1. インボイスナンバーを外した博報堂の請求書、環境省は15年度だけで約13億円

大手広告代理店に関連する記事

2017年06月02日 (金曜日)

インボイスナンバーを外した博報堂の請求書、環境省は15年度だけで約13億円

博報堂から内閣府や中央省庁へ送付された請求書にインボイスナンバー(書類の番号)がない問題の続報である。今回は、2015年度の環境省と文部科学省のケースを紹介しよう。次に示すのは、請求書と請求金額の一覧である。

■環境省

■文部科学省

なお、インボイスナンバーを外した請求書により、どのような不正が可能になるのかについては、次の説明を参照にしてほしい。

【故意にインボイスナンバーを外す意味】
 インボイスナンバーとは、請求書に付番されている書類番号である。この番号は、書面の整理番号である。日本国民をマイナンバーでコンピューター管理するように、請求書はインボイスナンバーでコンピューター管理される。そして通常は、見積書や納品書のナンバーとひも付きになっている。

 コンピューターと連動した会計システムを導入している企業は、インボイスナンバーを付番することで、合理的に経理作業を進める。会計監査とシステム監査も合理的におこなう。もちろん博報堂もコンピューターと連動した会計システムを導入している。

 したがってあえて正常な商取引でインボイスナンバーを外した合理的な理由は存在しない。博報堂は、社内では付番していると説明しているが、なぜ、社内では付番して、社外向けには、ナンバーを外した別の請求書を送付しているのか理由は分からない。

しかし、法的な観点から見ると、インボイスナンバーを外した請求書の発行が違法行為にあたるわけではない。エクセルやワードの請求書も合法である。請求書の書式が自社のロゴ入りの公式のものでなければならないという法律もない。この点について、取材した税理士は次のように話す。

「違法行為にはあたらないことを熟知した上で、こうした請求書を発行しているのでしょう」

 法の抜け道があるというのだ。

◇地方自治体向けの請求書は正規のもの

インボイスナンバーを外した請求書が多数存在する事実について、ある元国家公務員を取材したところ、次のようなコメントがあった。

「省庁の側から指示されている可能性もあります。こうした請求書で裏金を作っているとすれば、省庁が主導しているのかも知れません。背任です。博報堂とすれば、わざわざインボイスナンバーを外す理由がないわけです。省庁の指示に従ってやっているのであれば当然、裏金作りが疑われます」

筆者は、博報堂が地方自治体に対して発行した請求書についても、広範囲に調査した。しかし、正規の請求書が使われており、中央省庁でみられるようなインボイスナンバーを外した請求書はまったく発見できなかった。請求額が適正かどうかという別の問題はあるが、少なくとも請求書そのものは正規のものだった。

今後、さらに調査の範囲を拡大するが、おそらく結果は同じだと思う。疑惑があるのは中央省庁である。

◇民主党の野田政権の時代にスタート

既報したようにインボイスナンバーを外した請求書は、政府の新聞広告だけで4年間で約64億円にもなる。民主党の野田政権の時代にスタートした「政府広報ブランドコンセプトに基づく個別広報テーマの広報実施業務等」と呼ばれるプロジェクトの請求書で、安倍政権下で本格化した。2016年には、内閣府から、内閣審議官・阪本和道氏が博報堂へ天下りしている。

■阪本氏の再就職届出

このインボイスナンバーを外した請求書の疑惑は、ある意味では森友学園や加計学園の問題よりも重大だ。国税局は、調査すべきだろう。

真相を解明する必要がある。