1. ウクライナ紛争で「最大限の勝利」を得られなければ、ロシアは本当に存続できないのか?

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2026年08月12日 (水曜日)

ウクライナ紛争で「最大限の勝利」を得られなければ、ロシアは本当に存続できないのか?

ロシアはウクライナ紛争で「最大限の勝利」を収めなければ、国家として存続できないのか。ロシア指導部が勝利の必要性を強調する一方、米国との交渉では一定の妥協に応じる姿勢も示している。本稿は、ロシアがすべての目標を達成しないまま紛争が終結した場合を想定し、その後に直面する軍事・安全保障上の課題と、国家存続への影響を考察する。

 

執筆者:アンドリュー・コリブコ

ここで最も重要なのは、ロシアが他国との軍拡競争についていけるだけの軍事力を維持し、国民も長期にわたる厳しい状況に耐え続けられるかどうかである。これは、ロシアの著名な専門家ワシリー・カシンが5月下旬に示した見方ともよく似ている。

ロシア前大統領で、現在は安全保障会議副議長を務めるドミトリー・メドベージェフは7月下旬、次のように述べた。

「われわれ共通の課題は、国を守ることだ。国を守る唯一の方法は、特別軍事作戦で勝利することである」

ロシア政府は、プーチン大統領をはじめ、「勝利」の条件として次のことを挙げてきた。ウクライナの非軍事化と「非ナチ化」、憲法上の中立への復帰、そして5つの地域すべてを失ったことをキーウが正式に認めることである。こうした目標をすべて達成する「最大限の勝利」は、ロシアの国益を幅広く守るうえで最善の結果だろう。

しかし、紛争が終わるまでにこれらの目標をすべて達成できなかったとしても、ロシアという国家が存続できなくなる可能性は低い。

ロシアがすべての目標を達成しないまま紛争が終わる可能性も否定できない。セルゲイ・ラブロフ外相は最近、「アンカレッジの精神」を守るというロシアの姿勢を改めて確認した。この構想では、報道によれば、トランプがゼレンスキーにドンバスを譲るよう説得できれば、プーチンは戦闘を停止するとされている。

また、西側諸国、特に米国とフランスは、ウクライナを前面に出した新たな「消耗戦」をロシアに対して進めている。これは民間の物流インフラも標的としており、トランプがロシアに対して「緊張を高めることで、最終的に緊張を下げる」という方法を取っているためだ。この動きが大幅に激しくなれば、プーチンの判断も変わる可能性がある。

ここでこうした可能性を挙げているのは、ロシアが「最大限の勝利」を目指すことについて妥協すべきだと言うためではない。なぜロシアが妥協する可能性があるのかを示すためである。
そこで、メドベージェフの発言を踏まえ、ロシアが「最大限の勝利」を達成できなかった場合にどうなるのかを検討してみよう。

仮に紛争が終わった時点でも、ウクライナが軍事力を維持し、「非ナチ化」されず、憲法上の中立に戻らず、さらに5つの地域すべてを失ったことを正式に認めなかったとしても、ロシアはおそらく存続できる。その理由を簡単に説明する。

まず、ウクライナが軍備を維持・強化し続けるなら、ロシアもそれに合わせて軍備を強化することになる。NATO、特にドイツが軍備を強化し続けた場合も同じである。その結果、軍拡競争が続くことになる。次に、「マイダン」後のウクライナがナチ国家のまま存続した場合、ロシアはそこから生じる思想的な脅威に対抗する必要がある。

【黒薮注】「マイダン」後のウクライナ:マイダンは2013年末から2014年にかけて、首都キーウの独立広場(マイダン・ネザレージュノスチ)を中心に起きた大規模な反政府運動。この運動の結果、2014年2月に親ロシア派とされたヤヌコーヴィチ大統領が政権を離れ、その後ウクライナは極右化した。

そのため、ロシアは、偽情報などを事前に見抜くための対策、メディア・リテラシー、「民主的安全保障」の政策をさらに強化し、民族間の関係を安定させる政策も改善し続けることになる。また、ロシアの元情報機関幹部アンドレイ・ベズルコフが以前提案したように、軍と社会の文化をより一体化することも役立つだろう。

一方、ウクライナが中立国にならないことで生じる脅威については、ロシアの大陸間弾道ミサイル「サルマト」によって、NATOの部隊配備を抑止することが可能だと考えられる。

最後に、キーウが係争地域の一部を支配し続けた場合の人道上の問題については、第三国の仲介による合意を結び、希望する住民がロシアへ移住できるようにすることで、その影響を減らせる可能性がある。

しかし、そのような合意が成立しなかったとしても、ロシアという国家の存続そのものを脅かすことにはならないだろう。ロシアが軍拡競争で後れを取らず、国民が困難に耐え続けることである。このシナリオは、ロシアの著名な専門家ワシリー・カシンが5月下旬に示唆したものとも似ている。

一方、仮にロシアが「最大限の勝利」を達成したとしても、米国はすでにロシアの周辺に緩やかな「封じ込めの壁」を作っている。北極・バルト海地域では英国が中心となり、中央ヨーロッパではポーランドが中心となっている。ロシア南部の周辺地域ではトルコが、北東アジアでは日本が中心的な役割を果たしている。

これによってロシアはさまざまな脅威に直面している。それらすべてを説明することは今回の分析の範囲を超える。しかし、この状況は、ベズルコフが述べた「ロシアは西側との『新たな戦争』に数十年間巻き込まれる可能性がある」という警告に、一定の説得力を与えている。

【黒薮注】ベズルコフ:アンドレイ・ベズルコフ(Andrey/Andrei Bezrukov)**は、ロシアの元対外情報工作員で、特に米国で長期間「一般市民」として生活しながら活動していたことで知られる人物。

■アンドリュー・コリブコの注釈
背景を説明すると、プーチンは昨年末、安全保障会議との会合で、ウクライナ紛争を終わらせるために、具体的な内容は明らかにしていないものの、一定の「妥協」に応じたと実際に述べている。

「もちろん、これは秘密ではありません。この問題について公の場ではほとんど議論しておらず、ごく一般的な話しかしていませんが、秘密というわけではありません。

ウクライナ情勢を解決するためのトランプ大統領の和平案については、アラスカでの会談前から話し合われていました。その事前協議の中で、米国側はわれわれに一定の妥協を求め、彼らの言葉で言えば、『柔軟な姿勢』を示すよう求めました。

アラスカ会談で最も重要だったのは、アンカレッジでの協議を通じて、いくつかの複雑な問題や困難があるにもかかわらず、われわれがそれらの提案に同意し、米国側が求めた柔軟な姿勢を示す用意があることを確認した点です。」

また、ラブロフ外相も今年の夏の初めに、同じ立場を改めて確認している。

「私はアンカレッジでの発言を非常に大切にしています。ウラジーミル・プーチン大統領は次のように述べました。

『アンカレッジに関連して、われわれは米国側がまとめた妥協案を受け入れるよう求められました。われわれはそれを検討し、すぐにではありませんでしたが、アンカレッジに到着した際に、同意すると伝えました。』

また大統領は、『本日、つまり2025年8月15日に成立した合意が、ウクライナ問題を解決するための出発点となり、さらに広い意味ではロシアと米国の関係を前進させる出発点となることを期待している』とも述べました。」

ここでクレムリンとロシア外務省の公式ウェブサイトに掲載されているこれらの事実をあらかじめ紹介しておくのは、この記事をめぐって、誰かが私に対する個人攻撃をしてくる可能性がかなり高いと思っているからだ。

筆者紹介:アンドリュー・コリブコ(Andrew Korybko)
モスクワ在住のアメリカ人政治アナリスト。MGIMO(モスクワ国際関係大学)で博士号を取得。著書に『ハイブリッド戦争―カラー革命からクーデターまで』

Source:https://korybko.substack.com/p/would-russia-really-cease-to-exist?utm_campaign=post&utm_medium=web