1. 内閣府と中央省庁、それに博報堂の裏金づくり疑惑をシミュレーションする、毎日新聞社のケースと類似

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2017年07月26日 (水曜日)

内閣府と中央省庁、それに博報堂の裏金づくり疑惑をシミュレーションする、毎日新聞社のケースと類似

裏金づくりは、まれなことなのだろうか。筆者は、水面下に隠れているだけでかなり広く、大手を振って行われていると見ている。特に珍しいことはない。

メディア黒書で報じてきたように、大手広告代理店・博報堂と内閣府・中央省庁の間の取引で発行された請求書には、インボイスナンバーが外してあるものが含まれている。こうした請求書の額面総計は次のようになる。

内閣府:64億円(2012年度~2015年度)
防衛省:(陸上自衛隊):約9億円(2008年~2015年度)
文部科学省:約9000万円(2015年度)
復興庁:2000万円(2015年度)
農林水産省:約300万円(2015年度)
環境省:1000万円(2015年度)

メディア黒書で既に公表している数字で、これを見た読者から次のような質問が寄せられた。それは、これらの金額がすべて裏金になっているのかという質問である。結論を先に言えば、裏金になっている可能性があるのは全額ではなく、一部である。

裏金づくりの構図をシュミレーションで説明する前に、実際に裏金工作の存在が確定したある例を紹介しよう。裏金づくりの構図を考える参考になるだろう。

◇毎日新聞不正経理事件

『毎日新聞労働組合五十年史』(毎日労組編)によると、裏金づくり事件は、1986年に毎日新聞大阪本社で発覚した。それによると1985年に、同社の販売局は、総額2億9480万4000円の補助金の架空請求書(黒薮注:架空の請求主は新聞販売店と思われる)を作成し、このうちの1億554万4000円を販売店に実際に支払い、1億8594万円を裏金にしたというものである。念のために原文を引用しておこう。

その調査報告書によれば、裏金をつくる方法と金額は次の通りである。

通知不要補助金制度を利用し、架空請求で裏金をつくった。60年度は2億9480万4000円、うち店に支給1億554万4000円、裏金1億8594万円。

文中にある「その調査報告書」がどの報告書を意味するのかは不明だが、筆者が入手した報告書は次のように述べている。

S52年秋から販売第1部(当時 武石部長)では、村上・松井両デスクの提案で、新聞販売手数料を部当たり20円カットした。第2部、第3部では行わず、全社的に行ってもいない。これは当時の第1部の部数(約90万~95万)からみて、月額約1900万円という莫大な金額となる。これを村上個人名義で本社周辺の約10の銀行に預金した。S55年5月の値上げ時まででも約30か月となり、5億7000万円(1900×30カ月)。これを自由に使っていたが、月額1000万円×30カ月=3億円位は浮いていた筈である。

裏付け資料

簡単に手口を説明しよう。新聞社は通常、販売店に対して補助金を支給する。補助金の中には、新聞1部につき●●円という形式を取るものがある。この制度を利用して、補助金を1部につき20円カットして、それを「本社周辺の約10の銀行に預金」して裏金をプールしたのだ。

従って販売店サイドは、自分たちに支払われている補助金の一部が裏金として抜かれていたことなどは知らなかった。この裏金工作は、請求額が一部を銀行の別口座にプールするというものだった。表向きは、請求額の全額が支出されているが、そこから裏金を抜き取る方法だった。

ちなみにこの報告書には、裏金を何に使ったまでが詳細に書かれている。飲み食いや、新聞拡張団の接待などに使っていたのである。

◇2種類の請求書の差額が裏金の可能性

この事件の構図を参考にして、博報堂事件の構図を推測してみよう。もちろんシミュレーションであるから、真相は分からない。官僚は、絶対に自分達の非を認めないだろう。そういう人種なのだ。しかし、問題になっている金が国家予算であるわけだから、想定される構図は示しておくべきだろう。

なお、なぜインボイスナンバーをあえて外したのかという問題については、メディア黒書で繰り返し伝えてきたが、再度、その説明部分を引用しておこう。

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  通常、企業が発行する請求書には、インボイスナンバーを付番することで、コンピュータと連動した会計処理を可能にしている。手動で処理していると大変な労力を要すからだ。会計処理を迅速に進め、しかも不正の防止にも効力がある。

コンピュータと連動したこの会計処理の原理は、クレジットカードのシステムを思い浮かべると分かりやすい。クレジットカードの番号が分からなければ、コンピュータは作動しない。従ってクレジットカードにナンバーの付番は不可欠である。

現在の会計システムも同じ原理で作動している。もちろん、インボイスナンバーがなくても、処理する方法はあるが、それは合理性の障害になるので、なるべく避けるのが一般原則である。従って正常な商取引では、あえてインボイスナンバーを付番しない合理的な説明はつかない。

博報堂の請求書から、インボイスナンバーが外してある事実は、これらの請求書が正規の会計システムとは別のところで、会計処理されている可能性を示唆している。もし、そうであれば会計監査もシステム監査も受けていないことになる。つまり裏金になっている疑惑があるのだ。

筆者は防衛省に対して、インボイスナンバーを外している理由を問い合わせたことがあるが、「答えません」という回答が返ってきた。

一方、博報堂の監査法人である「あずさ監査法人」は、取材を拒否している。

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請求金額が博報堂の口座に振り込まれていることはまず間違いない。が、問題は次に行う経理処理である。結論を先にいえば、次に博報堂はインボイスナンバーを付番した別の請求書を作成していたのだ。これについては、筆者の取材に対して博報堂も、4月28日に認めている。書面で次のように述べている。

すべての請求業務に社内では請求ナンバーを付与しており、売掛金の不明入金や債権トラブル等は発生していません。

つまり府省庁に対して発行したインボイスナンバーを外した請求書とは別に、インボイスナンバーを付番した別の請求書を作っていたというのである。

なぜ、インボイスナンバーを付番する必要があるのだろうか。答は簡単で、インボイスナンバーが付番されていなければ、会計監査・システム監査が受けられないからだ。コンピュータ・システムと連動した現在の会計システムの下では、インボイスナンバーなしでは経理処理できないのだ。

と、すればなぜ、博報堂は府省庁へ送付する請求書にはインボイスナンバーを付番しなかったのだろうか。筆者は、その理由について、次のように考えている。すなわち府省庁に送付した請求書の額面から、裏金としてカットした額を、社内で作成する請求書に記入したからではないか。こうして裏金分をプールしたうえで、システム監査・会計監査を受けている可能性があるのだ。

繰り返しになるが、これはあくまでひとつのシュミレーションである。インボイスナンバーを故意に外している事実から推測して、可能性が高いシュミレーションである。ある意味では、古典的な手口なのだ。

◇会計検査員に調査申し立て

現在、筆者はこの問題について会計検査院に調査を申し立てている。筆者は調査が終わるまで、各省庁は、博報堂に対して電通と同様に入札禁止の処置を取るべきだと思う。あるいは会計検査院は調査を急ぐべきだろう。

■会計検査院への調査申立書

■陳述書 

新聞各社に対しては、博報堂から受け取った新聞広告費の明細を明らかにするようにお願いしたが、朝日新聞と東京新聞から、応じられない旨の回答があっただけで、他社からは問い合わせに対する回答すらもなかった。

なお、博報堂には内閣府や内閣官房から審議官らが天下りしている。