2026年08月05日 (Wednesday)
アルゼンチンの選挙情勢:ミレイ氏がリードを維持、野党は分裂

執筆者:ビクトル・M・ロドリゲス
今週日曜日に発表されたCB Global Dataの最新の全国世論調査によると、与党は投票意向で首位を維持している。一方、ペロン主義勢力では、クリスティーナ・フェルナンデス・デ・キルチネル氏とアクセル・キシロフ氏の間で分裂した状態が続いている。
【黒薮注】ペロン主義:アルゼンチンの元大統領フアン・ペロンの思想や政治運動を源流とする政治勢力。労働者層を重要な支持基盤としている。
【黒薮注】クリスティーナ・フェルナンデス・デ・キルチネル:アルゼンチンの元大統領(2007~2015年)。ペロン主義の中でも左派寄りの「キルチネリズム」を代表する政治家。
【黒薮注】アクセル・キシロフ:経済学者出身のペロン主義政治家。元経済相で、現在はブエノスアイレス州知事。クリスティーナ氏に近い政治家として台頭し、ペロン主義の次世代を担う有力者。
また、回答者の半数以上が「変化」を望んでいる。ただし、決選投票になった場合には、第1回投票と比べてかなり接戦になることが示されている。
2027年のアルゼンチン大統領選挙に向けて、今後の選挙の流れを示す傾向が少しずつ見え始めている。
CB Global Dataは2026年7月30日から31日にかけて全国世論調査を実施した。回答数は1,252件で、誤差範囲は±2.8%、信頼水準は95%だった。
【黒薮注】CB Global Data:アルゼンチンを中心に世論調査や政治・選挙に関する調査を行う民間の調査会社。ラテンアメリカでは、新聞・テレビではなく、第3者が世論調査を行う。
調査結果からは、主に3つの動きが同時に進んでいることが分かる。ハビエル・ミレイ氏が選挙でのリードを維持していること、ペロン主義の内部で指導者が一本化されていないこと、そして多くの市民が「継続」よりも「変化」を求め続けていることである。
この調査は、単に現時点での投票意向を示すだけではない。大統領選挙まではまだ1年以上あるものの、主要な候補者や政治勢力はすでに明確になりつつある。今回の結果からは、選挙に向けた勢力関係がどのように形づくられ始めているのかを見ることができる。
◆クリスティーナ・キルチネル氏への有罪判決をめぐり、世論は依然として分かれている
今回の調査で最初に取り上げられた重要なテーマの一つが、クリスティーナ・フェルナンデス・デ・キルチネル氏が2027年の大統領選挙に立候補できるようになる可能性についてである。世論では、反対する人の方が明らかに多い。
【黒薮注】クリスティーナ・フェルナンデス・デ・キルチネル氏は、汚職の罪で、2022年に禁錮6年と公職への永久就任禁止の判決を受けた。最高裁で刑が確定したが、その後、年齢などを理由に自宅で刑に服することが認められている。キルチネル氏本人は一貫して無罪を主張し、政治的迫害だと訴えている。
回答者の60%が、元大統領が再び立候補できるようになることに「完全に反対」または「部分的に反対」と回答した。一方、37.5%は程度の差はあるものの賛成し、立場を示さなかった人は2.5%だった。
この差は重要である。元大統領をめぐる司法上の問題が、現在も政治や選挙に大きな影響を持っていることを示しているためだ。これは、ペロン主義に共感する可能性がある人々の間でも同様である。
◆「ラ・リベルタッド・アバンサ」が政党支持で首位
候補者個人ではなく、どの政党や政治勢力に親しみを感じるかを尋ねたところ、もう一つ重要な傾向が見えてきた。
「ラ・リベルタッド・アバンサ」は、市民から最も支持されている政治勢力となり、27.5%を占めた。
【黒薮注】ラ・リベルタッド・アバンサ(La Libertad Avanza、自由前進)は、ハビエル・ミレイ大統領が率いるアルゼンチンの政治勢力。ネオリベラリズムの方針を前面に打ち出している。
ペロニズムは14.9%、「キルチネリズム」は8.7%で、両者を合わせても23%強となっている。このほか、PROは8.7%、ラディカル党は7.5%、左派は4.3%だった。
一方、24.3%の回答者は、どの政治勢力にも親しみを感じていないと答えた。
注目すべきなのは、与党が政党支持で首位に立っていることだけではない。アルゼンチン人のほぼ4人に1人が、特定の政党や政治勢力を支持していないことも重要である。
これは、今後の選挙情勢がまだ大きく動く可能性があり、各政治勢力が新たな支持を獲得できる余地が残されていることを示している。
◆ペロニズムでは、指導者をめぐる問題が続いている
ペロニズムやキルチネリズムに共感する人を対象に、仮に大統領選挙が行われる場合、誰が中心的な候補になるべきかを尋ねた。
クリスティーナ・フェルナンデス・デ・キルチネル氏が48.4%で首位となり、アクセル・キシロフ氏が39.8%で続いた。両者の差は10ポイント未満だった。一方、セルヒオ・ウニャック氏は4.8%にとどまった。
この結果は、ペロニズムの中で一人の指導者が圧倒的な支持を得ているというより、指導者の座をめぐって激しい競争が続いていることを示している。
クリスティーナ氏は、自身の支持層の間で現在も大きな政治的影響力を持っている。その一方で、キシロフ氏もクリスティーナ氏と競えるほどの支持を集めており、今後ペロニズムの指導者を引き継ぐ有力候補として存在感を強めている。
◆市民が最も求めているのは、引き続き「変化」
今回の調査で特に注目される結果の一つが、次の政権にどのような方向性を求めるかという質問への回答である。54.5%が「アルゼンチンは、変化をさらに進める政権を選ぶべきだ」と回答した。
これに対して、現在と同じ方向性を維持すべきだと答えた人は33.4%だった。残る12.1%は、まだ立場を決めていない。政治的に見ると、この結果は大統領個人への評価とは別の意味を持っている。
この質問は、ミレイ氏本人を支持するかどうかを尋ねたものではない。2023年12月に始まった現在の政治的な方向性を今後も続けるのか、それとも別の方向へ変えるのかについて、市民がどのように考えているかを示すものである。
◆ミレイ氏が第1回投票で圧倒的なリード
CB Global Dataが提示した大統領選挙のシナリオでは、ハビエル・ミレイ氏が32.4%の支持率を獲得している。大きく後れを取っているのはクリスティーナ・フェルナンデス・デ・キルチネル氏(15.2%)とアクセル・キシロフ氏(14.7%)で、両者は事実上同率となっている。
ミリアム・ブレグマンは7.6%、ビクトリア・ビジャルエルは6.4%、ホルヘ・ブリトは1.9%を獲得しており、白票は5.9%、その他の選択肢は6.3%、9.6%が未定となっている。
ミレイ氏と2位の候補との17ポイント以上の差は、与党が第1回投票でかなりの優位を保っていることを裏付けている。しかし、これにはもう一つの現象も浮き彫りになっている。すなわち、野党は複数の指導者に票が分散しており、野党票をまとめられる候補者がいないということだ。
◆決選投票では差が大幅に縮まる
この世論調査では、決選投票に関する2つの仮定シナリオが盛り込まれている。ハビエル・ミレイ氏とクリスティーナ・フェルナンデス・デ・キルチネル氏の一騎打ちの場合、現職大統領は44.8%を獲得するのに対し、元大統領は39%にとどまる。
白票は11.7%に達し、4.5%が未定のままである。対立候補がアクセル・キシロフ氏の場合、その差はさらに縮まる。ミレイ氏は43%を獲得する一方、ブエノスアイレス州知事は41.6%にとどまる。白票は6.6%、未決定層は8.8%を占める。
これらの結果は、最近の他の選挙動向と一致する傾向を示している。すなわち、第1回投票では票の分散が顕著である一方、決選投票では支持が集中し、与党と野党の差が大幅に縮小する。
◆本調査から導き出される5つの結論
データからは、少なくとも5つの重要な政治的傾向が読み取れる。第一に、ハビエル・ミレイは、政治的帰属意識と大統領選の投票意向の両方において、依然として支配的な地位を維持している。
また、ペロニズムは、クリスティーナ・フェルナンデス・デ・キルチネルとアクセル・キシロフの間で激しい競争が繰り広げられており、全国的な指導者問題が未だ解決されていないことがわかる。一方、社会の大半は、以前の政治モデルへの回帰よりも、変革の深化を支持している。
第四に、人口のほぼ4分の1がいかなる政治勢力にも帰属意識を持っておらず、将来の選挙戦に向けた重要な浮動票層を維持している。そして最後になるが、決して重要ではないわけではない点として、ミレイ氏が第1回投票では余裕を持ってリードしているものの、決選投票のシナリオでは、特にアクセル・キシロフ氏との対決において、競争がかなり拮抗していることが示されている。現時点の「スナップショット」であり、決定的な予測ではない
あらゆる世論調査と同様に、本調査は実施時点における「スナップショット」であり、選挙結果の決定的な予測ではない。しかし、その分析的価値は、安定し始めている傾向を明らかにしている点にある。すなわち、与党が政治的主導権を維持していること、野党が依然として分裂していること、そして有権者が以前の政治状況への回帰よりも「変革」という課題を優先し続けていることである。
2027年の大統領選挙まで1年以上を残す中、カサ・ロサダ(大統領府)をめぐる争いは依然として予断を許さない状況にある。しかし、CB Global Dataの数値によると、2026年7月末時点で、出発点は明らかに与党に有利であり、一方、野党にとっての最大の課題は、指導者を統一し、票の分散を減らし、万が一の決選投票で効果的に戦えるような代替案を構築し続けることにある。
執筆者:ビクトル・M・ロドリゲス(Víctor M Rodríguez)
ジャーナリスト兼ディレクター:Píldoras Digitales、ウルグアイ報道協会編集委員:APU
