
総務省の情報公開・個人情報保護審査会は、7日、文部科学省に対して、筆者が文部科学省から入手した契約書(大半が黒塗りにされて開示された)の一部を、開示すべきだとの結論を下した。
答申書の冒頭、審査会は次のように結論づけている。
第1 審査会の結論
別紙に掲げる文書1及び文書2(以下、併せて「本件対象文書」という。)につき、その一部を不開示とした決定については、別表2に掲げる部分を開示すべきである。
◇4カ所について開示が妥当との判断
この事件は、2016年に筆者が文部科学省に対して、2件のプロジェクトの契約書(請求書等を含む)の開示を求めたことに端を発する。2件は、「日本人の海外留学促進事業」と、「学校と地位の新たな協働体制の構築のための実証研究」である。契約相手は、いずれも博報堂である。
文部科学省は、文書の開示には応じたが、その大半を黒く塗りつぶし、明細がまったく分からない状態にしていた。次のPDFがその実物である。読者は後半のひどい実態を、自分の眼で確認してほしい。
審査会が開示するのが妥当と結論づけたのは、次の4箇所ある。
①事業目的を記した部分(11ページ)
②実施経費の枠内の「費目」部分のすべて(37ページ)
③実施経費の枠内の「金額」部分の小計の金額すべて(37ページ)
④小計の「金額」部分に対応した「小計」という文字(37ページ)
②と③は、次の画像に示した矢印「→」の部分である。
◇スポンサーに事業内容を知らせない異常
審議のプロセスについては、順を追って記録されているので、次の答申書(「日本人の海外留学促進事業」)で確認してほしい。
文部科学省の情報開示の方法に対して、審査会が不十分であると判断した点は評価できるが、依然として多くの肝心な情報が隠されたままであることには、かわりがない。たとえば、審査会は事業計画書の内容は、「アイデアの流用や模倣の可能性があることから、特定会社の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある」ので不開示を妥当とした。
しかし、企業活動を国民の知る権利に優先するのはおかしなことである。公共事業のスポンサーは、納税者の国民である。そのスポンサーに内容を開示しないことは、民間企業では絶対にありえない。その異常さを認識すべきだろう。
なお、文部科学省が不開示とした情報の一部が、行政事業レビューシートに記録されているのは興味ぶかい。しかも、それによると極めて不自然な出費、異常としか言えない出費が観察できる。次の記事を参照にしてほしい。

執筆者:山田幹夫(フリーランス取材者。元通信社記者)
読者は『あたらしい憲法のはなし』をご存じだろうか? これは、安倍首相をめぐる疑惑で、いまスポットライトが当たっている文部科学省が保管している憲法の教科書である。皮肉なことに、それが文科省が開設している「情報のひろば」で展示されている。
安倍晋三首相は今年2017年5月、憲法9条に自衛隊の存在を加えて明文化する案を突然提唱した。2020年の施行を目指すという。それを受けて自民党は、今後、具体的な憲法改正案を検討するという。
こうした情況の下で、この教科書は戦後日本の原点ともいうべき憲法について再考するための有用な材料である。
■『あたらしい憲法のはなし』
太平洋戦争後の1947年8月2日に当時の文部省は、同年5月3日に施行された日本国憲法の解説のために新制中学校1年生用社会科の教科書を発行した。
「憲法」「民主主義とは」「国際平和主義」「主権在民主義」「天皇陛下」「戦争の放棄」「基本的人権」「国会」「政党」「内閣」「司法」「財政」「地方自治」「改正」「最高法規」の15章で、日本国憲法の精神や中身をやさしく解説している。
1950年4月に副読本に格下げ、1952年4月から発行されなくなった。
「戦争の放棄」の章で、戦争放棄と書いた大きな釜で軍艦や軍用機を燃やし、その中から電車や船や消防自動車が出てきて、鉄塔や高層建築物が光り輝いている挿絵は有名。
◆「情報のひろば」は平日に常設展示
「文部科学省 情報のひろば」:東京都千代田区霞が関3-2の旧文部省庁舎内。(建物の表側には案内看板はないが、高層の建物の手前にある旧庁舎が目印。)
開館:月曜から金曜の午前10時から午後6時(土曜、日曜、祝日は休館)。
入館料:無料。
問い合わせ:文科省大臣官房総務課広報室事業第2係。

加計学園事件を解明するための鍵を握る国会の衆議院内閣委員会が、今国会では開かれない見通しであることが分かった。疑惑解明は秋の臨時国会まで持ち越されることになる。
複数のメディアが報じているように、内閣府が文部科学省に加計学園の獣医学科開設を早急に進めるように促していたとされる文書が存在する。と、すれば当然、国会の内閣委員会は、管官房長官を出席させて、この問題を徹底的に検証しなければならない。文部科学省よりも、むしろ内閣府の調査の方が肝心なのだ。
ところが今国会では、内閣委員会を開催する予定はないという。それが同委員会の多数派である自民党の方針である。
◇博報堂事件と加計学園事件
今国会における内閣委員会の開催状態は異常だ。委員会は3月に始まり、3月中は順調に開かれていた。ところが4月12日に開催されたあと、延々と休会が続いた。再開されたのは、6月7日だった。実に2ヶ月近く開かれなかったのだ。しかし、7日の委員会が最終回になる見込みだ。
筆者がこのような異常な実態を細かく把握していたのは、内閣府と博報堂の広告取引に関する国家予算の出費についての国会質問を、内閣委員会に所属する共産党議員に依頼していたからである。その前段として筆者は、博報堂事件について筆者が書いた『週刊金曜日』の記事を、自民党を含む内閣委員会の全議員に送付した。博報堂事件についてまじめに考えてもらおうという意図から送付したのである。
ところが肝心の内閣委員会が開かれない。その結果、筆者ははからずしも、内閣委員会の開催状況をチェックするようになったのだ。
周知のように加計学園の問題をメディアが連日のように報じはじめたのは、5月の後半になってからだ。しかし、内閣委員会はそれよりもはるか以前から休会になっている。これは自民党議員が、内閣委員会で博報堂事件や加計学園事件の追及を受けることを警戒していたためである可能性が高い。少なくとも筆者はそんなふうに推測している。
最初は博報堂事件を、次に加計学園事件を警戒して、休会を続けたのだろう。そして最後に申しわけ程度に7日に開き、格好をつけたのだ。
野党が国会審議に応じないことはよくあるが、与党が「数の力」で審議に応じないのはめずらしい。それは議会制民主主義の否定にほかならない。
なお、内閣委員会の秋元司委員長(自民党)の見解は、返答があり次第に紹介する。
【写真】内閣委員会の秋元司委員長

共謀罪の創設に反対し、安倍首相らの証人喚問を求める集会が、8日に東京・永田町の参議院議員会館前で開かれた。主催したのは、「共謀罪創設に反対する百人委員会」などである。筆者が取材した3時から5時の時間帯で、印象に残ったことを3点ほど記録しておきたい。
この集会には、加計学園の地元である今治市からも市民がかけつけた。この人の話によると、今治市民の多くは獣医大学の誘致を歓迎していないとのことだった。住民がアンケート調査をしたところ、6割を超える人々が誘致には反対の意思を示したという。
その理由は、有権者の経済的負担である。ひとりあたりの負担は、14万円程度になるという。
メディアは今治市が獣医大学の招致を歓迎しているかのような報道を続けて来たが、必ずしもそうではないようだ。
◇「特区」と新自由主義
ちなみに「特区」とは、新自由主義を急進的に進めるために政府が指定した自治体のことを言う。加計学園の問題が「特区」で浮上したことにより、新自由主義を押し進めている人々の実態が輪郭をあらわした。
新自由主義というのは、「小さな政府」を作り、それに伴い公共のサービスを民営化し、ビジネスを市場原理に委ねていれば、経済は健全に機能するという理論である。科学的な根拠があるわけではない。主観的な思い付きである。
もともと、資本主義は産業革命の時代に低賃金や長時間労働などさまざまな社会矛盾に遭遇した。そこから社会主義の思想が発展して、実際にロシア革命により社会主義国家が誕生した。そこで資本主義の国々が対抗策として福祉国家を構築する方向性を打ち出したのだ。経済活動を「規制」して、資本主義の「暴走」を止めざるを得なくなったのである。秩序を保った資本主義にしなければ社会主義陣営が勢力を拡張するからだ。
資本主義を修正するこの路線は、対症療法としては正しかっただろう。
しかし、経済の規模が巨大化して、市場を獲得するための自由競争が国境を超えてしまうと、従来の「規制」が企業にとって競争の足枷になってきた。そこで規制を撤廃すると同時に、民営化により福祉や公共サービスを切り捨てたりすることで浮いてくる国家予算を、多国籍企業の支援に回す体制が作られたのである。その典型が小泉構造改革だった。事実、この時代から非正規社員が急激に増えた。
安倍首相は、小泉構造改革の継承者である。
さらに海外派兵の体制を作り、米軍と自衛隊により多国籍企業を政変から防衛する体制も構築されたのである。
「特区」は、こうした新自由主義政策の「実験場」である。その実験を名目にして、安倍首相らが利権に群がった疑惑が出ているのが、加計学園事件なのである。
【参考記事】安保関連法案の報道で何が隠されているのか?左派メディアも伝えない本質とは、多国籍企業の防衛作戦としての海外派兵、前例はラテンアメリカ
◇「中国から資金を貰っている」
もう1点、特に記録しておきたいのは、集会の途中に40名ほどの右翼の人々が現れて、女性宮家創設反対の集会を始めたことである。2つの団体が隣り合わせに街宣活動をするわけだから、演説する声がまじりあって、何を話しているのか分からなくなる。
当然、2つのグループが、お互いに場所を移動するように要求した。あちこちで小競り合いが起こり、警察や公安警察が間に入った。
筆者は右翼の街宣車のすぐ近くにいたので、右翼のリーダーの演説がよく聞こえた。驚くべきことに、共謀罪法案に反対し、安倍首相らの証人尋問を要求して集会を開いている人々が、「中国から資金を貰っている」と繰り返していた。このような発言は、名誉毀損裁判になれば、「事実の摘示」に該当し、発言を繰り返したM氏は、みずからそれを立証しなければならなくなる。
◇社会運動の停滞
このところ社会運動が停滞している。特定秘密保護法に反対する運動では、国会を包囲するほどおびただしいの人々が押し寄せてきたが、共謀罪法案や加計学園の問題では、国会議事堂前もいたって平穏だ。
安倍内閣が強行採決を繰り返してきたために、どんなに抵抗しても、最後は「数の力」で押し切られるということを、大半の人々が感じているからだろう。
負けるのなら最初から戦わないという絶望感の支配である。
また、共謀罪法案そのものの中身が知らされていないこともひとつの原因である。メディアにも重大な責任がある。

加計学園の事件を機として関心を集めているのが内閣府と文部科学省の実態である。これら2つの腐敗した組織は、はからずも広告代理店・博報堂との取り引きにおいても不透明な実態が明らかになっている。
このうち内閣府については、既報したようにインボイスナンバーを外して会計監査・システム監査を回避した疑惑がある。総額64億円の請求書の存在が明らかになり、メディアもある程度まで報じた。これに対して文部科学省の実態はあまり知られていない。日本の教育の司令塔であるこの組織の不透明な実態を紹介しよう。
結論を先に言えば、たとえば文部科学省が2015年度に博報堂に発注した「日本人の海外留学促進事業」の実態である。たった9ページのウエブサイト制作費として、文部科学省は博報堂に対して2100万円もの資金を支払っていた。
さらに2014年度にも、同じプロジェクトで、1500万円のウエブサイトを博報堂へ、170万円のウエブサイトを博報堂プロダクツへ、それに110万円のウエブサイトを(株)パズルに発注した。
文部科学省が2年間で支出したウエブサイトの制作費は、3880万円にもなる。通常、ウエブサイトは、少なくとも5年ぐらいは使えるはずだが、発注を繰り返しているのだ。それに制作費も異常な高額だ。法人用の価格でも300万円ぐらいが限度である。
◇重大事実の裏付け
さて、筆者が上記の事実を突き止めた経緯を説明しおこう。筆者は2016年に、情報公開制度を利用して、「日本人の海外留学促進事業」の契約書、請求書、成果物を入手した。
これらの書面のうち文部科学省は請求書の大部分を黒塗りにして開示してきた。次の資料がその実物である。
文部科学省が開示した資料では、支払い明細が分からない。そこで筆者は、行政事業レビューシートを調べた。この資料には、前年の国家予算の支出実績がかなり詳しく記録されている。従って2016年のものを調べれば、2015年度の支出実績が分かり、2015年のものを調べれば、2014年度の支払い実績が判明する。
次に示すのが裏付けである。赤字の部分に注目してほしい。
■2016年度の行政事業レビューシート
■2015年度の行政事業レビューシート
ちなみに印刷・発送費として、2700万円(2015年度)、2900万円(2014年度)という数字が記録されているが、一体、何を印刷して、誰の発送したのかも調査する必要があるだろう。
◇文科省でもインボイスナンバーを外した請求書
さらに請求書には、情報の隠蔽という問題だけではなく、次の重大な疑惑がある。請求書を注意深く見ればすぐに分かるが、インボイスナンバー(請求書の番号)が外してあるのだ。インボイスナンバーを外すことがなぜ問題なのか?
結論を先に言えば、会計監査を逃れて、裏金づくりをする温床になるからだ。
これについては、メディア黒書の記事から、次の記述を引用しておこう。
【故意にインボイスナンバーを外す意味】
インボイスナンバーとは、請求書に付番されている書類番号である。この番号は、書面の整理番号である。日本国民をマイナンバーでコンピューター管理するように、請求書はインボイスナンバーでコンピューター管理される。そして通常は、見積書や納品書のナンバーとひも付きになっている。
コンピューターと連動した会計システムを導入している企業は、インボイスナンバーを付番することで、合理的に経理作業を進める。会計監査とシステム監査も合理的におこなう。もちろん博報堂もコンピューターと連動した会計システムを導入している。
したがってあえて正常な商取引でインボイスナンバーを外した合理的な理由は存在しない。博報堂は、社内では付番していると説明しているが、なぜ、社内では付番して、社外向けには、ナンバーを外した別の請求書を送付しているのか理由は分からない。
しかし、法的な観点から見ると、インボイスナンバーを外した請求書の発行が違法行為にあたるわけではない。エクセルやワードの請求書も合法である。請求書の書式が自社のロゴ入りの公式のものでなければならないという法律もない。この点について、取材した税理士は次のように話す。
「違法行為にはあたらないことを熟知した上で、こうした請求書を発行しているのでしょう」
法の抜け道があるというのだ。
◇加計学園の問題よりも重大
繰り返しになるが、コンピューターによる会計システムを導入している企業がインボイスナンバーを故意に外した事実は、会計監査を逃れた可能性を示唆するのだ。裏金作りの疑惑にもなるのだ。
ちなみに内閣府の場合、 インボイスナンバーを外した請求書が新聞広告の分だけで4年間に約64億円にもなっている。まったく同じ疑惑が文部科学省にもあるのだ。ある意味では、加計学園の問題よりも重大なのだ。
内閣府と文部科学省は、加計学園の件で安倍首相の隠蔽に荷担しただけではない。他にも不透明な実態がある。今後、このような体質を改めないのであれば、博報堂だけではく、PR事業に関連した他社についても、調査する必要があるだろ。
【写真】松野 博一文部科学大臣

本日(7日)発売の『紙の爆弾』に筆者(黒薮)が寄稿している。タイトルは「首相広報紙となった新聞、『読売を読め』発言の裏側』。
日本の新聞が相対的に政府広報に近くなる傾向がある背景を、記者個人の私的な問題(職能や意欲)とは別の観点から分析したレポートである。新聞のビジネスモデルそのものの中に客観的な原因があることを指摘している。
このレポートで特に強調した点は、広告代理店の負の役割である。メディア黒書で紹介してきたように、政府広報の場合、内閣府と新聞社の間に
広告代理店を介在させることで、莫大な金額を新聞社へ送り込むシステムが構築されている。この実態が徐々に明らかになってきた。
この方法で2012年度から2016年度までの4年間だけで、約64億円の国家予算が、博報堂ルートで新聞社に流れ込んでいる。しかも、この64億円の請求書は、インボイスナンバーも日付も外してあり、コンピューターと連動した会計システムとは別の次元で経理処理されてきた疑惑があるのだ。当然、会計監査やシステム監査を逃れてきた可能性もある。
当然、これについては会計検査院も調査すると予測される。現在、筆者は審査要を申し立ている。
【参考記事】内閣府だけで4年間で約64億円、インボイスナンバーを外した博報堂の請求書

国際的な作家・ジャーナリストの組織である「国際ペン」が、共謀罪に反対する声明を出した。
国際ペンは1921年に設立され、日本ペンクラブも加盟している。
安倍政権が成立を狙っている共謀罪法案は、海外からも厳しい批判を受けており、東京オリンピックのボイコットにも発展しかねない。ヒトラーによるベルリン・オリンピックの先例にならい、オリンピックの政治利用が顕著になっている。
さらにオリンピックの選手村用地が東京都から約1200億円の値引きで払い下げられる事件も起きている。まさに政治利用・利権オリンピックに変質しようとしている。
声明の全文は次の通りである。
国際ペンは、いわゆる「共謀罪」という法律を制定しようという日本政府の意図を厳しい目で注視している。 同法が成立すれば、日本における表現の自由とプライバシーの権利を脅かすものとなるであろう。私たちは、日本国民の基本的な自由を深く侵害することとなる立法に反対するよう、国会に対し強く求める。
2017年6月5日
国際ペン会長 ジェニファー・クレメント
【参考記事】森友・加計よりも深刻なオリンピック選手村用地の払い下げ事件、1200億円の割引、報じられない背景は?
【写真】国際ペン会長のジェニファー・クレメント氏

安倍内閣が共謀罪法案を成立させる根拠としているのが、TOC条約(国際組織犯罪防止条約)の批准である。オリンピックを前にテロを防止するためには、共謀罪法案の成立が不可欠だとしている。
ところが東京新聞が、国連の「立法ガイド」の執筆者である刑事司法学者・ニコス・パッサス氏(58)にこの点についてインタビューしたところ、「(TOC)条約はテロ防止を目的としたものではない」と明言したという。
「(TOC)条約はテロ防止を目的としたものではない」という解釈は、日本でも共謀罪法案に反対している人々の間では周知となっている。TOCの目的は、マフィアなどによる国際的な金融犯罪の取り締まりである。
しかし、国連の「立法ガイド」の執筆者が、この点に言及するとより説得力がある。同氏は、「条約はプライバシーの侵害につながるような捜査手法の導入を求めていない」とも述べている。
記事のアクセス先は次の通りである。
◇NHKによる「印象操作」
このところテロを伝えるテレビ・ニュースが急激に増えている。テロが多発しているのは事実だから、報道すること自体は当然だが、「テロ防止=共謀罪法案の必要」というゆがんだ世論が形成されている。NHKなどは、おそらく意図的にそれを狙っているようだが、ニコス・パッサス氏が言うようにテロとTOCとはまったく関係がないわけだから、正確な報道ではない。事実を解説すべきだろう。それがジャーナリズムの義務である。
テロが起きている国の多くは、海外派兵の体制を持ち、実際に空爆などに参加している国だ。軍事力を背景にグローバリゼーションを進めている国が狙われているのである。

環境省が国家予算を使って博報堂による「取材対応演習」のレクチャーを受けていたことが、情報公開請求で入手した資料で分かった。実施は2016年度。定員は30名。演習料は、36万円だった。推定になるが博報堂の講師の時給は18万円程度。
「取材対応演習」というのは、メディア対策のひとつである。最近、官僚たちが都合の悪い質問に対して、決まり文句のように、「回答しません」と返答するようになっているが、これもメディア対策のテクニックのひとつである。
ちなみにこの演習の契約書は開示されなかった。請求書には、インボイスナンバーが表示されていない。料金の振り込み先の銀行も黒塗りになっている。
◇「電話取材対応」
また、開示された資料の中に「電話取材対応」と呼ばれる演習の仕様書も含まれていた。これは文部科学省の職員を対象にしたものである。
この仕様書によると、演習の実地日時は、2017年1月20日の15時から16時30分までの90分。料金は不明だ。筆者の推測になるが、環境省の「取材対応演習」と同様に36万円程度ではないかと思う。
一般企業の社員がメディア対策でこの種の演習を受けるのは理解できるが、公務員がメディア対策を身に付けるのは、「役所」の透明性を保つという観点からすれば疑問が残る。しかも、それが税金で行われているのだ。

共謀罪法案の成立が秒読みの段階に入っている。なぜ、これが危険な法案なのか、筆者なりに指摘してみよう。
内心の自由を侵害するとか、テロ集団の定義があいまいでどうにでも解釈できるとか、監視社会になるとか、共謀罪に関連してさまざまな問題点が指摘されているが、核心はひとつである。従来の刑法の法理が完全に崩壊することである。その他の問題は、枝葉末節にすぎない。
日本の刑法は、例外はあるものの、犯罪を実行した段階で処罰する基本原則がある。犯罪の段階には、時系列でいえば、「共謀」「予備」「未遂」「既逐(実行)」の4つがある。そして、現在の刑法で処罰が可能なのは、「既逐(実行)」の段階である。
たとえば、知人と「あいつを記事で批判してやろう」と話し合った(共謀)段階では、名誉毀損罪で処罰することはできない。それが基本原則になっているが、殺人など重大な犯罪に関しては、例外的に「予備(準備)」の段階(たとえば武器の購入)で処罰できる。しかし、このような例外に属する犯罪は、極めて限定されている。それが正常なかたちなのだ。
ところが自民党と公明党が成立を目指している法案では、名誉毀損、著作権違反など、277もの犯罪について、「共謀」の段階で取り締まりが可能になるのである。これでは「既逐(実行)」の段階で処罰する現在の刑法の基本原則が完全に崩壊してしまう。
こんな法体系を持つ国は世界中どこにも存在しない。国連が日本の共謀罪法案を危惧しているゆえにほかならない。
【参考記事】国連プライバシー権に関する特別報告者 ・ジョセフ・ケナタッチ氏が共謀罪法案に懸念、安倍首相に書簡を送付
共謀罪法案が成立した場合、警察は容疑者が「共謀」した事実を立証する必要に迫られるわけだから、日本はスパイ国家へ向かわざるを得なくなる。恐ろしい事に、「密告者」は罪が減じられるというのだから、異常としか言いようがない。
東京オリンピックの政治利用もここまで極端になれば、ボイコットの声もあがりかねない。

森友学園や加計学園の事件は、メディアで盛んに報じられるようになったが、なぜかほとんど報じられていないのが、晴海のオリンピック選手村用地の払い下げ事件である。この事件は、2016年5月に東京都が地価相場の9割引きにあたる129億6千万円で、公有地を払い下げた事件である。
約1200億円の値引きであるから、森友学園や加計学園の比ではない。豊洲問題よりも深刻だ。しかも、オリンピック関連であるから、東京都が払い下げを単独で決めたとは思えない。当然、オリンピックに係わっている人々も調査しなければならない。
【参考記事】森友学園、加計学園、豊洲よりも重大な「晴海の五輪選手村用地」の払い下げ問題、約1200億円の値引き
◇しんぶん赤旗と日刊ゲンダイ
この事件の報道を調べてみると、筆者の調査に誤りがなければ、報道したのは、次の2つのメディアだけである。
■しんぶん赤旗
東京五輪 選手村受託会社に天下り、都幹部OB12人、不動産7社に時価の1割で 都有地を売却
■日刊ゲンダイ
小池都政にも“森友疑惑” 五輪選手村用地を1200億円値引き
このうち赤旗は、森友学園と加計学園の事件も最初に報道している。最も実力のあるジャーナリズムといえるだろう。赤旗の信頼性が高いから、自然に情報が集まるのだろう。
この問題をマスコミが取りあげない背景には、大手の広告主である不動産会社が複数事件に絡んでいる事情があるのかも知れない。疑惑の規模という観点からいえば、1200億円の割引であるから、森本疑惑や加計疑惑とは比較にならない。
まもなく東京都議選が始まるが、各政党はこの問題を争点にすべきだろう。
【参考記事】五輪招致委の竹田恆和会長が東京都へ約27億円の補助金を請求、三幸商事は「ピンバッジ」で約3200万円を請求、懸念されるスポーツの政治利用

博報堂から内閣府や中央省庁へ送付された請求書にインボイスナンバー(書類の番号)がない問題の続報である。今回は、2015年度の環境省と文部科学省のケースを紹介しよう。次に示すのは、請求書と請求金額の一覧である。
なお、インボイスナンバーを外した請求書により、どのような不正が可能になるのかについては、次の説明を参照にしてほしい。
【故意にインボイスナンバーを外す意味】
インボイスナンバーとは、請求書に付番されている書類番号である。この番号は、書面の整理番号である。日本国民をマイナンバーでコンピューター管理するように、請求書はインボイスナンバーでコンピューター管理される。そして通常は、見積書や納品書のナンバーとひも付きになっている。
コンピューターと連動した会計システムを導入している企業は、インボイスナンバーを付番することで、合理的に経理作業を進める。会計監査とシステム監査も合理的におこなう。もちろん博報堂もコンピューターと連動した会計システムを導入している。
したがってあえて正常な商取引でインボイスナンバーを外した合理的な理由は存在しない。博報堂は、社内では付番していると説明しているが、なぜ、社内では付番して、社外向けには、ナンバーを外した別の請求書を送付しているのか理由は分からない。
しかし、法的な観点から見ると、インボイスナンバーを外した請求書の発行が違法行為にあたるわけではない。エクセルやワードの請求書も合法である。請求書の書式が自社のロゴ入りの公式のものでなければならないという法律もない。この点について、取材した税理士は次のように話す。
「違法行為にはあたらないことを熟知した上で、こうした請求書を発行しているのでしょう」
法の抜け道があるというのだ。
◇地方自治体向けの請求書は正規のもの
インボイスナンバーを外した請求書が多数存在する事実について、ある元国家公務員を取材したところ、次のようなコメントがあった。
「省庁の側から指示されている可能性もあります。こうした請求書で裏金を作っているとすれば、省庁が主導しているのかも知れません。背任です。博報堂とすれば、わざわざインボイスナンバーを外す理由がないわけです。省庁の指示に従ってやっているのであれば当然、裏金作りが疑われます」
筆者は、博報堂が地方自治体に対して発行した請求書についても、広範囲に調査した。しかし、正規の請求書が使われており、中央省庁でみられるようなインボイスナンバーを外した請求書はまったく発見できなかった。請求額が適正かどうかという別の問題はあるが、少なくとも請求書そのものは正規のものだった。
今後、さらに調査の範囲を拡大するが、おそらく結果は同じだと思う。疑惑があるのは中央省庁である。
◇民主党の野田政権の時代にスタート
既報したようにインボイスナンバーを外した請求書は、政府の新聞広告だけで4年間で約64億円にもなる。民主党の野田政権の時代にスタートした「政府広報ブランドコンセプトに基づく個別広報テーマの広報実施業務等」と呼ばれるプロジェクトの請求書で、安倍政権下で本格化した。2016年には、内閣府から、内閣審議官・阪本和道氏が博報堂へ天下りしている。
このインボイスナンバーを外した請求書の疑惑は、ある意味では森友学園や加計学園の問題よりも重大だ。国税局は、調査すべきだろう。
真相を解明する必要がある。




