◆吉竹幸則(フリージャーナリスト・元朝日新聞記者)
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さらに、朝日は主張の根拠として持ち出したのが、日本新聞協会の「編集権声明」だったのです。朝日の書面はこうです。
「被告も加盟する日本新聞協会は、新聞の自由と編集権について、1948年3月16目付『編集権声明』において、以下の見解を公表し、現在に至っている。
『新聞の自由は憲法により保障された権利であり、法律により禁じられている場合を除き、一切の問題に関し公正な評論、事実に即する報道を行う自由である。この自由はあらゆる自由権の基礎であり民主社会の維持発展に欠くことが出来ぬものである。また、この自由が確保されて初めて責任ある新聞が出来るものであるから、これを確立維持することは新聞人に課せられた重大な責任である。編集権はこうした責任を遂行する必要上何人によっても認められるべき特殊な権能である。
1編集権の内容
編集権とは新聞の編集方針を決定施行し報道の真実.評論の公正並びに公表 方法の適正を維持するなど新聞編集に必要な一切の管理を行う権能である。 編集方針とは基本的な編集綱領の外に随時発生するニュースの取扱いに関す る個別的具体的方針を含む。報道の真実、評論の公正、公表方法の適正の基準は日本新聞協会の定めた新聞倫理綱領による。
2編集権の行使者
編集内容に対する最終的責任は経営、編集管理者に帰せられるものであるか ら、編集権を行使するものは経営管理者およびその委託を受けた編集管理者 に限られる。新聞企業が法人組織の場合には取締役会、理事会などが経営管理者として編集権行使の主体となる。
3編集権の確保
新聞の経営、編集管理者は常時編集権確保に必要な手段を講ずると共に個人たると、団体たると、外部たると、内部たるとを問わずあらゆるものに対し編集権を守る義務がある。外部からの侵害に対してはあくまでこれを拒否する。また内部においても故意に報道、評論の真実公正および公表方法の適正を害しあるいは定められた編集方針に従わぬものは何人といえども編集権を侵害したものとしてこれを排除する。編集内容を理由として印刷、配布を妨害する行為は編集権の侵害である』
前述のように、個別の記事を掲載するかしないか、掲載するとすればいつ、どのように扱うかは、まさに新聞の編集権の行使そのものである。そして、その基準について、同協会は2000年6月21日付制定『新聞倫理綱領』において、以下のように定めている。
『おびただしい量の情報が飛びかう社会では、なにが真実か、どれを選ぶべきか、的確で迅速な判断が強く求められている。新聞の責務は、正確で公正な記事と責任ある論評によってこうした要望にこたえ、公共的、文化的使命を果たすことである。
正確と公正 新聞は歴史の記録者であり、記者の任務は真実の追究である。報道は正確かつ公正でなければならず、記者個人の立場や信条に左右されてはならない。論評は世におもねず、所信を貫くべきである』」
この文面の「2 編集権の行使者」のみ、朝日は都合よく抜き出したのです。「編集権」は、経営者にあるから、記者が何を書いて来ようと、記事にする、しないは、経営者の裁量権の範囲内。記者には、私の言う「報道実現権」は存在しない、と言う論理立てです。
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