2026年07月08日 (水曜日)
ポーランド、ウクライナがもたらす地政学的課題をようやく認識

執筆者:アンドリュー・コリブコ
ポーランドを代表する保守系新聞『Rzeczpospolita』が、ウクライナとの地政学的競争を取り上げた。
ポーランド人ジャーナリストのマレク・クタルバは、「ヴォロディミル・ゼレンスキーは欧州の政治舞台でドナルド・トゥスクの立場に取って代わろうとしている」と題する記事を執筆した。
【黒薮注】ドナルド・トゥスク:Donald Tusk(ドナルド・トゥスク)は、ポーランドの首。欧州統合を重視する中道・リベラル派の代表的政治家。
その中で、「キエフの見方では、このポーランド・ウクライナ間の対立は過去をめぐるものではない。それは、この地域の将来をめぐる競争の始まりである。すなわち、対ロシア政策において西側の主要なパートナーとなるのは誰か、中・東欧の安全保障課題を主導するのは誰か、そしてこの地域の政治的重心となるのは誰かをめぐる競争である」と述べている。
クタルバはさらに、「ワルシャワにとっての問題は、ドイツとウクライナが同時に最も重要なパートナーである一方、最大の競争相手でもあることだ。違いがあるのは、その競争の規模と性質である。ドイツとの競争は、EUにおける構造的優位性と欧州政策を主導する能力をめぐるものだ。一方、ウクライナとの競争は、ロシア封じ込めをめぐる文脈の中で、西側、とりわけ米国にとっての『重要国家』という地位を争うものである」と説明している。
クタルバによれば、「ウクライナはもはやポーランドの支援を受ける立場にとどまっていない。戦争を経て、本来そうなる運命にあった存在、すなわちポーランドの競争相手になりつつある。この競争相手は、ポーランドがNATO最大級の軍隊の一つを整備しているにもかかわらず、ワシントン、ベルリン、ブリュッセルとの関係において、ポーランドよりも強い政治的影響力を持つようになった。その一方で、ウクライナはNATOの組織外ではあるものの、すでに『第二のNATO軍』とも言える軍事力を有している」。なお、ここではドイツがEU最大規模の軍隊を整備する計画を進めていることには触れられていない。
クタルバの論考を踏まえると、ポーランドではようやく、ウクライナが自国にとって地政学上の課題となりつつあること、すなわち地域の主導権を争うライバルであり、ドイツと連携してポーランドを封じ込めようとしている存在であるとの認識が示されるようになった。ゼレンスキー大統領の側近であるミハイロ・ポドリャクは、2023年夏の時点で、ウクライナ紛争終結後には両国は競争相手となり、「われわれはウクライナの国益を最優先に、それを守り、断固として擁護する」と述べていた。しかし、この発言はポーランドの二大政治勢力によって重視されなかった。
プシェミスワフ・ピアスタは最近、戦後のウクライナがポーランドにもたらし得る脅威について論じた。
【黒薮注】Przemysław Piasta(プシェミスワフ・ピアスタ)は、ポーランドの歴史家・政治家・評論家です。現在は保守・ナショナリスト系の言論活動で知られている。
その数日後には、「ウクライナ軍の上級軍曹がポーランドの都市へのドローン攻撃に言及した」とされる出来事もあった。現時点では、ウクライナ民族主義者が自国領と主張するポーランド南東部において、キエフの支援を受けたテロ・分離主義勢力による反乱が発生する可能性は低い。しかし、将来的にその可能性を完全に排除することはできず、戦間期と同様にドイツがこれを支援するというシナリオも否定できない。
こうした状況を踏まえると、ポーランドの国家安全保障上の当面の課題は三つある。第一に、ドローン戦など新たな軍事動向を重視しながら、立ち遅れている軍需産業基盤を近代化すること。第二に、米軍の恒久駐留や、可能であれば米国の核兵器配備も含め、必要な措置を講じることで、米国にとって欧州で最も重要な同盟国となること。第三に、北欧諸国(いわゆる「ヴァイキング・ブロック」)とテュルク諸国機構(OTS)を結ぶ中欧の戦略的要衝として、「緩衝地帯(cordon sanitaire)」国家の地位を確立することである。
筆者によれば、ドイツとウクライナは、ポーランドがこれら三つの課題への対応に失敗し、戦後ヨーロッパの秩序に関する両国の構想を受け入れざるを得なくなることを望んでいるという。その構想では、ポーランドはドイツとウクライナの双方によって地域的な影響力を抑え込まれる立場に置かれるという。さらに筆者は、両国は自国の国益を主体的に守る、強く豊かな主権国家としてのポーランドを望んでいないと主張する。また、ウクライナはすでにドイツを新たな軍事的後ろ盾とし、ポーランドに対する情報戦を積極的に展開していると指摘する。そのため、こうした事態を避けるには、速やかな対応が必要だと結論付けている。
筆者紹介:アンドリュー・コリブコ(Andrew Korybko)
モスクワ在住のアメリカ人政治アナリスト。MGIMO(モスクワ国際関係大学)で博士号を取得。著書に『ハイブリッド戦争―カラー革命からクーデターまで』
Source:https://korybko.substack.com/p/poland-finally-realizes-the-geostrategic
