1. 博報堂系のスーパーネットワーク社にCM「間引き」の疑惑と温床、10桁のCMコードは未使用

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2016年08月01日 (月曜日)

博報堂系のスーパーネットワーク社にCM「間引き」の疑惑と温床、10桁のCMコードは未使用

博報堂とアスカコーポレーションの係争の中で、アスカのCMが多量に「間引き」されていた疑惑の根拠を再整理しておこう。

■参考:博報堂事件の全体の構図

日本の放送界には、コンピュータでCMが放送されたか否かを監視するシステムが定着している。これについては筆者が、日本広告主協会、民放連、それに衛星放送協会の取材によっても判明した。さらにメディア総研にも確認した。

民放連と衛星放送協会については、会員社に対してCMコードの使用を徹底する方針を取ってきた。

放送界がこのようなシステムを徹底したのは、1990年代の後半に、福岡放送、北陸報道、静岡第一テレビでCMの「間引き」事件が発生したからである。CM「間引き」を防ぐために、米国の監視システムを参考にして、CMに10桁コードを付し、コンピュータがCM「間引き」を監視するシステムを導入したのである。

アスカが過去の放送確認書を調査したところ、CMコードがないCM本数が1500件を超えていることが分かった。これについては、メディア黒書でも調査した。詳細は、次のエクセルに示したとおりである。(数値は、まだ確定していない。)

■CMコードの非表示件数(エクセル)

CMコードの非表示だけで、CMが放送されていないと判断するには十分だが、次の点も一応は考慮しなければならない。

たとえばプロ野球の中継が延長されたり、災害が起こって番組が変更になった場合などに、CMが放送されないことがある。この場合はもちろんCMコードは非表示になる。

◇ペナルティ・サービス

しかし、やむなくCMを放送しなかった場合、放送局は未放送分のCMを他の時間帯に組み込んで放送するなどの処置を行う。これを「ペナルティ・サービス」と呼んでいる放送局もある。「サービス」であるから、償いの意味で、たとえば契約では1回だけの放送だったが、それを3回に増やして別の時間帯に放送するとか、視聴率がより高い時間帯へCMを割り当てるなどして、クライアントが不利益を被らないように配慮する。

アスカのケースでは、今後、CMコードが非表示になっているCMに対して、「ペナルティ・サービス」に該当する措置を、スーパーネットワークが実施しかた否かが調査対象になる。しかし、種々の書面を確認するまでもなく、スーパーネットワーク社は、「ペナルティ・サービス」を実施していない。

と、いうのも7月19日に筆者がスーパーネットワークを、電話取材した際に、同社はCMは放送したと答えているからだ。放送したのであれば、「ペナルティ・サービス」は発生しないからだ。

なお、CMが中止になった場合、広告代理店は事情をクライアントに説明しなければならないが、博報堂はそれを行っていない。CMを放送したという前提で事務処理をしているわけだから、当然のことである。

現在の放送界では、CMコードの表示をもって、CMが放送されたことを証明するシステムになっているわけだから、スーパーネットワークは、CMコードが非表示になり、しかも、「ペナルティ・サービス」を実施しなかったとすれば、架空請求を疑われても弁解のしようがない。

その金額は、億単位になる。

◇後付けの見積書で請求

なお、スーパーネットワークは、電話取材の中で、アスカ以外のCMについても、CMコードは使っていないと話している。と、すればスーパーネットワークには、CM「間引き」の温床があることになる。

衛星放送協会は事実関係を調査すべきではないか?

ちなみにスーパーネットワークは博報堂系の会社である。同社の株式の50%を博報堂が所有している。博報堂は、アスカのCMを自社系の放送局に割り当てていたのだ。しかも、その請求は、後付けの見積書などで行われていたのだから、アスカとしても、CMが本当に放送されたか否かの確認すらできない。

このあたりの事情を裁判所がどう判断するかが注目される。