1. テレビ視聴率「偽装」の決定的証拠を公開、博報堂の担当員はビデオリサーチ「視聴率」との差異をどう説明するのか?

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2016年07月01日 (金曜日)

テレビ視聴率「偽装」の決定的証拠を公開、博報堂の担当員はビデオリサーチ「視聴率」との差異をどう説明するのか?

日本のマスコミが隠してきた2つの「偽装」。それは、新聞部数の「偽装」とテレビ視聴率の「偽装」である。新聞部数の「偽装」については、メディア黒書で指摘してきた「押し紙」問題、つまり新聞の公称部数をかさ上げして、紙面広告の媒体価値をつり上げる手口である。広告代理店が紙面広告の営業で悪用する。

一方、テレビ視聴率の「偽装」は、CMが組み込まれてる番組の視聴率を「偽装」することにより、広告代理店がクライアントに対して、優位にCM営業を展開するための「道具」として悪用される。もちろん、この手口は、CMだけではなく、通販番組などの営業でも使われる。

テレビ視聴率の「偽装」問題は、2003年に起きた日本テレビのケースなど過去にも表面化したことはあるが、その後の実態はベールに包まれてきた。

このほどメディア黒書は、博報堂と広告料金をめぐる係争を取材する中で、この問題を考える上の格好の資料となる詳しいデータを入手した。

まず、その資料をエクセル化したものを紹介しよう。

■視聴率の偽装一覧(エクセル)

まず、一覧表の一部を示そう。

この表の基礎資料となったのは、博報堂の担当員・清原(仮名)氏がアスカコーポレーションに提示した番組提案書と、アスカ社がその後、独自に入手したビデオリサーチ社の視聴率データである。各番組ごとに上段が博報堂・清原氏が提示した視聴率(黒文字)で、下段がアスカコーポレーションがビデオリサーチ社から入手した視聴率(赤文字)である。

次に一覧上部のバーの部分にある「M1、M2、M3、F1、F2、F3」について説明しよう。これは性別・年代別の視聴率である。次のように分類される。

M1=男性20~34歳、M2=男性35~49歳、M3=男性50歳以上

F1=女性20~34歳、F2=女性35~49歳、F3=女性50歳以上

アスカコーポレーションは化粧品を主力商品とする通販会社なので、CMや通販番組のターゲット層はF1とF2あたりになる。F1層とF2層の視聴率が偽装されていないかどうかが、ひとつの注目点となる。

ちなみに黄色の箇所は、視聴率が高く偽装されていることを示し、紫の部分は
逆に低く偽装されていることを示している。博報堂、あるいは清原氏が個人的に低く偽装した理由については、本人に質問しなくては分からない。ただ、数値そのものは番組提案書からの転載なので否定のしようがない。

なお、清原氏が提示した番組提案書の中には、ビデオリサーチのデータよりも低く「偽装」されている箇所(紫)もある。これも紛れのない事実である。

◇2つの視聴率データ

念を押すまでもないが、データを提示する際には、その出典を明確にするのが常識である。清原氏が提示した番組提案書には、データの出典であるビデオリサーチ社の名前を記したものも一部あるが、少なくともここで紹介した数値に関してはいずれも出典が明記されていない。

通常、番組提案書には、資料の根拠を明記する。事実、電通など他社の番組提案書には、視聴率の出典としてビデオリサーチ社の社名が記されている。

清原氏が提案した番組提案書だけに限り、出典が記されていないものがあるのだ。しかし、清原氏がビデオリサーチ社のデータを把握していたことは、次の2点で論証できる。

ビデオリサーチ社のデータと清原氏が提示したデータが、正確に一致している箇所もかなり見受けられる事実。F1~M3までの全数値を、ビデオリサーチ社のデータとは異なるものに変更したのではなく、一部については、そのままビデオリサーチ社の視聴率を使っているのだ。

今回、視聴率の偽装が疑われている番組が放送された期間、視聴率の調査をしていた機関はビデオリサーチ社を除いて他にはなかった事実。

◇0.1%の偽装の意味

視聴率が及ぼす影響を読み解く場合、たとえば「0.1%」の偽装をどう評価するのかという問題がある。数値そのものは、極めて小さいように見えるが、広告関係者はそのような見方をしない。

1000万人がテレビを視聴している場合、その0.1%は1万人である。従って1%のかさ上げで、10万人。ほんの些細な数値の水増しでも、クライアントが番組提案書を承認するかどうかに決定的な影響を与える。

◇テレビ局も広告代理店と一体化

視聴率のかさ上げによって利益を得るのは、広告代理店だけではない。視聴率が上がればCMや番組の放映料が高く設定できるわけだから、放送局の収益も増える原理になる。それはちょうど、新聞人が新聞の公称部数を偽装して、広告料金を荒稼ぎしている手口によく似ている。

◇BPO (放送倫理・番組向上機構

筆者は、BPO (放送倫理・番組向上機構)に今回の視聴率の偽装問題についての見解を問うたが、見解は聞けなかった。BPOは、番組の内容を検証する機関なので、視聴率に関しては見解も述べなければ、調査もしないとのことだった。

しかし、BPOは、2003年12月に日本テレビが起こした視聴率偽装事件で、次のような見解を出している。

日本テレビで起きた視聴率操作事件は、放送の自律と放送文化の質の向上を目指す「放送倫理・番組向上機構」[BPO]にとっても、重大な問題を提起した。テレビ局のプロデューサーが担当番組の視聴率を上げるために、制作費を使って視聴率調査対象者に金品を贈るようなことは、放送・広告関係者だけでなく、視聴者や社会を欺く背信行為と言わなければならない。

■見解の全文

メディア黒書は、反論を歓迎する。反論があれば、掲載することもお約束したい。