2016年05月26日 (木曜日)

新聞に対する軽減税率の適用が確実視されているなか、公正取引委員会が朝日新聞に対して「押し紙」問題で警告を発した。本日発売の『月刊Hanada』に、「朝日『押し紙』注意は蟻の一穴」と題する黒薮の記事が掲載された。

「押し紙」問題は、朝日新聞に限らず日本の新聞業界に普遍的な問題である。新聞社のビジネスモデルと言っても過言ではない。「メディア黒書」が当初から追及してきた問題である。

本記事では、朝日の問題を皮切りに、読売の「押し紙」政策を認定した福岡高裁判決や、毎日新聞の凄まじい「押し紙」の実態にも言及している。また、おそらく全国規模の雑誌では初めて、折込広告の「水増し問題」と「中抜き問題」について具体な数字を示して例証した。さらに、公共広告の価格設定に見る税金の「ぼったくり」の実態も数字で示した。これは広告代理店の関係者に注意を促す意味で必読だ。

もちろん、「押し紙」に消費税が課せられるメカニズムにも言及している。実は、それが新聞人が軽減税率を求めている理由なのだが。

以下、参考までに「押し紙」回収場面と「水増しチラシ(広告)」の回収場面を動画で紹介しておこう。

 

【「押し紙」の回収場面】

 

【水増しされた折込広告の回収場面。段ボールの中身は折込広告】

 

【イトーヨーカドーの折込チラシ大量廃棄】

2016年05月25日 (水曜日)

「押し紙」問題を考える上て、意外に盲点になっている視点を紹介しよう。

読者は第3種郵便物制度をご存じだろうか。この制度は、定期刊行物の郵送料を安くして、購入者の負担を減らす制度である。この制度を使うと、50gまでの刊行物であれば62円で郵送できる。

しかし、認可を得るためにはいくつかの条件が必要だ。

「押し紙」と第3種郵便物制度の関係を考えるとき、次に示す認可条件のうち「7」に注目してほしい。毎日新聞社が認可条件を満たしていなことが判明する。
1.毎年4回以上、号を追って定期に発行するものであること。

2.掲載事項の性質上発行の終期を予定し得ないものであること。

3.政治、経済、文化その他公共的な事項を報道し、又は論議することを目的とし、あまねく発売(※)されるものであること。

 (※)団体・個人等が一括購入後、第三者へ無料で頒布している場合や発売先を限定している場合はあまねく発売されていることにはなりません。

4.会報、会誌、社報その他団体が発行するもので、その団体又は団体の構成員の消息、意見の交換等を主たる内容とするものでないこと。

5.全体の印刷部分に占める広告(法令の規定に基づき掲載されるものを除き、心身障がい者用低料第三種郵便物は、外装に掲載される広告(法令の規定に基づき掲載されるものを除きます。)を含みます。)の割合が5割以下であること。

6.1回の発行部数が500部以上であること。

7.1回の発行部数に占める発売部数の割合が8割以上であること

8.定価を付していること。 心身障がい者用低料第三種郵便物の料金の適用を受けるためには、第三種郵便物の承認を受けることに加え、心身障がい者団体であること等を証明する次の資料が必要です。

・会則、規約等当該団体への加入資格又は構成員が明らかになる資料

・公共機関(※)の発行した当該団体が心身障がい者団体であることおよび当該刊行物が心身障がい者の福祉を図ることを目的として発行されるものであることの証明書

◇毎日新聞の「押し紙」率36%の立証

上記の認可条件に記されているように、「1回の発行部数に占める発売部数の割合が8割以上であること」が認可条件になるのだ。と、いう事は、「押し紙」率が2割を超えている新聞は、第三種郵便物の認定を取り消すのが妥当ということになる。

次に紹介する内部資料は、毎日新聞社から流出したものである。この資料によると、2002年10月の段階で毎日新聞の「押し紙」率は36%にも達しており、第三種郵便物の認定基準を満たしていない。
■朝刊 発証数の推移PDF

PDF資料の赤マークの部分を注視してほしい。

・3,953,466:全国の毎日新聞販売店へ搬入される新聞部数を示している。約395万部である。

・2,509,139:「発証」数を示す。「発証」とは、販売店が読者に発行する新聞購読料の領収書である。約251万枚である。

つまり395万部の新聞が販売店に搬入されているのに、領収書は251万枚しか発行されていないのだ。両者の差異にあたる144万(部)が、一日あたりに全国で発生していた毎日新聞の「押し紙」という計算になる。率にすると搬入される新聞の36%である。

この数字は14年前のデータであるから、新聞離れが急速に進んでいる現在の時点では、さらに「押し紙」が増えている可能性が高い。「押し紙」問題はさらに深刻化している。

毎日新聞に対する第三種郵便物の認定は取り消すのが妥当だ。

 

2016年05月24日 (火曜日)

広告代理店大手の博報堂から過剰な請求を受けていたとして、通販のアスカコーポレーション(本社・福岡市)が、5月20日、同社を相手に約15億3000万円の支払いを求める訴訟を福岡地裁へ提起した。

訴状によるとアスカは、2006年ごろから2015年3月ごろまで、博報堂に情報誌の制作やホームページの更新、さらにコマーシャルを含む通信販売番組の制作と放送などの業務を依頼していた。ところが博報堂側が実際には行っていない作業分の費用を請求していたという。

◇双方が提訴

両社の係争は、昨年の10月に表面化した。博報堂がアスカに対して約6億1000万円の未払い金を請求する裁判を起こしたのを機に、アスカ側は過去の過剰請求を理由として、「反訴」する形となった。

アスカが請求対象にしている分野は、8項目に渡っている。この中には、情報誌、ホームページ、CMなどの制作費のほか、「新聞・雑誌の紙面広告及び折り込みチラシ」という項目もあり、最近、大きな社会問題になっているABC部数(新聞の公称部数)の偽装問題との関係の中で、裁判所がどのような判断を示すかが注目される。チラシの「折り込め詐欺」や紙面広告の適正価格についての検証が行われる可能性もある。

メディア黒書では、8項目の請求項目を、双方の言い分を踏まえて、ひとつひとつ検証を進める予定。

なお、博報堂がアスカを提訴した裁判は東京地裁で審理されている一方、アスカが博報堂を提訴した先は福岡地裁である。2つの裁判は近々に統合される可能性が高い。

◇広告代理店タブーが解消へ

このところ電通によるオリンピック誘致工作や国際陸上競技連盟(IAAF)
との関係が海外で大きな問題になっている時期だけに、業界2位とはいえ、博報堂がらみの訴訟にも注目が集まりそうだ。従来、ジャーナリズムによる大手広告代理店の内部検証には壁があったが、状況が変わる兆しが生まれている。裁判を通じて、多量の内部資料が公になる可能性が高い。

電通によるオリンピック誘致工作については、複数の週刊誌が「電通」という実名を出して報じている。従来はあり得なかったことである。

被災地の岩手県大槌町が博報堂に発注した記録誌編集事業が、データの盗用などで中止に追い込まれた事件については、産経新聞が昨年の12月に報じている。次の記事である。

東日本大震災で大きな被害を受けた岩手県大槌町は8日、大震災の記録誌編集事業について、契約上の履行期間内の業務完了が事実上不可能として、事業を請け負った東北博報堂(仙台市青葉区)との契約を解除したことを明らかにした。

町は2月、3社による競争提案審査を実施し、事業の全体管理者として東北博報堂を選定。約250ページの記録誌1千部と、全戸配布する約25ページのダイジェスト版8千部の作成を1250万円で委託した。

納期の7月に内容を確認したところ、被害状況などのデータの羅列にとどまり、震災の悲惨さを伝える記録誌としての完成度は低く、いったん期限を11月末に延長。9月には一部の文章で、県が発行した別の記録誌からの無断コピーも発覚した。

作成過程で、町とやりとりするのは印刷会社の担当者で、取材先の選定や交渉、誌面構成などは町に依存しており、実質的に印刷会社への丸投げだったという。町は東北博報堂盛岡支社長らに厳重注意したが、編集作業の体制改善はみられなかったという。10月に納期を来年2月にする再延長の申し出があったことから、期間内の完成は事実上不可能と判断し、契約解除に踏み切った。

平野公三町長は「実績のある会社だったので信頼していた。裏切られたという気持ちがある」と話している。東北博報堂は「町のいう通り、当社の怠慢ということになる。今後、このようなことが二度と起きないように努める」とした。

◆参考記事

■最高裁から電通へ8億600万円、裁判員制度のPRで、表面化する大手広告代理店による「ぼったくり」と「偽装」

■東北博報堂が岩手県の複合施設でアルバイトを使って入館者数を水増し、同県大槌町の記録誌制作では他誌からパクリ

■写真で見る博報堂によるデータの流用(パクリ)① メディア黒書が内部資料を入手

■五輪委の竹田恆和会長が東京都へ約27億円の補助金を請求していた、オリンピック招致問題で電通が関与している可能性を海外紙が報道

2016年05月23日 (月曜日)

2020招致計画委員会の竹田恆和委員長が、「平成23年9月1日」から「平成25年4月1日」までの間に、計7回、東京都に対して、総額27億円の補助金を要求していたことが分かった。

この問題に言及する前に、海外紙が報じているオリンピック招致を巡る「賄賂」疑惑の概要を説明しておこう。

◇スイスにある電通の関連会社のアドバイザーへ疑惑の金が

イギリスの『ガーディアン』などは、11日、2020年東京五輪・パラリンピックの招致委員会が、国際陸上競技連盟(IAAF)のラミン・ディアク前会長の息子パパ・マサ・ディアク氏が関係する会社の口座に130万ユーロ(約1億6000万円)を支払っていた疑惑で、フランス当局が捜査に乗り出していると報じた。

『ガーディアン』などの報道によると、この事件には、電通が関与しているようだ。まず、疑惑がかかっている資金の振り込み先となった会社と問題の振込先の銀行口座について解説しておこう。

この会社の社名は、BT社(ブラックタイディングズ社)である。BT社が所有する振り込み先銀行口座の持ち主は、イアン・タン・トン・ハン(以下、ハン氏)である。ハン氏は、スイスのルツェルンに本部を置いている電通スポーツ社の小会社AMS(Athlete Management and Services)のアドバイザーを務めている。

ここにまず、電通とハン氏、それに問題の銀行口座の接点がある。

ハン氏と国際陸連の前会長・ラミン・ディアク氏は親密な関係にあるという。また、同氏の息子パパ・マサ・ディアク氏とも親密で、ハン氏は2014年に自分の子どもが誕生した際にマサと名づけている。

国際陸連の前会長・ラミン・ディアク氏らは、IOCの中で極めて強い影響力を持っている。

◇発端は国際陸上競技連盟(IAAF)を柱とした「賄賂」

この事件は、とかく東京五輪・パラリンピックの招致をめぐる疑惑だけがクローズアップさているが、それ以前に、招致委員会と電通の日本サイトと国際陸上競技連盟(IAAF)の関係を慎重に検証しなければならない。

もともとこの問題が発覚したのは、ロシアのスポーツ選手の間でドーピングが日常的に使われていた事件をフランスの捜査当局が、調査するようになったのが糸口だった。おそらくは「賄賂」を調査する中で、たまたま日本からBT社へ送金があった事実が発見されたのである。BT社の口座に疑惑がかかっていたことが、日本側に災いしたともいえる。

こうした展開の中では、当然、国際陸上競技連盟(IAAF)を柱とした「賄賂」の疑惑についても今後、検証する必要がある。問題は、オリンピック「賄賂」だけではない。事実、IAAFとの関連で、次の点が指摘されている。

電通は2029年までIAAFとの間でスポンサー契約を結んでいるが、これはディアク前会長がIAAFが辞任する同じ月に、ディアク前会長自身によって一方的に延長されたものであるという。

◇国際的スポーツイベントとPR戦略

電通が国際的なスポーツイベントの誘致にこだわるのは、スポーツを通じたPR戦略に大きなメリットがあるからだと思われる。それは同時に広告のスポンサーの要求でもある。

たとえばオリンピックが開催されるとなれば、なんらかのかたちでスポンサーになっている企業だけが、オリンピックに名を借りたPR戦略を展開できる。そういうルールになっているのだ。

もちろん、それによりメディア企業に莫大な広告費が流れ込む仕組みにもなっている。

◇東京都から27億円

2020年東京五輪・パラリンピックの招致委員会は、寄付金だけで運営されているわけではない。たとえば、読者は次の事実をご存じだろうか。

2020招致計画委員会の竹田恆和委員長は、「平成23年9月1日」から「平成25年4月1日」までの間に、計7回、東京都に対して、補助金を要求している。その請求額は、約27億円にも達している。

次に示すのが、その証拠ともいえる竹田名義の請求書である。

■竹田恆和から東京都に対する請求書

公的な資金の一部が電通のビジネスに使われている可能性もあるのだ。

大手広告代理店の「闇」を検証する必要がある。

 

2016年05月20日 (金曜日)

最高裁から電通に約8億600万円の金銭が、裁判員制度の企画費用として支払われていたことが、会計検査院の資料で判明した。支出の時期は、2005年から、2007年。裁判員制度のPRが盛んに行われていた時期である。

電通への支出の中には、入場者にサクラを使っていたことが発覚した「裁判員制度タウンミーティング」に関する出費約3億4000万円も含まれている。

この企画には地方紙も絡んでおり、改めて電通と地方紙の関係が確認できる。

■参考記事:電通の役員に福山正喜・共同通信社長と西澤豊・時事通信社長、博報堂の役員に松田昇・元最高検察庁刑事部長、2015年6月提出の有価証券報告書で判明

最高裁から電通に対する約8億600万円の支払いを裏付ける資料は次の通りである。

■裏付け資料DFF

■裏付け資料の出典

このところ大手広告代理店による「ぼったくり」や「偽装」が問題になっている。折込広告の「中抜き」問題も大阪の広告代理店で発覚している。さらには世論誘導。こうした実態について、筆者あてに次のようなコメントがツイッターで寄せられたので、紹介しておこう。

おくあき まさお ‏@tuigeki  · 21 時間21 時間前 
日本国を裏で操る電通。それに群がる権力者たち。凄すぎてマスコミは触れない。中国ではメディアコントロールが行われていることが明らかになっているが、日本ではそれすら闇の中。中国より透明度は低い。報道の自由度だけでなく情報の透明度も低い

※折込広告の「中抜き」:広告代理店アルファ・トレンドが受注した枚数の折込広告の一部を印刷・配布せずに料金だけ徴収していたことが発覚し、「和解」により損害賠償を命じられた事件。

■参考記事:代理店に騙される広告主たち――チラシ65万枚「中抜き」、42万枚は印刷もせず 

2016年05月19日 (木曜日)

企業の役員構成をみると、その企業の体質や方向性が見えてくる。とりわけ外部から役員に加わった人物は、なんらかの戦略上の方針に則して選ばれている可能性がある。

かつて公正取引委員会の委員長を務めた根来泰周氏が電通に再就職(広義の天下り)していたが、電通が根来氏を受け入れた背景には、電通による広告業界の寡占に公取委のメスを入れさせない戦略があった可能性が高い。

■参考記事:機能不全の公取委 歴代委員長が電通はじめ「寡占企業」に堂々と天下り

筆者の手元に電通と博報堂の有価証券報告書がある。その中に役員に関する記述がある。両社の役員人事の中で、特に気になる箇所を指摘してみよう。

※ただし、電通に関しては、2015年11月に公表の新人事が筆者の手元にある。。

参考資料:電通人事

◇時事と共同の現役社長が電通の役員に

まず、電通。2015年6月26日に関東財務局に提出された有価証券取引書の役員欄にある次の3氏に注目してほしい。敬称は略。
【西澤豊】時事通信社の現役社長である。2013年6月から2016年1月まで電通の取締役。

【福山正喜】共同通信社(一般社団法人)の現役社長、編集主幹である。2016年1月から2015年11月まで電通の取締役。

【遠山敦子】元文部科学大臣である。2008年6月から、2016年1月まで電通の監査役。

■裏付け資料

◇博報堂DY、元最高検察庁刑事部長が取締役

次に博報堂。2015年6月29日に関東財務局に提出された有価証券取引書の役員欄にある次の人物に注目してほしい。敬称は略。

【松田昇】元法務省矯正局長、その後、最高検察庁刑事部長。退官後、2014年6月から博報堂の外部監査役に就任、2015年6月からは取締役。ちなみに2009年には、読売新聞大阪本社の社外監査役に就任している。

■裏付け資料

◇判検交流の影響は?

地方紙の統括本部ともいえる共同通信と時事通信が電通と密接にむつび着いている状況はおそろしい。紙面そのものが宣伝媒体に変質する危険性がある。

また、最高検察庁刑事部長が博報堂に再就職している事実は、公正・中立な裁判に支障となる危険性を示唆する。検察官と裁判官の間には、「判検交流」制度があるからだ。国会公務委員の退官後の再就職は、禁止すべきだろう。

※判検交流
裁判所と法務省・検察庁の間の人事交流。裁判官と検察官が出向しあって互いの職務に就く刑事分野の交流は平成24年(2012)に廃止。裁判官が訟務検事となる交流は残される。

[補説]日弁連などは、刑事分野の交流のみならず、民事や行政訴訟の国側代理人の訟務検事に裁判官がなることに対しても、癒着や馴れ合いを招き公正を損ねるとして批判している。(デジタル大辞泉の解説)

2016年05月18日 (水曜日)

歌手の八木啓代氏が、筆者(黒薮)と元旭化成の役員で市民運動家の志岐武彦氏に対して、名誉を毀損されたとして200万円のお金を要求した裁判の判決が、17日、東京地裁であり、青木晋裁判長は八木氏の訴えを棄却した。

■判決全文

この裁判は、筆者がサクラフィナンシャル・ニュースに執筆した記事、「志岐武彦VS八木啓代の名誉毀損裁判、背景に疑惑の小沢一郎検審をめぐる見解の違い」と題する記事が、八木氏の名誉を毀損しているとして、八木氏が起こしたものである。

■「志岐武彦VS八木啓代の名誉毀損裁判、背景に疑惑の小沢一郎検審をめぐる見解の違い」

誰が読んでもこの記事が八木氏の名誉を毀損していないことは明らかで、数多くの疑問の声があがっていた。たとえば記事中に引用した八木氏の次のツィート。志岐氏を罵倒したものであるが・・・。

「ちなみに、どうせまともな人は信じないので改めて書く必要もないと思いますが、志岐氏が昨日付のブログに書いていることは、すべて妄想です。かなり症状が進んでいるなと思います。早い内に病院教会に行かれる方がよいと思います」

この記事の解説として、筆者は次のように記した。

小沢検審が「架空」であったと推論するだけの十分な根拠が明らかになっているうえに、八木氏の表現に(精神)病院か教会に行けといった侮辱的な表現もあり、裁判所の判断が注目される。

引用記述にある「病院」という言葉の前に「(精神)」と補足したのが、名誉毀損にあたるというレベルの訴えだった。

■訴状の全文PDF

◇「訴権の濫用」とは

読者は「訴権の濫用」という言葉をご存じだろうか。憲法で裁判を起こす権利は認められているが、それは提訴を濫用してもいいことにはならない。過去に「訴権の濫用」が適用されたのは、たとえばサラ金の武富士が 弘中惇一郎弁護士を筆頭にフリージャーナリストらを訴えた武富士裁判がある。

筆者が被告にされた著作権裁判(原告・読売の法務室長・江崎徹志 被告・黒薮哲哉)では、「訴権の濫用」という明確な認定はされなかったが、読売側が争点になった「著作物」の名義を偽り、そもそも提訴権がないのに提訴していたことが、裁判の中で発覚し、読売が敗訴している。

争点の著作物について判断する以前に、門前払いのかたちで、読売が敗訴したのである。

「訴権の濫用」の判断基準には、次の判例がある。

(最高裁判所第三小法廷 昭和63年1月26日)

訴えの提起は、提訴者が当該訴訟において主張した権利又は法律関係が事実的、法律的根拠を欠くものである上、同人がそのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知り得たのにあえて提起したなど、裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠く場合に限り、相手方に対する違法な行為となる。

この判例に則して、筆者の著作権裁判を検証すると完全に一致している。具体的には、

読売(江崎)が自分の著作物だと主張した文書(黒薮に対する催告書)は、名義が「江崎徹志」となっていたにもかかわらず、実際の作成者は、読売の代理人弁護士・喜田村洋一(自由人権協会代表理事)だった高い可能性が判決で認定された。

※著作者人格権は他人に譲渡できない。

「①」の事実を前提にすると、読売はそもそも著作権裁判を提訴する資格がなかった。黒薮に対する催告書の作成者が江崎氏本人ではないからだ。

代理人弁護士の喜田村氏は、当然「②」の事実を知っていた。

つまり読売と喜田村氏は、「当該訴訟において主張した権利又は法律関係が事実的、法律的根拠を欠くものである上、同人がそのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知り得たのにあえて提起した」ことになる。

筆者は喜田村弁護士に対して懲戒請求を行ったが、日弁連は何の処分も下さなかった。しかし、日弁連は弁護士を守る組織であるから、やむを得ない側面もある。

また、筆者は読売に対して損害賠償の裁判を起こしたが、訴えはなぜか棄却された。この裁判については、今後も検証を続ける必要がある。

参考までに、喜田村氏らが「著作物」の名義人を偽っていた可能性を認定した知財高裁判決の認定部分と、判決の全文を紹介しよう。

■知財高裁判決全文PDF

■知財高裁判決の「名義偽り」の認定部分

◇メディア黒書で、裁判資料の公開へ

今回、八木氏が起こした裁判は、本人訴訟である。かりに弁護士が付いてこのような裁判を起こしたとすれば、弁護士も被告にするが、今回は本人訴訟なので、八木氏に「訴権の濫用」の認識がなかった可能性もある。

しかし、1年を超える裁判により、予定していた取材が中止に追い込まれるなど実質的な被害が発生しているわけだから、賠償を求めるのは当然である。八木氏に対して日当(裁判所への出頭日)は請求できるが、それで損害を相殺できるわけではない。

提訴の次期については、この裁判の検証が終わってからということになりそうだ。まず、メディア黒書で、裁判資料などを公開していく。時候までには、提訴する予定。もちろん八木氏にも、反論の機会は提供する。

◆参考記事

■喜田村洋一弁護士が作成したとされる催告書に見る訴権の濫用、読売・江崎法務室長による著作権裁判8周年①

■報道・出版活動に大きな支障をきたしていた可能性も、読売・江崎法務室長による著作権裁判8周年②

2016年05月17日 (火曜日)

◆吉竹幸則(フリージャーナリスト・元朝日新聞記者、秘密保護法違憲訴訟原告)

熊本地震から早や1か月。1日も早く被災者が元の生活を戻れることを願う。しかし、被害が一段落した今、改めて震災の政治利用について、検証しておかなければならない。

安倍政権は震災を格好の理由に「緊急事態条項」を盛り込む憲法改正の必要性を訴え、米軍オスプレイによる支援物資の運搬など、着々と日米軍事一体化政策を進めた。そこには巧妙な世論操作の仕掛けがなかったのか。

私が注目したのは、熊本地震直後の4月15日、民進党ネット発言が非難を浴び、次々とサイトが炎上する「事件」が起きたことだ。震災のさ中、純粋に被害者の救済を願う人なら、まず政府や政権政党に要望する。

なのに、野党の民進党に議論を吹っ掛け、最後には大量の批判投稿でサイト炎上まで仕掛けるのは、どういう人たちなのか。組織的関与、戦前回帰のきな臭さを感じるのだ。

◇民新議員の「それじゃあダメでしょうね」が口火

発端は「東日本大震災時の自民党のような対応を望みます」との民進党公式ツイッターへの投稿だった。民進党が「それじゃあダメでしょうね」と答えたところ、 「地震で政争してる場合じゃないだろう」「熊本地震で大きな被害が出ているのに、真剣に向き合っていない」などと批判が殺到。議論に加わった所属議員のサイトも含め炎上、最後には事実上の謝罪に追い込まれた。

私ももちろん、熊本地震被災者には何にもましてお見舞いし、早期の復興を願う立場だ。しかし、「それじゃあダメでしょうね」との民進党の答えがあながち間違いだったとは思わない。

何故なら、民主政権を引き継いだ自民政権で、果たして東日本の震災復興はうまくいっているのか。未だに福島第1原子力発電所の放射能拡散が収束していない。既存原発は廃棄されず、「熊本地震と同じ中央構造線上にあるのでは」と危険性が指摘される熊本県境に近い鹿児島県の川内原発は再稼働、愛媛県の伊方原発も夏の再稼働に向け、準備が進んでいる。

東北地方では従来からの自民党得意のバラマキ、箱もの優先政策…。談合など利権のウワサも絶えず、やたらに高い防波堤を張り巡らすなど、人々の生活を改善するのに、本当に役立っているかさえ定かではない。

野党の仕事は、震災復興で「与党・自民党の対応」を厳しく監視、「それじゃあダメ」と対案を出すことにある。「何がダメなのか」と問われたなら、民進党はきちんと事実を並べ反論したらいい。しかし、「どの党も頑張っているのに自民の手柄のように宣伝したからだ」と答えるなど、稚拙に反応したことも確かにネット炎上を招いた一因ではある。

サイト炎上に慌て、党内部からも「一般の人々の声は真摯に受け止めるべき」「言い争いをしている場合ではありません」との声も出る始末。民進党は、「その通り」とついに白旗を上げた。

この時、 「本当に(民進党は)ツイッター不慣れなんですね」などと、投稿者から嘲笑されているが、私はむしろここにネット炎上を仕掛けた人たちの狙い、騒動の本質があったように見える。地震のさ中、民進党を挑発。うまく引っかかって馬脚を現わしてくれれば儲けもの。地震対策で安倍政権批判を封じられる…。議論を仕掛けたグループにこんな狙いがなかったと言えるのか。

◇ネットと世論誘導

振り返ってみれば、発足から今日まで安倍政権は、ネット利用の世論操作とは切っても切れない深い関係がある。もともと拉致問題で北朝鮮に対し、必要以上に敵意を煽り、安倍氏を政権の座に押し上げたのもネットだった。それが証拠にこのグループは拉致問題が未だに解決せずとも、決して安倍政権を批判しない。

従軍慰安婦問題では、朝日新聞が「吉田清治証言」のウソを見抜けず、日本軍による「強制連行」の根拠にしていたことを巧みに突いた。「従軍慰安婦」そのものが存在しなかったかのように、旧日本軍を美化。戦前回帰の風潮を演出し、ネットであふれんばかりの朝日批判を展開した。

福島第1原発の故吉田昌郎所長のいわゆる「吉田調書」朝日報道問題では、よくよく調書を読めば、「所長命令に違反し、所員が原発から逃げた」とは読めない部分もあることに目を付けた。反朝日の既成メディアとネット勢力が一体化。朝日の「誤報」を印象付けることによって、調書で語られている本当に恐ろしい事態から国民の目をそらすことにまんまと成功した。

「恐ろしい事態」とは、福島原発は実際はメルトダウン。格納容器ごと爆発の危険にさらされていたのに、手をこまねくしかなく、東日本全体が壊滅寸前だったことだ。

返す刀でネット勢力は、当時の菅直人首相の行動に凄まじいバッシングを浴びせた。福島第1原発事故が制御不能で危機的状況に陥っていた2011年3月15日未明、菅直人首相(当時)が東京電力本店に乗り込んだ際の「原発を放棄し(逃げ)たら、原子炉や使用済み燃料が崩壊。放射能の飛散は、チェルノブイリの2倍3倍にもなる」「このままでは日本国滅亡だ。

60(歳)になる(東電)幹部連中は現地に行って死んだっていいんだ。俺も行く」などとの発言したことを捉え、「官邸を空にして、東電職員を口汚く罵る。危機管理の頂点にある首相として、あるまじき行動」と、ネットを使い批判の坩堝(るつぼ)にした。

◇巧みなシナリオ

ネット世界のことだ。安倍政権が裏にいたという確証ないし、私もそう決めつけるつもりもない。でも、安倍批判をしそうな勢力をバッシングの先制攻撃で潰す一連のネット集団には、共通した手口が見て取れる。

彼らにもそれなりの「理」はある。何より、彼らは反対勢力の少しのほころびも徹底的に突く名人だ。誰もが批判出来ない社会的弱者を前面に押し立て、自分たちはその「味方」、相手は「弱者の敵」との構図を作り上げ、ネットへの大量発信で国民にもそう思わせ、安倍氏を「正義の使者」に仕立て上げる手法だ。

拉致問題で確かに北朝鮮のやり方は卑劣である。私も被害者家族の心情を思うと余りあるものがある。ネット集団は、人々のこうした心情に入り込んだ。SNSへの大量の書き込みでこれまでの政治家の北朝鮮対応を「生ぬるいから解決しない」と決めつけることで、安倍氏を「一貫して被害者家族を支援した強い政治家」と印象付け、安倍氏の自民総裁選浮上に少なからず貢献した。

慰安婦問題では、確かに1990年代後半には吉田証言に依拠した記事に誤報の疑いが出ていた。しかし、昔からの派閥官僚体質で無責任に放置して来た朝日幹部の責任は逃れない。

でも、それで朝日の戦後報道のすべてが否定されるものではないのに、彼らは戦争指導者でなく、若い命を散らした戦死者を前面に押し立て、「命がけにこの国を守った英霊を『強制連行』の誤報で意図的に冒とくした」と、朝日全面批判を繰り広げた。その結果、集団的自衛権容認の安保法制制定で、反対に回るリベラルジャーナリズムの出鼻をくじくことに成功している。

朝日原発報道も、せっかく吉田調書を独自入手したなら、東日本崩壊の危機を書かず、あいまいな「所長命令批判」を大きく取り上げたのは、調査報道としては、「記者・デスクの訓練不足」のそしりは免れない。だが、朝日報道が出ると、それまで極秘扱いだった調書の内容が何故か漏れ始め、朝日の記事の一番弱い部分に親安倍既成メディアが一斉に焦点を当て、「誤報」と騒ぎ立てた。

それに呼応するかのように、ネットでは「事故収束のため、命がけで働いた東電職員を冒とくするもの」と朝日バッシング…。この役割分担は、誰かが統一シナリオを書かない限り、不可能だろう。

◇原発事故の責任はむしろ自民党

菅氏が東電に乗り込んだことに対し、「かけがえのない国民の命を危機にさらした」などとの批判は、的を得ていたのか。確かに非常時に国の最高責任者が官邸を空けることには、議論の余地はある。

しかし、首都のある東日本、つまり日本最大危機を目前に、東電からも情報も入らないなら、居ても立ってもいられない菅氏の心情は察して余りあるものがある。官邸にいても多分、菅氏は何も出来なかった。私は批判に値するものではないと考える。

そもそも原発事故の責任は、たまたま当時、政権の座にいた民主党ではなく、利権がらみで事故対策を怠って原発推進策を推し進めて来た自民にあるのは誰にでも分かる話だ。しかし、ネットでの集中砲火で事故責任の多くが菅・民主政権の対応にすり替えられ、安倍政権の原発再稼働に道を開く結果をもたらした。

今回の民進党もだ。被災者を押し立てた彼らの挑発に、自らの対応策と自民政策の足りなさをきちんと論理展開出来れば、こんなネット炎上は招かなかった。しかし、稚拙な対応で地震対策での政権監視の出鼻をくじかれ、安倍政権の暴走を許してしまったのだ。

◇戦前回帰の緊急事態条項

このネット集団の手口は、今始まったことなのか。すでに先例がある。軍部と裏でつながっていたとされる戦前の愛国婦人会だ。国防意識の向上と戦死者遺族の支援を目的に結成され、大日本国防婦人会とともに軍部に異論を唱えた人々やその家族に対して家まで押しかけ、「国賊!お国のために命を捧げた英霊に恥ずかしくないのか」などと罵詈雑言を浴びせた。

何のことはない。「英霊」を押し立てた愛国婦人会が、ネット集団に置き換わっているだけの話だ。

ネット集団による民進党攻撃の狙いは何だったのか。それは熊本地震後の4月15日の菅義偉官房長官、17日の安倍首相発言を聞けば明らかだろう。

菅官房長官は記者会見で「今回のような大規模災害が発生したような緊急時に、国民の安全を守るために国家や国民がどのような役割を果たすべきか、憲法にどう位置づけるかは極めて重く大切な課題」と述べ、憲法に「緊急事態条項」を盛り込む必要性を強調した。

自民改憲草案にある「緊急事態条項」。緊急時の政府の権限を定めているが、首相権限が格段に強まり、国民の人権、言論の自由まで制限される。明治憲法での「緊急勅令」がその原型だ。1923年の関東大震災では、「緊急勅令」を根拠に「戒厳」が布告され、混乱に隠れて軍・警察による無政府主義者などへ弾圧が起き、急速に軍国主義化につながった苦い経験がある。

安倍首相は地震非常災害対策本部会議で米軍の輸送支援について、「オスプレイやC130輸送機で自衛隊員や援助物質を輸送する」と表明した。直前まで、「直ちに米軍の支援が必要という状況ではない」としていただけに、突然の方針変更は不可解だ。

安倍氏は「ニーズを的確に把握、先手先手で被災者の生活支援に迅速に対応」と、災害支援に積極性を強調する。しかし、裏の顔で関東大震災に習い、熊本地震のどさくさに紛れ、戦前回帰の緊急事態条項を入れ憲法改正の突破口にし、国民の抵抗の強いオスプレイも地震に乗じ、日本国内を大っぴらに飛ばし、米軍・自衛隊一体化を一気に進める思惑を持っているとしたなら…。その一環で民進党を災害対策で黙らすことが、本当のネット攻撃の狙いだったとしたら…。

私が把握した限りだが、民進党へのネット攻撃について、面白おかしく少しは報じても、正面からネット集団の攻撃の思惑・危険性を指摘する記事にお目に掛からなかった。その大手既成メディアの鈍感性にも私は失望する。今回のネット炎上に安倍政権がかかわっていたとする証拠はないにしても、その周辺も含め、ネットの政治利用の巧妙さ、ち密さは想像を超える。

今回の民進党のような稚拙さでは、とても対抗出来ない。このままでは安倍氏の狙い通り、戦前統制社会への回帰は、予想以上に早いかもしれない。

≪筆者紹介≫ 吉竹幸則(よしたけ・ゆきのり)
フリージャーナリスト。元朝日新聞記者。名古屋本社社会部で、警察、司法、調査報道などを担当。東京本社政治部で、首相番、自民党サブキャップ、遊軍、内政キャップを歴任。無駄な公共事業・長良川河口堰のウソを暴く報道を朝日から止められ、記者の職を剥奪され、名古屋本社広報室長を経て、ブラ勤に至る。記者の「報道実現権」を主張、朝日相手の不当差別訴訟は、戦前同様の報道規制に道を開く裁判所のデッチ上げ判決で敗訴に至る。その経過を描き、国民の「知る権利」の危機を訴える「報道弾圧」(東京図書出版)著者。

2016年05月16日 (月曜日)

このところ新聞の実配部数の水増し問題(「押し紙」)が再浮上して崖っぷちへ追い込まれている新聞業界だが、同じメディア業界で大手広告代理店による不正行為も次々と明るみに出ている。

岩手県盛岡市にある県の複合施設「アイーナ」の総括責任者を務めていた東北博報堂の男性社員が、入館者数を水増しして県に報告していたことが分かった。情報提供した住民によると、今年の3月22日に、NHKのローカル局がこの事件を報じた。幸いインターネット上にニュースが残っていたので、「アイーナ」に内容を確認したところ、「HNKが報じたとおりです」と答えた。

入館者数を水増した手口は、「アルバイトのスタッフら数人が入館者数をカウントしている3階の出入り口を往復」して、カウント数を増やす幼稚な手口だった。

NHKニュースの全文は次の通りである。

 盛岡市にある県の複合施設「アイーナ」で、運営を委託された指定管理者が入館者数を水増しして県に報告していたことがわかりました。

 岩手県は、不適切な行為だとして改善勧告を出すとともに、管理料を減額する措置を決めました。

 改善勧告を受けたのは、盛岡市のアイーナの運営を委託された 東北博報堂など4社でつくる指定管理者のグループです。
 
 岩手県によりますと指定管理者のグループはアイーナの入館者数を水増ししていたということで、その人数は、平成22年度から24年度と25年度を除く4年間で、 あわせて2380人にのぼるとみられています。

この水増しは、運営業務の総括責任者で東北博報堂の男性社員が指示し、アルバイトのスタッフら数人が入館者数をカウントしている3階の出入り口を往復して、 水増ししていたということです。

 男性社員は、 「施設管理に対する評価に重要だと思い、前年割れを避けたかった」 と説明しているということです。

 アイーナの入館者数は毎年、140万人台で推移し、入館者の数は評価の要件には入っていないということです。

 岩手県は、不適切な行為だとして3月14日付けで指定管理者のグループに改善勧告を出すとともに、今年度の指定管理料を188万円あまり、減額する措置を決めました。

 岩手県は、「県民の信頼を損なう行為でまことに遺憾です。改善策がきちんと実行されるよう指導監督に万全を期します」と話しています。

◇被災地でもぼったくり

東北博報堂は、昨年の12月、岩手県大槌町でも不適切な行為が発覚している。

産経新聞の報道によると、震災で大きな被害を受けた岩手県大槌町は、東北博報堂に対して大震災の記録誌編集事業を委託していた。ところが「納期の7月に内容を確認したところ、被害状況などのデータの羅列にとどまり、震災の悲惨さを伝える記録誌」のレベルには達していなかった。

さらに9月には一部の記述で、県が発行した別の記録誌からの無断コピーも発覚。大槌町は、「東北博報堂(仙台市青葉区)との契約を解除した」のである。クリエーターとしての職能レベルそのものに問題があることが分かったのだ。

記録誌は約250ページで1千部を発行する予定だった。また、そのダイジェスト版は約25ページで8千部を発行する予定だった。見積もり額は、総額で1250万円。

ちなみに大手の自費出版会社で250ページの本を1000部制作して流通させた場合、ゴーストライターの料金を含めても、250万円程度である。博報堂の1250万円が適正価格とは思えない。

◇古いデータの流用問題

さらに最近、メディア黒書が入手した資料によると、通販情報誌の制作でも、博報堂は契約内容に反して、過去のデータを流用していたことが発覚している。次の記事である。

■写真で見る博報堂によるデータの流用(パクリ)① メディア黒書が内部資料を入手

◇博報堂DYと読売広告・三菱自動車

■博報堂DYホールディングスの役員名簿

役員は18名。この中には、読売広告社の中田安則社長も含まれている。また、元最高検察庁刑事部長で、現在、三菱自動車の倫理委員会委員長を務めている松田昇氏の名前もある。三菱自動車は、最近、燃費偽装問題で日産と合併したばかりである。

◇朝日広告の公共広告・6000万円は妥当か?

■黒塗りで公開された朝日広告の公共広告、制作費だけで6000万円は妥当なのか?

2016年05月12日 (木曜日)

沖縄県の地方紙・琉球新報社に対して、8つの新聞販売店が「押し紙」の集団訴訟を提起していることが分かった。

5月5日付けの「ビューポイント」によると、原告は19名。「押し紙」による損害賠償を求めている模様。同紙の全文は、次の通りである。

■販売店への「押し紙」19人が琉球新報を提訴

筆者が知る限り、販売店による集団訴訟は、北國新聞に続いて2件目である。このケースでは、5店が提訴に踏み切ったが、結局、和解で解決した。

沖縄県内での新聞販売店訴訟といえば、1998年に沖縄タイムスの元販売店主・金城初子氏が起こした地位保全裁判がある。訴因は、保証金(新聞販売店を開業する際に本社に預ける)の利子をタイムス社が一方的に切り下げようとして、金城氏が承諾を保留にしたことだった。が、金城氏の訴えは棄却された。

しかし、この事件を通じて、新聞ジャーナリズムの評価が高い沖縄タイムスといえども、販売局の実態は中央紙とあまり変わらないことが判明したのだ。

◇異常に短い商契約の期間

当時、筆者が入手した販売店と新聞社の契約書によると、契約期間は沖縄タイムスが1年で、琉球新報が2年だった。契約期間が短いので、新聞社は販売店をほとんどいつでも改廃できる。販売店の立場が極めて弱い。それゆえに「押し紙」を強制することもたやすい。

当時の状況がいまも続いているのか否かは、今後の取材で調査したい。

ちなみに中央紙の場合、販売店との契約期間は3年から5年である。沖縄2紙の実態が従来通りでれば、中央紙よりも、「押し紙」がしやすい状況が続いていることになる。

◇「押し紙」にも消費税が

筆者が現時点で把握している販売店訴訟に関する情報によると、夏までに少なくともさらに2件の「押し紙」裁判が提起されることになっている。公正取引委員会も「押し紙」問題で重い腰を上げざるを得なくなるだろう。

が、ここに至っても日本新聞協会(会長は読売の白石興二郎氏)は、いまだに「押し紙」は1部もないと主張している。新聞に対する軽減税率の適用を求めるなら、まず、「押し紙」の存在を認め、それを排除しなければならない。

新聞社が軽減税率の適用を求める本当の理由は、「押し紙」にも消費税がかかるからにほかならない。

販売店が弱体化している状況下では、結局、新聞社が販売店への補助金を支出して税負担をせざるを得なくなるからだ。

 

2016年05月11日 (水曜日)

大手広告代理店による業務の実態を示す資料を紹介しよう。

博報堂と通販のアスカコーペレーションの係争を取材する中で、メディア黒書は、アスカコーペレーションから内部資料を入手した。アスカが毎月発行している通販情報誌の制作費、制作内容などに関する資料である。

博報堂はアスカのPR活動を独占的に請け負っていた。しかし、請求内容に疑義が生じて係争になった。昨年、博報堂がアスカに未払金を請求する訴訟を起こしたのに続いて、アスカも近々に博報堂に対して、不正請求などを理由に損害賠償を請求する大型の訴訟を起こす予定。

取材に応じたアスカから入手した資料を精査したところ、通販誌誌『ASKA』の制作過程で過去テータの流用(俗にいうパクリ問題)が行われていたことが分かった。

◇データ転用(パクリ)の実態

具体例として取り上げるのは、通販情報誌『ASKA』(2011年)の11月号と12月号である。両者を比較する中で、博報堂の業務の実態が浮上した。

12月号のページ内訳は次のようになっている。

新規制作ページ   :63ページ (完全に新しいページ)
リライト・リデザイン:52ページ  (2分の1以上を変更)
表紙        :1ページ    (完全に新しいページ)

上記の制作条件からすれば、12月号の各ページは、11月号と比較したとき、少なくとも50%以上の変更点が確認できなければ、契約に違反していることになる。

実際に2つの号を比較してみよう。左が11月号の「第2ページ」で、右が12月号の「第2ページ」である。(図をクリックすると拡大される)

11月号の「2ページ」と12月号の「2ページ」を比較してみると、ほとんど同じであることが分かる。12月号には11月号からのデータの転用が観察できる。しかも、このような転用が確認できるページは、12月号だけに限って検証しても少なくとも15ページを超えている。

◇震災の被災地でもデータの転用が発覚

ちなみに、東北博報堂は昨年、岩手県大槌町から請け負った津波記録誌の編集事業で、「怠慢」などを理由に契約を解除されている。その際、別の記録誌からのデータの流用(パクリ)も発覚している。

また、博報堂エルグは、「低料第3種郵便物の割引制度」(障害者団体の定期刊行物を、格安な郵便料金で送るための優遇制度。)を不正利用した事件を起こして、逮捕者を出している。

これは2008年10月に朝日新聞のスクープによって明らかになった事件で、企業がPR活動などの手段として利用するダイレクトメール(広告の一種)を、障害者団体の定期刊行物と偽って、違法な低価格で発送していたというものだ。

2016年05月10日 (火曜日)

次に紹介(エクセルにリンク)する一覧表は、西日本新聞の販売店主から提供された内部資料である。西日本新聞の佐賀県下における新聞の部数内訳を、販売店ごとに示したものである。

■西日本新聞の「押し紙」を示す内部資料

この内部資料は、西日本新聞社では、「押し紙」政策が行われていることを示している。念のために筆者は、同社の販売局に、「これは貴社の資料か?」と問い合わせてみたが、回答はなかった。

内部資料の提供者によると、この表は次のように読み解く。

1、表の最左の縦列は、佐賀県下の新聞販売店を示している。

2、最上段の列、左から4枠目にある「8/3数」は、新聞販売店が西日本新聞に注文した部数を意味する。たとえば鳥栖中央店では、1,802部を注文したことを意味する。

3、「8/3数」の右隣りの枠にある「8/6数」は、新聞社が実際に搬入した部数を示している。鳥栖中央店のケースでは、2,158部である。

つまり鳥栖中央店は、1802部を注文したにもかかわらず、新聞社は注文部数を超えた2,158部を搬入したことになる。

ちなみに「前年数」も「前月数」も、「8/3数」も同一の数字(鳥栖中央店のケースでは2,158部)になっているの事実から察すると、注文部数が固定化されている可能性が高い。

◇疑いの余地がない独禁法違反

独禁法の新聞特殊指定は次のように「押し紙」の禁止条項を設けている。

3 発行業者が、販売業者に対し、正当かつ合理的な理由がないのに、次の各号のいずれかに該当する行為をすることにより、販売業者に不利益を与えること。

一 販売業者が注文した部数を超えて新聞を供給すること(販売業者からの減紙の申出に応じない方法による場合を含む。)。

二 販売業者に自己の指示する部数を注文させ、当該部数の新聞を供給すること。

◇販売店名を公表した理由

今回、販売店名をあえて公表したのは、販売店名と数字を公表することで、折込広告の水増し行為の防止策になるからだ。クライアントの利益に配慮したものである。

新聞社の「押し紙」にメスが入るのは時間の問題だ。秒読み段階に入っている。と、すれば次のテーマは、折込広告の水増し行為(「折り込め詐欺」)に対する賠償問題になる。

この問題は、新聞社よりもむしろ広告代理店の体質解明が前提になりそうだ。