2016年10月03日 (月曜日)

【臨時ニュース】

新潟地方検察庁が、森裕子氏に対する刑事告発を受理した。この事件は、今年の6月にメディア黒書で紹介した次の記事で指摘した類である。

■一市民を提訴した森裕子参院議員候補が過去にマネーロンダリング、政治資金収支報告書で判明

その後、A氏と黒薮の連名で東京地検特捜部に刑事告発を行った。しかし、特捜部が不受理を決定したので書面を修正し、今度は新潟地方検察庁に書面を提出した。

3日の午後、A氏の自宅へ、新潟地方検察庁から刑事告発を受理したとの連絡があった。同庁は捜査に入る。

森氏は2013年に市民に対して名誉毀損裁判を提起して敗訴。その後、A氏と筆者が裁判の検証や政治資金収支報告書の精査を行う中で、マネーロンダリングの疑惑が浮上。刑事告訴となっていた。

2016年10月03日 (月曜日)

読売新聞の販売政策が争点となった真村裁判が始まったのが、2002年だから、今年で14年になる。裁判は先日、ようやく終わった。この事件には、読売から3件の裁判を起こされたわたしを含めて、さまざまな人々が登場する。

読売側の弁護団も、初期とは完全に入れ替わった。途中からは、喜田村洋一自由人権協会・代表理事も東京から福岡へかけつけ、読売のために働くようになった。

読売は、弱小のYC広川を経営する真村氏を相手に必死の戦いを繰り広げたのである。

10月2日、「新聞の偽装部数『押し紙』を考える」と題する集いが、東京板橋区の板橋文化開会で開かれ、真村弁護士団の江上武幸弁護士が真村事件について講演した。

◇真村事件とは

事件の発端は、読売が真村氏にYC広川の営業区域の一部を返上するように求めたことである。その背景に筑後地区の“大物店主”S氏の存在があった。S氏の弟がYC広川の隣接区にあるYCを経営しており、YC広川の営業地区を縮小する一方で、それを隣接店に組み込むというのが読売の方針だった。

久留米市など筑後地区にある他のYCでも、S氏がかかわった類似事件が続いて発生し、真村氏ら3人の販売店主が、地位保全の裁判を起こした。これが俗にいう真村裁判である。3人の原告のうちひとりは、既にYCの経営権を剥奪されていたので、和解解決した。他のひとりのケースは、あまり争点にはならなかった。中心的な争点になったのは、真村氏の事件だった。

結果は地裁から最高裁まで真村氏の勝訴だった。2007年12月に真村氏の販売店主としての地位は保全されたのだ。真村氏の勝訴に刺激されて、新たに3人のYC経営者が、江上弁護士に「押し紙」(広義の残紙)問題を相談した。2007年の秋のことだった。これら3店主が経営するYCには、約40%から50%の「押し紙」(残紙)があった。

◇喜田村弁護士に対する弁護士懲戒請求

こうした状況の下、真村事件を取材していたわたしに対する裁判攻勢が始まった。喜田村洋一自由人権協会・代表理事を代理人として、2008年2月から2009年7月までの約1年半の間に3件の裁判を起こしたのである。請求額は、約8000万円。

このうち最初の著作権裁判では、読売側が、虚偽の事実(催告書の名義人の偽り)をでっちあげ、それを根拠に提訴に及んだ強い可能性が司法認定され敗訴した。もともと提訴する権利がなかったのだ。前代未聞のケースだ。

そこで喜田村弁護士に対して、弁護士懲戒請求を行ったが、2年にわたる審理の末、日弁連は、喜田村弁護士に対する処分を行わない決定を下した。つまりでっち上げ裁判が許されるということになる。この事件と日弁連の判断が再検証を要することは言うまでもない。

2件目の裁判は、地裁、高裁はわたしの勝訴。最高裁が口頭弁論を開いて、判決を高裁に差し戻し、わたしの敗訴となった。わたしに110万円の支払いを命じた判決を下した加藤新太朗裁判官は、退官後、アンダーソン・毛利・友常法律事務所に再就職(広義の天下り)している。

3件目はわたしの完全敗訴だった。この裁判で喜田村弁護士らは、自社(読売)に「押し紙」は1部も存在しないと主張し、裁判所もそれを認めた。

◇第2次真村裁判

一方、真村氏は最高裁で判決が確定した7ヶ月後に、YC広川を改廃された。
そこで再び地位保全の裁判を起こさざるを得なくなった。

第2次裁判の結果は次の通りである。舞台は福岡地裁である。

1、仮処分       真村勝訴

2、仮処分(異議審)   真村勝訴

3、仮処分(抗告?高裁) 真村勝訴

4、仮処分(特別抗告)  真村勝訴

1、地裁本訴       読売勝訴

2、高裁本訴       読売勝訴

3、最高裁        読売勝訴

このうち仮処分の異議審で真村さんを勝訴させたのは、木村元昭裁判官だった。仮処分としては、異例の25ページにも及ぶ判決文で、読売の主張を退けたのである。

さらに真村氏の後任者としてすでに販売店経営に着手している店主とも話し合って、真村氏に営業権を移譲するように命じている。

木村裁判官は、この判決を下した2週間後の2月1日に那覇地裁へ所長として赴任した。

その後、真村さんは仮処分裁判を勝ち進む。ところが抗告(高裁)で勝訴した数日後に本訴(地裁)判決があり、意外にも敗訴した。

そこで真村さんは高裁へ控訴した。控訴審が始まって間もなくすると、裁判官の交代があった。1年半前に仮処分裁判(異議審)で、真村氏を勝訴させた木村元昭裁判官が、那覇から福岡へ戻り、真村裁判を担当することになったのである。

そして真村氏を敗訴させたのだ。仮処分では真村氏を勝訴させ、経営権を取り戻せるように、後任店主との話し合いを勧めていた同じ裁判官が、今度は180度異なった判決を下したのである。

この件は最高裁事務総局による「報告事件」の疑惑があり、今後、情報公開などを通じて、調査する必要がある。

真村氏が敗訴した理由は、さまざまだが、その中のひとつに、わたしに対して真村氏が情報提供を行ったというものがある。メディア企業・読売がこうした主張をしたこと自体が議論の的になる。読売の記者は、この件をどう考えるのだろうか。

◇自宅の仮差し押さえ

第一次、真村裁判の判決が最高裁で確定したころ、「押し紙」について江上弁護士に相談した3人の販売店主のうち、2人は読売側に寝返った。もう1人は、販売店を強制改廃され、地位保全の裁判を起こしたが、地裁、高裁と敗訴。その後、病死された。

真村氏は、第2次真村裁判の仮処分申し立てで、勝訴していたが、読売が新聞の供給を再開しなかったので、1日に3万円の間接強制金(累積で約3600万円)を受けていた。ところが本訴で敗訴したので、読売は真村氏に対して間接強制金の返済を求める裁判を起こした。自宅も仮差し押さえした。

これら一連のプロセスにも、自由人権協会の喜田村洋一代表理事がかかわった。

裁判の開始から終結まで14年。ひとりの販売店店主を14年もの間、法廷に縛りつけたこと自体が、重大な人権問題である。

真村裁判の検証はこれから始まる。真村事件は、記録として歴史の壁に刻まれていく。

2016年10月01日 (土曜日)

 本日、発売の『ZAITEN』(財界展望社)に、広告代理店関連の記事が2本掲載されている。

一本は、筆者(黒薮)が書いた記事で、タイトルは「広告代理店に気を遣う行政の異様 『内閣府広報費』開示は“黒塗り”だらけ」。これは博報堂が内閣府に請求した公共広告とCMの代金にさまざまな疑惑がある点を指摘したものである。

もう一本は、元博報堂の社員で、『原発プロパガンダ』(岩波新書)の著者・本間龍氏の執筆で、タイトルは、「公共広告もエージェントが差配  電通・博報堂の『新型メディア支配』。

『ZAITEN』は全国の書店で販売されている。

 

2016年10月01日 (土曜日)

 明日(10月2日)に、「押し紙」問題を考える全国集会が開催される。集会では、江上武幸弁護士が読売裁判について講演する。

読売裁判は2002年に始まり、先日、ようやく終結した。この間、筆者(黒薮)を含む、多数の人々が事件にかかわった。筆者だけに限っても、4件の裁判と、1件の弁護士懲戒請求(対象弁護士は、読売の代理人・喜田村洋一自由人権協会代表理事)を経験している。

また、パネルディスカッションでは、江上弁護士の他、評論家の天木直人氏、行橋市議の小坪慎也氏がメディアについて意見を述べる。

場所:板橋文化会館(大会議室・東京都板橋区)《地図》

日時:10月2日(日) 午後13時開場、13:30開演

入場は無料

詳細は、次のリンク先で。

■「押し紙」問題を考える全国集会の詳細

2016年09月30日 (金曜日)

 本日(30日)発売の週刊金曜日に化粧品などの通販会社・アスカと博報堂
の係争を取材したルポルタージュ(黒薮執筆)の3回目が掲載されている。タイトルは、「化粧品通販アスカを欺いた博報堂の"手口"」 。

意外に知られていないが、この事件の構図は、郵政民営化の時期に起こった疑惑まみれの事件-いわゆる郵政事件と基本的に同じである。郵政民営化が小泉構造改革の象徴的な政策であった事情も関係したのか、事件の全容をメディアが報じることはほとんどなかったが、総務省は綿密な調査報告書を残している。

第3回目の記事では、調査報告書の一部を紹介している。

結論を先に言えば、博報堂は郵政のCという人物を接待付けにして、郵政4社のPR業務を独占することに成功し、その後、とんでもない高額請求を行っていたのだ。これについては、当時の朝日新聞も若干報じている。次の記事である。

■日本郵政、広告発注に契約書なし 博報堂に368億円

このような「被害」が郵政から他企業にまで拡大した。その典型例がアスカとの係争であるが、大きな違いは、アスカの場合は接待された側ではなく、逆に博報堂の営業マンにお歳暮を贈るなどして労をねぎらっていた点である。それだけに怒りも大きいようだ。

メディア黒書は、被害を受けた企業から情報収集を行っている。情報の提供先は:

 ℡048-464-1413

2016年09月29日 (木曜日)

アスカコーポレーションと博報堂の係争で、解明しなければならない疑問のひとつに、「なぜアスカは、博報堂から請求される金額をよく精査せずにそのまま支払っていたのか?」という点がある。これは極めて大事なポイントである。

博報堂がアスカのPR業務を独占したのは2008年からである。それから裁判の提訴に至るまでの期間は約8年間。アスカがこの期間の経理を検証したところ、不正な請求の実態が明るみに出て、総額で約63億円にものぼる巨額訴訟へと発展したのである。

たとえば不正請求の例として、朝日放送がらみの事件を紹介しよう。

◇休止した番組から放送料金を請求

東日本大震災の4日後、2011年3月15日の深夜、朝日放送はアスカの通販番組「噂のお買い得セレクション」を放送する予定だった。ところが震災の影響で中止を決めた。当然、放送料金を請求することは出来ない。

ところが博報堂は、「噂のお買い得セレクション」の放送料を請求し、アスカもそれに応じた。同じことが、テレビ北海やテレビ愛知で放送予定だった通販番組でも起こった。

■裏付けの証拠(朝日放送)

■裏付けの証拠(テレビ北海道)

■裏付けの証拠(テレビ愛知)

また、CMが放送されたことを証明するCMコードが放送確認書上で非表示になっているCMが累積で約1500件あるのだが、これらのCM放送料もアスカは支払っていた。仮に本当にCMが放送されていなければ、これも不正請求である。

こんなふうに疑義だらけの請求が積もりに積もって、博報堂に対する損害賠償額が約63億円にも膨れあがったのである。

◇精査の期間を与えなかった営業マン

なぜ、アスカは誤って不正請求に応じ続けたのか?

この問題を考える際、筆者は2つの点を重層的に考慮する必要があると考えている。

まず第1に、PR戦略が極めて重要な位置を占める通販会社の心理である。改めていうまでもなくアスカのPR戦略を進めている博報堂は、アスカにとっては重要なパートナーである。そのパートナーとは、なるべく良好な関係を維持したいという意識が働く。それが博報堂からの請求を厳密に精査する姿勢を若干弱めていた事情があったのではないか。が、これはマイナーな要素である。

不正請求が決済され続けた主要な理由は、アスカが見積もり内容と請求内容を精査する時間を、博報堂の営業マン・清原(仮名 ACM 部長待遇)氏が与えなかったからである。これが決定的な理由といえよう。

メディア黒書で既報してきたように、博報堂は奇妙な見積書を提出していた。

見積書はPR業務に関する予算案の提示であるから、PR業務を遂行する前の段階で提示しなければならない。たとえば10月にCMを放送するとすれば、遅くても8月か9月に見積書を提出するのが常識だ。

ところが博報堂は、PR業務が終わってから、後付けで見積書を提出していたのだ。上記の例でいえば、10月のCM放送がすでに終わった段階、つまり10月末日(31日)付けの見積書だった。しかも、日付こそ月末日になっていたとはいえ、実際に清原氏が見積書をアスカに届けていたのは、さらに遅く、アスカの経理部門の請求書「締め日」である15日か、その前後だったという。つまり見積書と請求書を同時に提出していたのだ。

たとえ見積書と請求書を同時に提出しても、請求書の「締め日」までに十分な日数があれば、2つの書面内容を精査でき、不正請求を防止できていた可能性が高い。ところが博報堂の営業マンは、その時間をアスカに与えなかったのだ。

書面類の精査をほとんど不可能にするこのような構図がある一方で、「①」の心理が働き不正請求がそのまま、まかり通ってきたのである。

◇締め切りのスキを突く戦略

清原氏が商談のためにアスカを訪れるのは、毎月、たいてい15日前後だった。商談は2時間にも3時間にも及んでいたという。そこでは長期にわたる販促の方針なども話し合われた。
南部社長はある程度の予算枠で話を進めた。それは清原氏を信頼していたと同時に、事前の見積書がなかったからだ。

広告・販促に関する商談は常に南部社長と清原氏の2人で行われていた。業務内容や提案内容の説明は清原氏の部下が行うこともあったが、「お金の話」はいつも南部社長と清原氏の2人だけだった。
商談を終えた直後、清原氏は、

「後2~3分で済みますのでちょっと宜しいですか?」

と必ず南部社長との2人の時間を求めたという。

「特にテレビ番組の提案は清原氏が必ず南部社長と2人だけになるシチュエーションを求めてきました。提案内容の説明に同席していた部下達を先に帰らせ、2人での商談がはじまるのです。『テレビの話』と『お金の話』はその時に行われるのが常でした」

商談を終えた清原氏は、南部社長に大量の書面を残していった。その中には、見積書や請求書も含まれていた。南部社長は、すぐに次の取引先との打合せに入る。これでは「締め日」のうちに、ひとつひとつの書面を精査することは出来ない。

当然、これらの書面の中には、承認するはずがない内容が多数含まれていた。
たとえアスカの社員が疑義を唱えても、清原氏から「社長の承認を得ている」と言われれば、それ以上はなにも言えなかった。

◇「博報堂さんはズルイ」

ある時、後付けの見積書に痺れを切らした南部社長は、清原氏を含む博報堂スタッフが多数出席した会議の席で、博報堂を批判した。

「博報堂さんはズルイ。何度言っても事前に見積書を提出しない。いつでも後出しじゃんけんじゃないか!」

南部社長に叱責されて、博報堂は「事前御見積書」なる奇妙な書面を提出するようになる。しかし、書面のタイトルを「御見積書」から「事前御見積書」に変更しただけで、日付は従来どおり月末日になっていた。

アスカのケースは、郵政事件とよく似ている。日本郵便と博報堂の取り引きでは、広告代理店一元化(郵政4社の業務をすべて博報堂が独占)の下で契約書すらなかった。そして子会社への高額請求の常態化などが問題になったのである。子会社の幹部は、請求が割高だと思いながらも、請求された額に従わざるを得なかったのだ。

日本最大規模の企業ですら、こうした「商法」に気づかなかったのだから、アスカが気がづくはずがない。

2016年09月28日 (水曜日)

既報したように、今年の7月5日、寺澤有氏、林克明氏、それに筆者(黒薮)のフリーランスライター3名は、日本弁護士連合会に対して、スラップ対策チームを設置するように申し入れた。当日は、申し入れに参加できなかったが三宅勝久氏も、申入れ文書には署名した。

このほど日弁連から、筆者宛てに次の回答が届いた。

■日弁連からの回答

読者は、この回答の文面を読んでどう感じるだろうか。スラップ問題の対策への熱意を感じるだろうか。躍動感やエネルギーを感じるだろうか。

筆者はまずなによりも、日弁連の事務総長たる人物がこの程度の文書しか書けないことにびっくりした。普通の作文のレベルではない。しかも、それを送付する勇気にも驚いた。文書は記録として残るのだ。

◇スラッパーのブラックリストと番付け

われわれが日弁連に申し入れを行った理由のひとつは、スラップを仕掛けているのが弁護士としか考えられないケースが増えているからだ。日本の名誉毀損裁判は、提訴した側が極めて有利な法理になっているために、名誉毀損裁判がスラップの温床になっている。名誉毀損裁判に関しては、本人訴訟でも、原告の訴えが認められる場合がある。

そのために名誉毀損裁判を起こすことで、弁護士報酬を得ようとする輩が増えているのだ。こうした弁護士の中には、「人権派」を名乗る弁護士や、弁護士活動をビジネスとして捉えている者も多い。名誉毀損訴訟のスペシャリストなどとを呼ばれるようになっても、何の自慢にもならない。

弁護士活動は基本的にはビジネスではない。他人の苦しみを想像し、人権と正義を守るための活動である。だから国費で弁護士を養成しても、誰も苦情を言わないのだ。それを忘れて金のために動いている輩が多いから、日弁連に対策を取るように申し入れたのである。

ちなみに今回の申し入れに名前を連ねたのは4名だが、賛同者は数え切れない。フリーランスライターの多くが、悪徳弁護士に手を焼いている。彼らをまとめる日弁連が、率先して対策を取るのはむしろ当然ではないだろうか。少なくともスラップにかかわっている弁護士が増えているという認識は持つべきだろう。

そのうちにブラックリストと番付けが公表されるのではないか。

【参考】フリーランス記者3名が日弁連に申し入れ、スラップ問題を研究するためのチームの設置を要望

 

2016年09月27日 (火曜日)

裁判官や検察官などの国家公務員が退官後に民間企業に再就職するケースが後を絶たない。このような行為を広義に「天下り」と呼ぶ。目的は、現役の国家公務員に対して、先輩の影響力を発揮し、自らの再就職先のために便宜を図ることであると言われている。

官民汚職の温床にほかならない。「天下り」は前近代的な悪しき慣行のひとつであると言えよう。

縦の人間関係が支配的な日本では、退職者を部外者として扱う習慣もない。

◇司法改革の障害

博報堂DYホールディングスの有価証券報告書によると、同社には元最高検察庁刑事部長の松田昇氏が再就職している。同報告書によると、同氏の経歴は次の通りである。

興味深いのは、「平成」28年、つまり今年の3月から、野球賭博などの不祥事に揺れている読売巨人軍の外部取締役に就任していることだ。これで野球賭博や覚醒剤の捜査が徹底して行われるのか、注視する必要がある。

過去に松田氏は、読売新聞大阪本社の社外監査役にも就任している。読売が、元最高検察庁・刑事部長を受け入れた背景は不明だが、メディア企業としてのあり方としては尋常ではない。ジャーナリズムの役割は、権力の監視であるからだ。権力と一体化してしまえば、旧ソ連、北朝鮮、それに大本営に依存していたかつての日本の新聞社とかわらない。

ちなみに大手弁護士事務所へは、最高裁判事の「天下り」が目立つが、これについては、別の機会に氏名と所属事務所を公表しよう。彼らは判決に影響を与えかねない存在で、日本の司法の公平性を脅かす存在と言っても過言ではない。司法改革の障害となる。こちらは、全面的に法律で禁止すべきだというのが筆者の考えだ。

2016年09月26日 (月曜日)

博報堂が海上自衛隊に対して「平成」22年7月15日から、「平成」28年6月10日までの期間に、発行した請求書を情報公開請求によって入手した。総額は4645万9650円だった。

筆者がはじめて防衛省に対して情報公開を請求した際、防衛省は請求書の量が膨大なので、開示までに2年ぐらいの日数を要すると説明していたが、予想外に早く開示してきた。総額はそれほど多くはない。

ただ、単価が異常に高額に設定されているものがある。

◇繰り返しHP作成費を請求

たとえば、「海上自衛隊ホームページ(含む動画ページ)及び携帯サイトの作成、更新及び保守整備」として、「平成」22年に約960万円を請求している。ちなみにメディア黒書の制作費は、約40万円である。防衛省のものとはいえ、100万円が限度だろう。

しかも、同じ項目の請求が、「平成」24年、26年、それに27年にも繰り返されている。計4回。額も1回につき約1000万円である。

海上自衛隊のホームページには、特に機密情報はなく、それほどセキュリティーに費用をかける必要はないはずだが。

その他、定期的にメディアトレーニングの費用を請求している。こちらは1回が30万円から50万円とまちまちだ。

メディアトレーニングとは、スポークマンにインタビューや記者会見など、メディア対応の方法を教えるプログラムを意味する。プロパガンダのノウハウのひとつである。メディアを騙す技術であり、官庁などの公共機関がメディアトレーニングを受けること自体にも大きな問題がある。

詳細は次の通りである。

■博報堂が海上自衛隊に送付した請求書の詳細(エクセル)

海上自衛隊のホームページ、博報堂が4年間で3回も再構築、1回についき約1000万円を請求

2016年09月24日 (土曜日)

【サマリー】電通が記者会見を開いて、過去に111社から約2億3000万円を過剰請求をしていたことを謝罪した。同じタイプの事件が博報堂でも起こっており、広告代理店によるPR業務の実態が業界全体で問われることになりそうだ。

電通はみずからの非を認めて謝罪したが、博報堂は裁判で争っている。取材も拒否している。博報堂事件の概要を説明しよう。

■博報堂の経営陣

広告業界にとって衝撃的な事件が起きた。

電通は9月23日、ネット広告に絡み不適切な業務が行われていたと発表した。広告主に対し広告の運用状況や実績について虚偽の報告をしたり、実態と異なり過剰に請求した例などが含まれ、対象となる広告は現時点で111社の約2億3000万円に上る可能性があるという。(ITmedia ビジネス)

過剰請求の額は、2億3000万円。対象となる広告主は111社だという。

PR業務の過剰請求が最初に問題になったのは、昨年の秋ごろだった。メディア黒書でも報じてきたように、そもそもの発端は化粧品などの通販会社・アスカコーポレーション(以下、アスカ)に対して、博報堂が約6億円1000万円の未払い金を請求する裁判を起こしたことだった。

それに先だって博報堂は、予告なく供託金を積んでアスカの銀行口座を仮差押えした。

これに対してアスカは、係争の対象となった約6億1000万円の中身を精査した。その結果、約4億1000万円は不正な請求と判断。さらに過去に博報堂が行ったPR業務全体を精査して、博報堂に対し今年の5月に最初の裁判を、8月に2件目の裁判を起こした。請求額の総額は、約63億1000万円にもなる。

不当利得の有無は裁判所が判断することになる。

PR業務そのものが極めて広範囲に及んでいるので、必然的に争点も多い。メディア黒書で記事化した主要なものにリンクを張った。それぞれが独立しているが、全体の構図は、PR業務に対する請求額に関する争いである。

1、情報誌制作費

2、撮影費

3、タレント出演料

4、アフィリエイト

5、通販番組制作費・編集費

6、PR活動費

7、企画・メディアプランニング費等

8、TV-CM費

9、新聞広告費

10、雑誌広告費

11、ラジオ番組制作費

12、イベント費

13、テレビ放映中止後の放映料

14、ホームページ制作費

15、通販番組受付業務費

16、CM「間引き」

17、番組提案書に明記する放送枠の視聴率偽装

18、放送確認書の偽造

19,放送確認書の代筆

20,、放送休止分の請求と転売

◇メディアの報道

これまで博報堂事件を報じてきたメディアは、筆者が把握している限りでは、次の通りである。

1,週刊実話
2,月刊TIMES
3,紙の爆弾 
4,ZAITEN
5,週刊金曜日

6,アクセスジャーナル(インターネット)
7,ビジネスジャーナル(インターネット)

電通が迅速な自主調査で非を認め謝罪したことで、広告代理店のPR業務のあり方が広告業界全体で問われることになりそうだ。

2016年09月23日 (金曜日)

 本日(23日)発売の『週刊金曜日』が「マスコミタブー 大手広告代理店・博報堂」(執筆者・黒薮)の第2回目の記事を掲載している。テレビCMなど放送番組の制作に際して、広告代理店が広告主に提示する番組提案書に記する視聴率を、博報堂が改ざんして放送枠を買い取らせていた問題などを取り上げている。

また、博報堂独特の会計にも言及している。週刊金曜日の目次は次の通りである。

■週刊金曜日の目次

◇驚くべき博報堂の経理実態

博報堂の経理について取材してみて、筆者は、ひとむかし前の八百屋と新聞販売店の会計を連想した。地方の町や村にある40年前の八百屋や新聞販売店の経理は、たいてい手書きだった。新聞販売店の場合、大学ノートに部数の増減などをメモしておく程度だったのだ。

博報堂の場合、ここまで大ざっぱではないにしろ、広告業界で第2位の地位を占めるブランド企業としては、恥ずかしい実態がある。たとえば業務の取り決めをする前に提出すべき見積書が、業務完了後の後付けになっており、しかも見積ナンバーが印字されていない。書式は、なんとエクセルのようだ。

経理システムにしろ、テレビCMの放送確認システムにしろ、ITの発展とともに不正防止策はどんどん進化している。進化にともない不正行為が介在する余地は減っているのだ。そしてコンピューターが逆に人間の不正を監視する時代が近づいているのである。

博報堂の見積書にナンバーが付番されていない事実について、大企業の会計システムに詳しいある専門家は次のようにコメントする。

「基本的には大手企業でこのずさんさはありえませんね。請求ナンバーと見積書のリレーションがなくても、番号がないというのは考えられませんし、そんなシステムは見たことがありません。経理などは全て入金管理を請求ナンバーで行います。見積書も同様にお客様とは番号でやり取りします。

 商取引上、金額が入っている書類に番号がないのはシステムとして成立しません。注文書はありえますが、注文書は捺印があるので、複製ができません。

もちろん、手書きの見積書や請求書であれば別ですし、番号がないこともありえます。ただ、大手企業では考え難いですし、常識的にいってあり得ないですね」

◇業務の独占と不正

業務の進化という点について言えば、博報堂がアスカに提出していた番組提案書も問題がある。それは番組提案書に明記する視聴率の出典の表示方法である。

博報堂がアスカに提示していた番組提案書のうち、2008年よりも前の
ものについては、視聴率の出典が明記されていたが、その後、明記されなくなったのだ。この2008年という年は、博報堂がアスカのPR業務を独占した年である。それ以前は、電通と東急エィジェンシーと競合関係にあったのだが、これら2社を撤退させてPR業務を独占したのである。

ところがその後、番組提案書の放送枠に記される視聴率の出典が提示されなくなった。業務内容が進化するどころか、退化したのである。推測できる理由は簡単で、視聴率を偽装するようになり、出典が明かせなくなったのではないだろうか。

不正に走ったのは、競合相手がいなくなったからだろう。

筆者は、博報堂にPR業務を依頼している企業にアドバイスしたい。巧みに騙されていないか、経理帳簿を再点検するのが賢明だと。

長いあいだ、新聞広告(折込広告を含む)の広告主企業は、「押し紙」に騙され続けてきた。いまだに気づいていない企業も多い。同じ事が、実はテレビCMなどでも起きている可能性が否定できないのである。

2016年09月22日 (木曜日)

◆吉竹幸則(フリージャーナリスト・元朝日新聞記者、秘密保護法違憲訴訟原告)

豊洲市場地下の汚染土壌は、これまで何度も安全性が問題になって来た。既成メディアは東京都庁の記者クラブにいながら、地下空間の存在を今まで何故見抜けなかったのか。権力監視の使命を果たせない記者と配属責任のある経営者は、読者への責任の自覚が問われている。

一連の豊洲市場問題で石原慎太郎元東京都知事は、都庁を「伏魔殿」と評した。自ら「伏魔殿」の親分であったことを棚上げにした無責任極まりない発言だ。でも、無責任と言う点では、今頃になって豊洲市場問題を鬼の首でも取ったかのように報道する既成メディアも同様だ。

舛添要一前都知事の政治資金報道では、週刊文春に先を越された。豊洲市場では、小池百合子知事の登場でやっと明らかになった。「税金を使って記者クラブにいるメディアは、何をしていたのか」と、言われても当然だろう。だが、それで都庁担当記者の責任や記者クラブの在り方が、メディア内部で問われたという話も耳に入って来ない。それこそが問題なのだ。

◇記者クラブの利用価値

記者クラブは、権力とメディアの癒着の象徴として論じられることも多い。しかし、私は功罪相半ばすると見て来た。私も記者時代、多くの記者クラブを渡り歩いて来た。記者クラブは役所内に確保したメディアの橋頭保であり、権力監視する記者には、最も好都合な足場でもあった。

役所の中に居場所があるから、記者はどこでも出入り出来る。資料を求めれば相手も簡単に嫌とは言えない。自然と幹部や担当職員と顔を合わせる。昼間話しておけば性格も分かり、本音を聞く夜回りでも話のきっかけが出来る。記者クラブと役所とは長年培った慣例が数多くある。不祥事や重大情報を慣例に反して発表していなければ、「疑惑隠し」と追及の根拠にもなる。

役所の中にも正義漢の一人や二人は必ずいる。大抵は中枢からは外されているにしても、記者が夜に訪ねれば、真相にそのものはズバリ教えてくれなくてもヒントぐらいはくれる。記者クラブには発表資料も豊富にある。突き合わせてみると、疑惑の本丸に迫れる。

事実、私が朝日・名古屋社会部時代には公共工事の疑惑を追及したり、愛知県知事の政治資金報告書を調べ上げ、県庁ぐるみの資金集めの実態を何度もスクープ出来たのは、記者クラブにいたからだ。東京・政治部では、自治省(当時)から記者クラブに提供される閣僚・議員の政治資金報告書を社会部と合同で分析し、各社で競い合って克明な報道もして来たつもりだ。

◇報じられなかった豊洲市場の地下

そんな私から見れば、舛添知事の政治資金問題で都庁記者が文春にスクープを許すなど考えも出来ないことなのだ。都庁記者にとって、知事の政治資金報告書の分析はイロハのイ。使途を見れば、疑問が出るのは明らかなのに、各社揃って何をしていたのか。

豊洲市場もそうだ。汚染土壌処理は、計画当初から最大の懸案だ。都庁が汚染度をどう処理したのかは、常に監視しておかねばならない。担当職員に夜回りすれば、汚染土壌を撤去せず、地下に空洞を造ったことぐらいは、誰かが教えてくれたのではないか。第1、建設途中に記者が市場に足を運び、調べていれば、発見出来たはずだ。

もし担当部門が見学を拒絶すれば、「記者クラブ所属記者にも見せられないのか」とクラブ幹事社を通じてねじ込めば、見せざるを得ない。私は何度もこの方法で相手の関門を突破した。

つまり、記者クラブに所属する記者なら「権力監視」の自覚をもって普通に仕事をしていれば、特別な能力がなくても文春や小池知事に先を越されることなく、書けた記事なのだ。でも、書けなかったのだから、「都庁記者は記者クラブにいて発表を待つだけ。現場に行かず、ソファで寝ていたのではないか」と、言われても致し方ないのではないか。

記者クラブ制度を最大限利用して仕事をしてきたのは、この私だ。クラブに所属しなくても立派に記事を書くフリージャーナリストもいる。「まだ甘えや力量不足がある」と批判されれば、私は認めざるを得ない。でも、それを棚に上げて敢えて私に言わせて戴くなら、クラブ制度は使いようなのだ。「人々の知る権利」のために市民に開かれた組織に出来るか否かは、クラブに所属する記者に「権力監視」の自覚があるかどうかにかかっている。

◇「記者は記事より処世術」との風潮

伏魔殿の親分の過去の会見では、質問した記者が怒鳴られ下を向いてしまう光景を何度見たことだろう。私なら怒鳴られたら、必ず睨み返す。さらに挑発質問を続けると、相手は冷静さを失い、ついつい本音も出る。将来の質問に備えて言質をメモし、その合間に周りも見渡す。

そんな親分を苦々しく見ている役人は、その表情から一人や二人は必ず見つかるからだ。その人に夜、話を聞きに行けば、伏魔殿の内幕情報の一つや二つは聞けた。だから、私にとって記者クラブは必要だった。しかし、その役割を果たせない記者なら、わざわざクラブに所属する理由はない。

私が2、30代の頃にはまだ、他社にスクープされたら「許されない」との緊張感が朝日新聞社内にも残っていたように思う。担当記者が「権力監視」の使命を果たしていなかったら、所属クラブを外された。しかし、それ以降、派閥人事の蔓延で「記者は記事より処世術」との風潮が広がり、報道現場の緊張感は少しずつ減衰していった。他社も同様なのだろう。

「改革」で実績を上げ、出足好調の小池知事だ。やはり「改革」が旗印の橋下徹氏らと連携し、「改革・改憲の女王」へと変身し、改憲別働隊を形成。自民との巧みな役割分担で本丸の9条に手を付けるなら、どこかの国の「いつか来た道」だ。

「改革」で小池氏に手柄を独り占めにさせた都庁記者の責任はあまりにも重い。そんな小池氏に権力監視出来るのは、伏魔殿の実態に小池氏以上に切り込める強い意志と取材力を持った記者でしかない。

このままでは記者クラブ不要論はますます台頭し、既成メディアの読者離れはさらに進む。かといって、今でもひ弱な若い記者から「記者クラブ特権」を取り上げたなら、「権力監視」の取材力がさらに弱まっても、少なくとも今すぐ強くなるとも思えない。そのスキを権力がさらに突いて来たら…。

確かに記者クラブは優遇されている。これまで特権が許されて来たのは、「権力監視」の役割があるからだ。その任務を果たせない記者やメディアは、記者クラブを使う資格はない。

文春、小池氏に先を越され失地回復も出来ない記者は、都庁クラブから外し、「権力監視」に強い意志と能力を持つ記者との総入れ替えが必要だ。「都庁記者と自分たちも同類項。権力監視出来ない記者に大ナタを振るう資格も力量もない」と、危機意識の希薄なメディア経営者がいたなら、さっさとその座を降りる方がよかろう

≪筆者紹介≫ 吉竹幸則(よしたけ・ゆきのり)
フリージャーナリスト。元朝日新聞記者。名古屋本社社会部で、警察、司法、調査報道などを担当。東京本社政治部で、首相番、自民党サブキャップ、遊軍、内政キャップを歴任。無駄な公共事業・長良川河口堰のウソを暴く報道を朝日から止められ、記者の職を剥奪され、名古屋本社広報室長を経て、ブラ勤に至る。記者の「報道実現権」を主張、朝日相手の不当差別訴訟は、戦前同様の報道規制に道を開く裁判所のデッチ上げ判決で敗訴に至る。その経過を描き、国民の「知る権利」の危機を訴える「報道弾圧」(東京図書出版)著者。フリージャーナリストによる特定秘密保護法違憲訴訟原告。