歴代・検事総長の異常な「天下り」実態、進む腐敗、検察官の職能や士気低下の原因か?
広義の「天下り」問題は、昔からあったが、まったく解決されていない。しかも、事件を処理する立場にいた司法関係の元国家公務員までが、あたりまえのように企業に再就職する実態がいまだにある。これでは、経済事件などは放置されかねないケースが出てくるだろう。日本は学閥や人脈が、「後輩」に対して影響力を持つ前近代的な社会であるからだ。
マイニュースジャパンが高裁で東進に逆転勝訴、増え続ける恫喝者の惨めな終焉
マイニュースジャパンの記事、「『東進』はワタミのような職場でした――ある新卒社員が半年で鬱病を発症、退職後1年半で公務員として社会復帰するまで」(2014年10月)で名誉を毀損されたとして、東進を経営するナガセ(永瀬昭幸社長)が、3000万円の損害賠償を求めた名誉毀損裁判の控訴審判決が、6月8日に言い渡された。東京高裁の村田渉裁判長は、第1審判決を破棄し、マイニュースジャパンに違法性はないとの判断を示した。
筆者は以前この裁判の訴状を読んだが、何が言いたいのかよく分からないものだった。論理が破綻しているのだ。ナガセは記事の削除を求めているのだが、具体的に何を問題にしているのかが曖昧なのだ。その結果、裁判の争点は、見出しの表現だけになった。
ナガセの主張は、「東進」という名前を使っていることで、記事内容が、東進グループ全体で起きているような誤解を与えるというものだった。
元最高検察庁刑事部長の松田昇氏の再就職先、博報堂DYホールディングスだけではなく、3月から読売巨人軍にも、官民汚職の温床に
裁判官や検察官などの国家公務員が退官後に民間企業に再就職するケースが後を絶たない。このような行為を広義に「天下り」と呼ぶ。目的は、現役の国家公務員に対して、先輩の影響力を発揮し、自らの再就職先のために便宜を図ることであると言われている。
官民汚職の温床にほかならない。「天下り」は前近代的な悪しき慣行のひとつであると言えよう。
縦の人間関係が支配的な日本では、退職者を部外者として扱う習慣もない
司法官関係者のあいだで「報告事件」と呼ばれる不正裁判の存在を暴露、裁判所の裏金にも言及、生田暉雄・元大阪高裁判事が新刊『最高裁に「安保法」違憲判決を出させる方法』を出版
たとえば闇夜の中で白いスクリーンに青色のライトを当て、遠くから眺めると青いスクリーンが立っているように錯覚する。
スクリーンに近づいて、光を放っている物体を自分の眼で確認すれば、青色のからくりが発見できる。幻想とはこうしたものである。そして、その幻想は世の中の至るところにはびこっている。
大阪高裁の元判事で現在は弁護士の生田暉雄氏の新刊、『最高裁に「安保法」違憲判決を出させる方法』(三五館)を読めば、日本が実は三権分立の国ではないことが分かる。われわれが「裁判=正義と真実の追求」という幻想に酔っていることに気づく。
生田氏が内部告発した最高裁事務総局の実態は恐ろしい。
『財界にいがた』が電磁波問題と司法問題を同時紹介、被告企業勝訴請負人の裁判官がいた
『財界にいがた』(5月号)が「携帯電話基地局訴訟で原告敗訴請負人の裁判官がいた」と題する黒薮の講演録の全文を掲載している。これは去る3月に東京豊島区の区民センターで開かれた司法問題を考えるシンポジウムの中での講演録である。電磁波問題の視点と携帯電話基地局訴訟の実態を解説したものである。
電磁波による健康被害は、新世代の公害として欧米では認識されているが、日本では、あまり知られていない。欧米では、携帯電話やスマホに使われるマイクロ波の強度をEUなどが、厳しく規制しているが日本では規制が極めてゆるい。
暴力団でも、「5000万円のお金を現金で払え」とは言わない、最近の高額訴訟の非常識、進むモラルハザード
本日(7日)発売の『紙の爆弾』(鹿砦社)に、わたし(黒薮)の著名記事が掲載された。タイトルは、「〝訴えた者勝ち〟で乱発される巨額訴訟『日本の裁判』を問う」。
ここで取り上げた裁判は、作曲家・穂口雄右氏が巻き込まれたミュージックゲート裁判、わたしが体験した4件の読売裁判、ボクシングの亀田兄弟がフリージャーナリスト・片岡亮氏に対して起こした裁判、それにヒロナカ事務所が代理人を務めている池澤裁判である。
池澤裁判では、お金の請求方法に注視してほしい。読者はどのような感想を持つだろうか。原告側の言い分も十分に紹介した。
【動画】シンポジウム「裁判所は本当に駆け込み寺か?」、田中哲郎判事の例に見る不自然な裁判官の人事異動
2月28日に、最高裁事務総局の実態を告発している「最高裁をただす会」が、東京の豊島区民センターでシンポジウム「裁判所は本当に駆け込み寺か?」を開催した。講演したのは、次の4氏。
生田暉雄(弁護士):元大阪高裁判事で最高裁事務総局の裏金疑惑を追及している。[2分50秒~]
志岐武彦(市民運動家):小沢一郎検察審査会架空議決疑惑で最高裁事務総局を追及している。[59分50秒~]
吉竹幸則(元朝日新聞記者でフリージャーナリスト):無駄な公共事業・長良川河口堰のウソを暴き、退職後、記事の不掲載や「ぶら勤」などをめぐり朝日新聞社を提訴した。[1時間23分40秒~]
黒薮哲哉(フリーランス記者):スラップ、メディア、電磁波問題などを取材している。[1時間47分50秒~]
このうちわたしは携帯電話の撤去を求める裁判で、第3者から見れば極めて不自然な裁判官の人事異動が行われ、電話会社が勝訴した事実を紹介した。田中哲郎裁判官が、福岡高裁が管轄する3つの裁判所(熊本・福岡・宮崎)を異動しながら、次々と住民を敗訴させていった問題の経過を話した。
なお、田中氏は定年後に、なぜか佐賀簡易裁判所に「再就職」している。
裁判官の不可解な人事異動-木村元昭・田中哲朗の両氏、対読売の真村裁判・平山裁判・黒薮裁判で
2002年に福岡地裁久留米支部で始まった真村訴訟とそれに関連して派生した2つの裁判-平山裁判、黒薮裁判-でも、裁判長の不可解な人事異動が記録として残っている。
真村訴訟というのは、YC(読売新聞販売店)と読売新聞西部本社との間で争われた地位保全裁判だ。
読売がYCの真村店主に解任を通告したところ、真村氏(厳密には原告は3名)が起こしたものである。読売側の代理人には、喜田村洋一・自由人権協会代表理事らが就いた。
この裁判は真村氏の完全勝訴だった。争点となった「押し紙」政策の存在を裁判所が認定した。これについての詳細は、ここでは言及せず、福岡高裁判決の全文のみをリンクしておこう。
携帯基地局の撤去を求める裁判で裁判官の不可解な人事異動、田中哲郎裁判官の例
国策を左右しかねない要素をはらむ訴訟を担当する裁判官が恣意的にコントロールされている疑惑がある。具体例を2つ示そう。
まず、携帯電話の基地局撤去を求める裁判である。携帯基地局からは、マイクロ波と呼ばれる高周波電磁波が放射されている。WHOの外郭団体である世界癌研究機構は、2011年にマイクロ派に発癌性の可能性があることを認定している。ドイツやブラジルなどでは、携帯基地局と発癌の関係を調査するための疫学調査も行われている。(詳細は、次の記事で)
■携帯基地局から200メートル以内、発癌リスクが極めて高い、ブラジルの調査でも判明、日本では秘密保護法の施行で情報ブロックも
やしきさくら氏の代理人に、喜田村洋一・自由人権協会代表理事、曖昧な名誉毀損の賠償額、300万円もあれば10万円も
名誉毀損裁判で敗訴した場合の損害賠償額が、かつてに比べて高額化している。その一方で極めて低額な賠償命令も下っている。わたしの知るケースでは、前者が300万円で、後者が10万円である。
たとえば『スポーツ報知』(2015年10月28日)は、やしきたかじん氏の妻・やしきさくら氏が、たかじん氏の元弟子を提訴した裁判で、大阪地裁が300万円の支払いを命じたことを伝えている。
判決結果は歓迎も、前近代的な韓国社会を露呈、産経新聞の前ソウル支局長の裁判
虚偽の記事により韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領の名誉を傷つけたとして起訴された産経新聞の前ソウル支局長(49)の加藤達也氏に対して、ソウル中央裁判所は、17日、無罪の判決を言い渡した。
判決そのものは真っ当で、当然の結果であるが、裁判の中で、韓国の司法制度の未熟さを国際的に露呈する取り返しのつかない珍事が発生した。改めていうまでもなく、韓国外務省が「産経新聞の加藤達也前ソウル支局長(49)の裁判に関し、検察を通じて裁判所に対し、日韓関係などを考慮し善処するよう要請した」ことである。
DHCの吉田嘉明会長が澤藤統一郎弁護士に6000万円を請求した裁判が結審、澤藤弁護士が意見陳述
化粧品会社DHCの吉田嘉明会長が、 澤藤統一郎弁護士に対して6000万円の支払いを求めた名誉毀損裁判の第7回口頭弁論が、1日に東京地裁で開かれた。提出書面の確認が行われた後、被告の澤藤弁護士が意見陳述を行い、裁判は結審した。
安保法制案の根拠になっている砂川裁判の再審へ向け、18日に弁護団らが記者会見
6月18日、砂川事件の再審を求めている弁護士らが、国会の議員会館で記者会見を行う。
憲法学者らが安保法制案を違憲と解釈しているのに対して、安倍政権は依然として「合憲」を主張している。その根拠となっているのが、砂川事件の判例である。その砂川事件の再審を求める動きが活発になっている。
「最高裁をただす市民の会」が公式サイトを開設 、記録を永久保存するネット上の資料庫に
「最高裁をただす市民の会」(志岐武彦代表)が、28日に本格的なウエブサイトを立ち上げた。これは、同会の公式サイトで、小沢一郎議員を起訴相当議決により法廷に立たせた東京第5検察審査会に関する疑惑を検証するための記事や内部資料(PDF)を多量に収録している。
インターネット上の資料庫、あるいは図書館として機能する。無料サイトなのでだれでも資料にアクセスすることができる。
また、小沢事件に関連して、志岐氏と森裕子元参議院議員の間で争われた名誉毀損裁判に関する記事と資料(PDF)も公開している。
ちなみにこの裁判では、志岐氏が勝訴している。森氏が請求した500万円の金銭支払いと、志岐氏の言論活動の制限は棄却された。
さらに同ウエブサイトは、今後、「押し紙」裁判や「志岐VS森」裁判に関連して起きている係争に関する資料についても公開し、記録として永久保存する方針だ。長期にわたる検証の道具となる
裁判と言論・人権を考える(4)、読売裁判の判例と弁護士懲戒請求、催告書の名義を偽って提訴
高額訴訟ではないが、提訴のプロセスに問題が指摘された裁判の例を紹介しよう。わたし自身が被告にされた著作権裁判である。原告は、読売新聞社(西部)の法務室長・江崎徹志氏だった。江崎氏の代理人は、自由人権協会代表理事の喜田村洋一弁護士だった。
◇事件の発端
2007年の暮れに江崎氏は、わたしにEメールである催告書を送付してきた。その中で江崎氏は、わたしに対して、新聞販売黒書(メディア黒書の前身)のある記述を削除するように求めたのである。その資料とは、次の通知(記述)だった。YC(読売新聞販売店)に宛てたものだ。
前略
読売新聞西部本社法務室長の江崎徹志です。
2007年(平成19年)12月17日付け内容証明郵便の件で、訪店について回答いたします。
当社販売局として、通常の訪店です。
以上、ご連絡申し上げます。よろしくお願いいたします。
かりにこの文書を「回答書」と呼ぶことにする。
「その言葉、単価でXX万円」、名誉毀損裁判と言論・人権を考える(2)、高額請求と想像力の問題
山崎貴子さん[仮名]が小川紅子・五郎夫婦[仮名]を名誉毀損で訴えた裁判の実態を検証するルポ、連載の第2回目である。裁判の概要は、連載原稿の(1)に記したとおりであるが、ひとことで言えば、小川夫婦のブログに対して、山崎さんが総計で約3200万円を請求し、さらに請求額を増やすことを訴状で公言したことである。
この裁判の取材を通じて、わたしは幾つかの留意すべき事実に遭遇した。もっとも留意点として位置づけた背景には、わたしがあるべき姿と考えている裁判の形があるが、法曹界の人々にとっては、留意に値しない可能性もある。が、少なくともごく普通の「市民」の視線には、この裁判は尋常ではない裁判と映るのではないか?
◇金銭請求の方法
まず、第1に感じた異常は、名誉毀損に対する損害賠償額の請求方法である。
連載(1)で手短にふれたように、この裁判では、原告が問題とする表現を、「名誉毀損」、「名誉感情侵害」、「プライバシー権侵害」、それに「肖像権侵害」に分類した上で、それぞれに単価を付け、その総数を基に損害賠償額を計算していることである。こんな請求方法はこれまで見たことがなかった。詳細は次の通りである。
【単価】
① 「名誉毀損」:10万円
② 「名誉感情侵害」:5万円
③ 「プライバシー権侵害」:5万円
④ 「肖像権侵害」:5万円
【指摘件数】
総計:417件
通常は、一括して500万円を請求したり、1000万円を請求してくるが、この裁判では、「単価×件数」で損害賠償額を割り出していたのである。
原告は、上記の額に加えて、請求を追加すると訴状で述べている。
◇3200万円の「お金」の意味
ちなみに3200万円という請求額も、普通の「市民」感覚からすれば尋常ではない。辣腕弁護士であれば、半年で稼ぐことも可能な金額かも知れないが、大半の勤労者の5年から7年分ぐらいの給料に相当する。実際にこの金額を貯蓄するためには、少なくとも15年ぐらいは要する。
他の名誉毀損裁判では、5000万円、あるいは1億円といった大金を請求したケースもある。これは名誉毀損的表現を犯した場合、殺人犯なみに、生涯をかけて賠償することを求めているに等しい。普通の金銭感覚を欠いた措置と感じる。 かりに私人宅に見知らぬ人々がいきなり押しかけてきて、
「ブログで誹謗・中傷されたから3200万円を払え。後からさらに追加請求する」
と、言えば、警察沙汰になるだろう。
ところが裁判という形式を取れば、3200万円の請求もまったっく合法的行為になってしまうのだ。
人間には、感情が宿っている。かりにそれが想像できなくなっている「知識人」が増えているとすれば、その背景に社会病理が横たわっているのではないか。
あやうくなってきた対等に裁判を受ける権利、1億円の名誉毀損裁判で被告は、着手金だけで800万円、日弁連の重い責任
教育や医療、福祉サービスなど人間としての基本的権利は、本来、憲法で保障されているはずだ。貧乏だから学校で学べないとか、病院や介護施設に入所できないといった実態があってはならない。が、新自由主義=構造改革を導入した結果、これらの最低条件すらも奪い去られようとしている。
裁判を受ける権利についても、すでに経済力の差が判決を決めかねない状態になっている。正義と金が結合しはじめている。かつて日弁連は、弁護士報酬を定めていた。たとえば、一般法律相談料の場合は、「30分ごとに5000円以上2万5000円以下」だった。
ところが、小泉内閣が押し進めた司法制度改革の結果、2004年4月から弁護士報酬が自由化された。その結果、勝率の高い弁護士事務所が設定する弁護士報酬が高騰している。
次に示すのは、「人権派」「無罪請負人」として有名な法律事務所ヒロナカ(弘中 惇一郎弁護士)のウエブサイトに掲載されている費用体系である。
1. 一般民事訴訟
着手金:(1)原告の代理人となる場合 係争金額の5%
(2)被告の代理人となる場合 係争金額の8%
ただし、着手金の最低金額を30万円とする。
成功報酬:(1)原告の代理人となる場合 獲得金額の10%
(2)被告の代理人となる場合 防御金額の7%
を基準とする。
なお、事件がきわめて難解な場合には50%の範囲での増額、訴訟物価格が高額な場合(1億円を超える場合)、及び簡易な場合には50%の範囲で減額があることとし、これについては、協議の上決定する。
ただし、報道名誉毀損事件 原告側については
着手金:実費以外なし
成功報酬:実費を加えて獲得金額の50%とすることもある。
さらに、日当は、「片道2時間以上の地方へ出張の場合 1日5~10万円」
で、相談料は、1時間3万円である。詳細は、次の通りである。
裁判に圧倒的に強い読売新聞、最高裁も読売裁判の関連情報開示に配慮
読売ジャイアンツが、同球団の元代表・清武英利氏(64)に対して損害賠償などを求めた裁判の判決が、18日、東京地裁であった。大竹昭彦裁判長は、清武氏に対して160万円の賠償を命じた。清武氏の反訴は棄却した。
判決を読んでいないので、論評は避けるが、読売がらみの裁判には、ある著しい特徴がある。読売の勝訴率が圧倒的に高いことである。
読売弁護団には、護憲派の喜田村洋一・自由人権協会代表理事ら、有能な弁護士が含まれていることも、勝率が高いひとつの要因だと思われるが、社会通念からして不自然な判決があることも否定できない。
その典型は、読売新聞販売店(YC)が2001年7月に、地位保全を求めて起こした裁判(仮処分申立て、後に本訴)だった。この裁判は、2007年12月に、YC側の勝訴判決が最高裁で確定した。ぞくに「真村裁判」と呼ばれる訴訟である。
判決の中で、はじめて読売の「押し紙」が認定されたこともあって関心を集めた。
ところが判決確定から半年後に、読売が再びYCに対して改廃を通告し、一方的に新聞の供給を止めた。その結果、YCの店主は、再び裁判を起こしたのである。それ以外に抵抗する方法がなかったのだ。これが第2次真村裁判である。
しかし、YC店主も弁護団も、勝訴の自信をみせていた。と、いうのも前訴で最高裁が店主の地位を保全していたからだ。実際、仮処分を申し立てたところ、すんなりと地位が保全された。仮処分の2審、3審、4審(特別抗告)も店主の勝ちだった。
ところが仮処分の審理と並行して進めていた本訴では、店主が全敗したのである。このうち控訴審(福岡高裁)で店主を敗訴させた裁判官は、なんと仮処分の2審で、店主を勝訴させた木村元昭氏裁判官だった。
木村裁判官は、仮処分の2審で店主を勝訴させた後、那覇地裁に異動になった。ところが第2次真村裁判が始まると、福岡高裁へ異動になり、第2次真村裁判を担当したのである。そして店主を敗訴させた。
わたしの手元に木村氏が書いた2つの判決があるが、読み比べてみると、同じ人物が書いたとは思えない。(拙著『新聞の危機と偽装部数』)
これだけある裁判所の問題、「日本は三権分立の国」は幻想
たとえば裁判所の強権的な姿勢を報告した次のレポートがある。特定秘密保護法に対する違憲訴訟(静岡地裁、原告:藤森克美弁護士、被告:国)の第2回口頭弁論で、村野裕二裁判長が早々と結審をほのめかした場面である。
一つは民事第2部の村野裕二裁判長がきわめて強権的な指揮をしていること。藤森弁護士が提出した準備書面(2)から(7)の確認をしたあと、進行に言及し「そろそろ終り」にと結審をほのめかす発言。しかしその少し前に国の代理人から「原告に反論したい」と申し出たことと、藤森弁護士から主張を補充したいとの申し出があり、いったん退廷して合議。その結果、あと1回弁論は認めるがこれを最終とする旨を伝えられました。
日本の裁判所は公平な裁判を行ってきたのだろうか?あるいは最高裁事務総局は、本当に政府や官庁、それに大企業といった巨大権力を持つ者と一定の距離を置いて、独立性を保っているのだろうか?
かりに裁判所が権力構造の歯車に組み込まれているとすれば、戦後日本の「民主主義」を根本から再検証しなければならない。日本は三権分立の国ではない。これは受け入れたくないが、紛れもない真実である。
具体的に、日本の裁判所には、どのような問題があるのか、手短に抜き出してみた。
日本総合探偵事務所に自由人権協会の会員歴、人権擁護と整合しない尾行や張り込み
日本総合探偵事務所に、自由人権協会の会員歴があることが分かった。自由人権協会は、日本を代表する人権擁護団体との評価を確立している。現在の代表理事は、改憲派の読売新聞をサポートしてきた喜田村洋一弁護士らである。
日本総合探偵事務所が現在も会員であるかどうかは不明だが、MEDIA KOKUSYOが入手した資料によると、会員番号は「1494」。少なくとも一時期は、会員だった。
探偵業について、ウィキペディアは次のように述べている。
田中哲郎裁判官の軌跡を検証する、電磁波裁判と読売裁判を担当して九州各地を転々、最高裁事務総局に責任はないのか?
読者は、田中哲郎裁判官の名前を耳にしたことがあるだろうか。田中氏の裁判官としての経歴を調べてみると、好奇心を刺激する事実がある。携帯電話基地局の撤去を求める訴訟が起きている九州地区内の裁判所へ赴任しては、原告住民を敗訴させる判決を下してきたのである。
わたしが原告となった対読売裁判では、途中から裁判長に就任して、読売に一方的に有利な裁判進行をおこなった事実もある。
裁判官の人事権は、最高裁事務総局に握られているので、田中氏だけを批判するわけにはいかないが、少なくとも田中裁判官の軌跡は記録しておくべきである。
田中裁判官の勤務歴は、「裁判官検索」によると次のようになっている。
http://www.e-hoki.com/judge/1767.html?hb=1
田中裁判官が最初に携帯基地局関連の訴訟を担当した裁判所は、熊本地裁
である。「平成13(2001年)」年4月1日から、「平成17年9月7日(2005年)」の間の在籍期間に、携帯基地局の撤去を求める2件の訴訟の裁判長を務めている。
2件の訴訟とは、沼山津訴訟と御領訴訟である。いずれも被告は九州セルラー(現KDDI)だった。これら2件の裁判で田中裁判長は「平成16年(2004年)」6月25日に、住民側敗訴を言い渡した。
その後、田中裁判長は福岡地家裁久留米支部へ異動になる。
当時、福岡市の福岡地裁では、NTTドコモに対して住民グループが携帯基地局の撤去を求める三潴訴訟が進行していた。裁判は2005年10月7日に結審の予定になっていた。原告弁護団は、公害訴訟で有名な馬奈木昭雄弁護士を弁護団長とする強力なメンバーで、勝訴の自信をみせていた。
ところが結審の直前になって異変が起こる。裁判長が交代になったのだ。新しく裁判長になったのは、田中哲郎氏だった。既に述べたように、田中氏が配属されていたのは、同じ福岡地裁とはいえ、福岡県中部の久留米市にある支部である。久留米支部から、わざわざ福岡市まで足を運んで、結審直前の三潴訴訟を担当することになったのである。不自然きわまりない裁判長交代だった。
三潴訴訟の判決は、2006年2月24日に言い渡された。原告住民の敗訴だった。住民にとっては、嫌な予感が的中したことになる。
訴訟のビジネス化と多発する口封じ裁判、弁護士に対する成功報酬6000万円を約したユニクロの例も
スラップ(SLAPP)とは、俗に裁判を提起することで、攻撃対象者に経済的にも精神的にもプレッシャーをかけて、言論を封じこめる戦略を意味する。
しかし、厳密には語源である英語のSLAPP(Strategic Lawsuit Against Public Participation)の翻訳が定義ということになる。下記の通りである。
大衆運動に対抗するための戦略的な訴訟
言葉の定義が時代により、あるいは地域により変化することは言うまでもない。日本では、俗にスラップを指して、「恫喝裁判」とか、「口封じ裁判」という。ジャーナリスト、ブロガー、作曲家などの表現者が標的になることが多い。
わたしがこれまで取材したり、当事者になった裁判の中には、一部にSLAPPに該当する可能性があるものも含まれている。原告と代理人弁護士、被告、要求したお金の額などを紹介しておこう。スラップかどうかは、読者の判断にゆだねる。(※)はわたしが当事者となった裁判である。
最高裁の裁判員制度に関する請求書、平成21年1月9日に2億4000万円、1月8日に8000万円、類似した請求の中身、明細求め情報公開請求へ
今年の2月21日付けのMEDIA KOKUSYOで、「最高裁が(株)NTTデータに、裁判員候補者名簿管理システムの開発と保守名目で2億4300万円を支出、相場は700万円?」と題する記事を掲載した。その後、裁判員制度に関して、最高裁が支出したお金の調査を続けたところ、同じ時期に他にも、巨額の出費がおこなわれていた疑惑が判明した。
(株)インテルに対する、8226万7500円の支出である。
「疑惑」と書いたのは、入手している資料が最高裁に対する請求書であるからだ。請求されたが、支払わなかった可能性もゼロではないからだ。
21日付けの記事で指摘したのは、次の事実である。
■2009年1月、最高裁が裁判員候補者名簿管理システムの開発・保守費として、(株)NTTデータに対し、総計で約2億4300万円の大金を支払った疑惑があることが分かった。支出の詳細は次の通りである。(請求書の日付は、平成21年1月9日)
1、裁判員候補者名簿管理システムの開発:1億9099万5000円
2、裁判員候補者名簿管理システム開発のアプリケーション保守:5197万 5000円
この約2億4300万円という数字をどう評価すべきだろうか。
比較対象として、森ゆうこ元参議院が作成した「検察審査会調査報告書」と題する資料を紹介しよう。作成日は、2011年6月30日。この資料に検察審査会のくじびきソフトを開発・保守するための費用として、最高裁(注:検察審査会は最高裁が管轄している)が支払った額が表示されている。5281万円である。
ところが複数のシステム設計の専門家によると、このシステムなら500万円から作ることが可能で、通常は700万円程度、どんなにボッタクリでも1000万円だという。(森氏の『検察の罠』(日本文芸社)による。)
日弁連の政治団体から自民、民主、公明、維新、みんな、生活の議員に850万円の政治献金
日弁連が設けている政治団体から、政界に対して総額850万円の政治献金が行われていたことが分かった。
昨年の11月に公開された2012年度の政治資金収支報告書によると、日弁連の政治団体である日本弁護士政治連盟は、総額850万円の政治献金を自民党、民主党、公明党、みんなの党、「国民の生活が第一」、それに日本維新の会の6党に所属する約100名の議員に支出している。
献金先の大半は、議員が支部長を務める政党支部の住所になっているので、調査しなければ、議員名を特定できないが、実名が明記されている有力議員は次の方々である。
えだの幸男(民)
菅直人(民)
岡田克也(民)
山花郁夫(民)
仙石由人(民)
平野博文(民)
稲田朋美(自)
太田昭宏(公)
漆原良夫(公)
平沼赳夫(維新)
献金の名目は、いずれも「寄附」である。詳細は次のPDFの通りである。
対読売裁判の検証、最高裁の担当調査官はだれなのか? 違憲訴訟の提起を
6年におよんだ対読売裁判(1年半の間に、読売による提訴が4件、黒薮による提訴が1件+弁護士懲戒請求)を通じて、わたしの内部で生じたジャーナリズムのテーマは多岐にわたる。裁判の舞台が最高裁に移ってから、とりわけ疑問に感じるようになったのは、裁判を担当する調査官の氏名が裁判の当事者にも公表されていないことである。
意外に知られていないが、最高裁では口頭弁論(法廷)はほとんど開かれない。大半の上告(憲法違反を理由とした異議申立)事件、あるいは上告受理申立(判例違反を理由とした異議申立)は、調査官と呼ばれる最高裁事務総局に直属する裁判官により処理される。
と、いうのも上告事件と上告受理申立事件の件数は、年間で優に4000件を超えるにもかかわらず最高裁判事の数が14名なので、物理的に処理しきれないからだ。そこで調査官の出番となるのだが、その調査官も50名に満たない。
たとえば次に示すのは、2011年度の調査官リストである。補佐人を含めても42人しかいない。
天下り、メディアとの癒着、調査官名の非公開、検察審査会疑惑・・・最高裁問題とは、職員配置図を公開
ここ数年の間に、ようやく最高裁がかかえる問題がメディアに登場するようになった。最高裁のなにが問題なのかについては、KOKUSYOで順をおって紹介していくが、それに先立って、最高裁の組織の成り立ちを示す格好の資料を紹介しよう。
格好の資料とは、茨城県市民オンブズマンの石川克子事務局長が、情報公開請求で入手した最高裁の職員配置表である。この資料を参照にすることで、今後、最高裁に対する情報公開を請求する場合、請求資料と直接関係がある部署とコンタクトを取る段取りを踏める。
石川氏は、昨年の9月4日、最高裁に「要望書」を提出している。要望の趣旨は、情報公開請求者に対して説明責任を果たせというものである。
◇最高裁問題とは
現在、最高裁に関連して指摘されている問題には、次のようなものがある。
生活の党・森ゆうこ氏が最高裁の闇を指摘した「一市民」を提訴、820万円と言論活動の制限求める
森ゆうこ元参院議員が10月2日、『最高裁の罠』の著者でブロガーの志岐武彦氏に対し820万円の金銭要求と言論活動の制限を求める裁判を起こしていたことが分かった。発端は小沢一郎議員が2010年に検察審査会の議決で起訴され、最終的に無罪になった事件。志岐氏は検察審査会を管轄する最高裁事務総局の策略で小沢氏が法廷に立たされたと推論。これに対して森氏は、検察による謀略説を強調した。
週刊誌報道やロシアのサーバーから送られた捏造報告書も、検察による謀略論をクローズアップした。世論誘導に不信感を抱いた志岐氏は、自身のブログで森氏を批判、森氏のことを「肝腎の最高裁への追及がなくなった」などと書いた事が提訴理由とされた。
謀略は最高裁事務総局なのか、検察なのか、それとも双方の連携プレーなのか?日本権力構造の「罠」と裁判の背景に迫る。(訴状ダウンロード可)? 【続きはNyNewsJapan】
写真:「検察審査委員及び補充員選定録」。志岐氏らは、検察審査委員と補充員の「生年月」(日は含まない)の開示を請求したが、最高裁事務総局はすべて黒塗りにした。「生年月」では、個人を特定することは出来ないはずだが。
最高裁に対して情報公開請求 対読売裁判の調査官の氏名開示を求める 本当に審理しているのか?
11月21日付けで、わたしは最高裁に対して次のような情報公開を請求した。
??? 平成22年(受)第1529号事件(上告人・読売新聞社・他 被上告人・黒薮哲哉)を担当した調査官の氏名が特定できる文書。
わたしが対象とした裁判は、読売新聞社(西部本社)と同社の江崎徹志法務室長など3人の社員が、ウエブサイト「新聞販売黒書(現・MEDIA KOKUSYO)」の記事で名誉を毀損されたとして、2230万円のお金を支払うことなどを求めた事件である。
◇年間4000件、本当に審理しているのか?
地裁と高裁はわたしの勝訴だった。しかし、最高裁が読売を逆転勝訴させることを決定して、高裁判決を差し戻した。これを受けて東京高裁の加藤新太郎裁判長は、110万円のお金を支払うように命じた。
最高裁の「影の判事」に関する記録の所在は不明、実質的に密室裁判では? 電話取材で判明
伊方原発訴訟の最高裁判決にかかわった調査官の氏名を開示するように求めた情報公開請求を最高裁が拒否したことは、既報した通りである。最高裁の通知は次の通りである。
通知書の末尾に連絡先の電話が明記されているので、念のために最高裁に問い合わせてみた。問い合わせの趣旨は次の通りである。
最高裁、伊方原発訴訟にかかわった「影の判事」の氏名を開示せず
9月30日付けで最高裁に申し立てた情報公開に対して、10月28日付けで開示拒否の回答があった。
申し立ての内容は次の通りだった。
伊方原発訴訟[昭和60年(行ッ)133]にかかわった最高裁の調査官の全氏名。
最高裁が情報開示を拒否した理由は、調査官が誰だったかを示す司法行政文書が存在しないから、というものだった。回答書の全文は次の通りである。
最高裁に上告(上告受理申立)される事件の件数は、年間で4000件を超える。当然、15人の最高裁判事だけでは、これらの事件を処理できない。
そこで登場するのが調査官と呼ばれる将来を嘱望されているエリート判事たちである。彼らが「影の判事」となって、上告された事件の処理に参加する。
当然、実質的に最高裁判決を下している「影の判事」の氏名を知りたいというのが国民感情である。裁判は公開で行うのが原則であるからだ。
日本国憲法も次のように述べている。
第八十二条 裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。
そこでわたしは福島第一原発の事故が起きたことで、事実により判決が間違っていたことが立証された伊方原発訴訟の最高裁判決にかかわった「影の判事」を知りたいと思った。間違った判決を下していなければ、福島第一原発の事故が発生しなかった可能性が高いからだ。
ところが伊方原発訴訟にかかわった調査官が誰かを示す司法行政文書は、存在しないとの回答があった。「影の判事」の名前が明記された別の書類が存在する可能性はあるが、少なくともそれが誰なのかは情報開示請求によっては開示されない。
ちなみにこの裁判を担当した元最高裁判事の味村治氏(故人)は、退官後、 原発炉メーカー・東芝に監査役として天下っている。