1. 誰が環境省の見積もり内訳を「黒塗り」にしたのか、情報公開請求で調査を開始

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2017年03月26日 (日曜日)

誰が環境省の見積もり内訳を「黒塗り」にしたのか、情報公開請求で調査を開始

環境省に対して情報公開請求した資料(博報堂が請け負った約8億6300万円のプロジェクト「平成27年度低炭素社会づくり推進事業委託業務」の見積もり内訳)の肝心な部分が黒塗りにされて開示されたことを受けて、筆者は23日、環境省に次のような文言の情報公開請求を公式に申し立てた。

「平成27年度低炭素社会づくり推進事業委託業務」の見積書の内訳を黒塗りにして開示するように決定を下した人物を特定できる文書。

既報したように、筆者は昨年、環境省に対して「平成27年度低炭素社会づくり推進事業委託業務」の契約書、見積書、請求書の開示を請求した。これらの書面は開示されたが、最も肝心な見積書の内訳が欠落していた。請負価格が約8億6300万円と高額だったために、筆者はその内訳を開示するように、再度申し立てを行った。

数日後、内訳を入手することができたが、すべて数字は黒塗りになり、隠されていた。

◇どのような疑惑があるのか

このプロジェクトの契約は、2015年(平成27年)4月1日、環境省と博報堂の間で結ばれた。請負価格は、約7億7600万円だった。ところが約2ヶ月後の6月12日に、請負価格が約8億6300万円に変更になった。もとの価格に約1億円が上乗せされたのである。

このようなケースでは、価格が変更になった理由を検証する必要がある。その作業に不可欠なのが、見積もりの内訳である。しかし、環境省は数字の黒塗りというかたちで、事実上その開示を否定したのである。

◇番号が付番されていない書面

しかも、このプロジェクトの見積書と請求書には、公式な書面の作成という観点から、極めて重大な落ち度があるのだ。それは書面に付番がなされていないことだ。

上場企業やその連結子会社は、通常、不正な取り引きを防止するために、見積書、請求書、納品書に共通番号を付番して、コンピューターで管理する。(注:正確には共通番号とは限らないこともあるが、システム内で同じ見積書、納品書。請求書がリンクするようになっているそれによりどの見積書に、どの請求書と納品書が対応しているかを的確に把握する。こうして、裏金作りなどの不正経理を防止する努力をしているのだ。

このような管理システムは、大企業ではほぼ常識になっている。システムを導入しないことが違法行為ではないが、奨励されている。

逆説的に見ると、見積書、請求書、納品書が付番され、コンピューター管理がなされていなければ、見積書に存在しない項目を不正に請求して、裏口座にお金を貯め込むことも可能になる。公式の会計システムから外れているわけだから、もちろん会計報告にも含まれない。税金を払っていない可能性もある。少なくともこうした重大な疑惑が生じるのだ。

その意味では、見積書、請求書、納品書に管理番号が付番されていなければ、一応は、綿密な調査を行う必要性が生じるといえよう。難しい理屈など不要なのだ。付番されていない請求書は会計監査システムやシステム監査を受けていないとしか考えられない。つまり正しく売上を申告をしていない可能性がある。

◇環境省の他に内閣府、防衛省、文部科学省も

しかし、番号が欠落した書面を博報堂から受け取っているのは、環境省だけではない。他にも内閣府、防衛省、文部科学省などがある。

このうち内閣府の請求書は全てナンバーの付番どころか、日付もない。内閣府の請求書は明らかに会計監査システムやシステム監査を受けてはいない。この問題について、あずさ監査法人に尋ねたが無回答であった。

機会があれば、国税当局にも博報堂のあり得ない請求書についての見解を尋ねてみたい。

私企業相互の取り引きであればまだしも、日本の「役所」は、付番されていない書面で国家予算を支出しているのだ。裏金作りの防止という観点からすれば、大きな問題がある。

■内閣府の請求書の例

■文部科学省の例

■防衛省の例

■環境省の例