1. KorybkoからMAGAへ――重要な論点に関するロシアの政策を手短に整理する

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2026年08月01日 (土曜日)

KorybkoからMAGAへ――重要な論点に関するロシアの政策を手短に整理する

MAGA支持者の間で「ロシアは自分たちが反対する勢力を支持している」との見方が広がっているとして、地政学アナリストのアンドリュー・コリブコ(Andrew Korybko)氏が反論する。中国やイラン、イスラエル、ウクライナなどを例にロシア外交の実際の立場を整理し、その誤解が生まれた背景について自身の見解を示している。

 

執筆者:アンドリュー・コリブコ

私は、トランプ氏がエスカレーターを降りて出馬を表明した頃から(いくつか政策面で意見の違いはあるものの)MAGAの支持者であり、同時に「ロシア人ではない親ロシア派」であることにも誇りを持っている。そのため、MAGAの仲間に向けてロシアの政策に関する事実を整理し、新たに広まりつつある誤った認識を正したいという特別な責任を感じている。

ローラ・ルーマー氏のウクライナ訪問とゼレンスキー大統領へのインタビューは、この18か月ほどMAGAの間で進んできたロシア離れとウクライナ支持の流れを象徴する出来事だった。

【黒薮注】ローラ・ルーマー:米国の保守派の政治家・コメンテーター

彼女の行動には、タッカー・カールソン氏やキャンディス・オーウェンズ氏との対立といった個人的な動機も多少あったのかもしれない。しかし、ウクライナを強く批判する立場から熱心な支持者へと転じたことは、トランプ氏がウクライナを前面に立てた新たな「消耗戦」を通じて、ロシアに対して「エスカレートしてから緊張緩和を図る」という戦略を進めていることと軌を一にしている。つまり、もっと大きな変化が起きているということだ。

私は以前、「MAGAの一般的な支持者は、プーチン大統領やその周囲の人々が、自分たちの反対するもの――左派思想、イスラム主義、イラン、そして『MAGAの異端派』など――を支持していると考えるようになった」と指摘した。その理由は別の記事で説明している。しかし、この認識は事実ではない。ロシアとアメリカはすべての問題で一致しているわけではないが、ロシアはアメリカと和解できない敵でも、まして現在そのように描かれているような潜在的な敵国でもない。

そこで本稿では、MAGAにとって重要な論点について、ロシアの政策を手短に整理する。目的は、MAGA支持者にロシアの政策を支持してもらうことではない。実際にロシアがどのような政策を取っているのか、そして、なぜそれが場合によってはアメリカの政策と食い違うのかを理解してもらうことにある。

この記事でMAGA全体の対ロシア観が変わるとは思っていないし、トランプ氏が最近の対ロシア強硬姿勢を改めるとも考えていない。それでも、事実を知っておくことには意味がある。

◆中国

ロシアと中国は戦略的パートナーだが、相互防衛同盟を結んでいるわけではない。両国は、西側以外の国々がより大きな発言権を持つ国際秩序を目指しており、そのため、そうした流れを阻止しようとするアメリカの政策に共に反対している。

とはいえ、両国の立場が完全に一致しているわけでもない。ロシアは地域の勢力均衡を保つため、中国への牽制の一環としてインドに武器を供給している。一方、中国は西側による対ロシア制裁の一部を非公式に順守しながら、ウクライナにはドローンやその部品、光ファイバーを供給している。

◆イラン

中国と同様、イランもロシアの戦略的パートナーだが、相互防衛同盟を結んでいるわけではない。実際、ロシアは2015年から2024年まで続いたシリア作戦に先立ち、イスラエルと軍事的な調整協定を結んだ。この協定により、イスラエルはロシアの妨害を受けることなく、イラン革命防衛隊(IRGC)、ヒズボラ、シリア・アラブ軍、およびその同盟勢力を空爆することができた。これもロシアによる地域の勢力均衡政策の一環だった。

ロシアはこれまでイランに武器を売却したことがあるが、その目的は抑止力の維持に限られており、戦闘が続いている最中に供給したことはない。

◆イスラエル

ロシアとイスラエルは、ときに互いを厳しく非難し合いながらも、現在も緊密な関係を維持している。その証拠に、イスラエルはロシアが公式に指定する「非友好国」にさえ含まれていない。これは、イスラエルが西側による対ロシア制裁への参加を拒否したためである。

プーチン大統領自身も、生涯を通じてユダヤ人に好意的な立場を取ってきた。2000年から2018年までのクレムリン公式サイトに掲載された発言からも、それはうかがえる。また、ロシア人とイスラエル人はディアスポラ(離散共同体)による結びつきがあるとして、両者を「真に一つの家族」と表現したこともある。

◆ハマス/パレスチナ

ロシア政府は、2023年10月7日のハマスによる攻撃を公式にはテロ行為と位置づけている。一方で、同組織の政治部門との関係は維持している。またロシアは、国連安全保障理事会の関連決議に基づき、1967年の境界線に沿った独立したパレスチナ国家の樹立を支持している。これは世界でも広く見られる立場である。

さらに、イスラエルは他国と比べてもロシアのこうした姿勢を比較的好意的に受け止めており、ナフタリ・ベネット元首相は2021年、プーチン大統領を「イスラエル国家の真の友人」と評した。

◆湾岸諸国

アラブ首長国連邦(UAE)は、この地域におけるロシア最大の貿易相手国であり、対外取引の仲介役として、西側の制裁圧力を和らげる代替の利かない存在と広く見られている。ロシアはサウジアラビアとも緊密な関係を維持しており、OPECプラス(OPEC+)を通じて世界の原油価格の調整で協力している。そのほかの湾岸君主国とも良好な関係にある。

こうした事情から、ロシアは戦闘が続いている間はイランに武器を供給しようとはしない。自国の兵器が湾岸諸国との戦闘に使われ、築いてきた関係を損なうことを望んでいないからだ。

◆ウクライナ

「アンカレッジの精神(Spirit of Anchorage)」と呼ばれる構想では、トランプ氏がゼレンスキー大統領にドンバスからの撤退を受け入れるよう働きかければ、プーチン大統領は停戦に応じる意向を示していたと報じられている。

それ以前、プーチン大統領は、係争地域すべてからウクライナ軍が撤退しない限り停戦には応じないとしていたため、これが事実であれば和平に向けた大きな譲歩だったことになる。しかし、トランプ氏は何らかの理由で、この非公式の約束を撤回したという。

また、プーチン大統領は最近、NATO領内にあるウクライナの兵站拠点への攻撃を求める強硬派の意見も退けた。その結果、第三次世界大戦につながりかねない事態は回避されたとしている。

◆EU/NATO

ロシアは、EUがウクライナと連携し、トランプ氏に働きかけて「アンカレッジの精神」に基づく合意を撤回させたと考えている。ロシアはEUを攻撃したり、まして敵対的な住民を占領・支配したりすることを望んでいない。

その主な目標は二つある。一つは、制裁を解除してエネルギー分野の関係を回復すること。もう一つは、NATOとロシアの間で第三次世界大戦が起こる危険を減らすため、欧州の安全保障体制を見直すことだ。ロシアは、自国の政治体制や価値観をEUに押し付けようとはしていない。それに対し、EUはロシアに自らの価値観を押し付けようとしている、というのが私の見方である。

◆北朝鮮

地政学に関する最後の論点として、ロシアと北朝鮮は2024年、長年にわたる相互防衛同盟を改めて確認した。その後、北朝鮮軍はロシアのクルスク州からウクライナ軍を排除する作戦を支援した。この協定はアメリカやその地域の同盟国への脅威になると警告する声もある。しかし、北朝鮮はこの協定以前から、すでにそれらの国々に対する脅威だった(北朝鮮自身は、その軍事力は抑止目的だと主張している)。

むしろ、この協定によって北朝鮮の中国への依存が弱まるのであれば、それはアメリカの利益にもかなう。

◆天然資源

ロシアは、アメリカが「アンカレッジの精神」に沿って行動すれば、資源を軸とした戦略的パートナーシップを築けると本気で期待していた。その構想は以前の記事でも詳しく説明したが、要するに、アメリカとの資源協力によってロシアの中国依存を減らす一方、中国がロシア国内のあらゆる資源鉱区(エネルギー資源や鉱物資源)へアクセスすることを防ぐというものだった。

それらの鉱区には、アメリカだけでなく、インド、日本、韓国といったアメリカの近しいパートナー国も投資することが想定されていた。この構想は、理論上は今でも実現可能な選択肢として残っている。

◆左派思想

プーチン大統領は共産主義やスターリン時代の「大粛清」を批判している。一方で、ソ連が「大祖国戦争」と呼ぶ対ナチス・ドイツとの存亡を懸けた戦争に勝利するうえで、スターリン体制が果たした役割については認めている。

ロシアは近年、「ソヴィンテルン(Sovintern)」と呼ばれる現代版コミンテルンのような枠組みを立ち上げた一方で、右派系の運動とも関係を築いており、全体としてバランスを取っている。ロシア国営メディアが積極的に取り上げる著名な「ロシア人ではない親ロシア派」の中には左派が多い。しかし、それは意図した結果ではなく、単なる偶然にすぎない。

◆イスラム主義

ロシアは、各国がどのような社会・政治体制を採用するかには干渉しない立場を取っている。国際的なイスラム共同体(ウンマ)については、インドとともに、中国への過度な依存を減らすための重要な均衡勢力と位置づけている。

国内では、チェチェン共和国は、テロ・分離独立紛争を終結させた合意に基づき、イスラム法(シャリーア)の適用を認められている。その一方で、ロシア刑法第282条は、民族的・宗教的な憎悪をあおる行為を厳しく禁じている。西側の一部のイスラム主義勢力が行っているような扇動行為も、その対象となる。

◆「第三世界主義」

「第三世界主義」という言葉にはさまざまな意味がある。しかし、「植民地主義への報復として、非西側諸国が西側を破壊しようとする運動」という批判的な意味で使うのであれば、ロシアはそのような考え方を支持していない。むしろ、安全保障を強化し、発電所などのインフラを整備することで各国の主権を強め、国家を安定させることが、結果としてEUへの不法移民の減少につながると考えている。

サヘル地域では、ロシアの影響によってフランスが一部の資源開発事業を失ったものの、その損失は致命的なものではなく、他の西側諸国にまで悪影響を及ぼすものでもない。

◆「MAGAの異端派(MAGA Dissidents)」

ロシアのメディアが、ときどき「MAGAの異端派」を好意的に取り上げたり、その対立相手であるローラ・ルーマー氏らを、特にX(旧Twitter)上で批判的に扱ったりするのは、アメリカの読者の関心を引き、オンライン上で話題を集めるためにすぎない。

多くのMAGA支持者から見れば、それは誤ったやり方であり、結果的にはMAGAとの関係でも逆効果だったかもしれない。しかし、それがロシア側の本当の狙いだった。

また、タッカー・カールソン氏やキャンディス・オーウェンズ氏らがロシアに招かれたのも、彼らがロシアに敵対的ではなかったからで、それ以上の意味はない。

◆保守主義

プーチン政権下のロシアは、EUや民主党が目指すアメリカと比べれば保守的である。しかし、MAGAが目指す保守主義と比べると、一部の点で保守的であるにとどまる。それでも、EU全体よりは保守的だと言える。

また、他者の権利を侵害しない限り、公の場で宗教的信念を表明することを抑圧するような圧力はない。中絶は合法だが、政府はそれを推奨せず、代わりに出生率の向上を促す政策を進めている。

合法的な移民は受け入れているものの、国家は移民に同化を求めている。一方で、民族自治共和国には、それぞれ独自の文化的権利が認められている。

◆結び

MAGA支持者の多くは、自分たちにとって重要なこれら十数項目についてのロシアの実際の政策を知れば、驚くかもしれない。その理由は、彼らが私の言う「ポチョムキン主義(Potemkinism)」というロシアのソフトパワー戦略の影響を受けてきたからだ。

私のいう「ポチョムキン主義」とは、「戦略的目的」のためにロシアの政策について現実とは異なるイメージを作り出すこと、あるいは、誤った前提に基づいて人々にロシアへの好感を抱かせようとすることを指す。

その一例が、「プーチン大統領は反シオニストで、イスラエルを嫌っている」という、すでに事実ではないことが明らかになっている認識である。

私は、この手法は逆効果だったと考えている。ロシアに対する誤った期待を生み、それが支持者の失望につながっただけでなく、「ロシアはMAGAが反対するものをすべて支持している」という誤った認識まで広めてしまった。その結果、MAGAの間でロシアへの反感が強まるという、皮肉な結果を招いた。それでも、この手法は今も続けられている。

私はロシア外務省系のモスクワ国際関係大学(MGIMO)で国際関係学の修士号と政治学の博士号を取得した。だから、ロシアの外交政策については理解しているつもりだ。

私は、トランプ氏がエスカレーターを降りて出馬を表明した頃から(いくつか政策面で意見の違いはあるものの)MAGAの支持者であり、同時に「ロシア人ではない親ロシア派」であることにも誇りを持っている。だからこそ、MAGAの仲間に向けて、ロシアとその政策について新たに広まりつつある誤った認識を正したいという特別な責任を感じている。

私は「ポチョムキン主義」に一貫して反対してきた。そのため、「ロシア人ではない親ロシア派」として知られる著名なインフルエンサーたちから「キャンセル(排除)」されたこともある。このことについては、以前の記事でも書いた。だから、この問題は私にとって単なる政治論争ではない。極めて個人的な問題でもある。

筆者紹介:アンドリュー・コリブコ(Andrew Korybko)
モスクワ在住のアメリカ人政治アナリスト。MGIMO(モスクワ国際関係大学)で博士号を取得。著書に『ハイブリッド戦争―カラー革命からクーデターまで』

Source:
https://korybko.substack.com/p/korybko-to-maga-heres-a-quick-clarification?utm_id=97757_v0_s00_e0_tv2_a1dennhawh9pwx&fbclid=IwY2xjawTaC0JleHRuA2FlbQIxMQBzcnRjBmFwcF9pZBAyMjIwMzkxNzg4MjAwODkyAAEe5NHrLhYyoQns7v7FxJRKA12JR_fZKF3EYn2DnxXTjwlaCEFuheSXjh-pKXQ_aem_VnXB02ZGd00zYz6cmd9URA