2015年02月20日 (金曜日)

『秘密保護法』(集英社新書)、共謀罪・盗聴法との関係②

『秘密保護法』の第2章は、足立昌勝・関東大学名誉教授の執筆である。足立氏は、秘密保護法に連動して共謀罪と盗聴法が果たす負の役割についても、認識する必要性を訴えている。
共謀罪について足立氏は、次のように言う。

人が殺人をしようとした場合、計画から始まり、準備し、実行し、結果を発生させます。計画を除いたそれらは、予備・未遂・即遂という犯罪にあたりますが、それぞれは個別の犯罪というより一連の動きであり、一つのものとしてとらえたうえで判断を下すというのが常識的な解釈でした。

ところが共謀罪が適用されると、「犯罪の実行行為がなくても2人以上で話し合うなどすると処罰される」ことになる。

たとえば原発による土壌汚染についてのデータが特定秘密に指定されたと仮定する。しかし、土壌汚染は住民の生命に直接かかわる問題なので、データの入手が必要と判断したジャーナリストAが、雑誌の編集者Bにこのデータを入手する方法について相談を持ちかけたとする。

この時点で、2人の会話が警察に傍受されていれば、共謀の証拠となり、2人に対して「共謀罪」が適用されてしまう。傍受(盗聴)を警察が合法的に実行するためには、盗聴を合法化する法律が必要になる。特定秘密保護法と共謀罪、それに盗聴法が整合性をもった3点セットになっているゆえんである。

さらに次のような事情もある。
周知のように特定秘密保護法を運用するためには、公務員など情報を管理する立場の人々が、管理者としての適正があるか否かを「審査」しなければならない。たとえば防衛省にスパイが潜り込んでいれば、防衛秘密が外部へもれかねないからだ。

そこで情報管理を担当する人々の「適正検査」が行われる。これを担当するのは、公安警察だと言われている。

具体的にどのような方法で「適正検査」を実施するのか?。結論を先に言えば、それは身元調査である。監視カメラなどを使った個人情報の収集、スパイを使った聞き込み、さらには盗聴である。実際、特定秘密保護法と連動して、盗聴法も改悪され、その運用範囲が大幅に広がっている。

続きを読む »

2015年02月19日 (木曜日)

『秘密保護法』(集英社新書)、逮捕理由が知らされない特定秘密保護法下の暗黒裁判①

『特定秘密保護法』(集英社新書、宇都宮健児、堀敏明、足立昌勝、林克明著)の第1章(堀敏明弁護士の執筆)に、特定秘密保護法を根拠に逮捕された場合の裁判についての記述がある。

周知のように特定秘密保護法の秘密情報は、次に示す19の行政機関の長によって指定される。

①国家安全保障会議 ②内閣官房 ③内閣府 ④国家公安委員会 ⑤金融庁 ⑥総務省⑦消防庁 ⑧法務省 ⑨公安審査委員会 ⑩公安調査庁 ⑪外務省 ⑫財務省 ⑬厚生労働省⑭経済産業省 ⑮資源エネルギー庁 ⑯海上保安庁 ⑰原子力規制委員会 ⑱防衛省 ⑲警察庁

もともとこの法律は、軍事大国化の下で、必然的に不可欠になる米軍と自衛隊の共同作戦の際に生じる秘密事項を保持する法的根拠を得るために打ち出された。しかし、いざ蓋をあけてみると、秘密指定の権限をもつ行政機関が19省庁に広がり、しかも、拡大解釈で国に不都合な情報のほとんどが秘密指定できるようになっている。たとえば、原発に関する情報・・・・

しかも、何が特定秘密情報に指定されているのかは公表されない。秘密である。と、なれば当然、特定秘密保護法の容疑で逮捕された場合、問題となるのは、警察に拘束された者に対して、どのような特定秘密情報が原因で逮捕されたかを伝えられないことだ。かくて逮捕状を示された瞬間、

「えっ、どうしてわたしが」

と、自問することになる。

通常の刑事裁判のプロセスについて堀弁護士は、次のように述べている。

「刑事裁判の出発的は、検察官作成の起訴状です(刑事訴訟法256条)。起訴状には、被告人の氏名など被告人を特定する事項、公訴事実(検察官が起訴した犯罪事実)、罪名だけを書くことになっています。また、公訴事実については『できる限り日時、場所及び方法を以て罪となるべき事実を特定してこれをしなければならない』として、検察官にその証明すべき犯罪事実を明示し、被告人に十分な防御活動ができるよう争点の明確化を求めています。」

ところが特定秘密保護法を根拠とした裁判では、検察がどのような公訴事実を問題にしているのかを、逮捕された本人はもとより、弁護士も、第3者も知ることができない。一方、裁判官は、次のような対処を求められる。

「インカメラ審理(裁判官だけが証拠を閲覧できる)の導入も検討されているようですが、この方法では、裁判官が特定秘密に該当すると判断した場合には、その情報が被告人や弁護人に開示されることはありません」

続きを読む »

2015年02月17日 (火曜日)

「身体の細胞は微弱な電気で動く」、電磁波に毒性がある理由、特定秘密保護法と基地局とスパイ活動

携帯電話やスマートフォン、それにワイヤレスPCの普及が進むにつれて、無線通信に使われる電磁波の危険性が指摘されるようになった。しかし、なぜ電磁波が危険なのかを知らない人が大半を占める。

多くの人々が理解していないこの問いに反応するかのように、『THE BIG ISSUE  JAPAN 142』号で、北里研究所病院の宮田幹生名誉教授が次のように明快な答えを述べている。

 身体の細胞は電気で、しかもごく微弱なもので動いているんですね。だから、電磁波が身体に影響しないわけがないんです。

 電磁波は身体を酸化させるんですね。ですから酸化防止装置の少ない精子は、電磁波により死んでしまうことがわかっています。また、神経を変性させ、認知症、筋萎縮性測索硬化症などになるとの報告もあります。

身体の細胞が微弱な電気で制御されていることを知っていれば、電磁波が人体に影響を及ぼす原理は、小学生でも理解できる。

確かに人体には外界からの刺激に対して防御作用が備わっているが、それにもかかわらず、たとえば携帯電話の基地局の近くに住んでいる人が、1日24時間、365日、電磁波(マイクロ波)に被曝した場合、1年後、あるいは5年後、さらには10年後といった長期被曝の後に、防御の限界に達し、何らかの障害を背負うことになりかねない。

事実、携帯基地局の周辺で癌の発生率が高いことは、海外で行われた複数の疫学調査で明らかになっている。次に示すのは、ブラジルのミナス・メソディスト大学が行った疫学調査の例である。すでにMEDIA KOKUSYOで紹介したが、再録しておこう。

結論を先に言えば、基地局から半径500メートルの円周内で、癌のリスクが高くなることが分かった。1万人あたりの癌による死亡数と、基地局からの距離は、次のようになっている。明らかな関連が観察できる。

距離 100mまで:43.42人
距離 200 mまで:40.22 人
距離 300 mまで:37.12 人
距離 400 mまで:35.80 人
距離 500 mまで:34.76 人
距離 600 mまで:33.83 人
距離 700 mまで:33.80 人
距離 800 mまで:33.49 人
距離 900 mまで:33.21人
距離 1000mまで: 32.78人
全市   :32.12 人

 参考: 携帯基地局から200メートル以内、発癌リスクが極めて高い、ブラジルの調査でも判明、日本では秘密保護法の施行で情報ブロックも

続きを読む »

2015年02月16日 (月曜日)

だれが後藤健二氏をイスラム国へ送り込んだのか、調査の前に立ちはだかる特定秘密保護法の壁

イスラム国報道でメディアの自主規制が露骨になっている。それが高じて、タブーになった領域もある。その典型例は、後藤健二氏と湯川遥菜氏をめぐる事件の背景である。真実は何か?

両氏が巻き込まれたテロ行為に対する批判と追悼とは別に、どのような経緯で事件に巻き込まれたのか、事実を明らかにしなければならないが、多くのメディアがこの作業に尻込みしている。

その背景に最高罰・禁固10年の特定秘密保護法の存在があるのではないか?同法は、基本的には軍事立法であるから、軍事に関連する情報の大半は特定秘密に指定されている可能性が高い。したがって日本政府が「人道支援」を行った紛争地帯で起きた誘拐・殺人事件を検証すると、日本政府や有志連合との接点が浮上してくる可能性がある。

まして湯川氏の場合は、(株)民間軍事会社の設立者である。単なる戦争マニアではない。同社の顧問には、自民党の元茨城県議が就任しているありさまだ。湯川氏と元航空幕僚長・田母神俊雄氏の懇意な関係を示す写真も多数存在する。

 参考:湯川氏と田母神氏の写真

ちなみに安部内閣は、昨年の4月に閣議決定により、武器輸出を原則禁止から、条件付きで認めることを取り決めた。こうした軍事大国化の流れの中で、民間企業が海外の紛争地帯で、戦争ビジネスを展開できる温床ができあがったのである。

したがって湯川氏に関する真実に迫ると、特定秘密保護法に抵触する可能性が出てくる。メディアが報道を自粛して、湯川氏を単なるテロの被害者としてしか報じないゆえんではないか。

続きを読む »

2015年02月13日 (金曜日)

外務省からパスポートを没収されたカメラマンが外国特派員協会で会見、没収事件と特定秘密保護法の接点が浮上

昔、小学校の教員に、「学習塾に自分の生徒を奪われて屈辱を感じませんか」と尋ねたことがある。教員は、「特に感じません」と答えた。

外務省にパスポートを取り上げられ、シリア取材を中止せざるを得なくなったカメラマン・杉本祐一氏が、外国特派員協会で、この事件についての記者会見を開いたことを知ったとき、わたしはかつて教員が呟いた「特に(屈辱を)感じません」という言葉を思い出した。

このところ民主主義の運命にかかわるような重大事件についての記者会見に限って、日本の新聞・テレビが牛耳る記者クラブではなくて、外国特派員協会で行われるようになった。それが慣行化した。これは、「日本の新聞・テレビはダメ」という共通認識がすっかり定着した証にほかならない。

最近の例をあげると、イスラム国で殺された後藤健二氏の母親・石堂順子氏の会見。最高裁事務総局の腐敗を内部告発した元裁判官・瀬木比呂志氏の会見。原発フィクサーからスラップを仕掛けられた社会新報編集部の田中稔氏・・・

重大問題は、外国特派員協会が記者会見を主催するという奇妙な現象が、すでに定着している。

当然、「日本の新聞人とテレビ人は、第1級のニュースソースを海外のメディアにさらわれて屈辱を感じないのか?」という素朴な疑問が湧いてくる。全員ではないにしろ、新聞・テレビで働いている人は、ジャーナリストではなく、ニュース価値を判断できない情報処理係である可能性が高い。

続きを読む »

2015年02月12日 (木曜日)

白鵬の審判団批判とスポーツの政治利用、大衆をターゲットにしたメディアによる世論誘導

メディアを利用した洗脳は、編集長に洗脳しようという意図がなくても、大規模に進行することがある。

たとえば、新聞や雑誌、あるいはウエブサイトのスポーツ報道で「頑張れ、ニッポン!」を繰り返していると、国民全体が知らない間に愛国心に染まっていく。テニス・プレーヤーの錦織圭の活躍を繰り返し報道していると、日本人の「優位性」を感じる層が増えていく。

スポーツの政治利用は古くから行われてきた。その中心的な役割を担っているのが、メディアであるが、記事を執筆・編集する側は、自分たちのスポーツ報道が国民にどのような負の影響を及ぼしているのかを自覚していないことが多い。

去る1月25日に、横綱・白鵬が33回目の優勝を果たした。その翌、記者会見の場で白鵬は、稀勢の里との対戦をふり返り、審判団を批判した。それが波紋を広げた。審判団批判はふさわしくないという趣旨の記事が次々と掲載されたのだ。白鵬をとがめる故大鵬婦人のコメントまで紹介された。

直接に白鵬をバッシングしていなくても、記事の行間から、「審判団批判は許さぬ」と言わんばかりのトーンが伝わってくる。

この「事件」に関する記事を検索するとおびただしい数になる。「事件」から2週間が過ぎても、スポーツ紙はいまだに白鵬批判を続けている。

当初は、朝日、読売、毎日、産経といった中央紙もこの「事件」を取り上げていた。次に示すのは、そのほんの一部である。いずれも電子版で、記事のタイトルと日付を抜書きしてみた。

「唐突」だった横綱白鵬の審判部批判なぜ…言葉の影響力再認識してほしい(産経新聞 2月7日)

宮城野部屋が稽古再開 審判部批判発言の白鵬は姿見せず(デイリースポーツ 2月6日)

大相撲「白鵬騒動」 外国人は劣等感を背負う運命?(週刊朝日2月4日)

バラエティー番組で謝罪 白鵬を増長させた相撲協会の“腐敗”(日刊ゲンダイ 2月2日)

白鵬、TVナマ謝罪から一夜明け審判部批判の質問にはだんまり(サンケイスポーツ 2月2日)

白鵬の審判批判問題は幕引き 相撲協会、責任追及せず(朝日新聞 2月1日)

白鵬「おわびしたい」=審判部批判で謝罪(時事通信 1月31日)

<大相撲>白鵬スマステで謝罪「迷惑、心配をかけおわび」(毎日新聞 1月31日)

<大相撲>ご法度の審判批判 「優等生」白鵬の胸の内は?(毎日新聞 1月31日)

謝罪は親方のみ 審判批判の白鵬はなぜ自ら頭を下げないのか(日刊ゲンダイ 1月29日)

審判部批判の白鵬、TV番組で「おわびしたい」(読売新聞2015年02月01日)

 北の湖理事長、親方を直接注意…白鵬の批判問題(読売新聞2015年01月30日)

続きを読む »

2015年02月11日 (水曜日)

2・16秘密保護法違憲訴訟報告会&講演「辺野古最新情報」の案内

フリーランス表現者43人が提起した秘密保護法違憲訴訟の原告団は、2月16日(月)の午後6時30分より、東京都文京区「文京区民センター2A」で、『2・16秘密保護法違憲訴訟報告会&講演「辺野古最新情報」』を開く。詳細は次の通り。

日時:2015年2月16日(月)午後6時開場(6時30分開始 8時30分終了)

場所:文京区民センター2A(東京都文京区本郷4―15−14)

アクセス:交通:東京メトロ「後楽園駅」「4b」「6」出口 徒歩5分
都営地下鉄 春日駅「A2」出口 徒歩0分 JR水道橋東口 徒歩10分

入場料:無料

○第一部 秘密保護法違憲訴訟報告会

(東京原告団、横浜原告団を中心に、静岡訴訟、広島訴訟の現状報告)

○第二部 講演「緊迫する辺野古最新情報」

(森住卓 東京訴訟原告・フォトジャーナリスト)

■原告団ブログ「秘密保護法、違憲確認・差し止め請求訴訟」

続きを読む »

2015年02月10日 (火曜日)

「シリアにおける邦人へのテロ行為に対する非難決議」、国際関係の中での憲法9条という認識の欠落 、唯一の例外は山本太郎議員

衆議院の議員数は475人 。 参議院は242人。「シリアにおける邦人へのテロ行為に対する非難決議」が、山本太郎議員を除く、716名の議員による賛成で可決された。決議日は、衆議院が2月5日で参議院が6日である。

非難決議の内容は、次のようなものである。

今般、シリアにおいて、ISILにより二名の邦人に対し非道、卑劣極まりないテロ行為が行われた。本院は、この許しがたい暴挙を、断固非難する。また、御家族の御心痛を思えば言葉もなく、誠に無念、痛恨の極みであり、深い同情の念を表明する。

このようなテロ行為は、いかなる理由や目的によっても正当化されるものではない。我が国及び我が国国民はテロリズムを断固として非難するとともに、決してテロを許さない姿勢を今後も堅持することを本院はここに表明する。

我が国は、中東・アフリカ諸国に対する人道支援を拡充することにより国際社会の平和に寄与するとともに、国連安保理決議に基づいて、テロの脅威に直面する国際社会との連携と取組を一層強化するよう、政府に要請する。

さらに、政府に対し、国内はもとより、海外の在留邦人の安全確保に万全の対策を講ずるよう要請する。

最後に、本院は、我が国国民を代表し、本件事案への対応に際し、ヨルダンを始めとする関係各国、国際機関及び関係者によって示された強い連帯と、解放に向けてなされた協力に対し、深い感謝の意を表明する。

右決議する

続きを読む »

2015年02月09日 (月曜日)

読売の渡辺恒雄会長が安倍首相と会食を重ねる、言論界に重大な負の影響

時事通信の「首相動静」によると、2月5日に読売新聞グループの主筆で会長、新聞文化賞受賞者の渡辺恒雄氏が、安倍晋三首相と会食した。会食場所は、東京・飯田橋のホテル・グランドパレスにある日本料理店「千代田」である。

安倍首相が同ホテルに到着したのは、午後6時41分。会食を終えて私邸へ向かったのは、8時35分であるから、約2時間にわたって会話を交わしたことになる。何が話し合われたのかは分からない。

渡辺・安倍の両氏が会食を繰り返してきたことは、これまでもたびたび報じられてきた。たとえば2014年12月30日付けの『しんぶん赤旗』によると、それまでの会食回数は8回にも及んでいる。

取材目的の会食であれば、頭から批判するわけにもいかないが、渡辺氏がルポタージュを書くための取材を進めているという話は聞いたことがない。

ちなみに『しんぶん赤旗』によると、渡辺氏のほかにも読売関係者は、安倍首相と会食を重ねている。

白石興二社長:2回
論説主幹:7回
政治部長:1回

何が目的で政治家と広義のジャーナリストが会食を重ねているのか、目的は定かではないが、最近の新聞業界の動きを見ると、会食を通じた情交関係が有形無形のかたちで、新聞紙面や新聞人の言動に影響を及ぼしているのではないかと勘ぐりたくなる。

続きを読む »

2015年02月06日 (金曜日)

イスラム国問題を逆手に取って進む軍事大国化、朝日に追いつけない読売、新聞記者はシリアを取材してはいけないのか?

イスラム国が2人の日本人を処刑した事件を逆手に取って、安倍内閣による軍事大国化の動き、それに伴う治安の強化や学校教育に対する締め付けがエスカレートしている。

中国や韓国との領有権問題を利用して、反中・反韓意識を煽り立て、それを追い風として解釈改憲の閣議決定を強行したり、特定秘密保護法を成立させたのと同じ方法が、イスラム国問題を背景に進行している。

新聞・テレビの報道で、こうした動きを確認することが出来る。以下、主要な記事の一部をピックアップしてみよう。

続きを読む »

2015年02月05日 (木曜日)

危険が指摘され始めたLED照明(ブルーライト)による人体影響、理学博士・渡邉建氏インタビュー②

◇LEDで睡眠障害が起こる理由
 

--LEDが睡眠障害の原因になるという説もありますが?

渡邉:網膜に神経節細胞というものがあります。15年ぐらい前になりますか、この細胞の新しいタイプが発見されました。ガングリオン・フォトセプターと呼ばれるもので、ここで受けた信号は、体内時計にあたる脳の視交叉上核というところへ送られます。

視交叉上核は、昼間であれば太陽光のブルーライトが目から入るために、昼間と判断して睡眠を妨げますが、夜になるとブルーライトが減るので、睡眠に入れる状態にします。ところが夜間にパソコンなどのブルーライトが多量に目に入ると、体内時計が夜と昼を勘違いして、眠れなくなるわけです。

常にブルーライトを浴びていると、1日のリズムが崩れてしまいます。少なくとも夜は、パソコンやスマフォを使わない方がいいですね。夜は赤みがかった色の明かりを使うのが賢明です。いまの白色LEDは読書には向かないですね。

ガングリオン・フォトセプターは、昼間と夜を識別するための細胞ではないかとする説が有力です。また、瞳孔の大きさをコントロールする信号を送っている細胞ではないかということも分かってきました。

◇LEDで熱帯魚の背骨が曲がった

--発癌性はどうでしょうか?

渡邉:紫外線には発癌性(毒性)があります。ブルーライトについても、活性酸素を発生させますから、免疫系に影響を及ぼし、発癌につながると思います。ですから、常時、過剰にブルーライトをあびるのは問題があると思います。

夜働いている女性が、乳ガンになる可能性が高いことは、かなり確かになってきています。夜になると、ブルーに対する感度が高くなりますから、それだけ人体影響も大きいのです。

筆者は、自宅で飼っているグッピー(熱帯魚)の水槽の照明を、通常の蛍光灯からLEDに切り替えた。その結果、腫瘍を発症するグッピーや背骨が曲がるグッピーが現れた。水草は、黒く変色した。この現象を、2014年9月1日に自身のウエブサイトで紹介したところ、20万件に近いアクセスがあった。

※筆者が自身のウエブサイト「MEDIA  KOKUSYO」に掲載した奇形熱帯魚の記事

--グッピーに異変が起きた原因はLEDのブルーライトでしょうか?

渡邉:白色(青色LED内臓)を当てた結果、こういうことが起こったわけですから、それが原因だと考えてもいいだろうと思います。記事のコメント欄に、水槽がよごれていたのではないかとか、いろいろな書き込みがありましたが、背骨がまがるというのは、尋常ではないですね。

続きを読む »

2015年02月04日 (水曜日)

危険が指摘され始めたLED照明(ブルーライト)による人体影響、理学博士・渡邉建氏インタビュー①

青色LEDの開発に貢献した日本の研究者3名のノーベル物理学賞受賞を機に、関連製品のPRが大々的に行われている。一方で、ここ半年余りの間に、青色LEDによる人体への悪影響も指摘されるようになった。

東北大学大学院の研究チームは昨年12月、青色LEDを昆虫に照射したところ死に至ったとする研究結果を、英国の科学誌『Scientific Reports』に発表した。

また、岐阜薬科大学も同誌に、青色LEDが加齢黄斑変性症など失明に至る病気の原因になっているとの研究結果を発表。

さらに、LED光を浴びた熱帯魚の奇形など、民間レベルでもリスクが報告されている。LEDはどのような性質のものなのか。「これまで『安全』と言われてきたLEDは、そう簡単な問題ではない」と話す理学博士の渡邉建氏に、リスクとその対処法を聞いた。

--LEDはどこで使われていますか?

 渡邉:もっとも身近なものとしては、部屋の照明や街灯です。丈夫で長持ちして、電力の使用量も抑えられるということで従来の照明から、LEDへ切り替える人が増えています。また、パソコンのバックライトの照明にも使われています。

かつては特殊な蛍光灯を使っていたのですが、今はそれをやめて白色LEDのバックライトになっています。そこに液晶のスクリーンを置いているわけです。さらに携帯電話やスマートフォンのバックライトにも、LEDは使われています。

ちなみにLEDではありませんが、紫外線は冷蔵庫などの殺菌装置や、水をきれいにする装置で実用化されています。紫外線に毒性があることは周知ですが、青色LED(ブルーライト)にも、毒性があることが最近になって指摘されるようになっています。

後で述べますが、東北大学のグループが、ブルーライトを害虫駆除に応用する方向で研究を進めています。ですから、当然、人間の人体にも有害な可能性があります。

◇ブルーライトと電磁波

--そもそもLEDとはどのようなものなんでしょうか?

 渡邉:LEDは、Light-emitting diodeの頭文字を取った略称です。半導体の発光ダイオードのことです。これに電流を流すと光を発します。ですから文字通り「発光」ダイオードというわけです。

しかし、眼にみえない光を発する領域もあります。たとえばテレビのリモコンなどは、赤外線のLEDなので知覚できませんが、センサーが赤外線を感知するから機能するわけです。

 --LEDでは、どのような光の色が出せるのでしょうか?

 渡邉:赤、オレンジ、黄色、緑、青、紫です(不可視光の赤外光、紫外光を出すLEDもあります)。これらの色光を組み合わせることで、別の色も合成できます。このうちブルーライト(青色LED)の開発は日本の3人の研究者によってなされ、昨年、ノーベル物理学賞を受賞しました。

最初に発明された色は赤でした。米国人のニック・ホロニアックという人が1960年代に赤LEDを作ったのです。そのうち黄や緑が開発されました。今、青が出てきたので、光の合成により白色もできるようになりました。

その意味では、ブルーライトの開発は、産業界にとっては、大きな貢献には違いありません。しかし、ブルーライトによる人体への影響も指摘されはじめているのです。

そもそもブルーライトとはどういう性質のものなのだろうか。
 読者は意外に感じるかも知れないが、この点を理解するためには、電磁波とは何かを理解しなければならない。

電磁波の「電」とは電気のことである。一方、電磁波の「磁」とは、磁気のことである。

 つまり電磁波とは、ごく端的に言えば、電気と磁気がその影響範囲である電磁場を作った電波の形状を描写した言葉である。「電磁波=電波」と考えてもよい。

  電磁波にはさまざまな種類がある。原発のガンマ線から医療現場のエックス線、さらには携帯電話の通信に使われるマイクロ波まで、かなり細かく分類されている。その分類の基準となるのが、電波の周波数(サイクル数)である。一秒間に繰り返す波の数により、下図PDFのように分類され、ヘルツ(サイクル/秒)という単位で表示される。

電磁波の分類PDF

 たとえば電力会社が提供する電気の周波数は、50ヘルツ(東日本)である。これは1秒間に50サイクルの波を意味する。ある種の無線PCは、2.5ギガヘルツ(25億サイクル/秒)、電子レンジは、2.45ギガヘルツ(約24億サイクル/秒)である。

周波数が高いほど波が小刻みになるので、波長が短くなる。それに伴いエネルギーも高くなるので波長によって、電磁波を分類することができる。

 さて、この電磁波の分類対象のひとつに可視光(380 ~ 780 nm)と呼ばれる帯域がある。文字通り、光として視ることが可能な帯域の電磁波である。本稿のテーマであるブルーライトは、可視光線に分類される。ブルーライトも、電磁波である。

続きを読む »

2015年02月03日 (火曜日)

酔っ払い文化こそ朝日再生の道、官僚の作文で解決しない朝日の体質

◆吉竹幸則(フリージャーナリスト・元朝日記者)

昨年来の原発・従軍慰安婦報道批判を受け、私の古巣でもある朝日新聞は、「信頼回復と再生のための行動計画」を発表。「外部の声に耳を傾ける」と、バッシング勢力に屈するかのような再生案を示した。

しかし、それでは今でも自信を無くしている編集現場をますます委縮させるだけだ。ジャーナリズムは人々の「知る権利」に応え、権力監視するのが本来の仕事だ。外部の声を尊重するだけで、使命を果たせるはすもない。朝日が力強いジャーナリズムに、いかに生まれ変わるか。具体策も、熱意さえ伝わって来ない従来通りの官僚体質の作文で、再生が図れるとは私には思えない。

朝日が昨年来続けて来た慰安婦、原発報道の検証のための第3者委員会や「再生のための委員会」で、社外委員らとともにまとめた改革案では、「経営と編集の分離」とともに、「公正な姿勢で事実と向き合う」「多様な言論の尊重」を挙げ、読者とともに「課題の解決策を探る」としている。

読者からの意見・指摘を紙面に反映出来る編集から独立した「パブリックエディターの導入」、多様な意見を載せる「フォーラム面」、訂正記事を集める「訂正コーナー」の新設、読者と対話する「車座集会」の開催を具体策として示している。

今回問題になった調査報道についても、「さまざまな形で充実」としているものの、「広い視野と多角的なものの見方を心がける」としただけ。事実を掘り起こし、検証する記者の力量をどう高めて正確な記事を書くか、肝心要の部分では目立った具体策もなく、「情報技術の駆使」など小手先の改善策に終始している。

◇読者の「知る権利」を軽視

慰安婦、原発誤報問題で、朝日が批判を浴びた最大の元凶は、私が本ブロク「朝日は派閥官僚体質の病根を絶て 社長辞任では解決しない朝日の再生」で、詳しく書いた通りだ。根っこにある病巣は、読者の「知る権利」に応えることへの真剣さに欠け、内部論理を優先。責任を取らず、利権漁りに走って、社内言論さえ封殺して来た幹部の派閥官僚主義に起因する。

私は、当たり前に記事になるはずの長良川河口堰報道を幹部から止められた。編集局長に異議を申し立てたら、記者職を剥奪されている。拙書「報道弾圧」〈東京図書出版〉に詳述しているが、これも表裏一帯の関係。その後、私の定年までの18年間は、朝日の派閥官僚体質との内部での闘いだった。

だから。報道倫理が欠如した朝日幹部の体質が現場記者に伝染、ジャーナリズムとしての力が、何故ここまで落ちたか。今回の問題に至る真の原因は、私が一番よく知っている。朝日の経営者は、長年、編集出身者が占めている。いくら「経営」と「編集」を分離してみても、編集幹部の体質が変わらない限り、何も変わらないのだ。

続きを読む »

PICK UP

横浜副流煙裁判、カウンター裁判で藤井敦子さんらが敗訴、検証が不...

横浜副流煙事件に関連した2つの裁判の判決が、それぞれ1月14日と22日に言い渡された。裁判所は、いずれも原告...

西日本新聞押し紙裁判 控訴のお知らせ―モラル崩壊の元凶 押し紙...

福岡・佐賀押し紙弁護団弁護士 江上武幸(文責)2025年(令和7年)1月15日 令和6年12月24日の西日...

1999年の新聞特殊指定の改訂、「押し紙」容認への道を開く「策...

渡邉恒雄氏の死に際して、次から次へと追悼記事が掲載されている。ここまで夥しく提灯記事が現れるとさすがに吐き気...

西日本新聞福岡地裁押し紙敗訴判決のお知らせ―モラル崩壊の元凶 ...

福岡・佐賀押し紙弁護団 弁護士・江上武幸(文責)2024年(令和6年)12月25日 昨日(24...

西日本新聞押し紙訴訟判決とオスプレイ搭乗記事の掲載について―モ...

福岡・佐賀押し紙弁護団 弁護士・ 江上武幸(文責)2024年(令和6年)12月20日 11月28日(木...

関東地区新聞労連役員会における意見発表について -モラル崩壊の...

福岡・佐賀押し紙弁護団・ 江 上 武 幸 (2024年「令和6年」12月19日) 去る11月29日(金...

動画で見る「押し紙」回収の現場

「押し紙」の回収現場を撮影した画像を紹介しよう。新聞社は、回収されている新聞は、「押し紙」ではないと主張して...

「押し紙」関連資料の閲覧制限、問われる弁護士の職業倫理、黒塗り...

「押し紙」裁判を取材するなかで、わたしは裁判書面に目を通す機会に接してきた。弁護士から直接書面を入手したり、...

「香害、すなわち化学物質過敏症」の誤り、1月に2つの判決、横浜...

別稿・事件の概要 来年2025年の1月に、横浜副流煙事件に関連した2つの裁判の判決が下される。詳細は次...

国策としての「押し紙」問題の放置と黙認、毎日新聞の内部資料「発...

インターネットのポータルサイトにニュースが溢れている。衆院選挙後の政界の動きから大谷翔平選手の活躍まで話題が...

モラル崩壊の元凶 ―押し紙― 西日本新聞押し紙訴訟判決期日決...

2024年10月15 (文責)福岡・佐賀押し紙訴訟弁護団 弁護士江上武幸 第1 はじめに  西日本新聞...

訴状を公開、毎日新聞の「押し紙」裁判、約1億2000万円を請求...

福岡・佐賀押し紙弁護団は、10月1日、毎日新聞の元店主Aさんが大阪地裁へ提起した「押し紙」裁判の訴状(9月2...

「押し紙」問題がジャーナリズムの根源的な問題である理由と構図、...

読売新聞社会部(大阪)が、情報提供を呼び掛けている。インターネット上の「あなたの情報が社会を動かします」とい...

モラル崩壊の元凶-押し紙- 毎日新聞押し紙裁判提訴のお知らせ

福岡・佐賀押し紙弁護団  弁護士 江上武幸(文責) 2024年(令和6年)9月20日 兵庫県で毎日新聞販...

「香害」をめぐる診断と議論、メディアに氾濫する誇張された被害の...

柔軟剤や煙草など、広義の「香害」をどう診断するかをめぐる議論が沸騰している。日本では、「香害」による体の不調...

―モラル崩壊の元凶、「押し紙」― 西日本新聞・押し紙訴訟の報...

福岡・佐賀押し紙訴訟弁護団 弁護士・江上武幸(文責) 去る7月2日、西日本新聞販売店を経営していたAさ...

西日本新聞「押し紙」裁判、証人尋問で残紙部数を把握した機密資料...

長崎県の元販売店主が2021年に起こした西日本新聞社を被告とする「押し紙」裁判の尋問が、7月2日の午後、福岡...

7月2日に尋問、西日本新聞の「押し紙」裁判、福岡地裁で、「4・...

西日本新聞社を被告とする「押し紙」裁判の尋問が、次のスケジュールで実施される。 場所;福岡地裁 903...

PICK UP

国境なき記者団の「報道の自由度ランキング」のでたらめ、スポンサ...

『週刊金曜日』(6月7日付け)が、「報道の自由度、世界ランキング70位でいいのか」と題する記事を掲載している...

読売新聞押し紙訴訟 福岡高裁判決のご報告 ‐モラル崩壊の元凶「...

福岡・佐賀押し紙訴訟弁護団 弁護士・江上武幸(文責) 2024(令和6年)5月1日 長崎県佐世保...

読売「押し紙」裁判、喜田村洋一(自由人権協会代表理事)らが勝訴...

読売新聞「押し紙」裁判の続報である。読売の代理人を務める自由人権協会代表理事の喜田村洋一弁護士らが、大阪高裁...

しばき隊による大学院生暴行事件、加害者が取材していた作家を提訴

添付した写真は、2014年12月の深夜に、大阪北新地で40分に渡って殴る蹴るの暴行を受けた大学院生(当時)の...

読売新聞「押し紙」裁判、判決日を3月28日に急遽変更、不自然な...

大阪高裁は、3月7日に予定していた読売新聞(大阪)を被告とする「押し紙」裁判の判決日を、急遽延期した。新しく...

市民運動の外圧に屈した『週刊金曜日』、タブーなき編集方針はどこ...

次の記事は、『紙の爆弾』(2023年10月号)に掲載した記事のネットでの再掲載である。原題は、「週刊金曜日 ...

台湾の蔡英文総統と全米民主主義基金(NED)のずぶずぶの関係、...

米国の外交政策を考えるときに、欠くことができない視点がある。それは全米民主主義基金(NED = Nation...

化学物質過敏症の診断をめぐる新しい流れ、一定の割合で精神疾患

化学物質過敏症がクローズアップされるようになっている。化学物質過敏症は、文字どおり、ある種の化学物質を体内に...

横浜副流煙裁判を描いた映画『[窓]MADO 』が、ロンドン独立...

映画『[窓]MADO 』が、ロンドン独立映画賞(London Independent Film Award)...

市民運動に対するタブー 『週刊金曜日』と『人権と利権』の書籍広...

株式会社金曜日の植村隆社長が鹿砦社の『人権と利権』に「差別本」のレッテルを張った事件からひと月が過ぎた。7月...

多発する携帯電話の基地局設置をめぐるトラブル、楽天モバイル、人...

携帯電話の基地局設置をめぐる電話会社と住民のトラブルが絶えない。この1年間で、わたしは40~50件の相談を受...

ジャニー喜多川のパワハラ、報道のタイミングが25年遅れた 

ジャニー喜多川の性癖が引き起こしたパワハラにようやくマスコミの光があたった。とはいえ報道のタイミングがあまり...

新刊の『新聞と公権力の暗部』-(「押し紙」問題とメディアコント...

新刊の『新聞と公権力の暗部』-(「押し紙」問題とメディアコントロール)《鹿砦社》の書店販売が開始された。 ...

「押し紙」驚愕の実態 新聞社不正収入35年で3兆円以上、統一教...

◆「押し紙」による不正収入は年間932億円規模 田所 実態として日本には5大紙を含め地方紙もたくさんあ...

【転載】「日本では、主要メディアと政府との距離が非常に近い」─...

情報には国境がなく、知ろうとする意思さえあれば、名も知れぬ国の天気や画像や中継動画までをも確認することができ...

ウィキリークスの創立者ジュリアン・アサンジをめぐる問題、言論弾...

ウィキリークスの創立者ジュリアン・アサンジをめぐる問題、言論弾圧という西側諸国の汚点 黒薮哲哉 ウィキ...

新聞業界から政界へ政治献金598万円、103人の政治家へ「お小...

昨年の11月に総務省が公開した2021年度の政治資金収支報告書によると、新聞業界は政界に対して、総額で598...

原告準備書面(2)(3)、藤井敦子陳述書の公開、日赤医療センタ...

横浜副流煙裁判の「反訴」で原告が裁判所へ提出した3件の書面を公開しよう。3件の書面は、事件の核心をずばり突い...

毎日新聞社長室へ公開質問状、「押し紙」問題についての見解、販売...

企業には広報部とか、広報室と呼ばれる部門がある。筆者のようなルポライターが、記事を公表するにあたって、取材対...