2015年11月05日 (木曜日)

NHKなどのマスコミが南沙諸島問題で日中戦争の危機を煽りながら、暗黙のうちに安保関連法の存在意義をPRしている。こうした状況の下で、「経団連の榊原定征会長ら経済界首脳が参加する日中経済協会」が中国を訪問して、6年ぶりに中国政府の幹部と会談した。時事通信は次のように報じた。

経団連の榊原定征会長ら経済界首脳が参加する日中経済協会(会長・宗岡正二新日鉄住金会長)の訪中団は4日、中国の李克強首相と人民大会堂で会談した。

  この中で、日本側が知的財産権の保護強化や日中韓の自由貿易協定(FTA)交渉推進などを求めたのに対し、李首相は「積極的に進める」などと応じ、日本からの投資拡大に期待感を示した。

  中国の首相が日中経協の訪中団と会談したのは6年ぶり。李首相は「皆さんの訪中は中国との経済協力を深化させることに期待を抱いていることを表していると思う」と歓迎する意向を示し、榊原会長は「中国は日本にとって最も重要でかけがえのない隣国であり、パートナーだ」と応じた。

  中国経済の減速が懸念される中、李首相は「今後5年間で年平均6.5%以上の成長が必要だ」と安定成長を目指す方針を説明。「成長率は鈍化しているように見えるが、絶対量(金額)で見れば例年以上の成長をしている」と強調した。

昨日(4日)付けのメディア黒書でも述べたように、中国は日本にとって最大の貿易相手国である。2013年度の対中国輸出は302,852億円で、米国の197,430億円を大きく上回っている。比率にすると中国は、輸出全体の20.1%で第2位の米国の(13.1%)を大きく上回っている。

この数字から推測されるように、日中戦争が勃発して最大の損害を被るのは、日米の財界である。こんなことはわざわざ念を押すまでもなく、明白なことだが、案外理解していないメディアが多いようだ。

南沙諸島問題をめぐる緊張の高まりを根拠に戦争勃発の可能性を公言して、安保関連法の正当性、あるいはそれをごり押しした安倍首相の選択の正当性をPRする。こうした傾向が広がっている。

ただ、それが見識不足から来ているのか、悪意が原因なのかは判断のしようがない。かりに見識不足とすれば、それは具体的には基本的な歴史観の誤りである。歴史を動かす要素は何かという問題に対する答えの誤りである。

◇ナポレオン・坂本龍馬・・・

われわれが受験教育の中で教えられた歴史観、あるいはメディアの影響で自覚なしに身に着けている歴史観は、いわゆる英雄史観と呼ばれるものである。たとえばナポレオンや坂本龍馬など、英雄的な人物の出現によって社会が変革したとする考えである。

それゆえに「もし、30年前に小泉純一郎が首相になっていたら、日本に『失われた20年』はなかった」などと平気で言う。

しかし、政策というものは、政治家個人の判断で決まっているわけではない。安保関連法にしても、安倍首相の個人的な思想をよりどころにして制定されたわけではない。政策の方向を決めているのは、その時代の経済を牛耳っている人々である。安倍氏は、実働部隊として先頭に立っただけに過ぎない。

安保関連法が米国と日本の財界からの要請であったことは、たとえば米国のアーミテージ報告や経済同友会の過去の提言を検証すれば裏付けを取ることができる。

財界がどういう要望を持っているかを無視して、日本の政策は決定されない。たとえば90年代に小選挙区制が導入されたが、これは類似した政策を柱とする2大保守政党により、どちらが政権を取っても確実に新自由主義=構造改革の導入を進めていきたいという財界の要望の結果にほかならない。

そのためには、自民党を分裂させるのが得策だった。すなわち反対派を形成することを特技とした(元)急進的な新自由主義者・小沢一郎氏に活躍の舞台が巡ってきたのである。小沢一郎氏が急進的新自由主義者であったことは、彼の著書『日本改造計画』などで明らかだ。冒頭から、自己責任論を展開している。

安倍首相が政権の座に就くことができたのも、極右思想という多少の問題はあっても、彼のような独断的な人でなければ、反対の世論が強い安保関連法を成立させることが難しいからである。つまり舞台裏には、政治を牛耳っている人々がいるのだ。その面々が、今回、集団で中国を訪問したのである。

橋下徹氏が地方政党にこだわっているのも、大阪都構想に象徴されるように新自由主義=構造改革の最終段階として、地方分権の政策が想定されているからにほかならない。地方政党は、新自由主義の政策の「受け皿」である。従って、「維新の党」は必然であって、斬新な存在でもなんでもない。

先ほどわたしは、日中戦争はあり得ないと書いたが、それならなぜ自民党などは、安保関連法を強行採決したのだろうか。あるいは安保関連法は、地球上のどの地域を想定したものなのだろうか?

この点に関しては、軽々しいことは言えないが、あくまでもわたしの直観で言えば、中東やアフリカの可能性が高い。

2015年11月04日 (水曜日)

安倍内閣の支持率が若干回復している。次に示すのは、大手メディアによる世論調査の比較である。

【10月30日朝日新聞デジタル】
(30%台半ば→41%)

世論の反対が強い安全保障関連法の成立に突き進んだ結果、安倍内閣の支持率は30%台半ばまで落ち込んだが、内閣改造を経た今月の調査で支持率は41%まで上昇した。一方、安保関連法への反対が半数程度を占める状況は、依然として変わっていない。データをみると、経済政策への期待感が背景にあることが浮かび上がる…

【読売新聞】
(41%→46%)

読売新聞社は、第3次安倍改造内閣が発足した7日から8日にかけて緊急全国世論調査を実施した。安倍内閣の支持率は46%で、前回調査(9月19~20日)から5ポイント上昇し、不支持率は45%(前回51%)に下がった。安全保障関連法が成立した直後の前回は、支持率が下落して不支持率を下回っていた。今回は支持率がわずかながら不支持率を上回り、拮抗きっこうした。

【時事ドットコム】
(38/5%→39.8%)

  時事通信が9~12日に実施した10月の世論調査によると、安倍内閣の支持率は前月比1.3ポイント増の39.8%で、5カ月ぶりに増加に転じた。不支持率は同3.6ポイント減の37.7%で、3カ月ぶりに支持率を下回った。

あくまで大メディアによる世論調査に信憑性があるという前提で、内閣支持率が回復した要因を考えてみると、経済政策への期待感だけではなく、ひとつには大メディアが南沙諸島問題を重点的に取り上げて、日本の軍事大国化を「やむを得ない」とする世論を形成していることがあげられるだろう。

4日のNHKニュースも、インドネシアで中国に対抗するために、軍による警備が強化されていることを報じていた。ボートに武装した兵士が乗り込んで、海上を警備しているビデオが公開された。

また、中国海軍の戦艦に守られた中国漁船が密漁を繰り返して、現地の漁民の収入が激減しているとも報じていた。映像で状況が紹介されたわけだから、これらの実態は少なくとも事実が含まれていることは疑いない。問題の全体像を報じたのか、それとも我田引水のかたちで安倍内閣に都合のいい部分だけを報じたのかは別として、報じられた事実を否定することはできない。

こうした画像が次々と画面に登場すると、おそらく多くの人々は、安保関連法で揺れた国会を思い出して、「やっぱり安倍さんが正しかった」と思うだろう。内閣支持率の上昇にもつながる。

ただ、NHKも民法も公権力や企業から完全に独立したメディアではないので、世論誘導されていることも念頭に置かなければならない。湾岸戦争で、油にまみれた真っ黒や鳥の映像がやらせだった事は、今や認定済みとなっている。イラクに化学兵器がなかったことも明らかになっている。メディアは常に世論誘導の道具として、公権力に協力するのだ。

◇日中戦争を予測する愚

こうした状況の下で、当然、中国と日米の間で戦争が起きるのではないかと発言している識者が現れている。が、この考えがいかに愚論であるかは、次の数字を見れば明らかだ。

【日本の対中国輸出】

対中国:302,852億円(20.1%)

対米国:197,430億円(13.1%)

【米国の対中国輸出】

米国から中国への輸出については、谷口智彦(たにぐち・ともひこ)慶應義塾大学大学院SDM研究科特別招聘教授によると、「2010年までの10年間で、米国から中国への輸出額は468%伸びた。131%で伸び率2位のブラジル向けを超絶する突出ぶりである。」(WEDGE)

米国も日本は経済的に中国に大きく依存している。こうした状況のもとで中国との戦争になれば、もっとも損害を受けるのは日米の財界である。

日本の財界や米国政府が従軍慰安婦の問題や靖国神社の問題で、必ずしも安倍内閣を支持しないゆえんにほかならない。
それに政治の方向性は、安倍首相の個人的な思想で左右されているわけでない。もちろんそうした要素も皆無ではないが、それよりも政界の舞台裏にいる人々、つまり日本経済を牛耳っている財界が政治を動かしているのだ。その財界が中国を敵視しているはずがない。彼らは、金さえ手にできれば、誰とでも手を組むのだ。

日中戦争の可能性を指摘する識者には、日本の軍事大国化に加勢しようという意図があるようだ。そもそも政治の力学が分かっていない。天才的な政治家、たとえばナポレオンのような人物が登場すれば、世の中が変革を遂げるわけではない。英雄史観は時代錯誤だ。歴史観そのものが根本的に間違っているのだ。

2015年11月02日 (月曜日)

 1日に発売になった『ZAITEN』(財界展望社)に、黒薮の記事が掲載されました。タイトルは、「キャンデーズの生みの親に刑事告訴されたソニー・ミュージックの〝悪い手癖〝」。

「キャンデーズの生みの親」とは、米国在住の作曲家・穂口雄右氏である。穂口氏は、「春一番」、「微笑がえし」、「年下の男の子」など数多くのヒット曲をてがけた。

この刑事告訴には前段がある。それはレコード会社など31社が穂口氏に対して2億3000万円の金銭支払いを要求した著作権裁判である。この裁判については、MyNewsJapanやメディア黒書でも報じた通りである。わたしはこの裁判を恫喝訴訟、あるいはスラップだと考えている。

従って、今回の刑事告訴には、前訴の「戦後処理」の意味があるようにも感じられる。

参考までに、前段の裁判が終わった直後に穂口氏に対して行ったロングインタビューを紹介しておこう。

■ソニーなどレコード会社31社が仕掛けた2億3000万円の高額裁判に和解勝利した作曲家・穂口雄右氏へのロングインタビュー(上)

■ソニーなどレコード会社31社が仕掛けた2億3000万円の高額裁判に和解勝利した作曲家・穂口雄右氏へのロングインタビュー(下)

2015年10月30日 (金曜日)

このところマスコミによる中国脅威論が広がっている。たとえばNHKは、「アメリカ軍の艦艇 中国の人工島に接近か」(10月27日 9時52分)と題する記事をウエブサイトに掲載している。これは放送されたニュースの文字版のようだ。

複数の欧米メディアは、南シナ海で人工島を造成し主権の主張を強める中国に対し、これを認めない立場を取るアメリカ政府が、人工島から12海里以内で軍の艦艇を航行させることをオバマ大統領が決断したと報じました。(略)

  アメリカ政府は、人工島は国際法上、領海の基点とはならないため、軍の艦艇を近づけても問題はないとしていますが、これまで中国側は主権の侵害に当たるとして批判してきました。アメリカ政府は今のところ、報道の確認を避けていますが、実行されれば中国の強い反発は必至で、米中間の緊張が高まることが予想されます。

改めて言うまでもなく、暗礁を埋め立てて人工島を設置し、そこに軍事基地を置く行為にはさまざまな問題を孕んでいる。人工島の周辺国にとっては、脅威の存在になることは言うまでもない。中止すべき戦略だ。

しかし、軍事大国化を進めているという点からすれば、歴代ホワイトハウスは中国政府の比ではない。アフガニスタンやイラクにおける米軍の軍事行動を見れば一目瞭然である。実際にこれらの国を空爆し、軍隊を送り、殺戮行為を働いたことは周知の事実である。しかも、イラクの場合は、侵攻の理由とされた化学兵器が存在しなかったことも明らかになっている。

アフガニスタンやイラクの以前にも、米軍はラテンアメリカをはじめ、世界各地に軍事基地を設置して、「解放」を口実に軍事介入してきた。

が、米国の軍事大国化に関しては、NHKはむしろ理解を示す視点から報じてきた。わたしが知る限りでは、絶対に「侵略」という言葉は使わなかった。

◇「中立」という勘違い

現在、日本には、自国の軍事大国化に関連して2つの住民運動がある。沖縄の基地問題に反対する住民運動と安保関連法に反対する住民(市民)運動である。これら2つの案件が引き金になり、安倍政権の支持率は相対的には低落している。特に沖縄では、安倍政権に対する憎悪が住民の間に広がっている。辺野古の埋め立てをめぐり沖縄県と国が法廷で争う日が近づいている。

この時期に米軍の艦艇が中国の人工島の近くを航行し、それをNHKが報じれば、沖縄の米軍基地を容認して、安保関連法を運用する方針もやむなしという世論が広がるのはいうまでもない。市民たちは安保関連法案に反対して国会議事堂を包囲したが、「やはり安倍さんが正しかった」ということになりかねない。

今回の米艦艇による人工島接近の戦略をだれが決めたのかは分からない。特定秘密保護法の壁に阻まれて知りようもない。が、何者かが安倍政権に加勢するために仕組んだ策略の可能性もゼロではない。わたしはむしろ意図的な計画があったと推測する。そしてNHKとのあうんの呼吸で、ニュースを垂れ流したとも考え得る。

NHKがこれまで一貫して米国・中国の軍事大国化を批判してきた過去があるのならまだしも、米軍による軍事行動の方はむしろ「理解」を示してきたのである。もちろんNHKが得意とする沖縄戦に関する資料の発掘は、一概に親米的とはいえないが、これとて本当に残忍な行為の画像をカットするなどかなりの自主規制が働いている。こうした番組を見て視聴者は、「やはりNHKは中立だ」と勘違いしてしまう。これが洗脳なのだ。

このようなNHKの実態を前提に今回の報道をみると、わたしには米艦艇の人工島への接近からニュース報道まで、意図的に仕組まれた世論誘導のような気がする。少なくとも疑ってみる必要がある。なぜ、今の時期なのかを再考する必要がある。

2015年10月29日 (木曜日)

NHKニュース(29日の7時)が、シリア難民にとってスマート・フォンの活用がライフラインになっている実態を報じていた。

NHKの番組には、スマート・フォンや携帯電話が日常生活のなかにすっかり定着した文明の機器という大前提に立った報道ばかりが目立つ。これらの無線通信機器をNHKが、番組と読者の双方向をつなぐ道具として位置付けていることは言うまでもない。

こうした報道に接していると海外で社会問題になっている無線通信機器による公害、つまり電磁波問題など日本にはもとからなかったかのような錯覚に陥る層も多いのではなかろうか。この新世代公害について、薄々は聞いたことがあっても、NHKが積極的にスマート・フォンの活用をPRしているからには、安全な機器だと勘違いする人も多いのではないだろうか?

まして安倍首相が電話料金の値下げを提案すれば、無線通信機器の爆発的普及が電磁波被曝のリスクを飛躍的に高めるという視点から検証する世論は消えてしまうのではないか。NHKが「一億総スマホ社会」へ向けて旗振り人の役割をしているように見える。これは大罪。

当然、最近急激に上昇線を描いている発癌率を電磁波や化学物質による複合汚染という化学的な観点から再検証しようという空気も生まれない。わたしは癌の増加と携帯電話の普及が同じ上昇線を描いている事実は、十分に検証するに値すると考えているが、そんなことを公言すれば頭がおかしくなったと誤解されかねない空気が生まれている。これが世論誘導の恐ろしさにほかならない。

ちなみにWHOの外郭団体であるIARC(国際がん研究機関)は、2011年に無線通信に使われるマイクロ波に発癌性の可能性があることを認定している。この動きに象徴されるようにマイクロ波からガンマ線やエックス線にいたるまで、広義の電磁波、あるいは放射線が人体に悪影響を及ぼすと考えるのが、世界の研究者の傾向にほかならない。

広島・長崎・福島と核の被爆国である日本は、本来、電磁波問題にはもっとも敏感にならなければならないはずだが、メディアがその動きを押しつぶしている。電磁波問題と放射線問題は別物だと勘違いしている人も多い。

わたしは過去に地下鉄の車内で、簡易測定器を使ってマイクロ波の強度を測定したことがある。結果は驚くべきことに、平均するとEUが定めている提言値の約4倍ぐらいの数値だった。通勤・通学で地下鉄を利用している人々は、癌の予備軍と言っても過言ではない。取り返しがつかない状態になったとき、その原因を推測することになるかも知れない。

こうした未来のリスクを完全に無視して、NHKはスマート・フォンや携帯電話をPRしている。そこには世の中で起きている現象に、一旦は疑いを差し挟んでみるというジャーナリズムの基本的な視点が完全に欠落している。公務員が国策放送を垂れ流しているのとあまり変わらない

2015年10月28日 (水曜日)

橋詰雅博(フリージャーナリスト・元日刊ゲンダイ記者)

元朝日新聞記者で韓国従軍慰安婦問題を巡りねつ造記者とバッシングを受けた植村隆氏(57)が、北星学園非常勤講師の職を失う岐路に立たされている。

植村氏を支援する日本ジャーナリスト会議などに入った情報によると、同大の田村信一学長が植村氏や大学の彼の支援者と今まで3回会い、「来年度の雇用は学内に反対の声が強く、難しい見通し」と話している。

大学などへの脅し、嫌がらせは昨年ピークの月が800件だったが、今では月数件と激減している。学長は「事態は収束している」と認識。それにもかかわらず雇用継続契約の締結が難しいとしたその理由を①15年度の警備費が3200万円と昨年の2倍に増えたこと②教職員が「疲れた。もう解放してほしい。平穏なキャンパスに戻りたい」と訴えている―などを挙げた。

学長は当初、「(雇用契約を打ち切るかどうか)、私が決める」と発言してきたが、植村氏らと会談を重ねた結果、予想外に反発が強かったためここにきて教職員代表でつくる評議会で決めてもらうと方針を転換している。

「1年で雇用を打ち切ったら、植村氏や大学を脅迫する側を喜ばせるだけ」「昨年、脅迫に屈せず、雇用を継続し、国内外から高い評価を受けたのにそれを台無しにしてよいのか」と打ち切り反対意見よりも、学内は打ち切り止む無しのムードのようだ。

この流れを止めて雇用継続に向かわせようという動きもある。植村氏が教えた韓国人留学生が帰国後、自分が通う大学で植村氏の雇用継続を求め約1000人の署名を集め、それを北星学園大に提出し、打ち切り再考を要請した。

また、89歳と高齢の玖村敦彦東大名誉教授(支援者)が学長、副学長、理事長、事務局長、雇用継続に反対しているリベラル派教員などに雇用継続を要請した手紙を出し、一部の理事が反対派を説得している。

大学は11月中に結論を出す予定だ。打ち切りと決まれば、植村氏の雇用は来年3月までとなる。もちろん、植村氏は雇用継続を求めている。

支援団体などは、ジャーナリスト有志で声明を出す、記者会見をしてメディアに取り上げてもらうなどの対策を考えている。

植村さんは26日に開かれた東京地裁での第3回口頭弁論に出廷し、その後の報告集会で韓国訪問、産経新聞から受けたインタビューの様子を説明した。「ねつ造記者ではない」とキッパリ言い、極めて元気だった。

※写真は植村隆氏

橋詰雅博
日刊ゲンダイ記者を経てフリーのジャーナリスト。
ブログ「橋詰雅博の焦点」

2015年10月27日 (火曜日)

防衛庁に対して情報公開を請求していた文書の開示が決定した。開示が決定したのは、「日米防衛協力の指標」と題する内部文書。共産党の小池晃議員が国会で取り上げたものである。その全文が公開される運びとなった。

■行政文書開示決定通知書

◇萎縮と自己規制は不要

この内部文書をめぐる小池氏の国会質問は、メディアで広く報じられたので周知となっているが、参考までに日経新聞の報道を紹介しておこう。8月11日付け記事、つまり安保関連法が成立する前の時期に掲載された記事である。

共産党の小池晃政策委員長は11日の参院平和安全法制特別委員会で、自衛隊統合幕僚監部が安全保障関連法案の成立を前提に内部資料を作成していたと指摘した。中谷元・防衛相は「同じ表題の資料は存在する」と認めたが内容は「承知していない」と確認を避けた。

 資料は「日米防衛協力指針(ガイドライン)および安全保障関連法案を受けた今後の方向性」と題し「最も早いパターン」として8月に「法案成立」、来年2月ごろ「法施行」とした。陸上自衛隊を派遣している南スーダンの国連平和維持活動(PKO)は来年2月ごろから「新法制に基づく運用」をすると明記。新たな任務として襲われた他国部隊を助ける「駆けつけ警護」を追加する可能性にも触れた。

 防衛相は資料の存在は認め「示された資料と同一か特定するには時間がかかる」と発言。小池氏は「成立を前提とした部隊編成計画まで出されている。議論なんかできない」などと反発。特別委は審議を途中で打ち切り、散会した。

 特別委筆頭理事の民主党の北沢俊美氏は「(軍事に対する政治の優先を意味する)シビリアンコントロール(文民統制)が崩れるのであれば大臣の責任は免れない」と語り、同問題で集中審議を求める考えを示した。

わたしは、「日米防衛協力の指標」を入手後、メディア黒書で全文を公開することになる。本当は大メディアにやっていただきたい仕事なのだが。

開示の決定が下されたということは、このレベルの文書は特定秘密には指定されていないことになる。萎縮や自己規制は不要だ。

2015年10月26日 (月曜日)

国際派の歌手で作家の八木啓代氏が『最高裁の黒い闇』の著者・志岐武彦氏とわたし個人に対し、名誉を毀損されたとして200万円の金銭支払いを主張して起こした裁判(八木氏の本人訴訟)の口頭弁論が27日に開かれる。スケジュールは次の通りである。

日時:10月27日(火) 13時30分

場所:東京地裁 624号法廷

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
八木氏が訴状の中で金銭請求の根拠のひとつとしている黒薮執筆の記事(さくらフィナンシャルニュース掲載)は、次のものである。

■【特報】「志岐武彦VS八木啓代」の名誉毀損裁判、背景に疑惑の小沢一郎検審をめぐる見解の違い

なお、八木氏はメディア黒書の複数の記事についても、名誉毀損を主張している。(この問題は言論の自由にかかわる案件なので、詳細については、結審後の「戦後処理」の段階で、裁判資料を公表することなどして徹底的に検証し、公表する予定。)

なお、裁判に至る経緯については前段があり、これについては次の記事に詳しい。

■「志岐武彦VS八木啓代」裁判が結審、黒薮が被告にされた裁判との関係はどうなっているのか?

 

2015年10月23日 (金曜日)

数字の上で矛盾が生じて、嘘が発覚する滑稽劇がままある。

読者は次に引用する日本新聞協会が公表しているデータを見て奇妙な感じを受けないだろうか。データによると、全国の新聞販売店の従業員数は激減しているが、従業員が配達する新聞の発行部数はあまり減っていない。その背景に「押し紙」が増えている可能性がある。

まず、従業員数は次のように激減している。2001年と2014年を比較してみよう。

【従業員数(総数)】
2001年:46万4827人
2014年:34万4513人
減少率:26%)

【新聞奨学生】
2001年:1万6333人
2014年:4018人
減少率:75%)

一方、同じ期間における新聞の発行部数(一般紙)の減数は次のようになっている。

【新聞(朝刊)の発行部数】
2001年:4740万1669部
2014年:4168万7125部
減少率:12%)

約15年間で、従業員総数が26%も減少しているのに、新聞の発行部数の方は12%しか減っていないのである。

とりわけ配達の「実働部隊」である新聞奨学生の数が75%も減っているのだ。なぜ、これらの数字が奇妙なのだろうか?

ひとりの従業員が配達できる新聞の部数は、個人差があるにしても、ほぼ決まっている。従って従業員数は、新聞の実配部数に見合っていると考えるのが妥当だ。その従業員の数が大幅に減っているということは、実配部数も大幅に減っていることを意味する可能性が高い。

◇バイク数の把握でも「押し紙」の推算は可能

「押し紙」の実態を推測する方法として、従業員数の把握のほかに、配達用のバイク数を把握する方法もある。たとえば10台しかバイクがないのに、1日に4000部の新聞が搬入されている店の場合、1台で配達する部数が200部とすれば、2000部が「押し紙」という推算になる。もちろん正確な数字ではないが、「押し紙」を推測するひとつの目安になる。

日本の新聞人は、この70年間、「押し紙」は1部も存在しないと主張してきた。新聞に対する軽減税率の適用を声だかに主張するのであれば、まず、「押し紙」問題を自己検証すべきだろう。軽減税率には賛成だが、販売店にとっては、「押し紙」をゼロにして、補助金を増やすことが先決なのだ。

2015年10月22日 (木曜日)

次に示すのは、野球賭博が発覚した読売ジャイアンツの首脳陣である。

取締役最高顧問:渡辺恒雄
取締役オーナー:白石興二郎
代表取締役会長:桃井恒和
代表取締役社長:久保博

この4名は新聞人でもある。

改めていうまでもなく、渡辺恒雄氏は新聞業界の重鎮である。白石興二郎氏は、日本新聞協会の現会長である。桃井恒和氏は、読売新聞社の社会部長などの経歴がある。久保博氏もやはり読売新聞社の出身である。

◇特異な日本の新聞業界

プロ野球は代表的な興行のひとつである。その興行を事業とする組織の幹部を新聞人が担っている事実を、読者は奇妙に感じないだろうか? しかも、読売ジャイアンツの経営にかかわる人事は、聞くところによると、出世コースらしい。

わたしが知る限りでは、新聞業と興行が合体した例は、日本を除いてほかにはない。両者は異質なものであるからだ。

それにジャーナリスト(広義の新聞記者)として仕事をしてきた者が、興行の世界へ投げ込まれるのは、非常な屈辱だと思うのだが、これに関しても当事者からの嘆きの声を耳にしたことはまったくない。記者として真実を追及した者であればあるほど、屈辱的な人事に感じられると思うのだが。

ちなみに新聞社の主筆が一国の首相と会食を重ね、新聞記者もそれを黙認しているという話も、海外ではまったく聞いたことがない。

◇内部告発とは無縁の新聞記者

しかし、読売新聞社と読売ジャイアンツの関係は、特異な日本の新聞業界を象徴する現象のひとつにすぎない。わたしが最初に日本の新聞業界に違和感を持ったのは、東京に移住した1990年だった。80年代は大半を海外で過ごしたので、日本の慣習がよく分からないままの移住だった。

住居をきめてすぐに訪ねてきたのが、毎日新聞の新聞勧誘員だった。戸口でいきなり洗剤4箱を差し出してきたので、わたしは驚いて身を引いた。新聞を購読してもらいたいという。断ると洗剤だけでもいいので受け取ってくれという。そこで「ありがとう」と言って洗剤を受け取り奥に入ると、玄関から「契約をしてください」という声が聞こえてきた。

「契約はしない」

「なら、洗剤を返してくれ」

「受け取ってくれと言ったではないか」

こんなやり取りの後、わたしは勧誘員に洗剤を返した。
次にやってきたのは、人相の悪い読売新聞の勧誘員だった。こちらは、自分はヤクザの幹部と懇意にしていると自己紹介してから、

「今、新聞契約をすると、○○組の者に、煩わされなくてすむぞ!」

と、言った。

この勧誘員も追い返したが、この時、わたしは日本の新聞ジャーナリズムの正体とは何かを本気で疑った。新聞購読は、ジャーナリズムの質を読者が評価して、決めるものだという考えがあったからだ。わたしは、日本の新聞記者は、みずからが制作した新聞の販売方法に対して恥ずかしいという感情を抱かないのかと疑った。

その後、わたしは偶然に「押し紙」問題を取材することになるのだが、現在まで一貫して感じているのは、新聞業界の足元にはジャーナリズムの根本にかかわる大変な問題が山積している異常さである。それにもかかわらず、同じ「敷地内」にいる記者がまったく内部告発をしない異常さである。長い目でみれは、これは癌を放置するに等しい選択肢なのだが。

重大な問題の内部告発を控えていれば、みずからが制作している新聞の信頼性そのものに疑いの視線が向けられるからだ。読者の質が高ければ高いほど、新聞の情報に疑いの目を向ける。

◇野球賭博は氷山の一角

今回の野球賭博の発覚は、見方によれば闇の中からたまたま頭をだした不祥事のひとつに過ぎない。新聞業界には、改めなければならない問題が山積している。

今回の賭博問題で、白石興二郎氏は、日本新聞協会の会長を辞任すべきだろう。

2015年10月21日 (水曜日)

ジャーナリストの安田純平氏が消息を絶って昨日で4カ月が過ぎた。安田氏は6月20日に次のツイッターを最後に行方が分からなくなっている。

 これまでの取材では場所は伏せつつ現場からブログやツイッターで現状を書いていたが、取材への妨害が本当に洒落にならないレベルになってきているので、今後は難しいかなと思っている。期間限定の会員制で取材経過までほぼリアルタイムで現場報告することも考えてたが、危険すぎてやっぱり無理そう。

■出典=安田氏のツイッター

安田氏の消息不明に関しては、7月に産経新聞などほんの少数のメディアが簡単に報じただけで、その後、まったくニュースが掲載されない。

海外のメディアは、米国のニューヨークタイムスが3回にわたって報じたが、やはり続報が途絶えている。メキシコのラ・ホルナダ紙などラテンアメリカの数社は、1度だけこのニュースを報じた。

もっとも海外メディアは、安田氏の母国のメディアではないので、ニュースの中断はある意味ではやむを得ない側面もあるが、日本のメディアがまったくこの件にタッチしないのはどう考えても異常だ。

◇「テロリストと交渉しない」米国の方針に追随か

かつて日本のメディアは人質事件が起こると、一斉に飛びついた。2004年に高遠菜穂子氏など3人の日本人がイラクで拘束された時は、連日のように報じた。最近では、後藤健二氏らが人質に取られて殺害された事件を連日のように伝えた。

ところが安田氏が巻き込まれたと思われる人質事件に関しては、これまでの報道姿勢とは180度異なっている。従ってこの事件については推測の範囲でしか論評できないが、わたしは報道されない背景に、「テロリストとは交渉しない」とする米国の方針に日本政府が盲従している事情があるのではないかと思う。

さらに安田氏に関する情報が、特定秘密保護法に指定されている可能性が高く、誘拐犯と政府の間でどのような接触があったかに関する情報すらも完全に遮断されているのかも知れない。従ってメディアも記者クラブから情報を得ることができない。現地へ潜入する気など毛頭ない。

結局、何も報じられないまま、延々と放置されているのではないだろうか?

しかし、この事件が報じられない背景を報じることはできるはずだ。取材のプロセスを報じるのが報道の原則ではないが、時にはそれも必要ではないか?

4カ月も消息を絶っている事実はきわめて重い。

2015年10月19日 (月曜日)

10月15日から21日の一週間は、日本新聞協会が設けた新聞週間である。新聞関係者はさまざまなイベントを計画しているが、改めて言うまでもなく、その究極の目的は新聞のPRである。新聞がいかに大きな社会的使命を帯びたメディアであるかを宣伝することにほかならない。

それは毎年発表される大会決議にも現れている。たとえば昨年の新聞大会の決議の次のようなものである。

 私たちが規範とする新聞倫理綱領は、正確で公正な記事と責任ある論評で公共的使命を果たすことが新聞の責務であるとうたっている。新聞は歴史の厳格な記録者であり、記者の任務は真実の追究である。

しかし、今、新聞への読者・国民の信頼を揺るがす事態が起きている。私たちはこれを重く受け止め、課せられた使命と責任を肝に銘じ、自らを厳しく律しながら、品格を重んじ、正確で公正な報道に全力を尽くすことを誓う。

ジャーナリズムとしての新聞の役割を強調したうえで、さらに次のような特別決議も採択している。

新聞への軽減税率適用を求める特別決議

新聞は、戸別配達制度により全国どこでも容易に安価に入手でき、生活必需品として、民主主義社会や地域社会の発展に貢献するだけでなく、学校教育を通じ次世代育成にも寄与している。

 欧米諸国は、言論の多様性を確保するため「知識に課税せず」との政策のもと、新聞への軽減税率を導入している。

  私たちは、今後の社会・文化の発展と読者の負担軽減のため、消費税に軽減税率を導入し、新聞の購読料に適用するよう求める

◇日本の新聞業界が内包する本当の重大問題は何か?

日本の新聞業界が少なくとも戦後70年の間、故意に避けてきたものは、「押し紙」問題である。この問題は、タブーとして隠してきた。かつて読売は、わたしの「押し紙」報道に対して名誉毀損裁判を起こしたが、その時に争点になったのは、わたしの記事の内容が名誉毀損に該当するか否かであり、肝心の「押し紙」問題そのものが検証されることはなかった。新聞の偽装部数のように公益性が極めて強い問題は、記事そのものが名誉を毀損したか否かという矮小化された視点だけではなく、本質的な問題--「押し紙」そのものについて論争することが肝心なはずだが、裁判所にこうした着眼点はなかった。

「押し紙」とは、新聞販売店に対して実質的に仕入れを強制する新聞のことである。「実質的」と書いたのは、帳簿類の上では、新聞販売店の側が自主的に注文した新聞という構図になっているからだ。

多くの新聞社は定期的に販売店とミーティングを開いて、年間の増紙目標を決める。たとえば新聞2000部(読者が2000人)を配達している販売店に対して、100部の増紙を決める。ところが問題は、実際に100部の増紙に成功するかしないかには関係なく、従来の2000部に100部を上積みして2100部を搬入してくる。

従って増紙できなかった部数は、「押し紙」に化ける。もちろん、この100部についても卸代金が徴収される。

当然、「押し紙」は、新聞販売店の負担になるが、幸か不幸か新聞販売店に割り当てられる折込広告の枚数は、搬入される新聞部数に一致させる原則があるので、折込広告の需要が高い地域では、「押し紙」が負担にならない場合もある。逆に新聞社に支払う新聞の原価を上回ることもある。

こうした構図があるので、販売店は年間目標を作成する際に、過剰な目標部数に対しても、はっきりと「NO」を表明しない場合が多い。それは単に経済的な損得関係を計算した結果だけではなく、それよりもむしろ新聞社の担当員との人間関係を考慮した結果である。担当員の「出世」は、いかに部数を増やしたかにかかっているので、「押し紙」を断りにくい事情があるのだ。

◇「押し紙」による3つの利益

「押し紙」は、客観的に3つの利益を生む。

まず、第1は新聞社の販売収入が増えることである。販売店は実配部数の原価に加えて、「押し紙」部数の原価を新聞社に支払うわけだから、新聞販売による総収入が増える。

第2は新聞社の紙面広告による収入を増やす。紙面広告の媒体価値は、新聞の公称部数に準じる原則があるので、「押し紙」により公称部数が増えれば、紙面広告の媒体価値も増える。

第3は新聞販売店が受け取る折込広告の収入が増えることである。既に述べたように「押し紙」にも、形の上では折込広告が折り込まれるわけだから、それに準じて収入も入ってくる。ただ、この収入の一部は、「押し紙」の代金として新聞社の口座に入る。

日本の新聞社がかかえる最大の問題は、これら一連の「押し紙」問題である。この問題をタブー視してきたのが、日本の新聞業界にほかならない。