2020年07月25日 (土曜日)

 KDDIが朝霞市の城山公園内へ通信基地局を設置しようとしている問題をビジネスジャーナルが取り上げた。執筆は、黒薮。この記事では、電磁波問題を指摘しているほかに、基地局に関する情報の非公開という問題をクロースアップしている。被曝する住民側はなにも知らないまま、モルモットにされかねない。電話会社も地方自治体も総務省も、情報開示しない不思議な慣行を批判した。

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新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言が続いていた5月27日、スーパーシティ法(改正国家戦略特区法)と呼ばれる法律が国会で成立した。5G(第5世代移動通信システム)の導入と連動して、日本の未来型都市の構築を進めるための法律である。国家戦略特区を設け、そこで人工知能(AI)や5Gなどを駆使した自動運転、医療、防犯などの「実験」を行うための法的な布石にほかならない。

このプロジェクトの有識者懇談会の座長には、小泉政権の時代に急進的な規制緩和策を押し進めた竹中平蔵・東洋大学教授が就任している。あまり報道されていないが、未来型都市の構築はいわば政府肝いりの計画なのである。

こうした状況下で、通信基地局の設置をめぐるトラブルが増えている。【続きはビジネスジャーナル】

2020年07月24日 (金曜日)

電磁波からいのちを守る全国ネットは、22日の午後7時から、電磁波問題の学習会をZoomを使って開催した。講師は、環境ジャーナリストの加藤やすこ氏。

加藤氏は、5Gで使われる電波や新技術の安全性がまだ立証されていないことや、現在の日本の電波防護指針が最新の研究成果を反映しない古いデータを基に作成されていることなど、電磁波問題の基本を説明した。海外の状況も紹介した。

質疑応答には60分を超える時間を割き、電磁波の安全性の問題から条例制定に関することまでさまざまな質問が寄せられた。

インターネットを使った学習会は、「全国ネット」としてはじめての試みである。地域の壁を越えた全国レベルの情報交換が実現した。参加者は約100名を超えた。5Gの基地局から発せられるマイクロ波(ミリ波)による人体影響が海外で問題になっていることから、日本でも電磁波問題への関心が高まっている。

電磁波は光を例外として、視覚できないので、見過ごされがちだが、化学物質による汚染と並んで今世紀最大の公害である。人体影響に関する研究が本格的に始まったのは1980年代で、スマホに使われるマイクロ波については、国際がん研究機構(IARC)が、2011年に「発がんの可能性がある」ことを認定した。

発がん以外にもさまざまな人体への影響を及ぼす。次に紹介するのは、沖縄県の西崎病院の新城哲治医師が行った疫学調査である。

■KDDI系の沖縄セルラーの基地局をモデルにした疫学調査

【参考記事】東村山市の基地局問題、住民が楽天を撤退させる、電磁波学習会→署名集め→Kick out

 

【参考記事】埼玉県朝霞市のKDDI基地局問題-公園内に基地局を設置、基地局に関する情報を開示せず(全記事)

2020年07月23日 (木曜日)

新しい学習指導要領の施行が2020年度からはじまる。20年度の小学校を皮切りに、21年度は中学校、22年度は高等学校と段階的に、新しい教育方針が導入される。約10年ぶりの改訂で、内容についてはさまざまな評価があるが、わたしが最も好奇心を刺激されたのは、学校教育の中で新聞・テレビを教材として使うことの重要性が強調されていることである。

たとえば小学校の5年生の社会科で身に着ける知識や機能として、次のような記述がある。

「放送、新聞などの産業は、国民生活に大きな影響を及ぼしていることを理解すること」

「聞き取り調査をしたり映像や新聞などの各種資料を調べたりして、まとめること」

新聞・テレビが信頼に値するメディアという建前に立ってこのような項目が盛り込まれたことは疑いない。

中学校の学習指導要領になると、新聞・テレビを偏重する傾向は露骨になる。「社会生活の中から話題を決めるときは、地域社会の中で見聞きしたことや、テレビや新聞などの様々な媒体を通じて伝えられることなどの中から話題をきめる」とか、なにか行事があるときは「新聞やテレビなどから得られた資料を紹介するなどして生徒の関心を呼び起こし、地域で行われる活動に生徒が参画したり、教室に招いて専門家の話を聞いたりするなどの学習活動が考えられる」などと述べている。「新聞」、「テレビ」、「報道」、「メディア」、「論説」といった言葉が頻繁に登場する。

度が過ぎるというのがわたしの感想だ。

さらに高校になると、「日常的な話題について、新聞記事や広告などから必要な情報を読み取り、文章の展開や書き手の意図を把握する」と述べるなど、新聞をモデルにして作文の技術を習得させることまで明記しているのだ。はたして慣用句を散りばめた新聞の文章が日本語として最高のレベルなのか、はなはだ疑問があるが、そんなことはおかまいなしに、小学校から高校まで、新聞・テレビの重要性を強調しているのである。【続きはウェブマガジン】

2020年07月22日 (水曜日)

産経新聞の「押し紙」裁判のプロセスがおかしい。この裁判は、千葉県内の元新聞販売店主・Aさんが、「押し紙」による損害賠償を求めて、2018年に起こしたものである。裁判は、3月10日に本人尋問と証人尋問が行われた。

ほとんどが弁論準備(非公開)のかたちで開かれたので、裁判の進行を把握するためには、裁判資料の閲覧と当事者から直接話を聞くいがいに方法はなかった。わたしはAさんサイドから、裁判所が和解を勧めている旨を何度も聞いた。しかし、Aさんは、額が少ないことを理由に、和解を拒否してきた。1000万円以下では応じないと。

3月10日に、尋問で裁判は山場を越えた。裁判官は、産経に対してみたび和解を提案した。産経はこれを拒否した。しかし、それでも和解協議のための日程を設定した。

Aさんによると、この日も産経は和解を拒否した。Aさんも応じなかった。そこで裁判長は、判決を書くことを伝えた。これは実質的には裁判が結審したことを意味する。手続き論でいえば、別かも知れないが。Aさんサイドもそんなふうに認識していた。

その後、コロナウィルスの影響で東京地裁が閉鎖された。緊急事態宣言が解かれたあと、裁判所は業務を再開したが、産経「押し紙」裁判の日程は未定のままだ。

わたしは、最高裁事務総局がこの裁判を「報告事件」に指定したのではないかと疑いはじめた。そこで7月21日に、東京地裁に事情を問い合わせた。すると5月に裁判長と右陪席が異動になっていたことが判明したのである。

3月に裁判の審理が終わったわけだから、5月にはほぼ判決の骨子は出来ていたと推測される。が、まったく別の裁判官がこの事件を担当したのだ。再び口頭弁論が開かれるようだが、未だに期日が決まらない状態が続いている。

こうした流れからすると、裁判所は産経を勝訴させる判決が下される可能性が高い。新聞業界と裁判所は、どんな関係になっているのだろうか?通常、和解勧告を繰り返したということは、産経に賠償責任があると判断してことを意味する。Aさんを敗訴させるのであれば、金銭交渉させる必要はないからだ。

しかし、ジャーナリズムの検証はこれから10年ぐらい続くので、何が真実なのかはいずれ判明するだろう。

 

【参考記事】前立腺がん患者をモルモットに、「疑惑の判決」、滋賀医科大付属病院事件の総括

 【参考記事】裁判官の不可解な人事異動-木村元昭・田中哲朗の両氏、対読売の真村裁判・平山裁判・黒薮裁判で

2020年07月21日 (火曜日)

 

東京都東村山市廻田に楽天が予定していた基地局設置計画が、住民の反対で中止に追い込まれた。住民らは、今月4日に公民館で電磁波問題についての学習会を開催。その後、 基地局設置予定地を中心とするエリアで署名活動を展開した。約100筆の署名を集めて、楽天に提出したところ、楽天は計画を断念した。

5Gの時代へ向けて、電話各社はあちこちで基地局設置を進めている。それに伴いトラブルも多発している。電話会社の言い分は共通していて、自分たちは総務省の電波防護指針を守ってビジネスを展開するので、電磁波による人体影響は心配ないという無責任なものである。

しかし、総務省の電波防護指針は、1989年に決められたもので、それ以前の古い研究データに基づいたものである。その後の研究成果はまったく反映されていない。そのために、遺伝子毒性などの「非熱作業」を考慮に入れない危険な値のレベルだ。

ちなみに欧州評議会の勧告値が、0・1μW/cmであるのに対して、総務省の基準値はその1万倍の1000μW/cmとなっている。

 

KDDIによる公有地(埼玉県朝霞市の城山公園)への基地局設置問題に関する全記事

 

【参考記事】携帯電話基地局、周辺住民の『がん死亡率』高く…5G、スイスなど一部欧州で中止、人体へ影響懸念

 

 

2020年07月21日 (火曜日)

3月に結審したはずの産経新聞の「押し紙」裁判(東京地裁)で、5月に裁判官が交代していたことが分かった。異動になったのは、裁判長と右陪席。それに代わって新しいく野村武範裁判官石神有吾裁判官が就任した。左陪席は交代しなかった。現時点で、だれが裁判長に就任するかは未定。

わたしが本日、東京地裁の民事48部に確認したところ、この裁判はまだ結審していないとの説明があった。しかし、3月に尋問が行われた後、裁判長が被告と原告に和解を勧告しており、和解が成立しなかった場合は、判決を下すと方向性を示していた。

ちなみに裁判所が和解を勧告したということは事実上、被告・産経に何らかのかたちで賠償を命じる方向性を持っていることを意味する。原告を敗訴させるのであれば、和解勧告はしないからだ。つまり原告の勝訴が濃厚になっていたのだ。

裁判の終盤に裁判官が交代になり、奇妙な判決が下された例は数え切れない。典型例としては、裁判が結審した後、裁判官2名が交代した滋賀医大病院事件の判決である。

【参考記事前立腺がん患者をモルモットに、「疑惑の判決」、滋賀医科大付属病院事件の総括

不自然な裁判官の人事異動があったことからして、販売店側が敗訴する可能性が生まれてきた。「報告事件」に指定されたのではないかとの懸念も販売店サイドに広がっている。

判決までに、産経関連の裁判資料を公開して、ジャーナリズムの視点から裁判の検証を進める必要があるだろう。

2020年07月19日 (日曜日)

GO TOキャンペーンの断行、森友学園事件のもみ消し、黒川弘務検察官の不起訴・・・。このところ理不尽な現象が日常化している。さながら亡国の前兆のような予感がする。

あまり知られていないが、わたが最もおかしいと感じている事柄のひとつに、携帯電話の基地局に関する情報の非開示がある。総務省をはじめ地方自治体などに問い合わせても、基地局に関する情報が公開されることはまずない。電話会社も、企業秘密を理由に応じない。応じないが、基地局は設置させてくれと言ってくる。あげくの果てに、強引に設置工事を断行する。

その構図は、米軍に関する情報が、事実上、非開示になっている状況と類似している。他国の軍隊が日本に乗り込んで来て、日本人の主権を踏みにじっていながら、国も地方自治体も米軍に関する情報を機密あつかいにしているのと同じ構図だ。その構図が、通信基地局の関しても全国津々浦々まで浸透している。

通信基地局に関する情報が、いかに固く密閉されているかを知ったのは、わたしがいまジャーナリズムの土俵に乗せている埼玉県朝霞市のKDDI基地局問題が起きた後である。朝霞市に対して情報公開を申し立てても、KDDI側に問い合わせても、肝心な情報はほとんど開示されない。企業秘密を理由にして、公開を拒否している。

つまりKDDIに限らず基地局周辺の住民は、自分たちがどのような電磁波を被曝させられているのかをまったく知ることができないのである。被曝の期間がいつまで続くのかも不明だ。推測になるが、おそらく終わりがない。契約書も非開示だから、調査の方法がない。

さらに基地局の仕様が変更になっても、住民はそれを知ることができない。従って、電磁波による人体影響が現れても、裁判などでそれを立証することはできない。

病気になれば自治体や電話会社がどう責任を取るのかという根本的な質問しても、総務省の電波防護指針を守っているから、心配はいらないという無責任な答えしか返ってこない。意外に自覚されていないが、重大な情報隠蔽が住民の身近なところで起きているのだ。

 ◆◆
基地局に関する情報を開示させる運動は、現在のところ存在しない。住民運動にそのような視点もない。朝霞市のケースはおそらく最初の事例になる。

このところ全国各地で、基地局を設置させない運動や撤去の運動が広がっている。個々のケースを取材してみると、やはり情報の非開示という共通した問題がある。

以下に紹介するのは、朝霞市のKDDI基地局問題の時系列ノートである。わたしからの質問に対して、KDDI側がいかに情報開示に後ろ向きかが読み取れるはずだ。形式的には回答していても、肝心な部分は巧に避けている。

情報提供先:048-464-1413  (メディア黒書)

【時系列ノート⓮】
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【7月16日(木)】

KDDIエンジニアリングの藤田氏へ、回答を催促するメールを送付した。

以下、7月15日付けのメールを再送します。
すみやかに話し合いの大前提になる情報の開示をお願いします。

黒薮
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藤田智晃様
CC:大塚様

繰り返しますが、話し合いのたたき台となる①~⑧の資料をすみやかに提出してください。

なお、話し合いは基地局の設定を前提としたものではなく、あくまで設置の是非を話し合うものです。また、朝霞市内における今後のKDDI基地局設置に関する禁止事項も含みます。

コロナウィルスの感染が広がっているので、当面は、メールで意思疎通をはかりましょう。直接の面談は、感染が落ち着いた後に設定しましょう。

①電磁波の照射範囲をしめす地図

②想定される電力密度

③朝霞市との契約書(契約期間と賃料の調査目的)

④5Gへの切り替え時期と、その後の電力強度、及び照射範囲を示す地図

⑤住民説明を実施したことを示す書面

⑥電磁波過敏症が発生した場合の対策

⑦KDDIの担当者名

⑧KDDIが住民説明会を開いたことを裏付ける書面の提出日

黒薮

【7月17日】

質問に対して藤田氏から返答があった。以下の内容です。

黒薮様

KDDIエンジニアリング(株)
藤田です。

周辺にお住まいの方への対応として連絡させていただいております。
城山公園に設置する基地局に関して頂いたお問合せについて回答させて頂きます。

・電磁波の照射範囲をしめす地図と想定される電力密度についてですが、
社外に公開していない情報となりますので、回答は控えさせていただきます。
基地局は黒藪様のお住まいのマンションからは120メートル程離れておりますので、
当該基地局から到来すると思われる電波は国の安全基準の防護指針値を大きく下まわ
る数千分の1以下の値になると想定しています。

・朝霞市との契約書についてですが、当事者間の話であり回答は控えさせていただきます。
ご理解の程よろしくお願いいたします。

・5Gへの切り替え時期等についてですが、先に回答させていただいた通り、今回の設置
は800MHz帯であり、それ以外のシステムについては現時点での設置計画は未定である
ことから回答することはできません。ご理解の程よろしくお願いいたします。

・住民説明についてのお問合せについてですが、社内のルールに従い対応しております。
説明に関するお問合せについては、個人情報、弊社のノウハウに係わる情報開示はして
おりませんので回答は控えさせていただきます。ご理解の程よろしくお願いいたします。

・電磁波過敏症が発生した場合の対策についてですが、電磁過敏症の症状を電磁界ばく露
と結びつける科学的根拠はないものと認識しています。

・KDDIの担当者名についてのお問合せですが、周辺にお住まいの方への対応は、KDDIエ
ンジニアリングにて対応させていただいております。

どうぞよろしくお願いいたします。

 

【7月17日】

藤田氏の回答を受けて次のメールを送付した。

 

藤田様

下記の回答ですが、情報は公開しないが、基地局は設置するという貴社の姿勢がが露骨に現れています。これではまるで沖縄の米軍と同じではないですか。話し合いの前提となる情報を公開しないのであれば、住民はどのようなタイプの電磁波を被爆し続けるのかすら知ることができません。

今回の計画は、断念して、今後、朝霞市内には基地局を設置しない確約をしてください。

最大の問題は貴社が、1990年以前の古い研究データを基に作成された総務省の電波防護指針を鵜呑みにされていることです。繰り返し警告しますが、日本の電波防護指針は、規制になっていません。EU等を指標としてください。総務省の電波防護指針は、貴社らがビジネスを展開する口実になっています。

ちなみに都市公園法の7条については、どういう見解なのでしょうか。

来週中に、貴社の回答のうち未回答箇所を検証して、再度質問させていたきます。

黒薮

※なお、メールでの通信は公開が前提となっておりますので、ご理解ください。

-----Original Message-----
From: 藤田 智晃 <tok-fujita@k-eng.kddi.com>
Sent: Friday, July 17, 2020 6:18 PM
To: xxmwg240@ybb.ne.jp
Cc: 藤田 智晃 <tok-fujita@k-eng.kddi.com>
Subject: RE: 【再送】

■裏付け資料(3件)

2020年07月17日 (金曜日)

日本に電磁波問題を紹介した元京都大学講師の荻野晃也氏が6月29日に亡くなった。荻野氏は、1980年代の初頭に米国スリーマイル島での原発事故調査のために渡米され、たまたま米国の研究者から、送電線からもれる超低周波電磁波と小児白血病の関係が指摘されていることを聞いた。これを機に電磁波問題を日本に紹介したのである。

掲載した講演の動画は、2019年6月22日に東京・板橋グリーンホールで収録したものである。タイトルは、、「生活の中にひそむ電磁波被曝による身体への影響」。荻野氏の最後の講演となった。


経歴:1940年富山市生まれ。元京都大学工学部講師。理学博士。原子核工学・放射線計測などを専門とし原子力・電磁波問題に取り組む。「電磁波環境研究所」を主宰 。著書に『身の回りの電磁波被曝 』、『健康を脅かす電磁波 』など多数。

2020年07月16日 (木曜日)

朝霞市の城山公園内にKDDIが通信基地局を設置しようとしている問題で、筆者は、KDDIエンジニアリングの藤田智晃氏に、話し合いのたたき台となる資料を提出するように申し入れた。筆者は、これまでも繰り返し情報開示を求めてきたが、KDDIは企業秘密を理由に応じていない。

住民を被曝させる電磁波に関するデータを住民に対して非公開にするのは理不尽ではないか、というのが筆者の考えである。

米軍基地に関する情報は一切公開されないが、それと同じ原理が通信基地局についても働いている。電話会社はもちろん、地方自治体も国もそれを当然のことにしている。この点に、今後、裁判などを通じてメスを入れる必要がある。

藤田氏への申し入れメールは次の通りである。筆者の要求は、城山公園への基地局計画を中止するだけではなく、今後、朝霞市にKDDI基地局を設置しない確約の締結である。

ビジネスを展開するのは自由だ。しかし、住民の生命にリスクを負わせてはいけない。また、朝霞市は市民の権利よりもKDDIのビジネスを優先してはいけない。以下、藤田氏へ宛てたメールである。

藤田智晃様
CC:大塚様

 繰り返しますが、話し合いのたたき台となる①~⑧の資料をすみやかに提出してください。

 なお、話し合いは基地局の設定を前提としたものではなく、あくまで設置の是非を話し合うものです。また、朝霞市内における今後のKDDI基地局設置に関する禁止事項も含みます。

 コロナウィルスの感染が広がっているので、当面は、メールで意思疎通をはかりましょう。直接の面談は、感染が落ち着いた後に設定しましょう。

①電磁波の照射範囲をしめす地図

②想定される電力密度

③朝霞市との契約書(契約期間と賃料の調査目的)

④5Gへの切り替え時期と、その後の電力強度、及び照射範囲を示す地図

⑤住民説明を実施したことを示す書面

⑥電磁波過敏症が発生した場合の対策

⑦KDDIの担当者名

⑧KDDIが住民説明会を開いたことを裏付ける書面の提出日

 黒薮

 ■裏付け資料

 

【参考記事】KDDIから自民党の政治資金団体へ政治献金、3年で1800万円、総務省は骨抜きの電波防護指針を放置

2020年07月15日 (水曜日)

5Gの普及に伴って、通信基地局の設置をめぐるトラブルが続出している。今年になってからわたしのところに相談のあった件数は、KDDI3件、楽天2件、ドコモ1件、ソフトバンク1件。各社とも、競って基地局を設置している。

その光景は、金脈を求めてラテンアメリカに押し入ったスペインの征服者を連想させる。金脈があれば、先住民の意思など無視して、収奪を繰り返したのである。異常な金銭欲を露呈した。

現代史では、商社マンが第三世界へ進出して、さまざまな物質の収奪に奔走した。かれらも金銭にしか目がなくエコノミック・アニマルと呼ばれた。

5Gビジネスにも同じような側面がある。住民には安全に暮らす生活権や環境権があるが、電話会社はそれには配慮せずに、ビジネスのためには、ところかまわず基地局を設置する。しかも、驚くべきことに、住民に対して、電磁波のリスクを知らせない。総務省の基準に従って操業するので安全だとふれまわっているのだ。

わたしはKDDIに対して、次の情報開示を請求しているが、回答する気がないらしい。企業秘密ということらしい。

①電磁波の照射範囲をしめす地図

②想定される電力密度

③朝霞市との契約書(契約期間と賃料の調査目的)

④5Gへの切り替え時期と、その後の電力強度、及び照射範囲を示す地図

⑤住民説明を実施したことを示す書面

⑥電磁波過敏症が発生した場合の対策

情報が開示されないまま基地局が稼働すると、住民は自分が被曝する電磁波のタイプすら知ることができない。モルモットにされるのである。しかも、KDDIの計画を朝霞市(富岡勝則市長)が全面的にサポートしているのだ。KDDIに対して公園内の共有地を提供したのである。

◆◆
電話会社は、総務省が定めた電波防護指針を守って基地局を操業するので、問題はないというが、これはまったくの嘘と断言しても過言ではない。総務省が定めた電波防護指針には次のような問題がある。

1、1989年に設定されたもので、裏付けとなったデータがあまりにも古いこと。電磁波の安全性に関する研究が本格的に始まったのは、1980年代になってからである。そして2011年には、WHOの外郭団体IARCが、マイクロ波に発がん性がある可能性を認定した。IARCは現在、発がん性の危険度のレベルをランクアップする方向にある。

2、古いデータに基づいた電波防護指針なので、マイクロ波のもつ遺伝子毒性を考慮していないこと。遺伝子毒性とは、遺伝子を破壊することを意味する。当然、癌のリスクが高くなる。

EUの電波防護指針0.01μW/㎠  (室内、推奨値)は、日本の1000μW/㎠に比べて、10万倍の厳しさである。マイクロ波に遺伝子毒性があるとする、新しい研究結果を踏まえているからにほかならない。

総務省の電波防護指針を守っていれば、安全だと説明するのは、いまやペテンに等しい。

◆◆◆
電話会社がいう説明会とは、自分たちが主張する安全性の理論をPRするだけで、住民と対等な立場で、電磁波問題を議論するという性質のものではない。基地局を設置することを前提とした説明会なのである。それゆえに、基地局に関する情報は、企業秘密を理由に開示しないのが原則となっている。

市民の安全よりも、KDDIのビジネスを優先する富岡勝則市長の方針が間違っているのである。朝霞市議は、責任を追及すべきだろう。

2020年07月14日 (火曜日)

KDDIエンジニアリングの藤田氏から、話し合いの申し入れがあった。わたしはコロナウィルスの感染が広がっているので、少し様子を見ることを提案。文面でのやり取りを提案した。

そして改めて話し合いの前提となる情報を開示するように提案した。

黒薮様

KDDIエンジニアリング(株)
藤田です。

周辺にお住まいの方への対応として連絡させていただいております。
城山公園に設置する基地局に関して頂いたお問合せについて回答させて頂きます。
もし、可能でございましたら、お会いしてご説明させていただけないでしょうか。

・基地局の仕様についてですが、コンクリート柱でアンテナの高さは14.9mとなります。

・近隣の方々への説明についてですが、社内のルールに従い対応しております。
説明に関するお問合せについては、個人情報、弊社のノウハウに係わる情報開示はしておりませんので回答は控えさせていただきます。

・朝霞市からご指摘いただいた看板の設置方法について是正とともに是正状況について
社内で確認を行い、問題のないことの確認が取れ次第工事は予定通り実施いたします。

どうぞよろしくお願いいたします。

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わたしからの返信は次の通りである。

 

藤田様

話し合いは、基地局を設置するために形式的に行うものではなく、必要な情報をすべて開示した上で行うものです。対等な話し合いの条件が不可欠です。
まず、基地局の将来の運用方法も含めて、情報をちゃんと開示してください。現段階では、朝霞市と貴社の契約書すら公開されていません。5Gへの切り替えの時期も不明です。これでは近隣の住民は、どの程度の強度の電磁波をどの程度被曝するのかすら不明です。

説明を形骸化して工事を進めることは認めません。基地局を設置することを前提とした話し合いではなく、どう解決するが大事です。わたしとしては、城山公園の基地局はいうまでもなく、今後、朝霞市には基地局を設置しないと確約していただくつもりです。

貴社がすみやかに情報公開をされないようであれば、話し合いの前提条件が揃いません。それを無視して、工事を強行されるようであれば、朝霞市に対して行政訴訟を提起することになります。説明義務を果たしてください。

この案件は、都市公園法の7条に違反しています。貴社のビジネスに公有地を提供するだけで、公益性はありません。大半の住民にはメリットがありません。

直接話し合いたいというのであれば、コロナウィルスの感染が終息した後に設定してください。感染状況を少し様子をみましょう。当面の間は、文書でやり取りしましょう。貴殿は、これまでほとんど何も説明されていません。

わたしとしては、今後、朝霞市の情報公開請求の不開示部分について、不服(異議申し立て)の手続きを取ります。貴社のビジネスに、住民が健康被害のリスクを承知のうえで協力する理由はありません。まずKDDIの高橋社長の自宅の直近に基地局を設置して、人体影響を検証されるのがすじかと思います。

1点確認ですが、昨年の7月から8月にかけて、貴社が住民説明を実施したというのは事実でしょうか。報告書の類を市に提出された日を教えてください。

KDDI本社の担当者名を明らかにしてください。

黒薮

■裏付け資料

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以下、追伸である。

とりあえず至急に、次の情報を開示してください。

①電磁波の照射範囲をしめす地図

②想定される出力・密度

③朝霞市との契約書(契約期間と賃料を明らかにしてください)

④5Gへの切り替え時期と、その後の電力強度、及び照射範囲

⑤住民説明を実施したことを示す書面

⑥電磁波過敏症が発生した場合の対策

黒薮

■裏付け資料

 

【参考記事】朝霞市・富岡勝則市長が質問状に回答、城山公園のKDDI基地局問題、時系列ノート⑥

2020年07月13日 (月曜日)

手術のモルモットにされかけたとして4人の前立腺癌患者が、滋賀医科大医学部付属病院(以下、滋賀医大)の2人の泌尿器科医に対して総額440万円の損害賠償を求めた裁判で、大津地裁は2020年4月14日、原告の訴えを棄却した。大阪毎日放送や朝日新聞など主要メディアが、提訴から注視してきた事件で、原告の勝訴を確実視する見方が固まっていた事情もあって、判決は物議をかもした。

この裁判が結審したのは、昨年の12月。その後、最高裁事務総局は、3人の裁判官のうち2人を異動させた。判決を読み上げたのは、原告にも被告にも面識のない裁判長だった。

判決文に前裁判長の捺印はなく、「転補のため署名捺印することができない」と但し書きが付されていた。判決の直前に最高裁事務総局が裁判官の人事異動を行うこと自体は珍しくはないが、この裁判に関心を寄せてきた人々の多くが不信感をいだいた。原告弁護団の主張がほとんど認められているにもかかわらず、請求が棄却されたからである。

◆前立腺癌で7年後の非再発率が97%に

前立腺患者に対する小線源治療とは、放射線を放つ放射性物質を包み込んだシード線源と呼ばれるカプセルを前立腺に埋め込んで、そこから放出される放射線でがん細胞を死滅させる治療法だ。1970年代に米国で始まった療法で、その後、改良を重ねて日本でも今世紀に入るころから実施されるようになった。

この裁判に原告の補佐参考人として参加した岡本圭生医師は、岡本メソッドと呼ばれる独自の小線源治療の開発者であり、昨年12月まで滋賀医大で治療に携わっていた。

2005年から1238例の小線源治療を実施した。2017年に海外の医療誌医学誌『ジャーナルオブコンテンポラリーブラキセラピー(Journal of Contemporary Brachytherapy)』に発表した論文では、リンパ節転移を起こした症例を含む高リスクの前立腺がん患者における5年後の非再発率が95.2%とする治療成績を発表していた。

今年の2月には、やはり同誌に中間リスクの前立腺患者に対する岡本メソッドの治療成績を紹介する論文を発表した。それによると手術後七年の非再発率は99.1%だった。この論文は、2005年から16年の期間に、中間リスクの前立腺がん患者397人に対して実施した岡本メソッドの成績を報告したものである。

なお、論文が医学誌に掲載されたということは、科学者や医師が査読により論文内容の妥当性と信頼性を認めたことを意味する。岡本医師の手にかかれば、前立腺癌はほぼ征服されたのである。

実際、岡本医師の治療を希望する患者は多く、『手術数で分かる病院』(週刊朝日Mook)の2020年版(データは2018年の統計に基づき作成されたもの)によると、前立腺がん治療件数の近畿地区ランキングで、滋賀医大は突出した1位である。この実績に大きく貢献したのが岡本医師なのである。

裁判を起こした原告4人のうち2人は、小線源治療を希望して滋賀医大を受診していながら、岡本医師の治療を受ける選択肢があることを知らされなかった患者である。他の2人は、岡本医師の治療を受けることを希望して受診していながら、小線源治療の経験がない医師の担当にされた患者である。いずれも、手術の前段で不適切な医療措置を受けた。

◆同じ病院で小線源治療の窓口が2つに

事件の発端は、2015年までさかのぼる。この年の1月、滋賀医大に岡本メッソドに特化した講座と外来が開設された。岡本メッソドの卓越した成績に注目した日本メジフィジックス社がスポンサーとなる寄付講座だった。岡本医師は、それまで所属していた泌尿器科から独立して、寄付講座の特任教授に就任した。そして独立した立場で岡本メソッドのさらなる進化と普及に向けてスタートするはずだった。

ところが「出る杭は打たれる」という諺どおり、病院内に岡本医師の活躍を快く思わない医師らがいた。泌尿器科長の河内明宏教授と彼の部下である成田充弘准教授である。2人は大胆不敵な行動へ踏み込んでいく。岡本医師による小線源治療に対抗するかのように、自分たちで泌尿器科独自の小線源治療を行う計画を立て、新しい患者を秘密裡に泌尿器科へ誘導し始めたのである。そのプロセスの中で、岡本メソッドの選択肢があることを患者に告げない対応が繰り返された。告げれば患者が岡本医師の治療を希望するので、泌尿器科独自の小線源治療が実施できなくなるからだ。

実際、23名の初診患者が泌尿器科独自の小線源治療へ誘導された。後日、多くの患者らが真実を知り河内医師らの説明義務違反を疑うようになる。そして4人が患者を代表して提訴に踏み切ったのである。

患者らを激怒させたのは、河内医師と成田医師が小線源治療の経験がまったくないことを隠していたことである。成田医師はダビンチ手術が専門だった。同じ前立腺癌の治療とはいえ、小線源治療とはまったく異なる手技である。

成田医師も小線源治療には乗り気でなく、岡本医師の治療を一度見学したというレベルであった。岡本医師はせめて6ケ月間くらいは治療を見学してから執刀すべきであると助言したが、拒否された。つまり未経験のまま、手術室で初めて器具を扱い小線源の埋め込み手術を執刀する計画を譲らなかったのである。

最初の執刀が近づいた時期に、岡本医師は成田医師から「患者が苦しんだときは、その時点で助太刀してくれればよい」と、言われたらしい。河内教授も岡本医師に対して、成田医師が執刀する未経験小線源治療に立ちあうように命じた。岡本医師が患者の人権侵害を理由に断ると、「論文もだせていないくせに」と罵った。

その後、塩田浩平学長がコンプライアンスと倫理的理由から、泌尿器科による小線源治療を中止させ23名の治療は岡本医師に委託した。

が、真相を知った患者らがモルモットにされたと怒りはじめた。岡本医師も、松末吉隆病院長に対して、説明義務違反を認め、患者に謝罪するように進言した。これに対して松末病院長は「泌尿器科の企ては劣悪であった」と認めながら、事件の隠蔽に走る。寄付講座の終了を宣言して、岡本医師を大学病院から追放する方向で動き始めたのである。

岡本医師は、寄付講座の特任教授に就任した時点で、大学病院の常勤職員ではなくなっていたので、寄付講座の終了と同時に失職することになる。岡本メソッドが医療現場から追放される危機が生まれたのだ。

それにもかかわらず岡本医師の治療が受けられることに望みを託した患者もいた。たとえば東京在住の山口淳さんである。山口さんは、地元の病院で高リスクの前立腺癌を宣告され、医師から素っ気なく、

「切ってさっぱりしましょう」

と、言われた。しかし、高リスクの場合、前立腺を摘出しても5年後の再発率は、50%から30%ぐらいある。前立腺癌をあまく見ていたのである。山口さんは帰宅するとインターネットで別の病院を探しはじめた。

山口さんと同じような道をたどった「待機患者」のうち、7人が大津地裁に治療妨害の中止を求める仮処分を申し立てた。岡本医師も申立て人に加わった。説明義務違反を問う裁判を起こした4人の患者を支援する患者会も、仮処分申立事件を支持した。

仮処分は認められ、岡本医師による治療は2019年11末までの5カ月間延長された。これにより結果的に、約50名の前立腺患者の命が救われたのである。

◆誹謗中傷という裁判戦術

高齢者を中心とした癌患者らが法廷闘争を2件も起こす大事件になったのは、そもそも成田医師らが、治療の選択肢として岡本メソッドがあることを説明しなかったことが原因である。患者が執刀医を選ぶ場合、海外でも認められている「神の手の持主」の選択肢がありながら、執刀経験ゼロの医師を選ぶはずがない。それゆえ成田医師らが故意に説明義務を回避したであろうことはほぼ明白である。

説明義務違反を問う裁判の中で、河内教授と成田准教授を擁護するために滋賀医大が取った戦略のひとつに岡本医師に対する誹謗中傷があった。最初、筆者は誹謗中傷は単なる敵愾心の露呈だと思っていたが、やがて裁判戦略であることに気付いた。岡本メソッドが実はごくありふれた治療であるという印象を流布させることで、患者に選択肢として岡本メソッドに関する情報を提供するには及ばないとする主張を展開するための布石だったのである。

そこでたとえば針検診(針を刺して癌細胞の有無を調べる検査)ができる医師であれば、誰でも小線源治療はできるという主張を繰り返した。尋問法廷で成田医師は、弁護士から岡本メソットの難易度を質問され、次のように答えている。

「はい。まあ、そんな事故が起こるような難しい治療なんていうことは全く思っておりません」

言外に自分にも岡本メソッドは実施できると主張しているのだ。

また、同じ脈絡の中で病院側は岡本メソッドによる合併症を過去にさかのぼって探り出そうとした。合併症の多い治療というレッテルを貼れば、患者に岡本メソッドの選択肢を示さなかったことが正当化できるからだ。

この目的を達成するために、松末院長が自ら先導し、目を覆う捏造とでっち上げを行った。過去に岡本医師が治療した患者の電子カルテを密かに閲覧したのである。朝日新聞(2019年11月19日)の報道によると、小線源治療で合併症が発生した可能性があると判断した20症例(21事例)のカルテのコピーを岡本医師や患者の許可なく16人の外部委員医師に送り、評価を依頼したのである。

そして外部委員からの評価に基づき直腸出血や血尿などが起きた13事例を「重篤な合併症」とする報告書を作成した。だが、外部委員による検討会は行われなかったという。外部委員が誰かも公開されていない。滋賀医大は、このいわくつきの報告書を裁判所に証拠として提出した。その中で、膀胱癌患者の出血を、岡本メソッドによる放射線性尿道炎などとするでっち上げの主張をおこなったりした。

ちなみにカルテの閲覧は、誰でも自由にできるわけではない。主治医と患者本人を除いてその権限はない。閲覧歴が残っていたために、このような病院の不正な裁判対策が発覚したのである。また、カルテを主治医や患者の許可を得ずに病院外へ持ち出すこともできない。

この件は、尋問法廷でも問題になり松末院長は、原告の井戸謙一弁護士から尋問され、結局、不適切な行為であったことを認めた。

「そうすると、件数からして、もう(注:閲覧数が)1000件以上になりますか」

「1050ですね」

「何人の、これはお医者さんがレビューされたんですか」

「そうですね」

「何人のお医者さんがレビューされたんですか」

「それは、トータルで10名以上ですね」

岡本メソッドに対する誹謗中傷は大学病院のウェブサイトでも行われた。松末病院長の名前で、前立腺癌の治療タイプ別の成績を示す比較データが掲載されたのだが、これが悪質な印象操作だったのだ。

そのデータによると高リスク前立腺がんの5年非再発率は、岡本メソッドが95.5%、弘前大学のダビンチ手術が97.6%、京都府立医大の通常の小線源治療が94.9%などとなっている。かりにこのデータに数字のトリックがないとすれば、岡本メソッドは特別な治療法ではなく、あえて治療の選択肢として説明する必要がないことになる。

ところが出典論文を調べてみると、比較対象となる患者背景がまったく異なっていたのだ。たとえば弘前大学の場合、平均観察期間は2年9カ月しかなく、97.6%というのは単に計算上の数字なのだ。しかも、この期間はホルモン療法(抗がん剤療法の類)の効果が持続しているので、再発はほぼありえない。これ以外にも岡本論文では比較の対象になった他の治療法と医療機関に比べて、圧倒的に悪性度の高い癌患者群を対象としていた。

このように滋賀医大は、岡本メソッドの評価を落とすことで、説明義務違反の認定を逃れる戦略に終始したのである。

◆論理が破綻した判決文

大津地裁は、肝心な部分について原告側の主張をほとんど認めた。たとえば泌尿器科独自の小線源治療と岡本メソッドの違いについては、「これらは質的に異なるものであって、補助参加人による小線源治療は、被告成田による小線源治療と選択可能な治療方法と位置付けることができる」と認定した。また、岡本メソッドによる合併症報告書についても、

「一定の根拠を伴って具体的な検証を示すものでない以上、医療水準として確立されているとの上記判断を左右するものではない」と判断している。このように岡本メソッドを誹謗中傷する戦略はことごとく失敗に終わった。

ではなぜ原告患者らが敗訴したのだろうか。それはまず、成田医師が執刀する場合も、放射線科の経験豊富な医師がパートナーになることに加えて、成田医師が岡本医師の支援が得られると考えていたことである。それゆえ故意の説明義務違反ではないという判断である。しかも、成田医師自身も「前立腺がん治療について経験豊富な泌尿器科の医師である」から、「大学病院で想定される医療水準」を満たさないとまでは言えないと判断したのである。職能の高い3人の医師相互の協働を前提とているので、岡本メソッドについて説明しなくても、一定の医療水準を維持できると判断したのである。

ところが、その一方で判決は、泌尿器科独自の小線源治療と、岡本医師との関係について、「医療チームとして質の高い治療を実現するという関係にあったと認めることもできない」と認定している。また、成田医師についても、「供述態度は、真摯に真実を述べる姿勢に欠けるものとして、その信憑性全体を滅殺するものというほかない」と認定している。要するに信用できない人間だと言っているのだ。これらの認定事実と判決理由がまったく噛み合っていない。

さらに2人の原告患者について、裁判所は説明義務違反を認めたが、「その経緯がどうであれ、結果として補助参考人の小線源治療を受けることができたのであるから」(判決)損害は発生していないと判断したのだ。

この判決を注意深く読むと、論理の整合性が破綻していることが露呈する。

松末病院長は次期学長と目されていたが、候補者からも外れ、滋賀医大を去った。現在は、民間病院に一般医師として勤務している。この病院のウェブサイトの経歴欄には、京都大学医学部卒とあるだけで、滋賀医大病院長などの輝かしい経歴は記されていない。記憶の削除。滋賀医大事件は、なかった事として闇の奥へ消し去られようとしているのである。

 

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