趣旨の返信があった。しかし、「捜査中」なので取材には応じられない旨も伝えてきた。
結局、DMによる取材は受け入れられないとして、DMの公表も断ってきた。DMで筆者に伝えた内容も公式の回答ではないと言っている。
そこで7月13日、筆者は通常のメールで公開質問状を送ったが、これにも返答はなかった。筆者が質問したのは、5人に対する①告訴は事実なのか、②告訴先の捜査機関はどこか、③告訴の容疑は何か、という三点だった。
なぜ、三宅はツイッターで5人に対する刑事告訴を公表したのか?本人からは明確な回答はない。そこで筆者は、それを推測するために取材で集めた資料を再読・整理した。その結果、三宅と支援者の間にさまざまなトラブルが発生していたことが分かった。5人に対する刑事告訴は、三宅サイトからの対抗措置ではないかと疑い始めたのである。
最初に紹介するトラブルは、会社社長・山川博之が巻き込まれた例である。新垣らは、後に山川に同情を寄せるようになる。そのことを三宅はどう感じたのだろうか?
◆三宅雪子を支える会
2012年12月4日、衆院選が公示された。この日、千葉県船橋市の三宅事務所には、100人を超える三宅の支援者が顔を揃えた。その多くはツイッターでの呼びかけ
に応じて集まってきたボランティアの人々だった。小沢一郎の熱心な支援者でもある。三宅は2009年の衆院選では群馬4区から立候補して初当選していたが、今回は千葉4区から立候補したのである。対立候補は、首相の野田佳彦だった。
山川は公約を反故にして消費税を導入した野田を落選させたいという気持ちで、野田の対立候補だった三宅を支援することにしたのである。しかし、三宅の人間性はよく知らなかった。選挙期間中にも、三宅と言葉を交わしたことはなかった。
もちろん、後日、三宅とのトラブルに巻き込まれるとは夢にも思わなかった。
そんなこともあって三宅が落選すると、支援活動からも身を引いた。
ところが、2013年の参議院選挙の公示が近づくと、山川は三宅事務所から連絡を受けた。参院選に出馬するので選挙を支援してほしいというのだった。山川は承知して、街宣車を運転するなど、選挙運動を手伝った。
この選挙でも三宅は落選した。しかし、その後、10名ほどのボランティアで
「三宅雪子を支える会」が結成されたので、山川も引き続き応援することにした。こうして三宅との親交を深め、三宅の母が亡くなったときには、葬儀記録のカメラマンを務めるなど、熱心な支持者となったのだ。
◆支持者をストーカーよばわり
このころまでは、山川は三宅との関係もよかった。しかし、一方で三宅に対し不可解なものを感じていた。三宅はツイッターに熱中していて、投稿数が尋常ではなかった。そのうえツィートの内容にも首をかしげたくなるものが時々あった。山川は、これでは支援者が離れてしまうのではないかと危惧した。
実際、山川自身も三宅を支援する気持ちが急激に失っていった。そして2014年の暮れには、「三宅雪子を支える会」からも脱退した。山川と前後して会を脱退したメンバーも数人いた。
三宅がツイッターで山川を批判しはじめたのは、15年になってからだった。たとえば次のツィートは、8月20日のものである。
「(アカウントは略)葬儀でqmei99(山川のアカウント)が私の家族に興味を持ち立ち入ってきたのがストーカー行為の始まり。他人の家に土足で入ってはいけないんです。何回も何回もやめてくれと言いました」
最初は匿名だったが、qmei99をみればそれが「山川」のアカウントであることを知る人は多かった。そのうちに三宅は、「山川」という実名を名指しにしてツィートを投稿するようになった。そのため小沢支持者の間で、「山川」の知名度が一気に高まったのである。もちろん山川自身も三宅に対してツイッターで「反撃」している。不穏当な投稿もあった。
三宅から刑事告訴の告知を受けた新垣ら5人が、ネット上で山川の存在を知ったのは両者の「炎上」始まってからだった。5人は山川に同情して、山川に肩入れしたツィートを投稿するようになる。5人とも熱心な三宅支持者だったが、支援からも遠ざかった。三宅に対する認識を改めたのだ。
◆勤務先に送付された怪文書
山川がトラブルに巻き込まれた2015年、三宅を柱としたもうひとつの「炎上」がネット上で同時進行していた。会社員・長谷川洋一が巻き込まれた事件である。この事件にも、新垣ら5人が巻き込まれており、三宅に悪感情を抱かせる一因になったかも知れない。刑事告発の根底にある第2のトラブルかも知れない。
東京地裁に保管されている長谷川が三宅に対して起こした裁判の記録によると、長谷川は2012年の衆院選で、ボランティアとして三宅の選挙運動に参加した。長谷川はその後も、三宅の支援団体「支えあう社会を実現する会」の代表を務めるなど、熱心に三宅を支援した。
ところが、その長谷川も前出の山川と同様に三宅と決別することになる。長谷川の陳述書によると、長谷川は三宅と山川の「炎上」を円満に解決するために、生活の党の仲介を求めるなど、山川を救援する行動を取った。それが原因だったのかどうかは不明だが、三宅は長谷川のツイッターをブロックしてしまった。
三宅に対する支援活動は、2013年の参院選で三宅が落選した後、終了していたが、これにより長谷川は、三宅のツイートさえ見られなくなったのだ。そこで三宅と決別したのである。
しかし、それで長谷川が平穏な生活を取り戻したわけではない。事件は新たな展開をみせる。インターネット上の火花だけではすまなくなったのだ。
長谷川の勤務先であるKKM株式会社(仮名)に、三宅の支援者である乾信二という男性から、一通の怪文書が送付されたのである。
◆「非通知でお電話してくださいませんか?」
この怪文書は、長谷川ら複数の者が「徒党を組んで毎日欠かさず」三宅を誹謗中傷していると述べていた。
長谷川については、
「元々は三宅雪子氏の熱烈な支援者でありました」、
「今年のある時期を以て、長谷川氏は態度を豹変させ、三宅雪子氏を攻撃する人物に変身してしまいました。その原因については、部外者の私には分かれかねます」、
「長谷川氏のようなチンピラまがいの社員が在籍することは、■(文字不明)に残念でなりません」
などと述べている。さらに乾は、KKM株式会社が長谷川本人を事情聴取することや、長谷川を懲戒することを要求している。
この事件を調べる中で筆者は、ある人物から貴重な情報を入手した。北海道に在住する衣笠毅である。衣笠は、一貫した小沢支持者で70才を超えたいまも、その信念にゆるぎはない。衣笠は年金の中から、三宅に個人献金をしていた。と、言うのも、ツイッター上の「炎上」を見ていて三宅の方がむしろバッシングされていると感じたからだ。
その衣笠の所へ、三宅からツイッターのDMが届いた。
「お願いがあります。KKM株式会社に偽名、非通知でお電話してくださいませんか?近く、長谷川氏、謝罪に追い込めそうです。もう会社は、把握しています。番号、03-■■33-0■2■(代)総務ヤギ(仮名)さん。ただ、長谷川洋一マネージャーの嫌がらせをやめさせて欲しいというだけ」
もちろん衣笠は電話しなかった。衣笠も三宅から距離を置き始めた。すると三宅は、ツイッターで衣笠の実名を暴露して罵倒するようになった。次のような調子だ。
「衣笠さんに、精神的にレイプされたんですよ。何回も何回も、名前呼び捨て、事実未婚(ママ)のデマ。精神的にレイプされたんです。何の弁明もさせてもらえなかった」
◆2件の起訴猶予
実は、ここに登場した山川、長谷川、それに衣笠の3人の男性は、いずれも三宅に対して堪忍袋の緒が切れて、法的措置を取っている。このうち山川と衣笠は、刑事告訴に踏みきり、いずれも起訴猶予を勝ち取っている。「猶予」であるから、起訴すれば、三宅が有罪になる可能性が高い。
山川は、刑事告訴に加えて民事訴訟も起こしている。三宅が山川に対して民事訴訟を起こしたのに対抗した提訴である。
一方、長谷川は、三宅と彼女の支援者である乾に対して民事裁判を起こした。勤務先に怪文書を送付されたり、ツイッターで名誉を毀損されたというのが、長谷川の主張である。三宅は、法律がらみのさまざまなトラブルに巻き込まれたのである。しかも、三宅を提訴したり告訴したのは、熱心な元支援者だった。
長谷川が起こした裁判が始まってまもなく新垣里美らは、乾から相談を受けた。乾は、裁判の経験がなく激しく動揺していた。新垣は、乾が気の毒になった。そこで対策に乗りだした。
新垣は数人の仲間を誘って、長谷川に乾と和解するように説得しはじめた。その結果、乾が長谷川に30万円の解決金を支払うことなどで、両社間の和解が成立した。こうして乾は裁判の舞台から降りて、三宅とも決別したのだ。アカウントも閉じた。三宅は、熱心な支援者をまたひとり失ったのである。
◆ツイッターの社会病理
2017年5月10日に、三宅からネット上で刑事告訴を「告知」された5人は、三宅の「敵」である山川に加勢したり、乾を救済するために、やはり三宅の「敵」である長谷川と接触したメンバーなのである。
こうした新垣らの「支援活動」に対抗して、三宅も5人を刑事告訴し、ツイッターで告知したという推測は、一応、成り立つ。
ただ、その刑事告訴そのものが事実かどうかは分からない。告訴から15カ月が過ぎても、捜査機関から新垣らに連絡がないという異常事態が続いている。
双方のツィートの名誉毀損性をどう評価するかは、多様な見方があり単純に白黒を付けるわけにはいかないが、筆者が問題にしているのは、むしろ「議論」がネットの枠を超えて、事件にエスカレートしている事実である。怪文書の送付から非通知の偽電話の工作依頼まで尋常ではない行動に出ていることだ。
5人は、今後も捜査機関からの呼び出しに備えなければならない。それは残忍な心理的拷問にほかならない。仮に三宅による刑事告訴が虚偽であれば、元国会議員による前代未聞の恫喝事件になるが、その答えが出る日は見通せない。
キーボードを弾くだけで頭に閃いた言葉が文字になり、不特定多数の人々にあっという間に発信されてしまう。それがどんな展開になるのかを想像できない。感情の先行。熟慮の欠落。言葉のハンマーが繰り返し振り下ろされ、人間関係を破壊していく。これがネット社会が生み出した闇と社会病理ではないだろうか。
2018年09月13日 (木曜日)

文科省が7月に発表した「高等学校学習指導要領」の解説で、教材として新聞の活用が推奨されていることを読者はご存じだろうか。「総則編」の中に7箇所も、新聞の活用が明記されている。たとえば次の箇所である。
各種の統計資料や新聞,視聴覚教材や教育機器などの教材・教具の適切な活用を図ること。
日販協(日本新聞販売協会)の『日販協月報』(4月)によると、新聞を活用する教育方針は、高校だけではなく、小中学校でも導入される見込みだという。
小中学校の次期指導要領改訂案でも、新聞を活用する方針が盛り込まれ、国語では小学5年、6年で複数の本や新聞を用いることを明記。中学2年は新聞などで情報を集め、中学3年で論説や報道を読み比べするように求めている。
◆3つの問題点
新聞関係者は教育の中に新聞を持ち込む運動を展開してきた。しかし、いくつかの根本的な問題がある。
①新聞を通じて得る情報の大半が記者クラブを経由している事実。
新聞の情報は、記者クラブを発信源とする情報で基本的には記者が自分で取材した情報ではない。当然、情報の提供者にとって不都合な情報は隠してある。
事実を正確に伝えていない場合がままある。
新聞が何を報じていないのか、あるいはどのような情報を隠しているのかを検証するために、新聞を活用するのであればまだしも、新聞の情報は信頼するに値するという前提で、新聞を教材として使うことには問題があるだろう。
②「押し紙」問題を解決しようとしない問題企業の商品を教育の現場に持ち込む愚。
「押し紙」は、独禁法で禁止された違法行為である。また、「押し紙」と表裏関係にある折込広告の水増し行為は、刑法上の詐欺に該当する。さらに地球の温暖化が急速に進む状況下で、「押し紙」は環境問題でもある。紙を製造するために、日々、森林が失われている。
児童や生徒から、これらの諸問題を指摘された場合、情報の信憑性について質問されたら、教師は答えようがないのではないか。
③政府による新聞の保護
さらに学校教育の中に新聞を取り入れることにより、政府が新聞社経営をサポートする構図が生まれる。本来、ジャーナリズムと公権力は共存すべきものではない。ジャーナリズムの使命である権力批判ができなくなるからだ。
教育現場での新聞の使用がエスカレートすれば、新聞はますます世論誘導の道具としての負の性格を強めていくだろう。
【動画】水増しされた折込広告の搬出風景。段ボールの中に廃棄される折込広告が入っている。

チリの軍事クーデターから45年が過ぎた。チリの「9.11」は、ラテンアメリカの人々にとっては、記憶の中の色あせた遠い事件になっていくどころか、ますます鮮明さを増し、多様な観点から再考される事件である。常に現在へ蘇ってくるのだ。
実際、キューバのプレンサ・ラティーナ紙やメキシコのラ・ホルナダ紙などラテンアメリカの主要な新聞(電子)は、今年も「9.11」についての記事を掲載している。スペインのエル・パイス紙も、この事件を取り上げている。
チリの軍事クーデターからは、政治力学の問題と、内政干渉(海外派兵)の問題が鮮明に見えてくる。
◆「政権を取ることよりも、取った後の方がむつかしい」
1970年、南米チリでサルバドール・アジェンデが社会党、共産党、キリスト教民主党の3党の共闘で大統領に当選した。選挙というかたちで、世界ではじめて左派
の連合政権(UP)が成立したのである。議会制民主主義を重視しながら、社会主義へ移行するという壮大な挑戦が始まったのだ。チリ革命は、国際ニュースの表舞台へあがったのである。
しかし、アジェンデ政権は、チリに権益を持つ多国籍企業(特に鉱業)などから激しい反発を受ける。米国による経済封鎖に加えて、「資本家のストライキ」まで起こり、チリ経済は混乱に陥る。アジェンデ大統領も、「政権を取ることよりも、取った後の方がむつかしい」(『チリの全記録』)と言っていたらしい。
1973年に国会議員の総選挙が行われた。この選挙で、予想に反してアジェンデ政権の与党が勝利する。この時点でアジェンデ政権を合法的に倒すことが不可能であることがはっきりしたのだ。
米国のCIAは、後に独裁者となるピノチット将軍ら軍部と共謀してクーデターを計画する。アジェンデ政権をつぶすことを決めたのだ。
最初、ピノチットはアジェンデ大統領に対して、海外亡命を勧告した。そのための飛行機を準備すると申し出たのである。が、アジェンデ大統領はそれを断り、大統領官邸の職員を避難させたあと、数人の側近と共に大統領官邸に残り、ラジオを通じて最後の演説を行った。それから大統領官邸にせまってきたチリ軍と銃撃戦を交えたのである。しかし、最後は激しい空爆を受け、大統領官邸に突入してきた部隊に射殺された。
ただちに戒厳令が敷かれて、アジェンデ政権の支持者に対する徹底した弾圧が全土に広がった。歌手のビクトル・ハラや詩人のパブロ・ネルーダも殺された(注:ネルーダについては病死説と殺害説があるが、後者が有力になっている)。
余談になるが、1979年のニカラグア革命の後も、同国に対してチリと同じような挑発行為が始まった。米国が経済封鎖を仕掛け、コントラと呼ばれる傭兵を使って、隣国ホンジュラスから革命政権の転覆を企てる工作が開始されたのである。ニカラグア内戦は、1990年まで続いた。
◆政治の力学
政治というものは、政治家の理想どうりに進むものではない。実は、水面下で政治を牛耳っている別の勢力があるのだ。それは財界である。経済をコントロールしている財界が、政治にも介入しているのである。
逆説的に見れば、政府は財界の企業活動のために便宜をはかるための事務処理機関にすぎない。安倍晋三が日本の政治を動かしているように見えても、実は財界の要望に応じて、手足を動かしているだけに過ぎない。外遊を繰り返すのも、遊びが目的ではない。企業の海外進出の土壌を整えるのが目的である。それが多国籍企業の要望なのだ。
改めていうまでもなく、政治力学が働いているのは日本だけではない。
アジェンデ大統領は、こうした政治力学に正面から対抗した人物なのである。政治力学の前にあっけなく屈した鳩山由紀夫氏とは、政治家としての資質が異なる。野党が信用できないのも同じ理屈だ。
◆海外派兵の真の目的は?
誰が政治を牛耳っているのかという観点から、憲法改正や自衛隊の海外派兵について考えると、これらの政策も実は財界の要求であることが分かる。企業活動に国境がなくなるにつれて、財界は多国籍企業の権益を守るという課題を解決しなければならない。
チリの多国籍企業にとってはアジェンデ政権は受け入れがたい存在だった。と、すれば武力を行使するか、スパイを送り込んで、暴力で不都合な政権を転覆させなければならなかった。それが米国とその同盟国の方針なのだ。
ラテンアメリカでは前世紀まで、繰り返しCIAによる挑発や米軍による派兵が繰り返されてきた。
1980年代のニカラグア、エルサルバドル、グアテマラに対する米国の内政干渉もチリと同じ原理が働いていた。しかし、チリの人びと同様に、彼らも屈することはなかった。これが中米紛争の構図だった。
日本のメディアは、1990年代初頭にPKOが始まると、海外派兵の目的は、国際貢献することにあると報じるようになったが、これは本質的には完全な間違いだ。海外派兵は、多国籍企業の利益にそわない状況が生まれたときに、それをつぶすことを目的としているのである。
そのことをチリの悲劇は教えてくれる。
このドキュメントの7:50秒から、軍事クーデターの全容がたくさんの関係者によって証言されています。「戒厳令下チリ潜入記(後編)」

2018年7月度の新聞のABC部数が明らかになった。それによると、読売新聞が年間で約39万部を減らしたのを筆頭に、朝日新聞も約33万部の減部数、毎日新聞も約23万部の減部数と、軒並み大幅に部数を減らしている。新聞の没落に拍車がかかっている。
日刊紙全体でみると、1年間で162万部の減部数。地方紙は、中央紙ほど減部数を招いてはいないが、それでも低落傾向に変わりはない。
中央紙の部数は次の通りである。()は前年同月比である。
朝日:5,841,951(-325,986)
毎日:2,733,053(-225,206)
読売:8,386,497(-385,198)
日経:2,407,722(-292,840)
産経:1,464,724(-56,991)
なお、ABC部数には、「押し紙」が含まれているので、実際に配達されている部数(実配部数)はABC部数よりもはるかに少ない可能性が高い。また、減部数の原因は、読者の減少に加えて、新聞社が「押し紙」を減らした結果である可能性が高い。それだけ新聞販売店が経営難に陥っているといえるだろう。
