2026年08月25日 (火曜日)
「香害」は科学か、疑似科学か――市民団体が圧力、文化放送の番組削除が問いかけるもの

文化放送が8月5日に放送した「香害」に関するラジオ番組が、市民団体からの抗議を受けて削除されたことが分かった。番組はYouTubeでも視聴できるようになっていたが、現在はアクセスできなくなっている。抗議した団体は、カナリア・ネットワーク全国(共同代表・青山和子、深谷桂子)である。同団体は、番組で香害について話した村中璃子医師の見解に誤りがあったと主張している。
「香害」は、柔軟剤などの香りに身体が反応し、吐き気、めまい、頭痛など、さまざまな症状を引き起こすとされる問題である。化学物質過敏症との関連も指摘されているが、その病態や原因について医学的な合意が確立しているわけではない。吐き気、めまい、頭痛などは、化学物質への曝露とはかかわりなく日常的に起こり得る症状でもあるため、鑑別診断が極めて難しいのが実情だ。
「香害」(たばこの煙)が原因とされ、裁判になった横浜副流煙事件では、裁判を起こした「香害被害者」について、精神的な要因があったのではないかとする主張も行われた。被告男性が現場(自宅)を不在にしていた時にも被害を訴えていたことが、当事者の父親の日記などから裏付けられたためだ。
「香害」をめぐる議論の詳細については、今後「メディア黒書」でも検討するが、それ以前の問題として注目したいのは、この市民団体が文化放送に対して、「視聴者に対する訂正放送及び、アーカイブ放送の削除、謝罪の実施」を求めたことである。文化放送は番組を削除した。
ただし、番組を削除したという事実だけをもって、文化放送や村中璃子医師が番組内容の誤りを認めたと断定できるかどうかは、慎重に考える必要がある。
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市民運動団体からの外圧によってメディアが萎縮する現象は、しばき隊をめぐる例でも確認できるように、特に珍しいものではない。しかし、社会的なテーマとなっている問題については、公共の場で議論することが望ましい。
横浜副流煙裁判を取材した筆者の見解を述べれば、「香害」として語られている現象の中には、疑似科学的な説明が含まれている可能性がある。微量の化学物質に身体が反応する人が存在することは、取材経験からすれば事実である可能性が高い。一方で、心理的な要因によって症状を訴えている可能性のある人がいることも考慮する必要がある。
横浜副流煙裁判は、「香害」を考える上で格好の題材である。「香害」の存在を主張している人びとも、この事件を検証する必要があるだろう。
※横浜副流煙裁判に材を取った映画「窓」が、インターネット上で無料公開されています。「香害」をめぐる肯定論と否定論の双方を取り上げた作品です。
