1. 「化学物質過敏症は治らない」は本当か? 専門医らが示した新たな医学的見解

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2026年09月04日 (金曜日)

「化学物質過敏症は治らない」は本当か? 専門医らが示した新たな医学的見解

「香害」をめぐる問題で、タブーとされてきたのが、化学物質過敏症を根拠とする障害年金の支給である。障害年金には等級があり、支給額は、2級の場合は年間85万円、1級の場合は106万円である。そのため、多くの「化学物質過敏症」の患者が、化学物質過敏症の診断書を交付してくれるクリニックに殺到する。

しかも、この「病気」は治療できないという考えが定着しているので、障害年金の更新が延々と繰り返される。

市民運動団体や健康食品を扱う業者の間にも、不治という考えが定着している場合が多い。たとえば、たま屋(会員制オーガニック専門店)のウェブサイトには、次のような記述がある。

「CS(黒薮注:化学物質過敏症のこと)も電磁波過敏症も、現在「治せる病院も医者も薬もない」です。

化学物質がダメなのですから使えない薬が多い、受けられない医療行為が多いのです。」
■出典https://tamaya.hamazo.tv/e8340237.html」

◆化学物質過敏症の最新事情

ところが近年、化学物質過敏症は治癒しうる病気だとする説が広がりはじめている。もっとも、その前提として、そもそも化学物質過敏症という診断そのものが誤りで、別の病気が潜んでいる場合があることも考慮されている。この新しい説の先頭に立っているのが、化学物質過敏症の専門医で厚生労働省や環境省で研究班長などを務めてきた坂部貢医師らである。

環境省の「環境中の微量な化学物質による健康影響に関する調査研究」と題する報告書の中で、化学物質過敏症は治癒しうる病気であることを明確に述べている。報告書は、化学物質過敏症と診断された患者の中には、実際には他の疾患を抱えていた患者もいたことを踏まえて、この病気が治療できる点について次のように述べている。

『治療に成功した例には①激しい頭痛と脱力、ふらつき、不安感が初発で、可逆性脳血管攣縮症候群が疑われ、ガバペンチノイドが奏功 ②鼻粘膜痛が初発で、末梢神経障害性疼痛が疑われ、頭頸部の慢性疼痛に対する標準的な治療(ガバペンチノイド、SNRI、星状神経節ブロック)により改善 ③広範な知覚の変調が初発で、統合失調症が疑われ、抗精神病薬が著効、の三つのパターンが見出された。各症例は、ビタミンD 欠乏、亜鉛欠乏、変形性脊椎症、脳脊髄液減少症などをしばしば合併し、それぞれの治療により全体として患者のQOLが改善した。

 石川(北里大学名誉教授・元医学部長)らが、いわゆる化学物質過敏症の診断基準の中であげた眼球滑動性追従運動異常は、多種類の疾患、たとえば片頭痛、精神科疾患(統合失調、双極性障害、強迫症、うつ病、不安症、PTSD)や発達症、パーキンソン病、脊椎疾患(鞭打ち症、頚部痛)、頭部外傷、脳脊髄減少、慢性有機リン注毒、有機溶剤中毒、シックハウス症候群においても認められる。この診断基準を用いて診断する場合には、除外診断のために、網羅的で精密な検査が必須である。また、病気そのものの存在が医療従事者の理解を得られにくく、患者が極端な病態認識を持つ原因として、過去の根拠に乏しいいわゆる化学物質過敏症の発症に関する仮説が、いまだ巷間に流布していることが一因となっている。化学物質過敏症患者による他の患者や家族に対するハラスメントも無視できないレベルで存在し、対策が急がれる。

 いわゆる化学物質過敏症は症状の特徴に基づく病名で、他の疾患の併存を除外するものではない。発症早期に併存疾患が発見され、積極的な治療と原因物質の回避により症状が軽快ないしは消失する症例が存在する。一方、治療開始の遅れ、何らかの理由により原因物質の回避がうまくいかない、複数または未知の化学物質の曝露、栄養欠乏、脳脊髄液減少症の併存により、病態が複雑で、なかなか改善が得られにくい症例も存在する。いわゆる化学物質過敏症は治らないという一般の認識は早急に変えていく必要があると同時に、患者に適切な医療が提供されるよう、医療側の努力が必要である』■:出典

従来、おもに「問診」によって化学物質過敏症と診断されてきた病態の実態を理解するうえで、貴重な提言である。今後、障害年金の在り方を再考する必用がある。

※なお、引用した文書の解説は、藤井敦子さんのNOTEにある。分かりやすく解説されている。  NOTE