1. 博報堂が作成した陸上自衛隊向けの「手作り」請求書の異常、H28年度分を公開、HPコンテンツの改修で1420万円の高額請求、裏金の疑惑も?

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2017年07月14日 (金曜日)

博報堂が作成した陸上自衛隊向けの「手作り」請求書の異常、H28年度分を公開、HPコンテンツの改修で1420万円の高額請求、裏金の疑惑も?

防衛省から、2016年度(平成28年度)に陸上自衛隊が博報堂へ発注した業務の見積書・契約書・請求書を入手した。

業務件数は5件。このうち1件は請求書が欠落している。次に示すのが、4件の業務内容と請求額である。

平成28年度自衛隊音楽まつり企画演出等役務:42,950,000円

平成28年度用自衛官募集CMの制作・放映等、平成29年度用総合ポスター制作:141,050,000円

平成28年度自衛官募集HPコンテンツの改修:14,256,000円

平成28年度(10月~12月)募集広報事業の部外委託(スマートフォンバナー広告):5,400,000円

自衛隊音楽祭りに約4300万円、CMとポスターに1億4100万円、HPコンテンツの改修に、約1430万円、それにスマートフォンのバナー広告に約540万円である。

このうち自衛隊音楽祭は、見積額と請求額が年々徐々にあがり、高止まりの状態になっている。たとえば2009年度は、29,995,350円だったが、2014年度には、38,999,880円に、そして2015年度は、43,738,880円になった。28年度は、42,950,000円である。安倍政権になってから、大盤振る舞いになったのだ。

安倍首相による軍事大国化が進むにつれて、自衛隊のPRも活発化していることを示している。

HPコンテンツの改修に1400万円というのも異常に高い。50万円ぐらいが相場である。CMの制作・放映等に1億4000万円は、どう評価すべきなのか分からない。

◇なぜ、インボイスナンバーを外したのかが疑問

しかし、問題はこれだけではない。請求書がワープロ(おそらくはワード)で作成され、博報堂の公式の書式が使われていないのだ。また、請求書のインボイスナンバーも外してある。

通常、企業が発行する請求書には、インボイスナンバーを付番することで、コンピュータと連動した会計処理を可能にしている。手動で処理していると大変な労力を要すからだ。会計処理を迅速に進め、しかも不正の防止にも効力がある。

コンピュータと連動したこの会計処理の原理は、クレジットカードのシステムを思い浮かべると分かりやすい。クレジットカードの番号が分からなければ、コンピュータは作動しない。従ってクレジットカードにナンバーの付番は不可欠である。

現在の会計システムも同じ原理で作動している。もちろん、インボイスナンバーがなくても、処理する方法はあるが、それは合理性の障害になるので、なるべく避けるのが一般原則である。従って正常な商取引では、あえてインボイスナンバーを付番しない合理的な説明はつかない。

博報堂の請求書から、インボイスナンバーが外してある事実は、これらの請求書が正規の会計システムとは別のところで、会計処理されている可能性を示唆している。もし、そうであれば会計監査もシステム監査も受けていないことになる。つまり裏金になっている疑惑があるのだ。

筆者は防衛省に対して、インボイスナンバーを外している理由を問い合わせたことがあるが、「答えません」という回答が返ってきた。

一方、博報堂の監査法人である「あずさ監査法人」は、取材を拒否している。

◇中央省庁と博報堂の取り引き

博報堂と中央省庁(内閣府を含む)の取引では、インボイスナンバーのない「手作り」の請求書が大量に存在している。たとえば内閣府だけでも、2012年度から15年度の4年間だけで、インボイスナンバーのない請求書の請求総計は約64億円にもなる。

もちろん防衛省やその他の省庁にも同じ疑惑がある。

【参考記事】陸上自衛隊で8年間に約9億円、インボイスナンバーのない疑惑の請求書、ワープロで作成か?

【参考記事】インボイスナンバーを外した博報堂の請求書、環境省は15年度だけで約13億円

中央省庁と博報堂のPR活動を通じた取引は極めて不透明である。また、現在、内閣府と内閣官房から、少なくとも2人の元官僚が博報堂へ「天下り」している。なにか関連はあるのだろうか。

【参考記事】内閣官房の広報戦略推進官・田幸大輔氏が博報堂へ再就職、疑惑のプロジェクトに関与した高い可能性、博報堂へ「天下り」の実態(1)

【参考記事】博報堂に5人の国家公務員が天下り、2007年の国会・内閣委員会でも、共産党の吉井英勝議員が指摘

◇電通を排除したが・・・

メディアの報道によると、厚生労働省が7日に電通を6ヶ月の間、指名停止にした。労働基準法違反で、略式起訴されたことを受けた処置である。

そのこと自体は評価できるが、電通を排除したから中央省庁と広告代理店の取引が透明になるわけではない。それよりも、インボイスナンバーを外した請求書が多量に存在する問題を徹底調査しなければならない。調査して不正があれば、電通が抜けたあなを博報堂が独占することがあってはならない。

広告代理店へ国策プロパガンダの報酬として支払われているのは、国家予算である。取引実態の精査が不可欠である。

【写真】手作り」の請求書、公金の振込先も黒塗りに