2017年10月16日 (月曜日)

マスコミが提供する世論調査の数字を抵抗なくうのみにする人が後を絶たない。新聞社やその系列放送局が実施する世論調査は信用できるのだろうか。

NHKが10月7日から9日にかけて実施した世論調査で、政党支持率は次のような数字になった。

自民党 31.2 
希望の党 4.8 
公明党 3.8 
共産党 2.7 
立憲民主党 4.4
日本維新の会 1.3 
社民党 0.5
自由党 0.0 

さらに22日に投票が予定されている衆院選では、多くの新聞・テレビが自民党が圧勝するという世論調査の結果をたれ流している。

しかし、筆者は、新聞・テレビの世論調査の数字には、強い疑念を抱いている。世論誘導している可能性が極めて高い。新聞の発行部数を延々と偽ってきた新聞社やその系列放送局が、真実の数字を出すはずがないというのが筆者の見方だ。数字の改ざんなど、彼らには朝飯前なのだ。

メディアが自民党の圧勝を予測すると、自民党政治の終わりを願っている層が、「投票は無駄」と判断して、投票所へ足を運ばなくなる。その結果、本当に自民党が圧勝する。特に小選挙区制の下では、このような傾向が顕著だ。その原理を新聞人は、よく理解している。

◇共産2.7%、社民0.5%は事実か?

世論調査は真に必要なものなのだろうか。競馬の「予想」とまったく同じで、ゲームの意味しか持っていない、というのが筆者の考えだ。それどころか世論調査の数字により、有権者の投票行動が変わってしまうわけだから、プロパガンダとして作用しているのが実態だ。本来、投票行動に関する選挙中の世論調査は、公職選挙法で禁止するのが筋だろう。

上記のNHKの世論調査では、共産党 の支持率が2.7%で、社民党が 0.5  %である。これらの数字に読者は不自然さを感じないだろうか。共産党や社民党は、地方議会では一定の勢力を持っている。小選挙区制が原因で国会議員は少ないが、地方自治体のレベルでは、有力な政党なのである。

共産党の設立は、1922年だから今年で95年になる。95年も地道な活動をして、本当に支持率が2.7%しかないのであれば絶望的だ。私はこの数字に重大な疑惑を抱いている。

社民党(旧社会党)の設立は、1945年である。社民党も地方レベルでは、市民ネットなどの名前で、一定の勢力を持っている。住民運動にも極めて熱心だ。しかし、世論調査になると、常に1%以下になっている。この数字も、筆者には信じがたい。

◇ニュースを偏向させて世論誘導

新聞やテレビが発表する世論調査の数字は、嘘を公表しても、検証のしようがない。これほど手軽な世論調査の手口はほかにないだろう。

なぜ、マスコミは政権党に有利な数字を捏造するのだろうか。答えは簡単で、新聞広告やテレビCMのスポンサーが、自民党の支援母体になっている財界であるからだ。広告費を投資してくれる勢力に対して、メディアが便宜を図るのは、ある意味では当然なのだ。

原発の広告をどんどん出せば、原発を批判する報道は相対的に少なくなる。
携帯電話の広告をどんどん出稿すれば、電磁波の危険性を指摘する報道も消えてしまう。そして電磁波は安全ということになる。広告そのものの効果よりも、ニュースを偏向させるほうが、世論誘導には有効なのだ。

広告主とメディアがどのような関係を構築しているのかを、ビジネスモデルという観点から解明しない限り、世論誘導の必然性を説明できない。それを解明するのがメディア学者の役割だと思うが、彼らは紙面や番組の批評の方に熱を入れている。が、新聞社もテレビも、そんなものには何の痛痒も感じていない。

 

2017年10月12日 (木曜日)

メディア黒書のシリーズ「折り込め詐欺」の実態。6回目は、イトーヨーカ堂の折込広告が、水増しされ、配布されないまま、段ボール箱に詰められて廃棄されている場面を撮影した動画を紹介しよう

イトーヨーカ堂は、セブン&アイ・ホールディングスの子会社である。

ちなみに高齢者などを対象とした「振り込め詐欺」の摘発件数(警察庁発表)は、2016年度の場合14,151件。被害額は約406億円。

これに対して広告主を対象とした「折り込め詐欺」の被害についてのデータは存在しないが、詐欺の舞台になる可能性がある新聞販売店の軒数は2016年の場合、16,731店(日本新聞協会発表)である。

全店が「折り込め詐欺」に協力していないにしても、協力している販売店では、連日、折込広告が廃棄されているわけだから、その被害額は「振り込め詐欺」の比ではない。

 

【参考動画】

新聞の凋落、水増しされ大量廃棄される県民共済の折込広告、「折り込め詐欺」の実態

「折り込め詐欺」:山田養蜂場のケース

「折り込め詐欺」:ユニクロのケース

新聞没落、1販売店から月間30トンの「押し紙」、「折り込め詐欺」の発覚でクライアントが折込広告に見切りか?

2017年10月10日 (火曜日)

チェ・ゲバラがボリビアの山中で処刑されてから、10月9日で50年になった。キューバやボリビアをはじめ世界各地で、チェ・ゲバラが歩んだ足跡を記憶に留めるためのさまざまな催しが行われた。

ボリビアのモラレス大統領は、ツイッターでも、「チェ・ゲバラの死から50年。人類の平等や解放といった難しい戦いに対峙する時、ゲバラの記憶は若い世代に受け継がれている。」というメッセージを発表した。(■出典)

日本のメディアも、ゲバラの没50年を盛んに報じている。映画「エルネスト」も上映されている。8月には、ゲバラの写真展も開かれた。

毎日新聞:<ボリビア>ゲバラ没後50年 3000人が英雄しのぶ

時事:チェ・ゲバラ没後50年、記念式典で国民が英雄しのぶ キューバ

文春:オダギリジョーが“もうひとりのゲバラ”を熱演 映画「エルネスト」を採点!――シネマチャート

◇ラテンアメリカを放浪

チェ・ゲバラは、1928年6月にアルゼンチンで生まれた。医学部を卒業した後、ラテンアメリカの旅にでる。ラテンアメリカはメキシコからチリの南端まで広大な大地で、そこには多様な民族や文化が生きている。ゲバラは長い旅の中で、この大陸の人々が置かれてる悲劇的な現実を凝視するようになる。

そんな時、中米のグアテマラで大がかりな政治改革が進行していた。後に「グアテマラの春」(1944年~1954年)と呼ばれる時代である。ゲバラは改革とは何かをわが眼で見たのである。

やがて大きな転換期が訪れる。当時のグアテマラ政府が、CIAとUFC(ユナイティド・フルーツ・カンパニー)による軍事クーデターで崩壊し、強固な軍事政権が敷かれたのだ。ゲバラはメキシコへ逃れた。そこで亡命中のフィデル・カストロらと知り合い、軍事訓練を経た後、軍医としてキューバ革命の部隊に加わったのである。

キューバへの潜入は、「グランマ号」と呼ばれる12人乗りのヨットに82名が乗り込んで、実行に移された。その時の様子を、当事者のファウスチーノ・ペレスが、次のように記録している。

 ヨットはゆるやかに出帆した。モーターだけが動いていた。全員がはげしい感動と沈黙に見舞われていた。私は一瞬息をつめた。というのも少しでも音をたてたら目的に支障をきたすのをおそれていたから。川を下るのに半時間かかった。それからすぐメキシコ湾に入った。数分後、もう沈黙する必要はないと判断し、全員合唱しはじめた。

「いざ行け戦陣へ、バヤーモ人、祖国は君らに誇りを求めん・・・」

 国歌ほど美しいものはない。
 風ははげしく吹きすさび、荒れ狂う波は、グランマ号の船体をもてあそんだ。喜びは濃い霧の中にとけ込み、不快感、嘔吐、疲労にかわった。われわれは不測の事態に悩んだ。次の日、だれかが叫んだ。「水だ!」。船体は傾いてた。ヨットの内部に水が増えてきた。排水ポンプは故障していた。われわれは桶を使った。

まもなくポンプは直り、平静を取り戻した。だが、不安はまだ去らなかった。水平線上の船、空の飛行機がわれわれの気をもませた。飢えと睡眠不足に悩んだ。ただ、パイロットが繰り返す言葉がわれわれを元気づけた。

「ヨットのへさきとともにキューバに向かっている。」(出典:『キューバ革命への道』三一書房)

グランマ号は、キューバのコロラーダの砂浜にたどりついたが、上陸後、政府軍の猛攻にあい革命軍は大半の勢力を失う。

◇カストロの国連演説

キューバが目指したのは、人間の尊厳を守る政治である。平等に医療や教育を受ける、ある意味では当たり前の権利である。実際、医師ひとりあたりの患者数は、現在、世界第2位である。医療は、旅行者も含めて無料だ。

1979年にフィデル・カストロが国連で行った有名な演説がある。カストロは、同じ地球上に、裸足で歩かざるを得ない人々がいる一方で、車で移動する人々がいること、35年の寿命しかない人々がいる一方で、70年の寿命の人々がいる事実などを指摘して、文明化も国連も機能していない、という意味の発言をした。(■出典)

キューバの政治が目指す方向性がよく現れていた。

◇グランマ号の人々の余命

ゲバラは革命後、カストロ政権に参加したが、やがて第3世界の民族自決の戦いを支援するようになる。アフリカのコンゴにも入っている。ボリビアには、変装して潜入した。なぜ、第3世界の人々の戦いを支援したのか、本人にインタビューしなければ分からないが、革命戦争で多くの仲間を失ったからではないかという気がする。とりわけ上陸直後のグランマ号の仲間たちの死が影響したのではないかという気がする。

出典は記憶していないがフィデル・カストロがどこかで、「自分は、こんな年になるまで生きれるとは思わなかった」と語っていたが、グランマ号の生存者にとっては、革命後の生は予期していなかったということなのだろう。だかチェ・ゲバラは自分の「余命」をおしみなく民族自決の戦いに捧げたのだろう。

もちろん後年、伝説の人になることなど考えていなかった。

日本では、総選挙が始まった。筆者は、日本の政治家で、「改革」を叫んでいる政治家たちを見ていると、茶番劇を連想する。特に悪いのはタレント系。スポーツ系。これらの人材を採用する側も、本当のバカだ。

自分の命をかけて世界を変える事業に取り組む政治家などだれもない。そんなことよりも、どうして選挙に勝って、「政治家」として生き延びるかという個人的な問題しか考えていない。これでは日本は変わらない。

 

2017年10月09日 (月曜日)

メディア黒書のシリーズ「折り込め詐欺」の実態。5回目は、県民共済の折込広告が、水増しされ、配布されないまま、段ボール箱に詰められて廃棄されている場面を紹介しよう。

県民共済は、全国に普及している医療費などの保険で、東京都の場合は都民共済である。都道府県の名前を付しているが、私企業が提供しているサービスである。

折込広告が梱包されている段ボール箱は、山陽新聞の販売会社が提供していたものだ。「押し紙」裁判で、そのことが認定されている。

 

2017年10月03日 (火曜日)

メディア黒書のシリーズ「折り込め詐欺」の実態。4回目は、東進衛星予備校の折込広告が、水増しされ、配布されないまま、段ボールに詰められて廃棄されている場面を紹介しよう。

東進衛星予備校を経営する(株)ナガセは、最近、マイニュースジャパンに対するスラップ訴訟で敗訴したことでも有名になった。PRの手段として折込広告を使い、「折り込め詐欺」の被害にあったことになる。

なお、東進衛星予備校の折込広告に記されている実績が事実かどうかは、広告倫理の観点から検証する必要があるだろう。

予備校や塾の折込広告が廃棄されるケースは、最近は減っているが、かつてはメディア黒書にも多くの情報が寄せられた。特に小規模な塾の場合、地域に密着していることが多いので、各家庭にほとんどもれなく配布される折込広告は有効なPR戦術だった。

ところが塾や予備校に通う生徒や、彼らの親が新聞を読まない世代になった。その結果、PR媒体として折込広告を採用しても、ほとんど効果があがらない。最近では、需要が激減しているようだ。

 

【参考動画】

「折り込め詐欺」:山田養蜂場のケース

「折り込め詐欺」:ユニクロのケース

新聞没落、1販売店から月間30トンの「押し紙」、「折り込め詐欺」の発覚でクライアントが折込広告に見切りか?

2017年10月02日 (月曜日)

選挙報道が異常を呈している。本来の争点であるはずの森友・加計事件の報道が完全に消えて、もっぱら「希望の党」を主人公とする「小池劇場」の実況生中継に終始している。

極端なスタンンピード現象が起きているのだ。

スタンンピード現象とは、組織全体が同じ方向へ突進する現象を言う。たとえばサバンナに生息するシマウマ。群れの先頭が、東に向かって走りはじめると、それに誘発され、ほとんど条件反射のように群れ全体が東へ駆け出す。先頭が、西へ方向を変えると、今度は全体が西へ走る。

シマウマの首にカメラをぶら下げると、現在日本のメディア状況そのものである。

周知のように今回の衆議院解散の引き金は、森友・加計事件の隠蔽である。解散時には、この事件を隠すために選挙に踏み切ったという見方が、大勢を占めていた。ところが「希望の党」が立ちあがると、森友・加計事件の話題がほぼメディアから消えた。ツイッター上からも、ほとんど森友・加計事件は消えた。それにかわって、悪い意味でも、良い意味でも、「希望の党」に関心が移ってしまったのだ。

そして「希望の党」と自民党の対決が、選挙の争点として、繰り返し報じられるようになったのである。

こうした状況のもとで、安倍首相が街頭演説に立った。先の都議選では、「安倍の応援はありがた迷惑」ということで、街頭演説を控えていたのである。選挙の終盤に、秋葉原で街頭演説したが、その時は、聴衆からバッシングを受けたのだ。ところが「小池劇場」の序幕がはじまると、安倍首相が街頭に立てるまでに、ダメージは回復したのだ。

今回の選挙が 「希望の党」と自民党の対決という報道の間違いについては、次の記事を参考にしてほしい。

【参考記事】第2自民党としての危険な「小池新党」、自民・公明・小池新党・維新で憲法改正へ

【参考記事】「希望の党」の登場で崖っぷちに立った憲法9条、国民投票にはルールがなく、最後は金脈と電通が勝敗を決する仕組みに

◇傍観者の視点

国政選挙になると、有力な政党には、選挙のアドバイザーが就くと言われている。世論誘導の専門家だ。心理学の観点から「演説では単純な言葉を繰り返せ」などとアドバイスする。

筆者は、今回の「小池劇場」の舞台裏にも世論誘導の専門家がいるのではないかと見ている。資金スポンサーもいる可能性が高い。

本来、ジャーナリズムの役割は、トリックを見破って、それを知らせることである。しかし、日本のメディアは、この役割を完全に放棄して、「小池劇場」の実況生中継に終始している。NHKニュース9のキャスターにいたっては、傍観者のようにニコニコしながら実況生中継をしている。危機感など全く感じられないのである。

2017年09月27日 (水曜日)

メディア黒書で定期的に紹介している「折り込め詐欺」の実態。今回は、山田養蜂場の折込広告が、水増しされ、配布されないまま、段ボールに詰められて廃棄されている場面を紹介しよう。

この動画も新聞人による内部告発である。山陽新聞の販売店主が、みずから撮影したものである。自分が「折り込め詐欺」を強要されているからこそ、内部告発に踏み切れたのだ。

なお、動画に映っている段ボール箱は、山陽新聞の販売会社が提供していたものである。この事実を、岡山地裁は、「押し紙」裁判の判決の中で2011年3月に認定した。

「折り込め詐欺」は、水面下では多くの新聞社で慣行化ているが、ほとんど報じられていない。「押し紙」が新聞業界の内部問題であるのに対して、「折り込め詐欺」は広告主を巻き込み、業界の境を超えた問題である。純然たる詐欺である。「押し紙」の裏面でもある。

ちなみに今なお日本新聞協会は、「押し紙」は一部も存在しないと主張している。「押し紙」を認めて、謝罪しようとはしない。「折り込め詐欺」が日常化してきたからだろう。

こうした状況の下では、広告主の協力を得て、外部から新聞社と広告代理店に圧力をかけるより選択肢はないだろう。

 

【参考動画】新聞没落、1販売店から月間30トンの「押し紙」、「折り込め詐欺」の発覚でクライアントが折込広告に見切りか?

2017年09月22日 (金曜日)

「折り込め詐欺」とは、折込広告の水増し行為である。たとえば新聞を2000部しか配達していない新聞販売店に、3000枚の折込広告を割り当てれば、1000枚が過剰になる。この1000枚についても、料金を徴収する。これが「折り込め詐欺」だ。念を押すまでもなく広告主に対する明らかな詐欺である。

広告代理店が広告主と商談する際に、「もっと折り込め」「もっと折り込め」と調子よく繰り返して、折込広告を水増し状態にもっていくので、「折り込め詐欺」と呼ばれるのだ。高齢者を狙った「振り込め詐欺」とは異なり、「折り込め詐欺」については、警察もNHKも注意を呼びかけていない。

しかし、近々にある広告主が損害賠償を請求する裁判を起こすという噂もある。

次に紹介する動画は、2011年に山陽新聞の店主が撮影したもので、水増しされて余ったユニクロの折込広告を段ボールに梱包する場面である。この店主は、新聞社サイトが過剰な折込広告を割り当て、折込広告による収入の一部を販売店から徴収しているとして、内部告発に踏み切ったのである。新聞人としての良心である。

ちなみに次に示すのは、折込広告が詰められた段ボールをトラックで搬出する場面である。

【参考動画】新聞没落、1販売店から月間30トンの「押し紙」、「折り込め詐欺」の発覚でクライアントが折込広告に見切りか?
改めていうまでもなく、「折り込め詐欺」の温床は、新聞社が採用してきた「押し紙」政策である。日本新聞協会や一部の新聞社は、「押し紙」政策の存在そのものをいまだに認めていないが、映像を誤魔化すことはできない。

 

2017年09月15日 (金曜日)

メディア関係者が政府に抗議しなければならない問題が、現時点で、少なくとも2件ある。まず、第一は、東京新聞の望月記者の質問に対して、内閣官房が同社へ抗議文を送付したことに対する反論である。

東京新聞も日本新聞協会も、いまだに抗議していない。望月氏が所属する記者クラブについても同じことが言える。厳重に抗議すべきなのだ。

内閣官房が抗議文書を送付したこと自体は、意見の表明であるから何の問題もないが、その内容に納得できないのであれば、反論すべきなのだ。反論しなければ、内閣官房の言い分を認めたことになる。反論していないことこそが大きな問題なのだ。

羊のように穏便に振る舞えば、同じことがまた繰り返されるだろう。そして言論の萎縮は、どんどん進んでいくだろう。

◇「Jアラート」によるメディアへの介入

メディア関係者が政府に抗議しなければならない第2の問題は、「Jアラート」をめぐる扱いである。テレビ局は、「Jアラート」のオン・エアーを当然の任務と考えているようだ。しかし、「Jアラート」は政府の情報にほかならない。

政府が放送局に対して、たとえば北朝鮮のミサイル発射に関する緊急情報を提供するのは自由だ。制限もすべきではない。問題は、むしろ放送局の側にある。政府が提供した情報をそのまま垂れ流すのは、ジャーナリズムではない。本来、どのようなかたちで、ミサイル発射を報じるかは、局によって異なっていなければおかしい。

放送局はこの点でみずからの立ち位置を明確にしておかなければ、緊急放送の内容がどんどんエスカレートしたとき、世論誘導の道具に変質しかねない。たとえば、緊急放送で「デモが発生しているから、外出を控えてください」という事にもなりかねない。

北朝鮮のミサイル・核問題は、日本の軍事大国化に悪用されているだけではなく、メディアの統制を進めるプロセスでも巧みに悪用されているのである。

ところがメディア関係者から、「Jアラート」について、そのあり方を再考しようという声はあがっていない。

ちなみにNHKの受信料に関して、「Jアラート」などの情報提供料金としての意味があるので、支払いの義務化は当然という意見もある。

◇15日に、「Jアラート」を発信

9月15日(本日)にも、「Jアラート」が発信された。ヤフーに表示された「Jアラート」は次のようなものである。

 【発表時間】
2017年09月15日 7時07分
 政府発表

 【内容】
ミサイル通過。ミサイル通過。先程のミサイルは、北海道地方から太平洋へ通過した模様です。不審な物を発見した場合には、決して近寄らず、直ちに警察や消防などに連絡して下さい。

【対象地域】
 北海道
 青森県
 岩手県
 宮城県
 秋田県
 山形県
 福島県
 茨城県
 栃木県
 群馬県
 新潟県
 長野県

 

【写真】東京新聞本社

 

 

 

2017年09月14日 (木曜日)

「折り込め詐欺」とは、新聞の折込広告の水増し行為のことである。たとえば新聞を1000部しか配達していない新聞販売店に、(1種類につき)1500枚の折込広告を搬入すれば、500枚が未配達になる。この500枚についても手数料を徴収する。このような工作が「折り込め詐欺」である。

大半の新聞社は、新聞販売店に対して実配部数をはるかに上回る部数(「押し紙」)を搬入するので、「折り込め詐欺」は半ば日常化してきた。いわば新聞のビジネスモデルに組み込まれてきたのである。

次に示すのは、産経新聞・四条畷販売所から入手した古紙(「押し紙」)回収業者の伝票(2001年8月21日~29日)である。「押し紙」の回収量を㎏で表示している。古い資料だが、これを見れば「押し紙」の量がいかに凄まじく、それに連動する「折り込め詐欺」もいかに深刻だったかが分かる。

8月21日  2010㎏
8月22日  3290㎏
8月28日  2090㎏
8月29日  3970㎏

わずか10日ほどで11トンを超えているのである。月間では、推定30トンにもなる。

次に示すのが裏付け資料である。

 

◇発覚したときにクライアントを失う

上記の資料は、2001年ごろの「折り込め詐欺」の実態を示している。しかし、最近は「折り込め詐欺」は下火になっているようだ。と、言っても「押し紙」が減っているわけではない。広告主が「折り込め詐欺」に気づき、自主的に折込広告の発注枚数を減らす傾向が現れているのだ。

たとえば公称の配達部数が2000部の販売店の場合、本来であれば2000枚の折込広告を発注するが、広告主が自主的に500枚を減数して1500枚に枚数調整するというふうに。その結果、販売店は折込広告の水増し収入が得られない。

最近、新聞販売店の経営が急激に悪化しているが、その主要な原因は、広告主が折込広告の発注枚数を自主的に減らすことである。多くの販売店が折込広告の激減に苦しんでいる。

ちなみに現在の新聞のビジネスモデルを構築したのは販売店ではなく、新聞社の側である。販売店は、基本的には、そのビジネスモデルに組み入れられているに過ぎない。「折り込め詐欺」の責任は、新聞社にあるというのが筆者の考えである。

新聞社の経営悪化といえば、とかく発行部数の減部数と紙面広告の衰退がその原因として指摘されるが、新聞業界全体で見れば、折込広告の激減も同程度に重要な要因になっているのである。

東京都内の元販売店主が言う。

「私は昔から、折込広告の水増しはやめるべきだと主張してきました。発覚したときに、クライアントを失い、経営に支障をきたしかねないからです。私のような考えの店主は、たくさんいましたが、新聞発行本社が販売店の声に耳を傾けませんでした。その結果、今、新聞社は経営難に陥っています」

 

【動画】余った折込広告を詰め込んだ段ボールをトラックで搬出する場面

2017年09月13日 (水曜日)

去る8月19日に日本ジャーナリスト会議(JCJ)が主宰するJCJ賞の授賞式で、ジャーナリストでクイーンズ大学大学院生の小笠原みどり氏が、「監視社会とメディア 共謀罪後の言論の自由とは」というタイトルで講演した。

小笠原氏は昨年、NSA(アメリカ国家安全保障局)による不正な個人情報収集の実態などを内部告発したエドワード・スノーデン氏にインタビューした。その中でスノーデン氏が明らかにしたスパイ活動の実態、日本政府の関与、それに共謀罪制定との関係などについて語った。

日本で、世界で想像以上の恐ろしい情報収集が始まっている。

次の動画は、小笠原氏の講演を収録したものである。動画の出典は、「自由メディア」

【参考記事】『スノーデン 監視社会の恐怖を語る』(小笠原みどり著、毎日新聞出版)、あなたの電話もEメールも全て秘密裡に保存され、「検索」対象に

2017年09月12日 (火曜日)

チリの軍事クーデターから9月11日で44年が過ぎた。「9・11」といえば、米国の同時多発テロの日として知られているが、もうひとつの「9・11」と呼ばれるのがチリの軍事クーデターである。

この事件は米国CIAが、当時、チリで成立した左派政権を軍事クーデターで倒し、その後、ピノチェットによる軍政を敷いたというものである。

1970年、チリの大統領選挙で社会党のサルバドール・アジェンデが当選して、社会党、共産党、キリスト教民主党のUP(人民連合)が成立した。これは世界ではじめて、選挙によって成立した社会主義をめざす政権だった。日本の共産党や社民党が政権を取っても、現段階で社会主義をめざすことは絶対にあり得ないが、アジェンデ政権は最初から社会主義を目指したのだ。

しかし、米国のニクソン政権は、チリに多国籍企業が進出していることなどから、アジェンデ政権に猛反発し、経済封鎖などさまざまな策略をめぐらせた。資本家の〈ストライキ〉まで起こり、チリ経済は混乱に陥った。

アジェンデ政権は崩壊するのではないかとする見方が有力だった。しかし、1973年の総選挙でUPが勝利する。この時点でアジェンデ政権を合法的に倒せないことが明らかになった。そこでCIAがピノチェット将軍と共謀して、軍事クーデターを断行したのである。アジェンデ・大統領は、銃で抗戦中に死亡した。

クーデター後、凄まじいテロが全土に広がった。米国による最も重い犯罪のひとつである。

◇クーデターの記憶

クーデターからすでに44年が過ぎたが、ラテンアメリカでは「9・11」が過去の事件として忘れられたわけではない。11日にはチリで記念行事が行われた。ツイッター上でも国境を超えて、クーデターに言及した投稿が目立つ。

たとえばエルサルバドルの政権党・FMLN(ファラブンド・マルティ民族解放戦線)の公式ツイッターは「1973年のチリの軍事クーデター、社会主義をかかげた最初の大統領サルバドール・アジェンデが殺害される」と述べ、写真も掲載している。(写真上)

この事件は、人々の脳裡に記憶されているのである。

◇米国、海外派兵の繰り返し

チリの「9・11」は、テロ国家としての米国の体質を露呈したといっても過言ではない。前世紀まで、米国はラテンアメリカに対する軍事介入を繰り返している。今、最も懸念されている軍事介入は、ベネズエラに対するものである。北朝鮮よりもこちらが先かも知れない。

次に示すのが、戦後、米国がラテンアメリカに対して行った主要な軍事介入である

■1954年 グアテマラ

■1961年 キューバ

■1964年 ブラジル

■1965年 ドミニカ共和国

■1973年 チリ

■1979年 ニカラグア内戦

■1980年 エルサルバドル内戦

■1983年 グレナダ

■1989年 パナマ

改めて言うまでもなく、すべて米国の一方的な介入である。

◇誰が北に先制攻撃を仕掛けるか?

日本では、日米軍事同盟によって日本を防衛する政策が当たり前のように語られているが、これは米軍の体質を知らないことに原因がある。海外で米軍が何をやっているのかが報じられないことに大きな原因があるようだ。

チリの軍事クーデターの直後に病死した詩人のパブロ・ネルーダは、当時、米軍がベトナムで断行していた激しい北爆の残忍さを凝視することで、チリの軍事クーデターを予測していた。そしてその予想は的中したのである。

このところ北朝鮮と米国の間で緊張が高まっているが、先制攻撃を仕掛けるとすれば、それは米国側の可能性が極めて高い。

チリの「9・11」を機に、米軍やCIAについて再考する必要があるだろう。