2017年03月08日 (水曜日)

環境省から博報堂へクールビスのプロジェクトなどで支払われた約12億の明細を公開するように、筆者は環境省に申し入れた。環境省は、「検討する」と回答した。

筆者は昨年、環境省に対して博報堂から環境省へ送付されたすべての契約書、見積書、それに請求書を情報開示するように手続を行った。

これに対して環境省は、5件のプロジェクトに関連した契約書・見積書・請求書を提出した。このうちクールビスのプロジェクトに関して、成果物を開示させるなどして検証作業を行った。その中で、成果物と請求額に整合性がない疑いが浮上した。少なくとも筆者は、そんな印象を受けた。

その理由のひとつは、成果物を示した実施報告書の一部に記述のパクリがあったからだ。複数ある異なるプロジェクトの実施報告書の記述に、まったく同じ記述が見受けられるのだ。それぞれのプロジェクトの担当者が、自分の言葉で書いた文章でないことは明らかだ。

以下に示すように、2つのページの赤枠で囲んだ部分以外が、パクリの箇所である。このページでは、4分の3がパクリである。

■パクリ箇所の実物(赤枠以外が全部パクリ)

こうした事情から、筆者は見積もり明細を調べる必要を感じ、(注:明細は開示されなかった)環境省に申し入れたのである。見積もり明細を開示しなかった理由について、環境省は次のように述べている。

◇内閣府官僚、1970年代から博報堂へ天下り

「営業努力によるところが多いので開示しなかった」

この説明だけでは達意に欠け、よく分からない。「営業努力しなかったから、価格が高くなり、恥ずかしくて公開できない」ということなのか、それとも「見積もりは博報堂の営業上の秘密なので公開できない」ということなのか、真意が分からない。国会予算の明細を秘密にするのは誤りだ。

ちなみにクールビスのプロジェクトのうち、「平成27年度低炭素社会づくり推進事業委託業務」は、請求明細の徹底検証が必要だ。と、いうのもプロジェクトの途中で、契約価格が変更されているからだ。

最初に設定された価格は、約7億6600万円だった。契約日は「平成27年」の4月9日である。博報堂側の契約者は、戸田裕一社長。

ところがこの契約は、同年の6月12日に、約8億6300万円に変更になっている。約一億円の上積みはなにかを検証する必要がある。

■1億円上積みの裏付け資料

メディア黒書で繰り返し報じてきたように、内閣府や省庁から莫大な国家予算が湯水のように博報堂に注ぎ込まれている。しかも、このような傾向は今に始まったわけではない。過去には、3年で約90億円が環境省から博報堂へ支払われた事実もある。

天下りも多い。これについても今に始まったことではない。環境省については調査中だが、内閣府と警察関係者については、少なくとも1970年代の半ばから行われてきたことが、各種の人事欄に記録されている。

2017年03月07日 (火曜日)

かつて新聞は、「インテリが作って、ヤクザが配る」と言われた。ところが最近は、「日本人が作って、外国人が配る」と言われるようになった。

筆者の手元に朝日新聞の新聞配達員が急激に減っていることを物語る1枚の「お知らせ」がある。朝日新聞・東京本社管内の販売店に配布されたもので、そこには外国人の「新聞奨学生」が来日するスケジュールなどが記されている。

3月13日(月)モンゴル21人、ネパール1便16人
3月14日(火)ベトナム1便ホーチミン76人・ダナン15人
3月15日(水)ネパール2便16人
3月21日(火)ベトナムハノイ101人、ネパール3便14人
 中国・インドネシア・台湾未定(3月中旬)

■裏付け資料

都内の販売店員に尋ねたところ、新聞配達の人員が極端に減っているのだという。そこで海外から「奨学生」をリクルートするようになったのである。

新聞が「危篤」状態になっていることを物語っている。新聞販売店の自主廃業が増え、新聞販売網は半ば崩壊していると言っても過言ではない。しかし、販売店の「押し紙」小屋は常に満杯だ。

当然、労働環境も劣悪になる。そこで日本で働くことを希望する発展途上国の人々を新聞配達員として使うようになったのである。

◇過去には韓国人ブローカーが介在

新聞奨学生は、奨学金を受けることにより、転職の自由どころか、廃業の自由もほとんど失う。奨学金で新聞販売店に縛り付けられるからだ。これはいわば借金である。そのために重労働で体調を崩しても、なかなか「奨学生」を辞めるわけにはいかない。

こうした状況の下で、1990年代には、読売新聞の奨学生が過労死している。いわゆる上村過労死事件が起きた。都内の店主が言う。

「外国人の奨学生が同じように過酷な労働をさせられるリスクは高いと思います。これから販売店の労働問題が急浮上してくるでしょう」

実は、海外から新聞配達員をリクルートする動きは、かなり以前からあった。
筆者は2009年に、MyNewsJapanに次のような記事を書いている。

 ■  時給5百円未満!朝日新聞販売店の奨学生、韓国ブローカー2万円“ピンハネ”で

これは海外での奨学生のリクルートに韓国人ブローカーが介在していた事件である。このような危機的な状況になっても、新聞人は、いまだに「押し紙」は1部も存在しないと主張している。販売店を苦しめている。

ジョン・スタインベックの小説『怒りの葡萄』には、砂嵐と銀行に農地を奪われたオクラホマの農民が、新天地を求めて旅を続け、たどり着いた楽園、カリフォルニアで過酷な労働に遭遇する姿が描かれているが、同じことが日本でも起こりそうだ。

2017年03月06日 (月曜日)

環境省が2015年度に博報堂に発注したクールビス関連の事業は、少なくとも総額で約12億円になることが、情報公開で入手した資料によって分かった。主要なものは次の通りである。

①平成27年度CO2テクノロジーアセスメント推進事業委託業務
約9900万円

②平成27年度CO2削減アクション推進事業委託業務
2億2500万円

③平成27年低酸素社会づくり推進事業委託業務
8億6300万円

①から③のテーマから察し、分割して発注する必要があるのかも疑問だ。具体的にこれらの国家予算をどのような用途に使ったのかもよく分からない。見積書の明細を、環境省が開示しなかったからだ。

②と③の実施報告書の冒頭にある「業務の目的」の記述は、約7割がまったく同じだ。どちらかの文章をコピーして貼り付けた可能性が高い。読者には下記の2つのPDFでそれを確認してほしい。筆者が赤枠を付けた部分だけが、記述が異なる部分で、それ以外は一字一句同じである。

■①②の冒頭部分

他の箇所についても調査が必要だ。

◇内閣府と警察関係者が多数天下り

内閣府や省庁から博報堂への資金の流れを検証してみて、筆者は「役所」が博報堂に国民の血税を「くれてやっている」という印象をぬぐえない。しかも、このような国家予算の使い方が過去にも国会で問題になっている。

たとえば、2007年6月8日に、民主党の末松義規議員が、環境省から博報堂へ3年間で約90億円もの国家予算が、環境関連プロジェクトに支出されていた事実を国会で追及したことがある。

小泉政権末期の郵政民営化の時期には、郵政が自社の4つの分割会社のPR業務を博報堂に独占させる権利を与え、年間で200億円前後の発注が行われていた事実が、総務省の報告書でも確認できる。

「博報堂には民営化後の平成19年度の同グループの広告宣伝費約192億円(公社から承継された契約に係る部分を含む)のうち約154億円(全体の約80%)が、平成20年度の同247億円のうち約223億円(同約90%)が各支払われている」(『日本郵政ガバナンス問題調査専門委員会報告書の「別添」・検証総括報告書』、2010年)【博報堂関連の記述は29ページから】)

これではまるで博報堂が国策企業のような印象を受ける。しかも、筆者が取材したところ、「天下り」を通じた公権力と博報堂の癒着はかなり以前からみられるとの指摘も複数ある。

現在判明している天下りは、次の面々である。

■阪本和道氏(審議官)

■田幸大輔氏(広報室参事官補佐・広報戦略推進官)

■松田昇(最高検刑事部長)[博報堂DYホールディングスの取締役]

■前川信一(大阪府警察学校長)。[博報堂の顧問]

■蛭田正則(警視庁地域部長)。[博報堂DYホールディングスの顧問  ]

内閣府と警察の関係者が多いのが特徴だ。

ちなみに「博報堂DYホールディングス」の「D」は、広告代理店大広のことで、「Y」は、広告代理店読売広告を意味している。大広読売も、博報堂の一部であり、3者により想像以上に大きな勢力を形成している。そこへ国家予算が湯水のように注ぎ込まれてきたのだ。

◇国会予算のばらまきが復活

民主党政権の時代、国家予算の使い方に関して丁寧な検証が行われた。お金の無駄遣いをやめる方向性は、新自由主義の経済政策の目的である「小さな政府」を構築する方針とも折り合い、多くの議員がお金の無駄遣いを正す具体的な方策を検討した。

その代表的な政策案が議員定数の削減だが、博報堂への「資金提供」をやめて、もっと職能が高い中小の代理店を使えば、議員の報酬分ぐらいは浮いてくるだろう。議員定数を削減すると、国民の参政権が縮小するので、別の問題がある。代理店を変更することが先決だ。

民主党政権の努力がまったく生かされていないどころか、安倍政権下で、国会予算のばらまきが復活しているようだ。

 

【解説動画】内閣府と広告代理店・博報堂の不透明な取引

2017年03月04日 (土曜日)

博報堂を通じて国会予算を新聞社やテレビ局に湯水のように流し込む仕組みを解説した動画を制作した。この動画は、『週刊金曜日』(2月24日号)に掲載した「裁量は内閣府次第、政府広報費の杜撰な使い道」をベースにしたものである。

2017年03月02日 (木曜日)

博報堂を通じて巨額の国家予算をメディア企業へ流し込むカラクリを暴いた『週刊金曜日』(2月24日)の記事、「裁量は内閣府次第、政府広報費の杜撰な使い道」(黒薮執筆)のコピーを、1日、内閣委員会の国会議員58名に送付した。

日本の場合、欧米に比べて議員定数が少ないので、議員ひとりあたりの仕事の量が多く、積極的に国会質問を依頼しない限り、大問題が放置されてしまう可能性が高い。こうした配慮から、今回の記事送付に至った。

書き手の側は単に記事を執筆するだけではなく、資料の配布、講演、訴訟など、PRの舞台を自分で準備する必要がある。

記事に添付した手紙は次の通りである。

拝啓 
  時下ますますご隆昌のことと存じます。
 わたしはフリーランスのジャーナリストとして、メディアの問題を中心に取材・執筆している者です。このたび『週刊金曜日』(2月24日号)に内閣府の資金疑惑に関する記事を執筆しましたので、そのコピーを同封させていただきました。
  記事のタイトルは、「裁量は内閣府次第、政府広報費の杜撰な使い道」です。国家予算が見積書もなく、内閣府の判断ひとつで湯水にように広告代理店・博報堂へ支払われている実態を報告した内容です。

 特に問題なのは、文中にあります俗に「構想費」と呼ばれる知的活動に対する報酬です。2012年度が3,980万円だったものが、2015年には6,700万円になっています。関係者を取材した限りでは、何に使われていたのか、具体的な使途がほとんど分かりません。

 なお、博報堂に関しては、他の省庁との取り引きも調査しました。その結果、たとえば国勢調査の告知(政府の新聞広告)が、契約どおりに行われていないことも判明しています。2015年度の調査の場合、契約書によると延べ25件の政府広告を制作・配信することになっていましたが、このうち13件が「間引」かれ、12件しか掲載されていません。それにもかかわらず料金は、全額が徴収されています。

 また、文部科学省では、たった9ページのウエブサイトの制作に対して、2,100万円が博報堂へ支払われています。その前年にも、2本のウエブサイトが制作されています。

環境省のクールビスにも莫大な資金が投じられていますが、わたしが情報公開請求で開示させた「成果物」は、杜撰なものでした。

 これらを立証する資料は、すべて黒薮が保管しております。もし、国会で追及していただけるようであれば、資料を提供します。日本は国会議員の総数が欧米に比べ少ないためにご多忙なこととは存じますが、よろしくお願いいたします。

◇マスコミ向け国家予算の激増

「押し紙」問題についても、今後、同様のアクションが必要だろう。

広告代理店や新聞・テレビの問題は、巨大メディアが相手なので、国会議員も慎重になる。それでも、博報堂に関連した国会質問は、過去に民主党と共産党が繰り返している。「押し紙」問題の国会での追及も、1980年代に、共産党、公明党、社会党の各党が行った。

ちなみにマスコミに対する国会予算の支出が急激に増えはじめたのは、第2次安倍政権になってからである。行政事業レジューシートによると内閣府から支出された国策PRのための予算は、次のようになっている。

2012年度(野田政権):38億8300万円
2013年度(安倍政権):47億4700万円
2014年度(安倍政権):58億3700万円
2015年度(安倍政権):60億8600万円

こうした資金により、日本の新聞ジャーナリズムは骨抜きにされ、共謀罪のようなとんでもない法律が閣議決定されそうになっているのである。

2017年03月01日 (水曜日)

省庁などいわゆる「役所」に対して情報公開請求を申し立てると、役所がどのような情報を隠したがっているかが分かる。

■内閣府の不開示決定通知書

内閣府が筆者の情報公開請求に対して開示をかたくなに拒否している情報がある。それは電通が制作した新聞広告の版下価格だ。

メディア黒書で報じてきたように、政府の新聞広告の中には、電通が版下を制作して、それを博報堂へ譲り、博報堂が新聞各社に版下を配信してマージンを得ているものが複数ある。まったくあり得ないことではない(「制作代理店」と「媒体代理店」)が、これ自体に多少疑問がある。

もともと広告代理店の収益は、広告のマージンが大部分を占めるので、電通にとって版下を博報堂へ提供することは、納得がいかないシステムのはずだ。だが、内閣府はこのような方法を採用している。ちなみに版下制作費は、推定で30万円から100万円程度である。

当然、次のような疑惑が浮上する。新聞社への版下配信は、実はそれを制作した電通が行っていて、広告掲載料のマージンも得ている。電通は何の不利益も被っていない。その一方で、博報堂からも、広告掲載料として莫大な国家予算が支払されている。2重支払いの疑惑である。

このような疑惑が浮上する背景には、次のような事情がある。

①情報公開資料を、真っ黒にして、情報隠しをしている。

②博報堂が内閣府へ送付した請求書が、エクセルで作成されたものだった。通常はあり得ない。社の公式の請求書が使用される。

③請求書に日付が付されていない。これは会計システムに則して会計処理が行われていない証拠である。

④博報堂と内閣府の間で交わされた契約書に明記されたPR業務のうち、実際には履行されなかったものが含まれている。(フェイスブックやツイッターのコンテンツ制作) 

⑤総務省、文部科学省、環境省などでも、博報堂がからんだ経理の疑惑がある。たとえば文部科学省は、9ページのホームページ制作に2100万円を支出している。

⑥地方自治体のレベルでも、博報堂の業務が問題になったことがある。(盛岡市、大槌町、横浜市、志布志市など)

⑦民間企業との間でも問題を起こしている。

⑧過去に国会で繰り返し、博報堂の経理問題が取りあげられている。

◇悪質な騙しの手口

さて、電通が制作した新聞広告の版下制作費の情報開示を、内閣府が堅くなに拒否している問題に話を戻そう。筆者は拒否の具体的な実態を記録している。

筆者は、1月6日に、内閣府に対して次のような情報公開開示を申し立てた。

 平成27年度の「政府広報ブランドコンセプトに基づく個別広報テーマの広報実施業務等」の中で、博報堂がかかわった新聞広告の版下制作者と制作費を示す資料の開示。

「政府広報ブランドコンセプトに基づく個別広報テーマの広報実施業務等」とは、博報堂が内閣府と交わしたプロジェクトの名称である。このプロジェクトの中で、博報堂が配信する広告の版下の一部を電通が制作している事実がある。

そこで筆者は、その版下制作費の開示を求めたのである。もし、その金額が、莫大なものであれば、電通が既に版下を新聞各社へ配信して、広告掲載料を支払い、みずからはマージンを得ている可能性があるからだ。

ところがこの情報公開請求に対して、内閣府から連絡があり、次のように請求内容を変えてほしいと要請してきた。

  平成27年度の「政府広報ブランドコンセプトに基づく個別広報テーマの広報実施業務等」の契約に基づき博報堂が掲載を行った新聞記事下広告の中で、当該契約に基づき博報堂以外の社が版下を制作した新聞広告と、その版下制作会社を示す資料。

法律に無知な筆者は内閣府の提案を承諾した。が、これがトリックであることに後で気づいた。引用文の「当該契約に基づき」の部分に注意してほしい。当該契約というのは、「政府広報ブランドコンセプトに基づく個別広報テーマの広報実施業務等」のことである。

電通の版下制作は、「当該契約に基づ」いたものではなく、別の契約に基づいたものである。従って、電通が「当該契約に基づ」いて制作した版下は存在しない。情報公開以前の問題として、資料の不存在ということになる。こうして内閣府は、法律の知識に乏しい筆者を騙し、重要な情報を隠したのである。

実際、この情報公開請求は、「博報堂が業務の一部を第3者へ請け負わせた事実はなく、請求のあった行政文書は存在しないことから、不開示とした」と結論づけられたのである。

当然、内閣府の決定に対して、総務省(高市早苗総務大臣)に異議を申し立て、開示拒否のプロセスを明らかにする。

ちなみに現在、博報堂へ天下った阪本和道(内閣府)、田幸大輔(内閣官房出身)両氏の在職中の職務歴につて情報公開を請求している。こちらについては、筆者も徹底した調査を進めている。

2017年02月28日 (火曜日)

全国的に新聞ばなれが進むなかで、新聞社と販売店のトラブルが急激に増えている。こうした状況の下で、2月21日、佐賀新聞社の新聞販売店主・A氏が佐賀新聞社に対して地位保全裁判を起こした。「押し紙」を断ったところ、契約期間満了に伴う「契約更新拒絶」を通告され、これに対抗して法的な措置を取ったのである。

A氏の代理人を務めるのは、新聞販売店の訴訟で有名な江上武幸弁護士らのグループである。江上弁護士らは、昨年の夏にも、佐賀新聞社に対して「押し紙」をめぐる裁判を提起しており、今回の新たな訴訟提起により、佐賀新聞社は2件の訴訟をかかえることになった。

【参考記事】佐賀新聞の「押し紙」裁判、江上武幸弁護士ら原告弁護団が訴状を修正・再提出、「押し紙」の定義に新見解を示す

原告側が勝訴した場合、勝訴の判例が今後の「押し紙」裁判に大きな影響を及ぼす可能性もあり、裁判のゆくえが注目される。しかも、「押し紙」の証拠がかなりそろっており、裁判所が政治的判断をしなければ、原告が勝訴する可能性が極めて高い。

◇前代未聞、弁護士が内容証明で「押し紙」代金を請求

地位保全裁判を起こしたA氏は、2016年4月から、佐藤潤一弁護士を伴って佐賀新聞に対し、「押し紙」の解消を求める交渉をしていた。みずから新聞の注文部数を提示することで、過剰になる新聞の搬入を阻止しようと試みたのである。

ところが佐賀新聞社は、A氏の要求を無視して、従来どおりに過剰な新聞の搬入を続けた。そして「押し紙」分の部数についても、新聞の卸代金を請求し続けたのである。

これに対してA氏は、「押し紙」については支払いを拒否。その未払い額は、累積してゆき、2016年11月の時点で、約616万円に達していた。この金額の支払いを佐賀新聞社の代理人弁護士が内容証明郵便で求める前代未聞の事態も起きている。

それでも「押し紙」代金の支払いに応じないA氏に対して、佐賀新聞社が選んだ措置は、契約更新の拒絶の言い渡しであった。今年の3月末をもって、A氏との取り引きを行わないことを、弁護士を通じて通知してきたのである。

この裁判は地位保全裁判であるが、その原因となっているのは、「押し紙」問題である。当然、争点は「押し紙」になる。

◇弁護士が公式に「押し紙」の排除を拒否

A氏の代理人・佐藤弁護士は、江上弁護士らの新聞販売店弁護団に加わり、佐賀新聞社に対して、地位保全を求める訴訟を提起したのである。

原告弁護団によると、今回の仮処分申立は、次のような意味があるという。

・弁護士が代理して「押し紙」の解消(減紙)を求めたにもかかわらず、佐賀新聞は公式にこれを拒否。→違法行為の是正を拒否。組織的な「押し紙」政策を認めるに等しい。

・佐賀新聞が「押し紙」を認めたに等しく、今後、佐賀新聞には同様の「押し紙」解消、損害賠償の訴えが相次ぐ可能性、さらには、この動きが全国に波及する可能性もある。

◇弁護団声明

仮処分申立に際して、原告弁護団は全国の新聞販売店とメディアに向けて次のような声明を発表した。「押し紙」や強制改廃に対抗する方法も示している。

■弁護団声明の全文

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佐賀新聞押し紙訴訟弁護団 声明
平成29年2月22日
福岡県久留米市城南町22-9                  
法務会館4階C
佐賀新聞押紙訴訟弁護団
弁護団長 江上武幸
TEL:0942-30-3275                  
FAX:0942-30-3276  

当弁護団は、昨日2月21日、従前の廃業した販売店の損害賠償請求訴訟に加え、現役の販売店であるA販売店の委任を受け、販売店地位確認を求める仮処分申立を佐賀地裁に提訴しました。
A販売店は、昭和20年代から続く老舗の販売店ですが、全国的にみられる急速な新聞離れの影響を受け、押し紙の仕入代金の増加に苦しめられてきました。

そのため、このままでは販売店経営が立ち行かなくなることから、昨年4月、佐賀県弁護会所属の佐藤潤一弁護士に委任して、仕入れ部数の減紙の申し入れを行うことにしました。
佐藤弁護士は、A販売店主に「販売店経営に必要な部数だけを注文すること、新聞社が従前の部数を供給してきた場合は、押し紙の部数の仕入れ代金の支払いは保留しておくこと」を指示し、佐賀新聞本社に出向き、佐賀新聞の顧問弁護士を交えた席で、A販売店に対する押し紙を止めるよう申し出ました。

しかし、佐賀新聞社は、佐藤弁護士の数回におよぶ交渉にもかかわらず、A販売店の減紙の申出には応じることは出来ないという姿勢を変えようとはしませんでした。
のみならず、佐賀新聞社は、平成28年12月14日「4月からの滞納金が合計700万円を超えていること、減紙の申し入れは社の販売方針や販売店との取引慣行に違反する行為であること」を理由に本年3月31日の期間満了をもって契約を終了させ、以後は契約を更新しない旨を通知しました。

これまで、弁護士が新聞社に対し独禁法に基づく押し紙の禁止を求めたのに対し、それを拒否した例は聞いたことがありません。
そのため、佐藤弁護士はA販売店の経営を守るため、契約更新拒絶の無効を求める仮処分の申し立てを行うことを決め、当弁護団に裁判の協力を依頼された次第です。

弁護団の事務所には、中央紙・地方紙を問わず各地から押し紙の相談が寄せられています。この瞬間にも、押し紙のため経営困難に陥り、倒産の危機に瀕し、苦悩しておられる販売店主の方々がたくさんおられます。

■販売店の皆さんへ

皆さんが理不尽な押し紙の負担にひたすら黙って耐える時期は過ぎました。
押し紙の仕入代金の支払いのためにこれまでの蓄えを使い切り借金までして、なんとか経営を続けようと考えておられる販売店の皆さん。

今こそ、家族と従業員の生活を守るため、新聞社の横暴に断固として立ち上がり押し紙を返上しようではありませんか。

私たちは皆さん方に、次の提案を行います。

①注文票に実売数を正確に記載して新聞社に送って、そのコピーを残しておいて下さい。

②担当員に、実売数と適正な予備紙を超える部数の押し紙の減紙を申し出て、その時の会話を録音しておいてください。前後に会話した日時を録音しておいて下さい。

③実売数がわかる読者台帳、手板、領収書控、自振の銀行通帳、会計記録、決算報告書、確定申告書等の原本やコピーを保管しておいて下さい。

④販売局員(担当を含む)との面談や電話は、録音・日誌で記録に残してください。

⑤押し紙問題の経験のある弁護士に相談し、細かい指示を仰いでください。

黒薮氏にお尋ねいただければ、経験のある全国の弁護士の紹介が可能かと思います。

■メディアの皆さん、特に新聞記者の皆さんへ

新聞社の経営は、基本的に紙面広告収入と販売店の新聞仕入代金収入の2本立で成り立っています。押し紙をなくすことにより、販売店からの収入が減少すると同時に、紙面広告の媒体価値が少なくなりますので広告料の収入も減少します。従って、新聞社の経営にとっては大きなマイナスになることは避けられません。

しかし、新聞社の経営のために、零細な販売店の店主や従業員、その家族を犠牲にすることが許されないのは当然です。

そのようなことは、社会の木鐸である新聞社がとるべき経営姿勢ではありません。賢明な皆さまには、釈迦に説法のことと思います。

しかし、これまで、どれほどの数の販売店主や従業員、その家族が、新聞社のために犠牲に供され、人生を狂わされてきたか想像がつきません。
記者といえども生活があり家族があり、自社の新聞や系列のテレビで押し紙の問題を取り上げることが事実上できないことは十分理解できます。しかし、押し紙問題をこのまま放置しておいては、いずれ新聞社本体の存続にかかわってくることが予想されます。

戦争体験者から、国内的にも世界的にも、きな臭い戦前の空気を感じるとの声が聞こえてきます。

言論の自由を守り、戦争に反対し、平和の礎となる役割を期待されているマスメディア、とりわけ新聞の果たす役割は、今後、益々重要になってくると考えています。

新聞が、時の権力のいかなる不当な介入も許さず、国民の知る権利を守るという本来の使命を発揮できるようにするために、記者の皆さんが知恵と工夫を発揮して、まず自分の新聞社の押し紙問題を解決するために立ち上がられることを切に願っています。

以 上

2017年02月27日 (月曜日)

「折込広告の水増し詐欺を受けている疑惑があるので、相談に乗ってもらえないでしょうか」

ちょうど1年前、わたしは1本の電話を受けた。電話をかけてきたのは、福岡市に本社がある化粧品の通販会社・アスカコーポレーションの社員だった。折込広告の水増し問題は、新聞社による「押し紙」と共に、わたしのライフワークだったので、すぐに承知して資料を送付してもらった。

送付されてきた資料を検証したところ疑惑があったので、取材することを想定して、まず、最初のステップとして、資料の提供者が信用できるかどうかを直接確認するために、福岡市まで足を運んだ。

博報堂事件の取材をはじめてまもなく1年をむかえる。当初は予想しなかった大事件の様相を強めている。今、事件の輪郭が鮮明になってきた。

アスカコーポレーションを訪問して、事情を聞いた。その中で同社が受けた被害は、折込広告に関する疑惑に留まらないことが分かった。テレビCMを約1500本も間引かれていた強い疑惑があることなども分かった。CMが放送されたことを証明する放送確認書に、放送の完了を証明するコードが欠落しているものが多量にあるのだ。

さらにワードで作成した偽造の放送確認書の存在も判明した。

博報堂は、電通や東急エィジェンシーなどを追い出して、2008年から、同社のPR業務を独占してきたのである。

◇アスカから内閣府へ

わたしは、アスカコーポレーションを舞台とした博報堂のPR業務の手口を調べる作業に約半年を費やした。次に着手したのは、内閣府における博報堂の業務実態の調査だった。その糸口は、まったくの偶然に見つけた。

わたしは新聞を取材対象にしていることもあって、定期的に公共広告へ投じられる国家予算の実態を調査している。昨年の5月にも、内閣府に対して広告代理店との間で交わされた業務契約書などを情報公開請求して入手した。その資料を精査するなかで、1組(契約書と請求書)だけ不信なものがあることに気づいた。博報堂のものである。契約額が約6700万円で、請求が20億円を超えていたのだ。

この1組のケースを調べたところ、内閣府の裁量で湯水のように国家予算を博報堂に流し込むシステムの存在が分かった。支出の名目は、新聞広告やテレビCMなどPR費である。第2次安倍内閣になってから、博報堂を通じてメディア企業に莫大な国家予算が流れ込んでいるのだ。

2015年度に内閣府が博報堂へ支払った国家予算の総額は25億円を超えた。

◇内閣府から省庁へ

わたしは内閣府とは別の省庁も調査することにした。この作業は現在も進行中で、省庁のレベルでも博報堂に対する疑惑が次々と浮上しはじめている。

たとえば文部科学省を例にすると、2015年度、たった9ページのウエブサイトの制作費として2100万円が支払われている。その前年には、博報堂とその関連会社に、同じプロジェクトで2件のウエブサイトを発注している。これ自体が不自然だ。1プロジェクトに1件のウエブサイトで十分ではないだろうか。しかも、制作費が異常に高い。

日本の教育界の司令塔で、こんなデタラメがまかり通っているのだ。

総務省でも重大な疑惑が浮上している。国勢調査のPRで新聞広告が使われたのだが、契約書では、延べ25本の新聞広告を掲載する取り決めになっていたが、その半分以上にあたる13本が掲載されていなかった。しかし、契約どおりの額が請求(6億円、他のPR業務も含む)されていた。

環境省や防衛省との取引でも疑惑、あるいは不明瞭な点が浮上している。たとえば除染関連の事業で2011年に、環境省から博報堂へ9億6000万円が支出されている。博報堂に対して過去に3年間で約90億円が投入された事実も、国会質問などで明らかになっている。

防衛省は、契約書の情報開示を引き延ばしている。

日本中央競馬会(JRA)のPR事業も博報堂が請け負っていることが分かった。管轄省庁は農林水産省である。

博報堂には、JRAではギャンブルのPRを行い、その一方で文部科学省の教育プロジェクトのPRを担当するという矛盾した姿勢も見られる。企業コンプライアンスが問われる。

◇省庁から地方自治体へ

地方自治体における博報堂の業務につても、調査を開始した。その中でたとえばわたしは、神奈川県に対して移住促進事業に関する博報堂の関与を調べるために、同事業の契約書・見積書・請求書を情報公開請求で入手した。

この情報開示手続きの中で、開示に反対する意見書が提出された。意見書を提出したのは、神奈川県の説明によると博報堂だった。

現在、この意見書を開示するように情報公開請求の手続きを取っている。

こんなふうに博報堂事件は、最初は1民間企業が取材だったのだが、取材範囲が省庁や地方自治体へ拡大している。不正経理に関した取材であるから、当然、国税局や証券等監視委員会、それに会計検査院なども取材対象になっている。

◇内閣官房からも「天下り」

経理とは別の視点から、博報堂人脈の調査も行った。この人脈調査に関しては、匿名による情報提供により重要な事実を知った。内閣官房から1名、内閣府から1名、広報業務を担当していた官僚が、博報堂に「天下り」していることが分かった。次の2名である。

 ・阪本和道氏(元審議官)

  ・田幸大輔氏(広報室参事官補佐・広報戦略推進官)

このうち田幸氏は、内閣官房の所属だった。内閣官房とは、総理大臣の直属機関である。

民間から省庁に至るまで、共通しているのは、契約どおりに仕事をせずに請求書を起こしている点である。後付けで請求額を増やしたケースも多数確認できる。このようなやり方は、日本では通用しても、契約書を重視する欧米では通用しない。たちまち摘発される。

今後は、博報堂グループの読売広告社などを対象に、折込広告の業務についても調査する方針だ。

新聞業界・広告業界の業界には、マスコミタブーがあるので、巨大メディアがこれらの業界の闇を報道することはあり得ないが、インターネットでは十分に可能なテーマである。

■情報提供の窓口 048-464-1413(メディア黒書)

【主要記事】

博報堂事件の主要記事を紹介しておこう。

■【解説】奇怪な後付け見積書が多量に、博報堂事件の構図はどうなっているのか?

 

■放送確認書の偽造(民間企業アスカ):チャンネルMnetに質問状、放送確認書の偽造疑惑について

 

■テレビCMの中抜き(民間企業アスカ):博報堂系のスーパーネットワーク社にCM「間引き」の疑惑と温床、10桁のCMコードは未使用

 

■視聴率の改ざん(民間企業アスカ):テレビ視聴率「偽装」の決定的証拠を公開、博報堂の担当員はビデオリサーチ「視聴率」との差異をどう説明するのか?

 

■過去データの流用(民間企業アスカ):博報堂による「過去データ」流用問題、編集の実態、アスカ側は情報誌のページ制作費だけで7億円の過剰請求を主張

 

■総務省:博報堂による6億円事業、H27年度国勢調査の新聞広告の間引き、架空請求の決定的な証拠

 

■文部科学省:ウエブサイト9ページに2100万円を支出、国家公務員と博報堂の異常な金銭感覚、背任・詐欺の疑いも?

 

■環境省:博報堂、環境省のクールビスでも国家予算の使途に疑問符、新聞広告では読売と日経を優遇①

 

■防衛省:防衛省に対する博報堂からの請求、自衛隊音楽まつりの企画が4373万円にも、公金の無駄遣いの典型

 

2017年02月25日 (土曜日)

新聞販売店の自主改廃が急激に増えている。24日にも、現役の店主さんから電話があった。

「わたしだけではなく、隣の店もやめます。○市で店をやっていた友人の○○さんもやめます」

もはや1店、2店がたまたま廃業するという状況ではないのだ。将棋倒しのような現象が始まっている。

「押し紙」による莫大な赤字を背負わされて強制改廃される前に、自主廃業した方が賢明という判断である。

「この業界に希望があるなら、本社と交渉して、経営を立て直すことも考えますが、今の状況をみるとそんな気持ちにはなりません。今は所長が自分で新聞を配達しているところもあります」

いよいよ新聞の崩壊が近づいたのである。人の死に例えると、意識がもうろうとなりはじめた段階である。

◇「押し紙」排除と補助金のカットについて

最近、新聞社は販売店側から「押し紙」の中止を求められると、それに応じるようになった。もちろん全社がこういう方針を取り始めたわけではないが、少なくとも弁護士が介入してくると、頑なに新聞を押し付けることは少なくなった。また、「押し紙」を断っても、それを理由に販売店を改廃することもなくなった。強制改廃しても、後継者がいないからだ。

新聞社が「押し紙」を中止する際には、補助金もカットしてくる。しかし、これでは問題の解決にならない。販売店の経営は改善しない。

それに「押し紙」の排除と交換に補助金もカットする行為は、補助金で販売店に「押し紙」を買い取らせて、ABC部数をかさ上げしていた事実を示す決定的な証拠になる。これは独禁法に抵触する。

◇公取委に抗議

先日、かなり厳しく公正取引委員会に抗議しておいた。次のような趣旨である。

「『押し紙』問題は、30年も40年も前からある。業界では公然の社会問題。あなたがた公正取引委員会は、これだけ明白な独禁法違反を延々と見逃してきた。公務員として誠実に仕事をしていないのではないか?メディアコントロールを目的に、新聞社の『押し紙』政策を故意に放置してきたのではないか?」

 

 

2017年02月24日 (金曜日)

本日発売の『週刊金曜日』が、筆者(黒薮)が執筆したルポを掲載している。タイトルは、「裁量は内閣府次第、政府広報費の杜撰な使い道」、サブタイトルは「見積書もなく口頭とメモだけで博報堂に業務を発注」である。

改めて言うまでもなく、このルポは、筆者が取材している博報堂と内閣府の広報業務を通じたずさんな国家予算の使い方に疑問を呈したものである。内閣府から、博報堂を通じて、新聞社やテレビ局に、湯水のように国家予算を流し込む恐るべきシステムが、2012年ごろから構築されていることを暴露したルポである。

その役割を果たしていたのが、電通ではなく、博報堂だった。ブランドがある電通よりも、業界2位の博報堂の方が、このようなダーティーな役には適任だったということだろうか。ある種の盲点になっていた。

このルポでは触れていないが、最近、総務省が博報堂へ発注した国勢調査の公共広告(新聞)についても重大な疑惑が浮上している。契約では述べ25本の広告出稿が取り決められていたが、博報堂はこのうちの13本を「間引き」して、料金だけは契約どうりに徴収していたのだ。こうした不正行為が国勢調査の結果にも重大な影響を及ぼしたことは間違いない。

さらに文科省と環境省でも、博報堂との間に国家予算の使い方に関して疑惑が持ち上がっている。たとえばたった9ページのウエブサイトが2100万円(文部科学省)等・・・。

◇民間企業アスカの被害

さらに民間企業の被害としては、『週刊金曜日』の3回連載で取り上げたアスカコーポレーション(以下、アスカ)のケースがある。このケースは博報堂とアスカの双方が訴訟を起こしており、複雑な構図のように見えるが、実は単純だ。博報堂がアスカに未払金を請求しているのに対して、アスカが逆に業務の手抜きなどを理由に博報堂に対して損害賠償を求めているのだ。

両者の係争で特に注目されているのは、博報堂が仲介した放送局がアスカのテレビCMを多量に「間引き」していた疑惑である。テレビCMが放送された際に発行される放送確認書に不備があるものが多数(CM件数にすると1508ケース)見つかっており、しかも、その半分以上が博報堂系の衛星放送局・(株)スーパーネットワークが舞台になっている。

また、放送確認書が偽造された決定的な証拠もある。誰が偽造したかは不明だが、博報堂が放送局を仲介しており、責任は免れない。

さらにテレビCMなどを制作する際に博報堂が提出した番組提案書に、博報堂がビデオリサーチのデータを改ざんして記入していたことも明らかになっている。これらの事件は、下記の【博報堂関連の参考記事】に詳しい。

博報堂とアスカの係争の全体像については、次の記事を参考にしてほしい。

【解説】奇怪な後付け見積書が多量に、博報堂事件の構図はどうなっているのか?

 

◇地方自治体の被害

たとえば地方自治体を例にすると、2015年、12月8日付け『産経新聞』〈電子〉は、岩手県の大槌町が、東北博報堂(仙台市青葉区)に依頼した大震災の記録誌編集事業の契約を解除したことを伝えている。その原因は、「納期の7月に内容を確認したところ、被害状況などのデータの羅列にとどまり、震災の悲惨さを伝える記録誌としての完成度は低く、いったん期限を11月末に延長。9月には一部の文章で、県が発行した別の記録誌からの無断コピーも発覚した」(産経新聞)からである。

また、2016年3月28日付け朝日新聞(電子)によると、岩手県の施設、いわて県民情報交流センターを管理している東北博報堂など4社が、アルバイトを使って入館者数を水増していたことを報じている。

博報堂とは何か?これまでこの会社の実態はあまり知られていなかったが、一連の事件を通じて、官界との癒着から民間企業に対する手口まで、その全容が浮かび上がりはじめている。

筆者は新自由主義の先端を走るかなりドラスティクな企業という印象を受けている。

 

【博報堂関連の参考記事】

■総務省:博報堂による6億円事業、H27年度国勢調査の新聞広告の間引き、架空請求の決定的な証拠

 

■文部科学省:ウエブサイト9ページに2100万円を支出、国家公務員と博報堂の異常な金銭感覚、背任・詐欺の疑いも?

 

■環境省:博報堂、環境省のクールビスでも国家予算の使途に疑問符、新聞広告では読売と日経を優遇①

 

■防衛省:防衛省に対する博報堂からの請求、自衛隊音楽まつりの企画が4373万円にも、公金の無駄遣いの典型

 

■放送確認書の偽造(民間企業アスカ):チャンネルMnetに質問状、放送確認書の偽造疑惑について

 

■テレビCMの中抜き(民間企業アスカ):博報堂系のスーパーネットワーク社にCM「間引き」の疑惑と温床、10桁のCMコードは未使用

 

■視聴率の改ざん(民間企業アスカ):テレビ視聴率「偽装」の決定的証拠を公開、博報堂の担当員はビデオリサーチ「視聴率」との差異をどう説明するのか?

 

■過去データの流用(民間企業アスカ):博報堂による「過去データ」流用問題、編集の実態、アスカ側は情報誌のページ制作費だけで7億円の過剰請求を主張

 

2017年02月23日 (木曜日)

内閣府、文部科学省、総務省に続いて、環境省でも、博報堂による国家予算の使途が不透明な実態が分かった。約8億6000万円のプロジェクトで、博報堂は新聞広告はどのように出稿したのか?何が疑惑なのか?総論を紹介する。

クールビズとは、環境庁が進める地球温暖化防止やCO2削減のプロジェクトの総称である。その環境庁と博報堂の親密な関係は有名だ。たとえば、2007年6月8日に、民主党の末松義規議員が、環境省から博報堂へ3年間で約90億円もの国家予算が、環境関連プロジェクトに支出されていた事実を国会で追及したことがある。

その後も、自民党の竹本直一議員が、東日本大震災からの復興プロジェクトに関して、博報堂に対し除染関係の業務で約9億6000万円が計上された事実を国会で指摘した。

環境省と博報堂は、どのような国家予算の「食い方」をしているのか?

昨年、筆者は環境庁に対して博報堂との取引実態を示す各種の契約書、見積書、請求書を情報公開請求した。今年に入って、プロジェクトの「成果物」についても、情報公開を請求した。これに応じて環境省が開示した資料の中に何件ものクールビス関連のプロジェクトに関する書面があった。そのうちのひとつを本稿で紹介しよう。

プロジェクトのタイトル:「平成27年度低炭素社会づくり推進事業委託業務」

契約金:862,852,000円

◇契約額が約1億円増額に

約8億6300万円のプロジェクトであるが、よく調べてみると、当初、環境省と博報堂が契約した時の価格は、約7億7600万円であったことが分かった。つまり一旦、契約した後、金額を増額して、再契約を結んだのである。しかも、増額が1億円近い巨額となっている。

環境省は見積書の表紙については開示したが、その明細は非開示にしたので、8億6300万円の具体的な使途はよく分からない。使途を推測する唯一の手がかりは、契約書に明記された作業内容であるが、記述が抽象的で、具体的にどのような作業を行う契約が結ばれたのかは、ほとんど分からない。

◇具体性のない仕様書

通常、プロジェクトの契約書には、「仕様」の欄に、詳細に作業内容を明記する。たとえば新聞広告に関して言えば、○月○日に、○○新聞に○○段スペースを掲載する、というふうに。しかし、環境省と博報堂と契約文は次のようなありさまだ。

・スポーツ・音楽・映画等の観点からも積極的に温暖化対策を啓発すること。

・自治体やNPO法人等地域関係者が連携した温暖化対策を実地すること。

もちろんウエブサイトの管理・運営など具体的な作業の取り決めもある。しかし、筆者が契約書を精査した限りでは、プロジェクトの中身が具体化されていないという強い印象を受けた。

契約の当事者である環境省と博報堂も、このような契約内容の問題点を認識しているのか、仕様書に「業務実施上の留意点等について」という節を設けて、プロジェクトの方向性を定めようとしているように見受けられるが、それも十分とはいえない。

たとえば新聞広告について言えば、次の記述に見るように、広告を掲載する新聞も掲載日も明記されていない。

・放送や新聞等の広告枠を利用した直接的な情報発信のみではなく、ニュース素材や社会現象となるようなPRとすることで、報道媒体によるニュース等に取り上げられ、高いパブリシティ効果を発揮させるメディア戦略を実行すること。

このような取り決めでは、博報堂の裁量で自由に作業を決定できることになりかねない。環境省が見積書の明細を開示できなかった事情もこのあたりに潜んでいるのではないか。国家予算の使い方には透明性が求められるはずなのだが。

■仕様書の例

◇箸にも棒にもかからない報告書

筆者は、このプロジェクトの実施報告書を入手した。これを手掛かりに、博報堂がどのような仕事をしたのかを検証してみた。

報告書は158ページである。しかし、仕事についての詳細を報告した内容というようりも、「成果物」の羅列の印象が強い。たとえば、博報堂が制作したロゴを使った媒体をコピーして掲載しているのだが、そのためのスペースに55ページも割いている。博報堂が執筆したオリジナルの文章はほとんどない。

■ロゴを使った媒体をコピーの例

しかも、博報堂が請け負った他のクールビス関連のプロジェクトの報告書の文面をコピーしたとしか思えない記述もある。

ほとんど報告書の態をなしていないのが実態なのだ。

◇日経と読売を優遇

新聞広告について検証してみよう。既に述べたように、新聞広告の具体的な仕様は、契約書には明記されていない。もっとも、環境省が開示しなかっただけで、別の書面を保管している可能性はあるが、少なくとも報告書を見る限り、ずさんな広告出稿を行った事実が確認できる。報告書によると、次の新聞に広告が掲載された。広告のサイズにも注目してほしい。

7月1日 日経 (15段)
7月17日 日経 (30段)
12月9日 日経(16段+記事スタイルの広告7段) 
12月16日 読売(15段)
12月20日読売(5段+記事スタイルの広告10段)
12月24日 読売Kodomo新聞(記事スタイルの広告11段)
12月24日~26日 ブロック紙+地方紙31紙(5段)
1月号 エコチルこども環境情報紙(記事スタイルの広告11段)

ちなみに「30段」広告とは、新聞の見開き2ページを割いた広告である。博報堂は出稿先として、なぜか日経と読売を優遇したのである。ちなみに読売広告社は、博報堂グループの傘下に入っている。

◇ジャーナリズム不在の悲劇

見積書も請求明細が開示されていないので、広告費として、日経や読売にいくら支払われたのかも分からない。

このような広告費ばら撒きの構図の下では、新聞ジャーナリズムを機能不全にすることができる。博報堂はジャーナリズムの監視がないところで、事業を展開することができるのだ。その結果、国家予算の使途に関する博報堂に対する疑惑が、環境省だけではなく、内閣府、総務省、文科省などでも浮上しているのである。

2017年02月22日 (水曜日)

内閣府と博報堂のPR戦略に関する種々の疑惑などを指摘した国会質問が、これまで度々繰り返されていたことが分かった。以下で紹介するのは、筆者が調査したものである。綿密に調べれば、さらに増える可能性もある。

しかし、国会質問で指摘され問題点は、ほとんど改善されていない。博報堂や内閣府は、その後も延々と疑惑まみれの業務を続けている。

筆者が調査したところ、国会での追及は2005年から始まり、最も新しい国会質問は、竹本直一議員(自民)によるもので、これは博報堂が福島で除染作業に関する業務を請け負っている疑問を質問したものである。

質問者を政党別にみると、民主党が3人、共産党が2人、自民党が1人。超党派で広告代理店のありかたに疑問を呈してきたことが分かる。

次に示すのは、各議員の議事録の関連部である。

◇6議員の国会議事録

岡崎トミ子(民主):「天下り」と随意契約の関係(H18年)

竹本直一(自民):博報堂が9億6000万円で除染作業(H24)

末松義規議員(民主)環境省からも博報堂へ3年で約90億円の国家予算を注入(H19年)

■参考記事

五十嵐文彦(民主):スリード社の随意契約をめぐる内閣府の疑惑(H17年)

■参考記事

佐々木憲昭(共産):不透明な落札と国策プロパガンダ(H17年)

吉井英勝(共産):不透明な入札・博報堂に5人の国家公務員が天下り(H19年)

■参考記事

◇広告代理店に対するタブー

筆者は共産党には、すでに国会議事録をふくむ博報堂関係の膨大な資料を提供している。共産党は、現在、この問題を調査中である。共産党は、やはり汚職の問題には敏感で、これまでも辣腕ぶりを発揮してきた。安倍首相とメディア企業幹部の「会食」についても、繰り返し報道している。

1980年代に国会で「押し紙」問題を最初に取り上げたのも共産党である。

国会には内閣委員会という委員会があり、当然、内閣府の問題は内閣委員会が中心になって解決することになる。メンバーは次の方である。

■衆議院内閣委員会

■参議院内閣委員会

広告代理店の問題を大手のマスコミが積極的に取り上げることはない。電通のケースがクローズアップされたのは、電通が記者会見を開いて非を認めたからである。また、インターネットメディアの影響力が大きくなっていたからである。

記者会見という点でいえば、博報堂に対しても、国勢調査の公共広告(告示)を「間引き」していた問題で、「記者会見を開いて謝罪すべき」との声が上がっているが、今のところその気配はない。と、なればこの問題を調査している筆者としては、国会の内閣委員会の議員にも、この問題をはじめとする博報堂関連の資料を提供せざるを得なくなる。

ちなみに国税局、証券等取引監視委員会、東証、会計検査院、公正取引委員会、金融庁、あずさ監査法人(博報堂の監査法人)などにも、昨年の暮れあたりから断続的に関係資料を提供している。今月の20日にも、国税局で博報堂関連の資料の説明を行った。

◇反省もなければ改善もない

同じ問題を繰り返し指摘しても、博報堂の実態はまったく改善されない。

筆者は、「押し紙」問題でも同じ体験をしている。「押し紙」は、厳密に言えば戦前からあるのだが、新聞業界は1980年代に国会で問題を繰り返し指摘されても、「押し紙」政策を廃止しなかった。2007年ごろから雑誌が次々と「押し紙」問題を取り上げた際も、「押し紙」は1部も存在しないと開き直った。あげくの果て、裁判を起こした輩までいる。しかし、今、とうとう崩壊の寸前まで追い詰められたのである。

広告代理店や新聞社の経営実態が検証されないのは、取材対象がそのまま取材の当事者であるからだ。とりわけ現在の広告依存型の報道モデルの下では、広告代理店の批判は、みずからの首を絞めることなのである。

一方、大学の研究者も巨大メディアを批判すれば、自分の評論などを発表する場を失うリスクが高くなるので、メディアの問題には沈黙する傾向がある。取材を申し込んでも応じない。ダメなひとが大半を占める。「押し紙」問題でも、同じ態度を取り続けた。

と、なれば筆者も戦略を考案しなければならない。ダイレクトメールやインターネットを使って、ピンポイントで、あるいは不特定多数に情報を提供していく以外に選択肢はない。近々に国会の内閣委員会所属の議員全員に博報堂関連の資料を配布する予定だ。それでも動かなければ刑事告発(背任・詐欺)という段取りになるだろう。

【写真】博報堂と内閣府の8億円プロジェクトの報告書