1. ライプツィヒ事件には「偽旗作戦」の特徴がそろっている

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2026年09月03日 (木曜日)

ライプツィヒ事件には「偽旗作戦」の特徴がそろっている

(The Leipzig Incident Has All The Hallmarks Of A False Flag)

ドイツ・ライプツィヒで、ウクライナの貨物機付近から爆発物を積んだドローンなどが相次いで発見され、ドイツ側はロシアの関与を指摘した。しかしプーチン大統領はこれを「偽旗作戦」だと反論している。本稿では、事件をめぐる不自然な点や過去の類似事例、ドイツの急速な再軍備という背景を踏まえ、この事件が戦時体制への移行や今後の対ロシア政策のエスカレーションを正当化するために利用されている可能性を考察する。

 

執筆者:アンドリュー・コリブコ

この事件は、ドイツ経済を戦時体制へ移行させることを正当化し、それによって生じる問題から国民の目をそらし、さらに将来ロシアに対して大規模なエスカレーション(対立の激化)に踏み切ることを正当化するために行われたものだ、というのが私の見方である。

ドイツは、先月ライプツィヒで起きた事件についてロシアを非難した。この事件では、爆発物を積んだドローン1機が、ウクライナの貨物機の近くにある滑走路上で発見された。また別のドローンは、着陸しようとしていた別の貨物機に衝突したものの、爆発しなかったと報じられている。さらにその後、3機目のドローンが空港施設の近くで発見された。

プーチンは、ロシアの仕業だとするドイツ側の主張を非難した。そして、証拠が意図的に仕込まれていることから、自分はこれを「偽旗作戦」だと考えていると述べた。また、その目的について、ロシアへの恐怖をあおることでドイツ国内の問題から国民の目をそらすことではないかと推測した。

こうした見方に懐疑的な人は、ばかばかしいと思うかもしれない。しかし私が見る限り、ライプツィヒ事件には偽旗作戦を疑わせる特徴がそろっている。

まず、ドイツ側の説明に従えば、ロシアはまるで漫画に出てくるような、とんでもない失態を犯したことになる。世界でも屈指の技術を持つとされるロシアのドローン操縦部隊が、もし本当にNATOに対する史上最も衝撃的な「ハイブリッド戦争」の攻撃を命じられていたのだとすれば、ドローン1機を滑走路に放置し、もう1機は着陸中の貨物機に衝突したのに運悪く爆発せず、さらに別の1機まで近くに残していったことになる。これは信じがたい話である。

【黒薮注】ハイブリッド戦争:ハイブリッド戦争(Hybrid Warfare)とは、通常の軍事攻撃だけでなく、サイバー攻撃、情報操作、経済的圧力、破壊工作など、さまざまな手段を組み合わせて相手国を弱体化させる戦い方のこと。

プーチンの「偽旗作戦」説を支持する2つ目の理由として挙げたいのが、昨年秋に起きた似たような出来事だ。当時、正体不明のドローンによって、スカンジナビアの主要空港が一時的に全便の運航を停止する事態となった。

ゼレンスキーは、予想どおりロシアを非難し、ロシア船舶に対してデンマーク海峡を封鎖するよう求めた。ライプツィヒ事件と同じく、その主張を裏付ける証拠は公表されなかった。しかし私は、この出来事によって、ヨーロッパで正体不明のドローン事件が起きた際にロシアの責任だとし、それを根拠に対ロシア政策をさらにエスカレートさせる、という前例が作られたと考えている。

そして3つ目の点として、ゼレンスキーが当時提案した対ロシア措置は結局実現しなかったものの(おそらくNATOとロシアの直接戦争を避けるためだったのだろう)、今回のライプツィヒ事件をきっかけに、何らかのエスカレーションが起こる可能性がある。

私は8月下旬の記事で、ロシアとの対立を大幅に激化させた場合、ロシア側よりもNATO側のほうが得るものが多いだろうと論じた。その具体的な形として考えられるのが、この夏に失敗した対ロシア・ドローン攻撃を大規模かつ長期的に再開し、ロシアの「脱工業化」と「非軍事化」を狙うというものだ。これが来年試みられる可能性もある。

ここで忘れてはならないのは、現在ドイツが、アメリカに次いでウクライナにとって2番目に重要な軍事支援国となっていることだ。ドイツは今年春、ウクライナの長距離攻撃能力を発展させることで合意している。

またドイツは急速に再軍備を進めており、その経済も戦時体制へと移行しつつある。その背景には、2030年ごろにロシアとの戦争が起こる可能性があるというEUの予測を踏まえ、それまでにヨーロッパ最大の陸軍を持つというドイツの目標がある。

しかし、こうした政策は有権者の間で不人気となっている。そのため私は、ライプツィヒ事件を利用して、この政策を正当化する必要があるのだと考えている。

ここまで述べてきたプーチンの「偽旗作戦」説に関する私の見方をまとめると、次のようになる。

昨年秋、スカンジナビアで「ロシアのドローン」に対する恐怖が広がったことで、その後ヨーロッパで同様の事件が起きた際、証拠がなくてもロシア政府の責任だと非難するための下地が作られた。そして今回、ドイツはライプツィヒ事件について実際にそれを行った、というわけだ。

一方で、ロシアのドローン操縦部隊がこれほど無能だったという説明は信じがたい。それにもかかわらず、その説明が広められているのは、ドイツ経済の戦時体制への移行を正当化し、それに伴って生じる国内問題から人々の目をそらし、さらに将来ロシアに対して大規模なエスカレーションを行うことを正当化するためだ、というのが私の見方である。

先ほど述べたように、そのエスカレーションとは、この夏に失敗した対ロシア・ドローン攻撃を大規模かつ長期的に再開し、ロシアの「脱工業化」と「非軍事化」を狙うという形になる可能性がある。

しかし、それを実行すれば、改定されたロシアの核ドクトリンに照らして、ロシアが核兵器使用を検討する一線、いわゆる「核の敷居」を越えてしまう危険性がある。

少なくともプーチンは、ウクライナに対して再び限定的な形で「事態を沈静化させるために、あえてエスカレートさせる(escalate to de-escalate)」という対応を取るだろう。しかし、そこから事態が制御不能に陥る可能性も常に存在する。

したがって私は、最終的にスカンジナビア諸国がそうしたように、ドイツも対立をさらに激化させることは避けるべきだと考えている。

筆者紹介:アンドリュー・コリブコ(Andrew Korybko)
モスクワ在住のアメリカ人政治アナリスト。MGIMO(モスクワ国際関係大学)で博士号を取得。著書に『ハイブリッド戦争―カラー革命からクーデターまで』

Source: https://korybko.substack.com/p/the-leipzig-incident-has-all-the