1. 「押し紙」を隠す経理マジック――毎日新聞裁判で判明した日本の新聞社のビジネスモデルに、ジャーナリズムが機能しない客観的な理由

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2026年07月01日 (水曜日)

「押し紙」を隠す経理マジック――毎日新聞裁判で判明した日本の新聞社のビジネスモデルに、ジャーナリズムが機能しない客観的な理由

既報したように、新聞販売のモデルが、毎日新聞を被告とする「押し紙」裁判の中で、ほぼ完全に解明された。

このスキームが日本のすべての新聞社に当てはまるという確証はない。しかし、販売店が新聞代金を納入できなかった「押し紙」の未納金を、新聞社が支給すべき補助金の未払い分として処理する仕組みが組み込まれていることで、法的には「押し紙」が存在しないかのような状況が作り出されている経理処理方法を踏まえると、「押し紙」を販売政策に組み込んでいる新聞社は、毎日新聞と同様の手法で経理処理を行っている可能性が極めて高い。

このスキームの詳細については、次の記事を参照してほしい。

【参考記事】毎日新聞「押し紙」裁判で販売政策の実態が判明――補助金処理によるスキームが明らかに

また、このスキームが明らかになった経緯については、江上武幸弁護士による次の記事を参照してほしい。

【参考記事】毎日新聞押し紙訴訟の報告 毎日新聞社、押し紙解消に向けて方針転換か?――モラル崩壊の元凶「押し紙」

◆新聞社は「押し紙」でどの程度の収益を上げてきたのか

なぜ「押し紙」が問題なのか。理由は二つある。

第1は、「押し紙」が独占禁止法の新聞特殊指定に抵触すると考えられる点である。公序良俗の観点からも問題があり、モラル上の問題を含んでいる。

第2は、「押し紙」をビジネスモデルに組み込むことで、新聞社に莫大な利益をもたらす構図が存在することである。しかも、この仕組みは、公権力による実効的な是正措置が講じられないまま、50年以上にわたり維持されてきた。その結果、公権力と新聞社との間に癒着関係が生じたとの疑念を招く要因になる。

新聞社がどれほどの収益を得ていた可能性があるのかを示す試算を紹介したい。幸い、私はそのための格好の内部資料を所持している。

毎日新聞社社長室から外部へ流出した「朝刊・発証数の推移」と題する内部資料によると、2002年10月時点における毎日新聞の公式部数は3,953,466部である。これに対し、販売店が読者へ発行した領収書の枚数(発証数)は2,509,139枚だった。両者の差である約144万部が、当時、全国で毎日発生していた「押し紙」に相当する計算になる。

※厳密には、販売店へ搬入される新聞の約2%は予備紙であり、「押し紙」の定義には含まれない。

「押し紙」1部当たりの卸代金を1,500円として試算すると、「押し紙」による販売収入は月額約21億6,000万円、年間では約259億円となる。

「押し紙」は独占禁止法の新聞特殊指定に抵触すると考えられるため、仮に公正取引委員会が毎日新聞社に是正措置を講じた場合、同社は年間約259億円の販売収入を失う計算になる。もっとも、「押し紙」を販売店に引き取らせるために支払う補助金も相当額に上ると考えられるが、それを踏まえても、販売収入の規模は極めて大きい。

■朝刊 発証数の推移(赤印に着目)

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しかし、「押し紙」による販売収入が、そのまま新聞社の純利益になっているわけではない。

既に述べたように、「押し紙」による販売店の損失は、新聞社が販売店へ支給する補助金によって相殺される仕組みになっているからである。

※この点については、私が過去に執筆した『新聞があぶない』(花伝社)などの著書では、「押し紙」が直接的に新聞社の純利益を生み出しているかのような記述がある。しかし、その点は正確ではなかった。経理上は販売収入として計上される一方で、「押し紙」を引き取らせるための補助金を新聞社が支払うため、原則として収支は差し引きゼロとなる。新聞社に実質的な利益が生じるのは、本来支払うべき補助金を支払わなかった場合である。この場合は、販売店に損害が発生して、新聞社は純利益を得る。

では、なぜ「押し紙」が新聞社のビジネスモデルに組み込まれてきたのか。その主要な目的は、「押し紙」によってABC部数をかさ上げすることにある。それにより、販売店は折込広告収入を増やすことができ、新聞社は紙面広告の媒体価値を高めることができる。

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このようなスキームが50年以上にわたり維持されてきたのは、新聞社が裁判所を含む日本の公権力と癒着してきたためだと筆者は考える。もしその前提が事実であるならば、ジャーナリズムが本来の監視機能を十分に果たせなくなるのは当然である。

逆説的にいえば、公権力は新聞社の経営上のグレーゾーンを握ることで、メディアコントロールを可能にしているのだ。戦前・戦中の日本の軍事政権が、新聞用紙の配給制度を構築して、メディアとコントロールしたのと同じ原理である。