1. 博報堂事件でアスカが主張、「アフィリエイト(成功報酬型のインターネット広告)で水増しがあった」

大手広告代理店に関連する記事

2016年09月13日 (火曜日)

博報堂事件でアスカが主張、「アフィリエイト(成功報酬型のインターネット広告)で水増しがあった」

アフィリエイトとは、成功報酬を基本とした広告のことで、インターネットの普及と共に新しいPR戦略として登場した。たとえば広告主が自社のバーナー広告をウエブサイトに張り付けてもらい、その結果、ここを窓口として新規顧客を獲得する。この場合、広告主はウエブサイトに対して成功報酬を支払う。

当然、新規の顧客が多ければおおいほど、成功報酬も高くなる。新規の顧客が少なければ、成功報酬も少なくなる。いわば完全な成果主義スタイルの広告と言えよう。

アスカコーポレーションが博報堂に対して起こした過払金返還請求訴訟(請求額は約15億円)の中でも、アフィリエイトをめぐる争点がある。新規の顧客獲得数を、博報堂が水増ししていたというのがアスカの主張である。

◇アフィリエイトの不透明さ

アスカが問題としているのは、2010年6月から12月までの間に、博報堂が任意に選択したアフィリエイトサイトを通じて獲得した「新規顧客」の信憑性である。新規ではない顧客が含まれているというのが、アスカの主張である。博報堂が新規としている顧客の中には、「既存顧客」、「重複登録」、「無効データ」が含まれているといのである。

具体的な数字をアスカの主張に沿って確認しておこう。6月から12月の顧客の内訳は次のようになっている。

新規顧客 :10,731人(23.9%)
既存顧客 : 8,778人(19.5%)
重複登録 :10,610人(23.6%)
無効データ:14,869人(33.1%)
合計    44,988人

博報堂は、当然、上記の「合計」を基準として請求を起こしたが、アスカの主張は、支払い義務があるのは、新規顧客に該当する10,731人(23.9%)分だけだというものである。これに基づいて金額を見てみよう。

博報堂がアスカに請求したのは、総計で2468万円である。これに対して、アスカは、支払い義務があるのは、2468万円の23.9%にあたる590万円だけだというものである。差額の1878万円の返還を求めている。

博報堂が新規登録者と主張する顧客の確認は、次のようなプロセスを経て行われていた。まず、博報堂からアスカに新規登録者についての情報が送られてくる。アスカはそれを電算室が保管している顧客情報などに照合して、確認する。そして「既存顧客」、「不正顧客(重複顧客)」、「無効顧客(情報足らず)」を差し引いた人数を請求対象として博報堂へ通知する。

ところが博報堂は、その通知とは無関係に顧客の総数でアフィリエイト代金を請求してきたというのがアスカの主張である。アスカが抗議すると、「南部社長の承認済みですから・・」と言ってかわしたという。

アスカによると、アフィリエイト経由の新規顧客の中には、「無料のお試しセット」が目的で、顧客にはならない客も多かったという。アスカが言う。

「1人の申込者が何人ものに成りすましている事が判明し、その数は1万人を超えました。直ちにアフェリエイトの停止を指示しまた。しかし、1万人の成りすましの客に対してトライアルセットを既に発送済みで、アスカに多大な損害がでました。そのためにアフェリエイト手数料の支払いは出来ない旨を博報堂も了承したうえでアフェリエイト広告を停止したのです。

ところがその3ヶ月後に経理に1万人分が請求をされ、弊社もすでに支払い済みでした。つまりこの件を忘れた頃に成りすまし分を請求していた訳です。そのために成りすましによる被害は数万人に膨れ上がったわけです。

ちなみに無料トライアルセットを発送しても通常は15%前後の本商品の受注率が、博報堂のアフェリエイト広告では、受注率はほぼゼロでした。」

これに対する博報堂の主張は、取材を拒否しているために分からない。取材を拒否して利益になることは何もないのだが、応じない方針のようだ。

◇入場者数の水増し

博報堂による数値の偽装として有名なのは、盛岡市の「いわて県民情報交流センター」を委託運営している同社が、4年間で延べ2380人分の入館者数を水増ししていた事件である。

手口は簡単で、カウンターの前をアルバイトが往復して、カウント数を増やすという幼稚なものだった。毎日新聞によると、今年の「1月23日、利用者がアルバイト職員の不審な行為を目撃して」職員に指摘した。そして「2月10日に県に通報して発覚した。」という。

上の「イメージ動画」は、この事件をイメージ化したものである。

 出典:入館者数水増し、県の施設で管理委託グループが4年間で2380人分

◇原点は郵政事件

ちなみに博報堂事件の原点は、郵政民営化の際に水面下で進行していた郵政事件にほかならない。博報堂は郵政グループの社員を接待づけにして、同グループとの間でPR業務の独占契約を取り付けている。郵政民営化は、国策だったので、ほとんど報じられなかったが、水面下の大事件である。

以下、参考記事である。

■郵政事件で浮彫になった博報堂の営業戦略、PR業務の1社独占と高額請求の手口、アスカの被害は氷山の一角か?

■日本郵政、広告発注に契約書なし 博報堂に368億円