1. 博報堂による6億円事業、H27年度国勢調査の新聞広告の間引き、架空請求の決定的な証拠

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2017年02月17日 (金曜日)

博報堂による6億円事業、H27年度国勢調査の新聞広告の間引き、架空請求の決定的な証拠

総務省が博報堂に対して2015年(平成27年) に発注した「平成27年国勢調査の広報に関する総合企画」が、請負契約書で定められた仕様に則して履行されていなかったことが分かった。

筆者が問題にしているのは、国勢調査をPRするための新聞広告に関する業務である。契約書によると、博報堂は中央紙5紙(朝日、読売、毎日、産経、日経)にそれぞれ5回、述べ25回、新聞広告を掲載することになっていた。しかし、実際には12回しか掲載していない。これについては、博報堂も認めている。

◇どのような契約内容だったのか?

新聞広告の掲載時期は、契約書では次のように決められている。()内のナンバーは、契約書に付されたナンバーである。

(2)調査関係書類配布の告知機関(平成27年9月1日から30日まで)

(3)インターネット回答実施の告知機関(平成27年9月1日から16日まで)

(4)インターネット未回答者の回答促進機関(平成27年9月17日から20日まで)

(5)回答促進期間(平成27年10月1日から7日まで)

(6)未回答者の回答推進機関(平成27年10月8日から20日まで)

■裏付け資料

(2)から(6)は、国勢調査の各ステージだ。各ステージに連動して新聞広告を出し、国民に調査への協力をよびかけるのが、総務省の目的だった。掲載時期と掲載新聞について、契約書の「仕様書」は次のように指示している。

上記「7(2)~(6)の各時期に全国紙5紙の朝刊に掲載すること。

■裏付け資料

◇博報堂も12回しか掲載しなかったことを認めた

筆者は、国会図書館にある全国紙5紙の縮刷版を使って、実際に(2)から(6)の各ステージで、国勢調査の広告が掲載されているか否かを調査した。その結果、契約どおりに掲載されていないことが分かった。契約書では、国勢調査のそれぞれの5つのステージで、全国紙5紙に広告を掲載することになっていたのだから、述べ25回掲載しなくてはならない。さもなければ契約不履行ということになる。

実際の掲載回数は12回だった。述べ13回が欠落している。

この問題で博報堂に問い合わせたところ、掲載回数が12回であったことを通知してきた。書面で掲載日と掲載紙を知らせてきたのだ。参考までに、博報堂の回答を引用しておこう。

ご指摘の「5回の記事下広告の掲載」というのは、
「全国紙5紙の朝刊に掲載すること」という記載のことを、おっしゃっていらっしゃいますでしょうか。

実際の出稿は以下のとおりです。
既に新聞に掲載された、言わば公開情報ですので、当社からご回答申し上げます。

①8月24日 朝日新聞(全国朝刊)、毎日新聞(全国朝刊)、読売新聞(全国朝刊)、日本経済新聞(全国朝刊)、産経新聞(全国朝刊)5紙に全2段の新聞広告を掲載。

②9月17日 読売新聞(全国朝刊)に連載漫画下に広告を掲載。

③10月1日 朝日新聞(全国朝刊)、毎日新聞(全国朝刊)、読売新聞(全国朝刊)、日本経済新聞(全国朝刊)、産経新聞(全国朝刊)5紙に半5段の新聞広告を掲載。

④10月8日 読売新聞(全国朝刊)に連載漫画下に広告を掲載。

以上、延べ12紙に広告は掲載されています。
①~④は広告原稿の内容も異なります。ご確認いただければと思います。

よろしくお願いいたします。

回答の中にも、広告の掲載回数について、「延べ12紙に広告は掲載」と書いてある。25回の掲載を契約しておきながら、12回しか掲載しなかったのだ。

◇広告を間引いて正規の価格を請求

25回の掲載予定を12回に減らしたわけだから、当然、その分の請求額を差し引かなければならない。差引の有無を調べるために、筆者は契約書に記された額、見積書の額、それに請求書の額を点検した。その結果、次のように3者の額が正確に一致していた。

契約額:6億円(消費税を含む)

見積額:6億円(消費税を含む)

請求額:6億円(内訳:555,555,556円+所費税)

広告の未掲載分は差し引かれていない。
ちなみに見積書の上でも、掲載回数の変更に伴う修正は行われていない。後述するように契約書の取り決めによると、掲載回数など仕様を変更したときは、見積書の提出が義務付けられているのだが。

◇天災地変など不測の事態は発生していない

一方、発注元の総務省は、12回しか広告が掲載されていないことを認めた上で、なぜか博報堂を擁護している。次に引用する契約書の第18条が適用されるのだと主張している。

【第18条】甲及び乙は、この契約の締結後、天災地変、法令の制定又は改廃、その他の著しい事情の変更により、この契約に定めるところが不当となったと認められる場合は、この契約に定めるところを変更するため、協議することができる。

2 前条第2項の規定(黒薮注:仕様などを変更する場合の見積書の提出義務)は、前項の規定により契約金額の変更に関して、協議を行う場合に準備する。

■裏付け資料

国勢調査が行われた2015年度に、調査が困難になるような天災地変や法令の制定は発生していない。たとえ発生していたとしても、仕様を変更して広告の掲載回数を減らした場合は、見積書を修正して請求額を変更しなければならない。ところが博報堂は、最初に契約した金額をそのまま請求している。

筆者は総務省に対して、本件の契約書、見積書、請求書の情報公開請求を行った。しかし、開示された中に、変更済みの見積書は含まれていなかった。繰り返しになるが、博報堂は広告を間引いたうえに、契約した金額をそのまま請求したのである。

こうした契約不履行が国勢調査に及ぼした影響は、計り知れないだろう。博報堂は記者会見を開いて、謝罪した上で、金銭を返金すべきだろう。

◇高市総務相にも「還付金」疑惑

現在の総務大臣は高市早苗氏(写真)である。高市氏が金銭面の不正を改めさせる可能性は少ない。高市氏の政治資金収支報告書を調べたところ、自らの政党支部に自ら寄付して、不正に「還付金」を受け取っていることが分かった。金銭感覚がおかしい。

高市氏による「還付金」問題は、自由党・森裕子氏と同じ手口である。森氏は、還付金を不正に受け取った疑惑で、新潟地検の取り調べ対象になっている。以下、森氏の手口を説明した筆者の記事と、高市氏が還付金を受けた証拠を紹介しておこう。

森裕子議員、詐欺の疑いで地検が刑事告発状を受理…献金で違法な還付金受領か(ビジネスジャーナル)

■高市総務相・還付金を受けた証拠1

■高市総務相・還付金を受けた証拠2

高市氏に、この事件はおそらく解決できない。総務省の職員は、ドン・キホーテの精神を発揮し、独自にこの問題を調査すべきだろう。

筆者は、今後、広告の仕様(サイズ等)、その他のPR業務についても契約に則しているかを調査する。