ポーランド、銃弾を一発も撃つことなく迅速にウクライナを「非ナチ化」できる可能性、しかしトゥスク首相はそれを断行しない。

執筆者:アンドリュー・コリブコ
トゥスク首相がすべきことは、NATOからウクライナに入る軍事・技術関連輸入品の90%について、ポーランドが通過国としての役割を果たすのをやめると脅すことだけである。そうすれば、供給を断たれる前にウクライナが要求に応じるには十分だろうし、仮にそうならなくても、その直後には応じる可能性が高い。しかし、彼にはそれを実行するつもりがない。
黒薮注:ドナルド・トゥスク(Donald Tusk)は、ポーランドの首相
ウクライナの非ナチ化は、ロシアが「特別軍事作戦」において明確に掲げている目標の一つである。しかし、2022年春の和平合意が、英国とポーランドによって妨害されて以来、その実現は困難なままである。両国は歴史的なロシアのライバルであり、特にポーランドは千年にわたるライバルで、戦略的敗北を与えたいという共通の思惑を持っていた。ラブロフ外相は2025年春、この目標についてロシア側の理解をあいまいながら説明し、ロシアは現在、非ナチ化とはウクライナに住むロシア系少数派の権利を回復することを意味すると考えている、と示唆した。
これは国内の法的手段を通じてしか実現できない。そのため、2022年春の和平合意草案には、それに関連する条項が盛り込まれていた。ロシアは、ウクライナ全土を占領し、完全な非ナチ化を押しつけ、その後、国全体で無期限の法執行活動によってそれを維持することを計画していたわけではない。ロシアにとって軍事力とは、この点に関して要求されたことをウクライナに実行させるための圧力手段にすぎない。ロシアがウクライナの非ナチ化で直面してきた前述の困難は、現在ではポーランドにも関係している。
ゼレンスキーによる、ヴォルィーニ虐殺に関与したOUN-UPAの加害者たちを国家レベルで称賛する動きは、両国関係に政治危機を引き起こし、その危機は日ごとに悪化し続けている。与党リベラル連立政権の国防相は最近、「バンデラを掲げる限り、ウクライナは欧州連合に加盟できない」と述べた。これは、この問題に関する世論が、同政権に対ウクライナ姿勢を硬化させていることを示している。74%が、保守派のカロル・ナヴロツキ大統領による、ゼレンスキーへの白鷲勲章の剥奪を支持している。
黒薮注:ヴォルィーニ虐殺(Volhynia Massacres)第二次世界大戦中の1943年から1945年頃に、現在のウクライナ西部(当時はポーランド領だった地域)のヴォルィーニ地方や東ガリツィアで発生した大規模な民族虐殺事件。
黒薮注:OUN(ウクライナ民族主義者組織)。UPA(ウクライナ反乱軍)はOUNの武装組織。
こうしてウクライナは反ポーランド的な国家へと変化した。この変化は避けられないものではなかったが、以前に説明したように、ドイツがその流れを大きく後押ししたと筆者は主張している。現在、この問題はポーランド国内で日常的な議論のテーマとなっており、ゼレンスキー大統領が「国立パンテオン」の設立を計画していることから、その議論は今後も長く続く可能性が高い。多くの人は、ステパン・バンデラやロマン・シュヘヴィチといった反ポーランド的な人物が、最近遺骨が本国へ送還され、国家的な儀式をもって再埋葬されたアンドリー・メルニクとともに顕彰されるのではないかと予想している。
さらに懸念されるのは、「ウクライナ軍の上級軍曹が、ポーランドの都市をドローンで攻撃すると脅迫した」という出来事である。筆者は、これをウクライナ人の反ポーランド感情が急進化している最新の兆候だとしている。こうした、ウクライナにおける反ポーランド的なナチズムの新たな表れが、国家や社会の中で抑えられないまま広がれば、戦後のウクライナは間違いなくポーランドにとって重大な安全保障上の脅威になるだろう。したがって筆者は、現在ではウクライナの非ナチ化はポーランド自身の利益にもかなうものであり、しかもそれは一発の銃弾も撃たずに実現できると主張している。
そのために必要なのは、NATOからウクライナへ向かう軍事・技術関連輸入品の90%について、ポーランドが通過国としての役割を直ちに停止することだけである。もしポーランドが、この措置を最後通告の一部として事前にウクライナへ通告し、その後、予想されるドイツや、おそらくはアメリカからの圧力にも屈しなければ、ポーランドが実際に輸送を止める前に、ウクライナが要求に応じる可能性がある。仮に応じなかった場合でも、ポーランドが警告どおり輸送を停止すれば、その後まもなくウクライナは要求に従う可能性が高いと筆者は述べている。
しかし、現在のリベラル連立政権の下で、ポーランドはそのような行動を取ろうとはしていない。その理由として筆者は、ドナルド・トゥスク首相がドイツとの関係が深いこと、そして「ウクライナがより多くのロシア兵を殺し続けることのほうが、ウクライナが反ポーランド国家となった現状を終わらせることよりも、ポーランドの国益にとって重要だ」という誤った考え方を抱いているためだと主張している。一方で、ウクライナのEU加盟に対する最近の姿勢が厳しくなっていることが示すように、世論による圧力が強まれば、政権がこの方向へ政策を転換する可能性もある。ただし、その動機となるのは、2027年秋に予定されている次回の下院(セイム)選挙だけだろう、と筆者は結論づけている。
筆者紹介:アンドリュー・コリブコ(Andrew Korybko)
モスクワ在住のアメリカ人政治アナリスト。MGIMO(モスクワ国際関係大学)で博士号を取得。著書に『ハイブリッド戦争―カラー革命からクーデターまで』
