
8年前にウェブサイト「MyNewsJapan」に筆者(黒薮)が書いた記事に対し、毎日育英会(新聞奨学生制度を運営)の寺島哲弁護士から、記事の削除を求める通告書が届いたことを読者はご存じだろうか。
寺島哲弁護士が削除を要求している記事は、毎日新聞販売店(東京板橋区)で働いていた新聞奨学生が、ほとんど無報酬で集金業務に従事している実態、弁当代のピンハネ、それに重労働などを内部告発した次の記事である。
言論の抑圧行為に対して筆者は、徹底して反撃するのが方針なので、その第1段として、まず寺島弁護士の通告書を公開しておこう。MyNewsJapanでもすでに公開されているが、繰り返し報じるのがメディア黒書の方針なので、再度、掲載しておこう。
冠省
当職は、毎日育英会(以下「通知人」という。)の代理人として貴社に対し、以下のとおり通知いたします。
貴社が提供する下記URLの「マイニュース」において、2008年5月11日19:24の投稿欄に「新聞奨学生が内部告発 給料未払い、食費ピンハネの実態」との見出しで、記事(以下「本件記事」という。)が掲載されております。
当該投稿者の記載内容は事実と全く異なるものでありますが、通知人では、新聞奨学生が働きやすい環境を作ることを意識して常に改善が行われてきました。にもかかわらず、内容の真偽も確認されないまま、8年以上も前に投稿された本件記事が(黒薮注:「を」の間違い?)掲載し続けることは、徒に通知人の社会的評価を低下させ、通知人の経営する企業の名誉及び信用を毀損し、実際に奨学生が減少する実害も生じさせてその業務を妨害しており、利用規約禁止事項第2項にも反します。
つきましては、下記URLの本件記事をすみやかに削除するよう要請致します。万一、貴社が上記記事の削除を行わない場合は、通知人は、速やかに然るべき法的措置を講じることを申し添えます。
なお、本件につきましては当職が依頼を受けておりますので、以降の連絡はすべて当職宛てにお願いします。
不一記
◇記載内容はすべて事実
寺島氏は、「記載内容は事実と全く異なる」と書いているが、この記事は基本的に奨学生の給料明細や、弁当代のピンハネを立証する仕出し屋の伝票など、動かぬ証拠をベースとして執筆している。すべて事実である。
筆者が最も奇妙に感じるのは、8年前の記事の削除をなぜ今頃になって求めてきたのかという点である。寺島弁護士は、当時、筆者が奨学生から入手した証拠資料や取材ノートなどはすでに廃棄していると考えて、上記のような警告書を送ったのかも知れないが、関係資料はすべて残っている。
次に示すのが、取材ノートの一部である。
◇毎日育英会が経営する企業とは?
筆者がこの通告書でもっとも関心があるのは、次のくだりである。
8年以上も前に投稿された本件記事が(黒薮注:「を」の間違い?)掲載し続けることは、徒に通知人の社会的評価を低下させ、通知人の経営する企業の名誉及び信用を毀損し、実際に奨学生が減少する実害も生じさせてその業務を妨害しており、利用規約禁止事項第2項にも反します。
上記の記述を読む限り、毎日育英会は企業であり、筆者の記事により奨学生の減少という被害を受けていることになる。ここでいう企業とは、調査したところ、毎日販売協栄株式会社のようだ。この会社は厚生労働省に「有料職業紹介事業」者として届け出ていることも分かった。
ただ、同社は、有料職業紹介事業は新聞奨学生を対象としたものではないと話している。この点についても、今後、厳密に調査する必要がある。
このところ日本人の新聞奨学生が激減しており、外国人の「奨学生」がそれに代わっている。この傾向は、毎日新聞に限ったことではない。
筆者は以前、この問題についても調査したことがあるが、リクルートの方法として、海外のブローカーが介在していたことが判明している。外国人の「奨学生」の実態がどのようなものなのか、今後、再取材する。
情報提供は次の窓口まで。
【情報提供の窓口】048-464-1413 xxmwg240@ybb.ne.jp

BPO(放送倫理・番組向上機構)という団体をご存じだろうか。この団体は端的に言えば、「放送への苦情や放送倫理の問題に対応する、第三者の機関」(ウェブサイト)である。
視聴者から番組などに関する申し立てを受けて、BPOが重要と判断した問題に関して、意見を表明してきた。
このBPOに対して、筆者は先週、次の4件の申し立てを行った。
①朝日放送が「噂のお買い得セレクション」(2011年3月15日、27:42~29:12の放送予定)を休止したにもかかわらず、クライアント(通販のアスカコーポレーション)に対して、CMを仲介した博報堂から料金が請求されていた問題。
②テレビ北海道が「テレショップ」(2011年3月15日と22日、27:00~27:30の放送予定)を休止したにもかかわらず、クライアントに対して、CMを仲介した博報堂から、料金が請求されていた問題。
③テレビ愛知が「サーズデープレゼント」(2011年3月17日の10:30~11:00の報道予定)を休止したにもかかわらず、クライアントに対して、CMを仲介した博報堂から、料金が請求されていた問題。
④博報堂がクライアントに提示した番組提案書の中に記された視聴率のデータが偽装(ビデオリサーチのデータ)されていた問題。
※注:但し、上記資料の14ページのデータは、出典となっている番組提案書に記された数値が何を指しているのか曖昧なので、参考の数値とする。紛らわしい数値の提示により、クライアントに数値の意味を誤解させ、意図的に高い視聴率のような印象づけをさせようとする意図が感じられる。
◇岩手では、入場者の水増し「カウント」
朝日放送、テレビ北海道、テレビ愛知の「番組休止→料金の請求」事件が起きたのは、東日本大震災の時期である。混乱の中でのミスという可能性もあるが、たとえそうであっても、筆者が調べた限りでは、その後、番組休止に対する賠償は行われていない可能性もある。博報堂は事情を説明すべきではないか。
さらに博報堂の他の業務を検証したところ、仕事が極めて杜撰(ずさん)であることが分かった。参考までに、公になっている報道を紹介しておこう。
■写真で見る博報堂によるデータの流用(パクリ)① メディア黒書が内部資料を入手(メディア黒書)
■博報堂による「過去データ」の流用問題検証(続編)、画像が示す「流用」の事実(メディア黒書)
■博報堂によるタレント料の請求、08年の平均約41万円から11年は約71万円へ急騰、「博報堂VSアスカ」の裁判(メディア黒書)
■岩手県施設、指定管理者が入館者数を水増し バイト使い(朝日新聞)
■津波記録誌で「怠慢」編集 岩手県大槌町、東北博報堂との契約解除(産経新聞)
◇博報堂の配慮する中部放送
さて、筆者がBPOに上記の事件を申し立てたのは、倫理上の問題が見受けられるからだ。まだ取材の段階であるが、休止された番組は、料金が請求されただけではなく、他社へ転売されている可能性もある。
これに関して、テレビ北海道は、取材を拒否しているが、本来はみずから説明しなければならない公益性の高い問題だ。
また、やはり「休止→料金請求」の疑惑がある中部放送は、「博報堂さんの許可」なく真実を教えることはできないとしている。テレビ局が広告代理店の顔色をうかがっている。このあたりに広告代理店が日本のメディアを支配している実像がかいま見えるようだ。
広告代理店なしに経営できないのが日本のテレビ局である。
◇過去の日テレの視聴率問題で声明
幸いにBPOには、「放送倫理検証委員会」という部門があり、著名な人々が委員を務めている。
また、BPOは2003年12月には、日本テレビで起きた視聴率偽造事件に関して次のような声明を発表している。
日本テレビで起きた視聴率操作事件は、放送の自律と放送文化の質の向上を目指す「放送倫理・番組向上機構」[BPO]にとっても、重大な問題を提起した。テレビ局のプロデューサーが担当番組の視聴率を上げるために、制作費を使って視聴率調査対象者に金品を贈るようなことは、放送・広告関係者だけでなく、視聴者や社会を欺く背信行為と言わなければならない。(全文)
博報堂を舞台としたこの経済事件は、取材すればするほど、不可解な点が浮上してくる。それは逆説的に考えると、これまでジャーナリズムの光が当たらなかったことに原因があるのかも知れない。新聞社の足下にある新聞販売問題と同じ性質を有している。
ビジネスモデルが間違っているのである。
◆吉竹幸則(フリージャーナリスト・元朝日新聞記者、秘密保護法違憲訴訟原告)
部数減に歯止めがかからないまま6月24日、大阪・中之島のホテルで朝日新聞社の株主総会が開かれた。朝日批判の急先鋒である「週刊文春」のスクープばかりが目立つなか、「ジャーナリズムの使命は権力監視」を標榜する朝日に意地はないのか。
だが、総会に出席してみて、経営陣の危機感の乏しさ、とりわけ「対権力」への緊張感の欠如に失望するしかなかったのだ。
朝日は2014年8月の従軍慰安婦報道の検証記事以降、部数を大幅に減らしている。日本ABC協会調査では同年6月に740万部があったのが、社長謝罪会見後の10月に700万部と40万部急減。今年4月には660万部となっている。
「1000万部」の発行部数を誇って来たライバルの読売も、4月部数は900万部を僅かに切るまでに減っている。しかし、やはり朝日の部数減が目立っている。
その影響は広告費にも及んで、今期の朝日決算は総営業収入の2748億円で、前期比138億円減。しかし、社員の給与改革などの経費削減で営業利益は78億円、前期比40億円増を確保した。「減収」ながら「増益」決算を渡辺雅隆社長は誇らしげに報告した。
◇「朝日に押し紙はない」
しかし、渡辺社長は今年3月、公正取引委員会から朝日が「注意」を受けたことを株主に合わせて報告せざるを得なかった。週刊誌などで「販売店が『注文部数を減らしたい』と申し入れたところ、朝日の販売担当社員が再考を促し、その際、行き過ぎた言動があった」として、取り上げられている問題だ。
新聞の販売部数は広告費に直結する。広告費を主要な収入源とする新聞社は、何とか多くの部数が売れているように見せかけたい。「押し紙」「積み紙」とも言われ、朝日だけでなく多くの新聞社で、「実際に読者が注文するより多くの部数を販売店に押し付けたり、販売店が自主的に買う形で引き取っても配らず、店に積み上げて置くことが常態化しているのではないか」と、以前から販売現場の不明朗性の象徴として指摘されている。
このサイトを運営する黒薮哲哉氏が熱心に追いかけているテーマであるから、この欄の読者は知り尽くされていることだろう。週刊誌報道などによれば、店側がこうした実販売数以外の部数の引き取りを拒んだところ、担当社員が難色を示し、その際、公取委から注意を受けざるを得ないような不穏当な発言をしたのではないかとも想像される。ただ、渡辺社長は「朝日に押し紙はない、法に抵触することはしていない」と付け加えた。
もちろん、実際に偽装部数がトラブルの原因だったとしても、独占禁止法に触れる恐れがある。総会で渡辺社長が押し紙を認める訳はないのだが、偽装部数に関しては、これまでも店側と各新聞社の間でいくつも訴訟沙汰になっていて、新聞業界にとってアキレス腱とも言える。
◇「押し紙」が新聞社・販売店双方の重荷に
一方、権力側にとっては、新聞社は「生かさず殺さず」である。徹底的に敵視するより、いざという時、何らかの形で新聞社を制御出来る余地を残したい。相手の弱みを握り、「貸し」にする…。今回、公取委が「押し紙・積み紙」の徹底的な摘発に乗り出さず、「注意」に留めたのも、こんな思惑からではないのか。でも、本当にそうなら新聞社は、権力者の手の平で踊らされる。
そもそも新聞業界は、権力側に「借り」を作り過ぎている。消費税の軽減税率適用では朝日に限らず、新聞業界こぞって安倍政権に要望を続けて来た。定価販売を守るための「再販制度」の維持でも昔から陳情を繰り返し、販売店で作る団体は与党政治家に毎年、献金もしている。
慰安婦訂正報道の前にも、安倍首相と朝日社長の夜の会食があり、真偽はともかく「消費税軽減税率適用要望と訂正報道には何らかの関連があるのではないか」と、多くの人たちから疑念が呈された。
販売店の中には、読者に配らない部数の消費税負担も重なって、「今では偽装部数はもう限界。新聞社、販売店双方に重荷になっている」との声もある。読売がどうかは知る由はないが、朝日の販売減には、こんな部数整理の影響もあるのだろう。ただ、それだけではあるまい。昔からの固定読者が離れているのだ。
私が親しくしている元京大教授がいる。各地の放射能測定などを通じて反原発運動に取り組んでいる「市民環境研究所」(京都市左京区)代表理事でもある石田紀郎氏だ。氏は、昨年の会報にこんな一文を載せている。
「福島原発崩壊も4年前のこととなり、激しい脱原発運動の疲れもあろうが、多くの人の闘いは途切れることなく続いている。ところが我が家が何十年も購読し続けている朝日新聞の京都版には、集会記事の一行も掲載されなかった。去年もそうだったのかもしれない。安倍内閣や御用学会、御用財界、御用言論界などから叩かれ、消耗し、縮こまったからだろうか」。
「この数年の朝日新聞にはマスコミとしての気概が感じられない。言論界が御用になったたらおしまいであると新聞社は十分承知している筈だから、己の終末を認識しての振る舞いなのだろう。ボチボチ『朝日』との付き合いを閉じるのがよかろうと思いだした。市民研の仲間の何人かはすでに縁を切ったと聞いている」
私は記者をしていた25年以上も前から、「権力監視」に基づく3つの調査報道記事を朝日幹部から止められた経験がある(詳しくは拙書『報道弾圧』東京図書出版)。それ以来、社内での闘いを続けて来たから、現場記者はともかく経営陣が本気で「権力監視」する気がさらさらないのはよく知っている。しかし、固定読者にまでそれを悟られる紙面作りをするようでは、もう「おしまい」である。
朝日OBどうかではない。憲法改正の正念場を迎え、改憲メディアが力を伸ばしているこの時期、護憲メディアの代表格・朝日が自壊、「終末」を迎えれば、この国の言論バランスが崩れる。それを私は何より恐れる。
私はわずかな朝日株しか持たない零細株主だが、朝日が常々言って来た「ジャーナリズムの使命は権力監視」の原点に戻り、失った固定読者の信頼をどう回復するか。総会に出て経営陣に言っておかなければならないことは、幾つもあった。
◇ジャーナリズムの質の低下
渡辺社長の経営報告の後、質問の時間に移った。朝日は社説でこれまでも「開かれた総会」「企業の社会的責任を自覚し、徹底的な株主との議論」を一般企業にご託宣して来た。私はその通り朝日も総会を運営するよう、最初に釘を刺した。
その上で石田氏の文章を紹介。「何故、固定読者離れが起きているのか」から私は質問を始めた。この後、
①「本当に朝日に押し紙・積み紙問題はないのか」
②「権力に借りを作らないため、販売を含め、どう経営を改革するか」
③「固定読者の不満が強い紙面をどう変えるか」
④朝日の不倶戴天の敵とも言える文春のスクープばかりが目立つのに、「何故、朝日は大型の調査報道の特ダネがないのか」「権力監視の出来る強靭な編集現場をどう作るか」の順序で、徹底的に聞くつもりだった。
私は記者出身。やはり③④を重点的に論議しようと思った。朝日の固定読者離れが加速し
たのは、2014年に反朝日勢力からバッシングを受けた慰安婦、福島原発吉田調書報道訂正問題からであるのは確かだろう。ただ、この訂正そのものが、直接の信頼低下原因とまでは言いきれない。
朝日の固定読者には、「日本軍の強制連行があったか否か」より、従軍慰安婦が厳然と存在した「戦争」そのもののあり方を問題とする人が多い。それなのに、責任逃ればかり考える経営陣が、バッシングに過度に怯えた。新聞報道現場も朝日の社内事情も知らない外部の素人ばかり集め外部委員会を作り、的外れの改革案を作り、紙面低下させた…。むしろ、そのことにがっかりしている人が多いのではないだろうか。前述の石田氏がその典型だ。
慰安婦、調書報道訂正は、調査報道技術の未熟さと責任を取らず問題を先送りする幹部の派閥官僚体質が原因なのは明らかだ。しかし、改革案は「読者の意見を聞くパブリックエディター制度の導入」「多様な意見を載せるフォーラム面の新設」「訂正記事を集めるコーナーの新設」など、バッシング勢力にも配慮した小手先のものばかり。後輩らの話だと、改革案以来、「読者の声を反映する」として、それまで以上に編集現場に幹部の介入を強まったという。
昨年の安保報道で、憲法学者こぞって国会で安保法制違憲を表明する憲政史上初めての異例の展開でも腰が引け、一面トップ扱い出来なかったのも、そのなせる業だろう。
特定秘密保護法も法案成立当時、「これからも厳しく監視していく」と朝日は紙面で約束したはずだ。なのに、私たちフリージャーナリストが取り組んでいる東京地、高裁の違憲訴訟もほとんどまともな報道もしていない。
◇「開かれた総会」は幻想だった
確かに改革案には、おまけ程度に「調査報道をさまざまな形で充実 」との提言はある。しかし、中身は「見過ごされている問題に光を当て、情報技術も駆使して公表された資料から問題点を分析するデータジャーナリズムなど、デジタル時代に対応した新しい調査報道スタイルも追求」とある。
だが、調査報道経験の長い私に言わせれば、この程度の小手先の甘い考えで国政の流れを変えられる本格的な調査報道など出来る訳がない。権力内部に深く入り込む人脈を作り、ネットなどには出ているはずもない超極秘資料を持ち出せる圧倒的な取材力を持つ記者の育成が欠かせないのだ。
安保法制で、安倍政権は自衛隊が米軍の核弾頭も運べる法案を成立させた。それなら当然、核弾頭を自衛隊基地にどう隠し、どのような手順で運ぶかの密約があってもおかしくはない。もし、朝日がこんな特定秘密の一つでも入手し、特ダネで報じることが出来れば、国民世論が沸騰する安保国会の行方も変えられただろう。少なくとも固定読者の信頼の幾分かは取り戻せた。
しかし、朝日にそんな力量は残っていなかった。文春はそれをあざ笑うかのように、甘利、舛添問題で大臣、知事辞任につながるスクープを連発した。「後輩記者は何をしているのか」と、私は悔しくて仕方がない。でも、文春にこんな情報が入るのは、外部ライターを含め、人脈・取材力のある記者を多く抱えられる体制を整えているからだろう。
私はそんな朝日編集現場の脆弱性を徹底的に議論したかった。でも、「開かれた総会」などどこへやら…。質問は②の途中で「長いので」と、早くも止められた。何とか粘りに粘り、最後に再質問を試みた。でも、これも③の途中で止められた。
渡辺社長の答弁としてやっと引き出せたのは、「販売現場に違法行為はない」「安保報道で『頑張ってくれている』と読者からの声が届いている」「質問は私たちへのエールとして受け取りたい」だけ。「権力監視」の力量をどう再構築するかの危機感も、文春に対する悔しささえ微塵もなく、そのまま採決。一般企業のシャンシャン総会と何ら変わらなかった。
やはり石田氏が言う通り朝日は、バッシングで自らの寄って立つ基盤さえ見失い、「終末」への道を歩んでいるのだろうか。
≪筆者紹介≫ 吉竹幸則(よしたけ・ゆきのり)
フリージャーナリスト。元朝日新聞記者。名古屋本社社会部で、警察、司法、調査報道などを担当。東京本社政治部で、首相番、自民党サブキャップ、遊軍、内政キャップを歴任。無駄な公共事業・長良川河口堰のウソを暴く報道を朝日から止められ、記者の職を剥奪され、名古屋本社広報室長を経て、ブラ勤に至る。記者の「報道実現権」を主張、朝日相手の不当差別訴訟は、戦前同様の報道規制に道を開く裁判所のデッチ上げ判決で敗訴に至る。その経過を描き、国民の「知る権利」の危機を訴える『報道弾圧』(東京図書出版)著者。フリージャーナリストによる特定秘密保護法違憲訴訟原告。
通販番組が休止になったにもかかわらず、番組企画を仲介した広告代理店の博報堂が、放送枠の主であるアスカコーペレーションに料金を請求していた事件が拡大の様相を見せている。「番組の休止→料金請求」の不正パターンは1件でないことが分かった。
東日本大震災の混乱時期の事件で、博報堂に悪意があったかどうかは分からない。悪意があったとすれば、「火事場泥棒」ということになる。
◇テレビ北海道とテレビ愛知でも
最初にこの問題が発覚した舞台は、朝日放送だった。「噂のお買い得セレクション」が休止になったにもかかわらず、博報堂から料金の請求が行われていたことが、代筆された放送確認書や請求書で発覚した。アスカコーペレーションは100万円を請求され、誤って支払った。
休止をしておきながら、当時のテレビ番組表には他社の通販番組の記載があり、明らかに他社の番組が放映されている。
その後、まったく同じ方法で、テレビ北海道とテレビ愛知でも、「番組の休止→料金請求」の不正が発覚した。
このうちテレビ北海道は、2011年3月15日と22日に放送予定だった「テレショップ」を休止にしたが、博報堂はアスカコーペレーションに対して50万円を請求した。アスカコーペレーションも言われるままに、それを支払った。
さらに3月17日に放送予定だったテレビ愛知の「サーズデープレゼント」
でも同じことが起こっている。
休止になった番組の転売先について、テレビ北海道は、「外部の者には教えられない」とコメントした。また、テレビ愛知と朝日放送からは、現時点では回答がない。
一方、博報堂は取材を拒否している。
以下は各放送局のケースを裏付ける資料である。番組の休止を通知する書面と、「御見積書」である。「御見積書」の日付が番組を放送した月の末日になっており、実質的には後日付けの請求書であることが分かる。(博報堂は、見積書と請求書を同時で出していた。)実際、アスカ側は代金を支払っている。
【裏付け資料】
博報堂が請求書と同時に添付する見積書には、なぜかナンバーが振られていない。上場企業の会計監査システムではあり得ないことだ。通常は、請求書と見積書に同一のナンバーを付けて管理する。
博報堂は上場企業でありながら、このような奇妙な「請求書」を発行しているのである。アスカ社は、この問題で刑事告訴を視野に入れ、すでに警察に相談している。
また、不正な会計や経理が疑われ、国税当局も重大な関心を示している。『ZAITEN』(財界展望6月号)など、月刊誌などの報道が影響しているようだ。
◇疑惑のデパート
ちなみに、こうした不正請求が、大震災時の混乱の中で起きたミスではないかとの指摘に対して、アスカ社は、次のように反論している。
「博報堂は、震災前の時期にもアスカ本社に営業に来るたびに、店舗取材渡航費として1回180万円を超える交通費を請求するなど、ずさんな請求を繰り返していました。弊社が調べたところ、弊社に出入りしていた博報堂関係者37名が「博報堂」の名刺を使っていましたが、このうちの正社員と確認できたのは1名だけで、その他1名が地元採用の契約社員でした。やることが異常でした。弊社が番組転売の問題で警察に相談したゆえんです」
筆者は防衛省に対して、8日、次の内容で情報公開請求の書面を送付した。
電通と博報堂が陸・海・空自衛隊に提出した請求書の全部
今回の情報公開請求の目的は、大手広告代理店へどの程度の国費が流れているかを調査することである。この種の取材の最初の一歩である。
防衛省の担当者と電話で話したところ、量が膨大なので、開示までに1年から2年を要するが、「1年以内にやりたい」とのことだった。
メディアが公共機関に請求する金額に関して、異常に高いという批判がある。これについて筆者が調べたところ、たとえば、内閣府と電通の公共広告の設定価格に関する契約は次のようになっている。「記事下広告」1段あたりの価格である。
読売:223万円
朝日:206万円
毎日:128万円
日経:88万円
産経:62万円
年間契約数は100段なので、読売は約2億2300万円、朝日は2億600万円という計算になる。このうち電通が新聞社にいくら支払っているのかは不明だが、両者を合わせた額は莫大になる。

BPO (放送倫理・番組向上機構)に対して筆者は次の申し立てを行った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
番組名:噂のお買い得セレクション
放送局名:朝日放送
放送日:2011年3月15日
放送時間:27:42~28:12
続きは、次のPDFで。
ここで示した「噂のお買い得セレクション」をめぐる問題は、筆者が取材しているテレビ関連の事件の一部に過ぎない。氷山の一角だ。視聴率の偽造やCMの「間引き」疑惑なども発覚している。
博報堂の事件は、日本の放送界を舞台とする前代未聞の経済事件の様相が強い。テレビ界の在り方が根底から問われているのである。ある意味では、新聞社の部数偽装問題よりも深刻だ。テレビは圧倒的な影響力を持つからだ。
それが後述するように、関係者の極端な「拒否反応」を生んでいる原因かも知れない。
◇PDFへリンクした理由
ちなみに、BPOがウェブサイト上に準備している申し立てのメールフォームは、500文字以内に制限されている。そのために申し立ての内容を説明するには無理があった。そこで説明と証拠の部分をPDFへのリンクにしたのだ。
一体、BPOの本部は、500文字内で視聴者が十分に意見を表明できるとでも思っているのか、初歩的な疑問もある。
とはいえ、BPO (放送倫理・番組向上機構)といえば、NHKの『クローズアップ現代』で放送された「追跡"出家詐欺"~狙われる宗教法人~」(2014年5月14日)のヤラセ疑惑に対して放送倫理の問題を指摘するなど、放送界の監視役のような印象がある。
2003年に日本テレビで起きた視聴率操作事件では、再発防止を呼びかける声明を出した。そこでは日本テレビを指して、
テレビ局のプロデューサーが担当番組の視聴率を上げるために、制作費を使って視聴率調査対象者に金品を贈るようなことは、放送・広告関係者だけでなく、視聴者や社会を欺く背信行為と言わなければならない。
と、厳しく批判している。声明には次の3氏が名前を連ねている。
放送と人権等権利に関する委員会委員長:飽戸弘
放送と青少年に関する委員会委員長:原寿 雄
放送番組委員会委員長:木村尚三郎
◇不誠実なBPO本部の対応
当然、視聴率やCM間引きの問題にも関心があるものと筆者は思っていた。そこで今回の申し立てに先立って、事務局に問い合わせたが、取材にはまったく応じる気配がなかった。正直、ひどく横柄な対応に感じられた。取材を断るにしても、最低の礼節をわきまえるべきだと思うのだが、横柄さは「拒否反応」の影響なのかも知れない。
次に紹介するのは、電話会話の録音を文字化し、整理したものである。公表に際しては、相手の承諾を受けている。読者には、内容そのものに論理が欠落して、話が噛み合っていない部分があることを読み取ってほしい。
最初に電話対応した女性に、事情を説明した後、電話を代った男性との会話である。
BPO: 広報、吉田(仮名)と言いますが。
黒薮:ちょっとお尋ねしますが。
BPO: 取材ですか?
黒薮:そうです。
BPO: BPOは取材には応じていないんです。と、いうのは委員会が決めることでございますから。委員会は月に1回しか開かれないものですから。
黒薮:取材に応じないということでよろしいですか?
BPO: はい。
黒薮:全然、この問題に関しては、関知しないということですね。
BPO: この問題といいますと。
黒薮:視聴率の偽装問題とCMの「とばし」、いわゆる放送せずに・・・
BPO:委員会が決めることですので、委員会が決めたらホームページ上に載せる、審理入りした場合はちゃんと、検証委員会では取材に応じていますし。
黒薮:どういう手続きを踏めばいいわけですか。
BPO:手続きですか?検証委員会であれば、委員会ですから、開いてみないと分からないんですよ、中身は。
黒薮:ええ、ですから外部から問い合わせをしているわけです。
BPO:だから取材には応じていないんです。
黒薮:応じていないということでいいんですか。
BPO:ホームページをご覧いただいて、委員会が今、どういうことをやっているか、
黒薮:日テレの視聴率の問題で前に声明をだされましたよね、
(沈黙)出されましたよね。
BPO:はい。(沈黙)ええっとね。ホームページ上で公表していれば、出してます。
黒薮:こうしたことは防止するということで、出されたのではありませんか? なぜ、今回に関しては、
BPO:委員会が決めることですんで。
黒薮:いつ開かれますか?
BPO:BPOのホームページをご覧にいただければ分かると思います。
黒薮:じゃあ、今話されたとおりに出しますので。それで結構ですか。
BPO:かまいません
黒薮:分かりました
BPOもジャーナリズムの関係機関なのである。それがこの対応では、絶望的だ。放送界の問題には、新聞業界の「押し紙」と同じく、なかなかメスが入らない可能性もある。

『月刊Hanada』(7月号)に掲載した筆者(黒薮)の記事に対して、読売新聞の滝鼻太郎広報部長が抗議文を送りつけてきた。これに対する筆者の反論を作成した。反論は形式上は滝鼻氏に宛てたものになっているが、読者にも理解できるように構成した。
滝鼻氏の抗議の中身は、究極のところ真村訴訟の福岡高裁判決が読売の「押し紙」を認定したとするわたしの判例解釈は間違っているというものだ。わたしはかねてから、社会の「木鐸」といわれる新聞社がかかわってきた(広義の)「押し紙」問題のように公共性が極めて強い問題は、公の場で論争するのが、係争の理想的な解決方法だと考えている。とりわけ言論人にはそれが求められる。
従って、滝鼻氏にもメディア黒書のサイト上で、あるいは自社・読売新聞の紙上で自分の意見をより詳しく公表してほしい。反論権は完全に保証する。
もちろん滝鼻氏には、近々、公式に「押し紙」問題についての論争を申し入れる。
本来、論争に先立って滝鼻氏の抗議文を公開するのが、相手に対する配慮であるが、実は2008年、読売の法務室長がわたしに送付した催告書をメディア黒書で公開したところ、著作権違反で提訴された経緯があるので、今回は滝鼻氏の承諾を得られれば公開する。ひとには公表を控えたい文書もあるものなのだ。
■参考記事:喜田村洋一弁護士が作成したとされる催告書に見る訴権の濫用、読売・江崎法務室長による著作権裁判8周年①
なお、滝鼻氏が問題としている真村訴訟の判決は、次のリンク先で閲覧できる。読者は、判決の中で読売の「押し紙」、あるいは「押し紙」政策が認定れていないとする滝鼻氏の見解の是非を自身で検証してほしい。
【反論文の全文】
貴殿から送付されました抗議書に対して、記事の執筆者である黒薮から回答させていただきます。まず、貴殿が抗議対象とされている箇所を明確にしておきます。と、言うのも貴殿の抗議書は、故意に問題の焦点を拡大しており、そのために議論が横道へそれ、本質論をはずれて揚げ足取りに陥っているきらいが多分に見うけられるからです。
貴殿が問題とされている箇所は、枝葉末節はあるものの、おおむね『月刊Hanada』 (7月号)に掲載された「公取が初めて注意『押し紙』で朝日も崩壊する」(黒薮執筆)と題する記事の次の引用部分です。この点を確認し、共有する作業から、わたしの反論を記述します。
「裁判の結果は、真村さんの勝訴でした。2007年12月に、最高裁で判決が確定しました。裁判所は「真村さんが虚偽報告をしていたのは批判されるべきだが、その裏には読売の強引な販売政策があった」との見解を示し、真村さんの地位を保全したのです。この裁判で裁判所は、新聞史上初めて、押し紙の存在を認定したのです」
抗議書によると、貴殿は、2007年12月に最高裁で確定した第1次真村裁判の判決(西理裁判長)が貴社による「押し紙」政策を認定しているとするわたしの判例解釈は誤りだという見解に立ち、抗議の書面を送付されたわけです。
さらに貴殿は第2次真村裁判についても抗議書の中で言及されておりますが、これについてはわたしは本件記事の中ではまったく言及しておらず、貴殿の主観によって導かれた議論のすり替えに該当しますので、補足的に後述するにとどめ、まず、第1次真村裁判の判決が、なぜ貴社の「押し紙」政策を認定したと解釈し得るのかを説明させていただきます。
◇真村事件とは
貴殿もご存じのように真村裁判は、貴社がYC広川(福岡県広川町)の営業区域を隣接店へ譲渡する方針を打ち出されたことに端を発する事件です。その隣接店の店主は、暴力事件を起こしたこともあるSという人物の弟でした。Sは〝大物店主〝でした。Sについては、S尋問調書(平成17年○月○日)にも記録されております。この人物の存在なくして、貴社西部本社の新聞販売政策を語ることはできません。
第1次真村裁判は、真村店主が貴社の方針に抗議したのに対抗して、貴社が強制改廃を言い渡し、それを受けて、真村氏がやむなく提訴するに至った経緯があります。
◇「押し紙」と「積み紙」
この裁判の最大の争点となったのは、YC広川にあった「残紙」の性質をどう解釈するのかという点でした。具体的に言えば、「押し紙」と解釈するのが妥当なのか、それとも「積み紙」と解釈するのが妥当なのかという論点です。これについても、貴殿は本件議論の前提事実として認識されているものと思います。
「押し紙」とは、貴殿も抗議文の中で示されているように、「新聞発行業者が、正当かつ合理的理由がないのに、販売業者が注文した部数を超えて新聞を供給」する結果として発生する「残紙」のことです。端的に言えば、手口の差こそあれ、「押し売り」された新聞のことです。
これに対して「積み紙」とは、販売店の側が、販売(配達)部数を超えた数量の新聞を注文した結果として発生する「残紙」を意味します。販売店が販売予定のない新聞をあえて注文する行為に走る背景には、次のような特殊な事情が存在します。販売店に割り当てられる折込広告の枚数は、新聞の搬入部数に一致させる基本原則がある。当然、残紙に対しても折込広告はセットとして割り当てられる。
このような構図のもとでは、折込広告による収益が、「押し紙」による損害(「押し紙」分の新聞の卸代金)を相殺し、さらに水増し利益を生むことがままある。これこそが販売店が販売予定のない新聞をあえて注文する最大の理由にほかなりません。他にもありますが、本論からはずれるので言及は控えます。
「押し紙」と「積み紙」のバランスを取りながら、時には販売店主との談合により、広告主を欺きつつ、販売店と新聞社の経営安定を図る戦略が、貴殿ら日本の新聞人が構築されたビジネスモデルになっていることは、貴殿も十分に認識されているものと思います。それがいま、大きな世論の批判を受けていることも周知の事実です。それゆえに本件記事は、極めて公益性の高いテーマで貫かれているといえます。
真村裁判で貴社は、YC広川の残紙(約130部)は「積み紙」であり、それが貴社の信用を失墜させる要因なので、同店の懲罰的な改廃には正当な理由があるという趣旨の主張を展開されました。一方、原告真村氏の弁護団は、同店の残紙は、優越的地位の濫用のもとで生じた「押し紙」なので改廃理由には該当しないと主張しました。つまりこの裁判の最大の争点は、YC広川の残紙がどのような性質のものであるかという点でした。裁判所はこの点を検証したのです。
福岡高裁判決は、貴社の行為を次のように認定しています。引用文中の「定数」とは新聞の搬入部数のことです。
「このように、一方で定数と実配数が異なることを知りながら、あえて定数と実配数を一致させることをせず、定数だけをABC協会に報告して広告料計算の基礎としているという態度が見られるのであり、これは、自らの利益のためには定数と実配数の齟齬をある程度容認するかのような姿勢であると評されても仕方のないところである。そうであれば、一審原告真村の虚偽報告を一方的に厳しく非難することは、上記のような自らの利益優先の態度と比較して身勝手のそしりを免れないものというべきである。」
判決のこの箇所では、貴社が実配部数と搬入部数の間に齟齬があることを認識していながら、正常な取引部数に修正しなかった事実が認定されています。つまり貴社が注文部数を決めていたのです。さらに裁判所は、その背景に、貴社の部数への異常とも言える執着があることを、次のように認定しています。
「販売部数にこだわるのは一審被告(黒薮注:貴社のこと)も例外ではなく、一審被告は極端に減紙を嫌う。一審被告は、発行部数の増加を図るために、新聞販売店に対して、増紙が実現するよう営業活動に励むことを強く求め、その一環として毎年増紙目標を定め、その達成を新聞販売店に求めている。このため、『目標達成は全YCの責務である。』『増やした者にのみ栄冠があり、減紙をした者は理由の如何を問わず敗残兵である、増紙こそ正義である。』などと記した文章(甲64)を配布し、定期的に販売会議を開いて、増紙のための努力を求めている。
米満部長ら一審被告関係者は、一審被告の新聞販売店で構成する読売会において、『読売新聞販売店には増紙という言葉はあっても、減紙という言葉はない。』とも述べている。」
ここでは貴社が販売店に新聞部数を押し付けるために実施した具体的な言動が記録として刻印されています。貴社の米満部長が、「読売新聞販売店には増紙という言葉はあっても、減紙という言葉はない」と公然と発言している事実。これなどは販売店が注文部数を決定できない貴社の販売政策をずばりと突いています。
◇自由増減を宣言する前は?
さらに判決は、貴社が販売店に対して新聞部数の「自由増減」を認めていなかった事実にも言及しています。「自由増減」とは、販売店が自由に注文部数を決定する権利を保証する制度を意味します。
貴社は皮肉にも真村店主に対して「自由増減」を言い渡しましたが、その経緯は次の通りです。
既に述べたように真村氏は、自店の営業区域を防衛しようとして貴社の方針に服従しなかったために、貴社から販売店の改廃を宣告されました。この改廃宣告に先立つ段階で貴社は、YC広川を「死に店」扱いにすると真村氏に通告しました。
「死に店」扱いとは、癌などの「死病」に例えて説明すると、患者本人ではなく医師が自分の判断で、延命措置をとらないことを意味します。つまり担当員の販売店訪問は取りやめ、販売政策に関する指示も提示しなければ、補助金も支給しない。さらに福利厚生を受ける権利も剥奪する方針を意味します。要するに情け容赦なく、販売店を「自然死」に追い込むことです。
真村氏は池本担当員から決別宣告のように、「死に店」扱いを明記したメモを突きつけられました。そこには、池本氏の自筆で、新聞に関しては「供給持続する」、ただし「自由増減」と明記されていたのです。貴社の「押し紙」を柱にしたビジネスモデルから真村店主を「村八分」にするがゆえに、真村氏に関しては、例外的に自由増減が適用されたのです。
このメモは、「池本メモ」と呼ばれ、後に裁判所へも「押し紙」政策の証拠として提出されました。
貴社がYC広川に対して「自由増減」を宣告する前の時期、そもそも真村店主には自由に注文部数を決める権限がなかったわけですから、貴社が「注文部数」を決めていたことになります。従ってYC広川の残紙は、貴社が真村氏の意思とは無関係に、販売政策に従って部数を決めた結果発生した「押し紙」にほかなりません。この事実ひとつを見ても、貴社の販売政策は独禁法の新聞特殊指定に抵触しております。
実際、福岡高裁判決は、「池本メモ」について次のように貴社の優越的地位の濫用を認定しております。
「池本は、同一審原告に対し、今後、新聞供給は継続すること、注文部数その他につき自由に増減できること、増紙業務は依頼しないこと、読売会活動には不参画とすること、業務報告は不要であるし、池本ら担当員も訪店を遠慮すること、平成14年1月からは増紙支援をしないこと、所長年金積立は中止し、従業員退職金の補助等をしないこと、セールス団関係は、一審原告真村が直接処理すべきこと、特別景品は可能な限り辞退されたいこと、などを申し渡した。」
真村店主は「池本メモ」を突きつけられ、貴社の「鎖」を解かれ、貴社による「押し紙」を柱としたビジネスモデルの歯車から除外されたわけです。従って貴社本来の販売政策は、「押し紙」を前提としたものであるという結論になります。
以上が、本件記事の中でわたしが「この裁判で裁判所は、新聞紙上初めて、押し紙の存在を認定した」と記した理由です。
◇PC上の架空の配達地区
なお、貴殿も抗議書の中で言及されているように、裁判所が判決の中で真村氏による虚偽報告を批判しているのは事実です。「押し紙」を経理処理するためにPC上の「帳簿」に26区と呼ばれる架空の配達地区を設けていたのも事実です。
しかし、それは貴社を独禁法違反から守るために行った「押し紙」隠しの行為にほかなりません。事実、裁判所もこの点を批判した上で、次のような重要な記述を追加していますが、貴殿は最も肝心なこの追加部分を抗議書の中では故意に隠しています。それは次の記述です。判決は、真村店主の虚偽報告を批判した上で、次のように述べています。
「しかしながら、新聞販売店が虚偽報告をする背景には、ひたすら増紙を求め、減紙を極端に嫌う一審被告の方針があり、それは一審被告の体質にさえなっているといっても過言ではない程である。」
ここでも貴社の部数至上主義を上段にかかげた体質が厳しく批判されております。
なお、福岡高裁判決は、貴社に対して真村氏へ慰謝料200万円を支払うように命じています。この200万円という額が慰謝料としていかに破格の高額であるかは、貴社の顧問弁護士にご確認ください。裁判所が高額な慰謝料支払いを命じた背景には、貴社の「押し紙」政策など、優越的地位の濫用によって真村店主が多大な損害を受けたことを裁判所が認めた事情があることは論を待ちません。
◇「一般の読者の普通の注意と読み方」が基準
ちなみに「押し紙」の定義について、参考までに補足しておきます。一般の人々は「押し紙」、あるいは「積み紙」という業界用語の背景にある特殊なビジネスモデルのからくりを知るよしもありません。従って彼らは、販売店の残紙を広義に「押し紙」と呼んでいます。新聞以外の商取引では、売り手が販売予定のない商品を購入する状況はおおよそ想像できず、商品が店舗に多量に余っていれば、それはすなわち「押し売り」の結果と判断するのが自然だからです。それが社会通念です。
貴殿は抗議書の中で、「本件記述は全く事実に反する誤った内容であり、読売新聞の名誉を著しく毀損しています」と述べておられますが、「ある記事の意味内容が他人の社会的評価を低下させるものであるかどうかは、一般の読者の普通の注意と読み方を基準として判断すべきものである(31年7月20日、最高裁第二小法廷判決)となっており、一般の読者が「押し紙」という言葉が狭義に定義する意味を理由に、名誉毀損を主張するのはまったく的外れです。
たしかに「押し紙」というその字面、その語感から「押し売り」を連想する人は多いですが、一般の人々が問題にしているのは、販売店で過剰になっている新聞の存在そのものです。従って販売店主に批判の矛先が向けられることもあります。
「押し紙」とは、社会通念上では、漠然と残紙全般を意味しており、業界の特殊用語としての狭義の「押し紙」とは若干区別しなければなりません。
たとえ残紙が狭義の「押し紙」であろうが、「積み紙」であろうが、広告主を欺いている事実に変わりはありません。
貴社の販売店、たとえばYC久留米文化センター前やYC大牟田中央、それにYC大牟田明治に約40%から約50%の残紙があった事実は、裁判のプロセス中でも明らかになっております。確かにこれらの残紙は狭義の「押し紙」とは認定されていませんが、少なくとも残紙であることは事実であり、広告主に対する貴社の責任は免れません。
第2次真村裁判について、わたしは本件記事の中ではまったく言及しておりません。それにもかかわらず貴殿の抗議書には、第2次真村裁判に関する記述があります。しかし、2つの裁判を繋ぐうえで不可欠な論理的な整合性が完全に欠落しております。
◇第2次真村裁判
それを踏まえたうえで、ここでは真村氏の名誉のために、次の点にだけ言及しておきます。第2次真村裁判は、真村氏が起こした裁判であることは事実ですが、その原因はすべて貴社にありました。貴殿は、このあたりの事情を正確に取材されたでしょうか。あまりにも事実認識が誤っています。
2007年12月に第1次真村裁判の判決が最高裁で確定した半年後、貴社は真村氏が「黒薮」に読売の販売政策に関する情報を提供したなどと言いがかりをつけて、YC広川を強制改廃しました。これに対して真村氏は再び貴社に対して地位保全裁判を提訴せざるを得ませんでした。そして裁判は、つい先日まで続いたのです。
何の権力も持たない無辜の一個人を法廷に15年近く法廷に縛り付け、人生を台無しにした貴殿たちの行為は、司法制度を濫用した著しい人権侵害です。それを言論機関が断行したことは、日本の新聞史の大きな汚点として記録されています。
貴殿も周知のように、第2次真村裁判は、仮処分申立てと本訴が同時進行しました。仮処分は1審から4審まで真村氏の勝訴でした。裁判所は貴社に対して、YC広川の営業を再開するように命じました。ところが貴社は、この司法命令に従わず、1日に3万円の間接強制金を徴収される事態となりました。資金力で司法命令を踏み倒したのです。
一方、本訴は地裁から最高裁まで貴社の勝訴でした。しかし、仮処分裁判の判決内容と本訴の判決内容が、正面から対立する不可解な現象が裁判記録として書面で残っております。たとえば仮処分裁判の第2審と本訴高裁判決のケースはその典型といえるでしょう。仮処分裁判の第2審で木村元昭裁判長は、真村氏を全面勝訴させました。
その直後、木村判事は、なぜか沖縄県の那覇地裁に転勤になりました。そして再び福岡市へ戻ってくると、今度は福岡高裁へ異動となり、なぜか真村裁判の本訴第2審の裁判長に、裁判長交代のかたちで就任しました。そして今度は、真村氏の主張を情け容赦なく切り捨てたのです。
当然、木村判事が仮処分裁判で書いた判決と本訴で書いた判決を対比し、検討してみると、同じ人物が書いたものとはとても思えないまったく正反対の記述内容となっております。矛盾だらけで支離滅裂の論理性、仮処分判決と本裁判決との整合性などどこにも確認することができません。それが記録として、福岡地裁に永久保存されております。
しかし、この点に関しては、貴殿が抗議書で指摘され、名誉毀損を主張されている本件記事の記述とはまったく関係がないことなので、ここでは言及を避けます。同様に、第1次真村裁判の福岡高裁判決で西裁判長が貴社の「押し紙」を認定した事実と、第2次真村裁判で木村裁判長が、「押し紙」に対する自分の見解を示したことを、貴殿が抗議書の中で無理やりに関連付けられたことも、整合した論理の欠落と言わなければなりません。
本件記事でも書いたように、2007年に福岡高裁が初めて「押し紙」が認定された事実を削除することは出来ません。
つまり第1次真村裁判で初めて狭義の「押し紙」政策が認定されたのは、客観的な事実であり、この事実は、第2次真村裁判で木村裁判官が認定した「押し紙」に関する見解により、変化する性質のものではありません。
貴殿の事実認識の方法が極めて主観的で、事実認識の方法が誤っているというのが、わたしの見解です。
以上が抗議書に対するわたしの回答です。繰り返しになりますが、不明な点などありましたら、真村裁判の裁判資料をもとに、分かりやすく説明しますのでご連絡ください。
2016年07月06日 (水曜日)

携帯電話やスマホの通信に使われるマイクロ波による人体影響が否定できなくなっている状況のもと、市民団体ガウスネットは、9日(土)に東京板橋区で「科学技術依存社会を考える」と題するシンポジウムを開く。詳細は次の通りである。
◇マイクロ波と発ガン
WHOの傘下にあるIARC(国際がん研究機関)は、2011年5月31日、マイクロ波に発癌の可能性があると発表した。
IARCは、化学物質やウイルス、それに放射線など約800種の発癌性リスクについて、次のように分類している。
「1」発癌性がある
「2A」おそらく発癌性がある
「2B」発癌性の可能性がある
「3」発癌性の分類ができない
「4」おそらく発癌性はない
現在、マイクロ波は「2B」にランク付けされている。しかし、電磁波研究の第一人者で元京都大学講師の荻野晃也氏は次のように指摘している。
「IARCでは、『人間の発ガン』に関する『疫学研究』が重視されており、『がんの可能性』のあるものが『2B』に分類され、研究が進むにつれて更に『2A』ないし『1』に移っていく傾向があります。IARCでの分類が始まってから現在までに『3』から『2B』へは6件、『2B』から『2A』へは38件、『2B』から『1』は1件、『2A』から『1』へは2件で、逆に降格したのは『2B』から『3』のみで8件です」(『九州/中継塔裁判ニュース』)
たとえランク付けが上がらなくても、マイクロ波のリスクが存在することに変わりはない。
◇ドイツの疫学調査
事実、携帯基地局の周辺に癌患者が多いという疫学調査の結果はすでに存在する。有名な例としては、ドイツの医師たちが、93年から04年まで、特定の団体から資金提供を受けずにナイラ市で行った調査がある。対象は、調査期間中に住所を変更しなかった約1000人の通院患者。基地局は93年に設置され、その後、97年に他社の局が加わった。
これらの患者を基地局から400メートル以内のグループ(仮にA地区)と、400メートルより外(仮にB地区)に分けて比較した。
最初の5年については、癌の発症率に大きな違いがなかったが、99年から04年の5年間でA地区の住民の発癌率が、B地区に比べて3.38倍になった。しかも、発癌の年齢も低くなっている。たとえば乳癌の平均発症年齢は、A地区が50.8歳で、B地区は69.9歳だった。約20歳早い。ドイツの平均は63歳である。
◇ブラジルの疫学調査
ブラジルのベロオリゾンテ市は、ブラジル南東部、標高約 800 メートルに建設された計画都市である。人口は約240万人。
この市をモデルとして携帯電話の通信に使われるマイクロ波と癌の関係を調べる調査が行われたことがある。結果が公表されたのは、2011年5月。おりしもWHO傘下のIARC(国際がん研究機関)が、マイクロ波に発癌性(遺伝子毒性)がある可能性を認定した時期である。
調査は役所が保管している携帯基地局の位置を示すデータ、市当局が管理している癌による死亡データ、それに国勢調査のデータを横断的に解析したものである。対象データは、1996年から2006年のもの(一部に欠落がある)である。
結論を先に言えば、基地局から半径500メートルの円周内で、癌のリスクが高くなることが分かった。次に示すのは、各ソーンごとの癌による死亡率である。明らかな相関関係が浮上する。
距離 100mまで:43.42%
距離 200 mまで:40.22 %
距離 300 mまで:37.12 %
距離 400 mまで:35.80 %
距離 500 mまで:34.76 %
距離 600 mまで:33.83 %
距離 700 mまで:33.80 %
距離 800 mまで:33.49 %
距離 900 mまで:33.21%
距離 1000mまで: 32.78%
全市 :32.12 %
検証対象のエリアに複数の基地局がある場合は、最初に設置された基地局からの距離を採用した。そのために汚染源の基地局を厳密に特定できない弱点はあるが、大まかな傾向を把握していることはほぼ間違いない。
基地局から200メートル以内は極めて危険性が高い。
◇複合汚染こそが問題
とはいえ、マイクロ波が単独の発癌因子とは断言できない。というのも、複合汚染が地球規模で急激に進み、さまざまな「毒」が人体をも汚染しているからだ。
たとえば、新しい化学物質は毎日のように誕生している。その発生件数を見ても、脅威的な数字である。米国のケミカル・アブストラクト・サービス(CAS)は、新しい化学物質に対してCAS登録番号を発行しているが、その数は1日に1万件を超える。
新しい化学物質により自然環境は常に変化している。静止した状態にはならない。
航空機事故を解析する際に、「1つの重大事故の背後には29の軽微な事故があり、その背景には300の異常が存在する」とするハインリッヒの法則が引き合いに出されることがままあるが、環境と病気の関係も同じ原理で、複数の因子が重なったときに、発病のリスクが高まるのだ。
たとえば、子宮頸癌の原因がHPV(ヒト・パピローマ・ウイルス)であることは定説になっている。しかし、HPVに「感染した人全員がかならず子宮頸癌になるわけではない。たとえば感染した状態で、ある環境因子にさらされてDNAがダメージを受けるなどの条件が重なった場合、発癌リスクが高くなる」(利部輝雄著『性感染症』)のである。
原因と結果の因果関係が複雑なだけに、公害においては理論よりも「異変」の事実を優先して対策を取らなければならない。医学的に「異変」が解明されるのを待っていたのでは、公害を拡大させてしまうからだ。
このあたりの認識が欠落しているのが、日本の総務省だ。事実、次に紹介するように、日本の安全基準は、「安全基準」にはなっていない。
◇危険極まりない日本の安全基準
マイクロ波の基準値は、「マイクロワット・パー・平方センチメートル(μW/c㎡)」で表示されるのだが、専門用語にこだわらずに、次の数字の違いに注意してほしい。
日本の基準:1000μW/c㎡
EUの提言値:0.1μW/c㎡
ザルツブルク市の目標値:0.0001μW/c㎡
なぜ、これほど歴然とした数値の違いが生じているのだろうか。それを理解するためには、若干、マイクロ波の性質をどう解釈するかという点に触れなければならない。
マイクロ波には、大別して熱作用と非熱作用の2つの性質があると言われている。まず、「熱作用」は電子レンジのマイクロ波に象徴されるように、文字通り加熱作用である。これが有害であることは説が定まっている。
一方、「非熱作用」のひとつとされるDNAの損傷については、見解が対立する。マイクロ波がDNAを損傷するという説と損傷しないという説だ。損傷するという説を採用すれば、それが誘発されない低い規制値を設定しなければならないし、逆に損傷しないという説を採用すれば、熱作用による人体影響を防ぐことだけを前提に規制値を設定しても差し支えない。クリアすべき規制が減るわけだから、当然、高い数字になる。
日本の規制値は、マイクロ波がDNAを損傷しないという考え方を前提にしている。それゆえに異常に高い数値になっているのだ。
これに対してEUやザルツブルク市は、DNAの損傷など、非熱作用の存在も考慮に入れて低い数値を提言しているのである。
広告代理店の仕事といえば、とかくメーカーが生産する商品のPRというイメージがある。しかし、意外に知られていないもうひとつの一面がある。それは「プロパガンダ」の推進である。
「プロパガンダ」とは端的に言えば、政治的な意図により行われる世論誘導である。たとえばアベノミックスのプロパガンダ。たとえば自衛隊のプロパガンダ。それは忍び寄る影のように巧みに浸透するので、メディアリテラシーの知識がない人びとの意識をいとも簡単に変えてしまう。
本書は、そのタイトルが示すように原発をめぐるプロパガンダがどのように進行してきたかを克明に記録している。大手広告代理店の裏面史である。
念を押すまでもなく、原発プロパガンダの両翼を担ってきたのが電通と博報堂である。
◇原発の父、読売新聞のポダム
戦後、まもなく原発を日本に持ち込んだのは、読売の正力松太郎(CIA名はポダム)氏であった。と、言うよりも原発輸出を推進していた米国が、日本に原発を売り込むためにポダムを自分の陣営に取り込んだという方が適切かも知れない。ポダムが率いる読売の影響力を背景に、新しいエネルギーとしての原発をPRする戦略を採ったのである。
ポダムは米国の期待に応えることになる。
こうした流れに、後に連動するのが大手広告代理店である。
電通と博報堂による原発プロパガンダがビジネスとして成立したのは、日本には、それが絶対に不可欠な2つの事情があったからだ。ひとつは、広島・長崎の被曝体験である。他のひとつは、日本列島が世界でも有数の地震地帯に位置しており、原発にはまったく適さない事実である。
これら2つの「問題」を払拭しない限り、日本における原発推進はありえなかった。そこでまず電力会社は、なによりも「原発安全神話」を国民に浸透させる必要があったのだ。そのために広告代理店が提案したキャッチフレーズを、著者の本間龍氏は紹介している。
・原発は日本のエネルギーの3分の1を担っている。
・原発は絶対安全なシステム
・原発はクリーンエネルギー
・原発は再生可能なエネルギー
新聞広告などでこれらのフレーズに繰り返し接していると、いつしか人は洗脳されていく。原発は安全で、クリーンエネルギーなんだと。が、それがとんでもない嘘であることは、3・11により事実で立証された。
電力9社が1970年から2011年までにつぎ込んだ原発プロパガンダの広告費は2兆4000億円にも上る。競合企業がいない電力会社がこれだけの広告費をつぎ込んだ背景には、商品のPRが目的ではなく、原発安全神話を作る必要があったからにほかならない。いわば国民を騙すための広告費だった。
◇博報堂のヤラセ広告
原発関連のデタラメな広告の例をあげておこう。たとえばチェルノブイリの原発事故があった1986年4月から、2ヶ月が過ぎた同年6月を皮切りに4回シリーズの全面広告が読売新聞に掲載された。
この広告は、読者からの質問に電事連が回答する形式の広告だった。ところが著者の本間氏によると、「紙上に掲載された質問のほとんどは、博報堂の社員が書いたはがきによるヤラセであった」。
参考までに関連箇所を引用しておこう。
チェルノブイリ原発事故直後はさすがに全国紙での広告掲載は影を潜めたが、地方では続いていた。ようやく88年になって、全国紙での原発広告復活の狼煙となったのは、6月から朝日や讀賣新聞に掲載された「原子力発電、あなたのご質問にお答えします」という全15段の4回シリーズだった(「私たちはこう考えて原子力発電を進めています。」の15段広告を含めれば5回)。
このシリーズは博報堂の制作で、読者から寄せられた質問に電事連(黒薮注:電力関係の業界団体)が答えるという形式をとった。まだインターネットも携帯電話もない時代に、広告主と読者の双方向性を新聞紙上で実現しようとした、当時としては新しいやり方ではあったが、難解な原発問題に関して読者からの反響は集まらず、紙上に掲載された質問のほとんどは、博報堂社員の家族が書いたはがきによるヤラセであった。
しかも、読者の原発に対する不信感を取り除こうとするあまり、88年7月5日掲載の回では「チェルノブイリのような事故は決して起こり得ない」などと断定している。ではもし起きたらどうなるのか、という当然の疑問には答えようがなかった。結局、20年後の2011年の事故発生時でさえ、何もできなかったことは周知の通りである。
◇原発プロパガンダの復活
本書は、大手広告代理店がプロパガンダという国民にとっては歓迎すべからぬ行為の推進者であることを、広告という視点から記録した良書である。
われわれは本書により、大手広告代理店とは何かを再考する機会を得た。彼らが原発プロパガンダを推進してきた結果が、3・11の悲劇である。しかし、責任を問う声はどこからもあがらない。何事もなかったかのように、原発プロパガンダはすでに復活している。

2003年、日本テレビのプロジューサーが視聴率をかさ上げする策略を行っていたことが発覚した。新聞部数の「偽装」はすでに水面下の社会問題になっていたが、新たに日テレ社員によるテレビ視聴率のかさ上げが発覚したのである。
新聞部数の偽装とテレビ視聴率の偽装という日本のメディアの2つの恥部が公衆の前にその姿を現したのだ。
日テレ社員の手口は単純で、探偵事務所を使って、ビデオリサーチ社(視聴率調査会社)の調査対象世帯を割りだし、その世帯に特定の番組を見るように依頼するというものだった。その際、5000円から1万円の現金や商品券を手渡したとされる。
テレビ視聴率の偽装問題をメディア黒書(7月1日)で取り上げたところ、視聴率の「偽装」がCM営業に及ぼす影響について質問があった。
■参考記事:テレビ視聴率「偽装」の決定的証拠を公開、博報堂の担当員はビデオリサーチ「視聴率」との差異をどう説明するのか?
問い合わせは、視聴率を0.1%、あるいは1%水増した場合、広告料金にどの程度の影響があるのかというものである。
質問の背景には、些細な視聴率操作では、広告営業にほとんど影響を及ぼさないのではないかという推論があるようだ。新聞の偽装部数率は、推測で平均30%から40%だから、その異常さは分かりやすいが、これに比べてテレビ視聴率の偽装は1%未満のケースもあり、取るに足らないのではないかという指摘である。
◇「1%違いで広告費大差」
視聴率がCM営業に与える影響については、たとえば日テレの視聴率「買収」事件を取り上げた朝日新聞の記事(2003年10月25日付け)に次のような記述がある。タイトルは、「1%違いで広告費大差」。
今回の調査では、4世帯(工作対象になった世帯)が押し上げる視聴率は最大0.67%。2時間番組には15秒のCM枠が48本分ほどあるのが平均だ。仮に1%あたり10万円で計算すると、0.67%は約320万円になる。
視聴率の些細な違いがたった1%であっても、それによりテレビ局と広告代理店が受ける収益の差は極めて大きい。
◇ビデオリサーチの視聴率を改ざん
博報堂とアスカコーポレーションの間で問題になっている視聴率問題は、テレビ局による不正工作ではなく、広告代理店による不正工作である。しかも、広告代理店・博報堂が番組提案書に記入するビデオリサーチの視聴率を、自社で勝手に改ざんした疑惑があるのだ。
少なくとも博報堂の担当者・清原(仮名)氏がアスカ側に提出した番組提案書の視聴率と、その後、アスカ社がビデオリサーチから入手した同じ番組の視聴率を対比した結果、次々にデータの書き換えれらている事実が明らかになったのである。
その意味では視聴率偽装の手口は、探偵事務所を使って調査対象世帯を割り出した日テレの手口とは、まったく性質が異なる。大胆な、それでいて手軽な手口である。ただ、数字を改ざんして、それをクライアントに示し、承諾を得るだけの工作だ。これほど単純な手口が発覚したら、弁解のしようがないだろう。
事実、博報堂は取材を一切拒否している。
改めて言うまでもなく、こうした手口は広告業界の水面下ですでに広がっている可能性もある。その意味では、この事件は博報堂一社の問題ではない。「押し紙」問題と同じように、広告業界全体の問題になる可能性もある。
参考までに、偽装の詳細をエクセルデータを提示しておこう。
なお、博報堂が作成した番組提案書について若干補足をしておこう。通常、番組提案書に明記する視聴率は、必ずその出典を示すのが慣行だ。事実、筆者の手元にある電通、ADK、東急エージェンシーの番組提案書には、視聴率の出典が明記されている。博報堂が作成した番組提案書の中にも、「ビディオリサーチ」と出典が記されたものもあるが、アスカ社が問題にしている番組提案書には、肝心の出典が記されていない。
アスカ社によると、現在、問題視している番組提案書は、全体からすればほんの一部だという。と、いうのも博報堂の清原氏は番組提案書を提示した後、ほとんどの場合、それを持ち帰るのが常だったからだ。残っていた番組提案書は、古い段ボールの中から、見つかったものなのである。全体からすればほんの一部だ。
◇テレビ局が関与している可能性も
それにしても、なぜアスカ社は、番組提案書に明記された視聴率の偽装に気づかなかっただろうのか。
答えは簡単で、博報堂を過信していた上に、視聴率についての知識がなかったからである。逆説的に言えば、この点に博報堂の清原氏はつけ込んだのである。しかし、騙された側を非難することはできないかも知れない。
と、いうのも視聴率の解読は、専門家の領域であるからだ。それはちょうど新聞広告のクライアントが新聞部数の偽装に気づかないのと同じ原理である。折込チラシの「折り込め詐欺」にクライアントが気づき、社会問題になったのは、2009年ごろである。それまでは完全に騙されていたのだ。
視聴率の問題は、日テレのケースが過去にあるにしろ、今回は、その規模と手口は、尋常なものではない。しかも、それが広告代理店が主体となってい行われいた可能性が高い。テレビ局の関与も、今後、調査する必要があるが、博報堂とアスカ社の係争を機に発覚したケースで、先兵となっていたのは、広告代理店の側だった。
◇「視聴率」訴訟は避けられない?
筆者がアスカ社から入手したCPO(1人の客を獲得するために費やした販促費用)を示す資料は、次の数値を示している。
2009年: 220,876円
2010年: 240,643円
2011年: 220,019円
2012年: 432,065円
2013年: 922,760円
2014年:1,139,010円
2015年:1,538,897円
CM効果が激減して行ったことが数値の上でも裏付けられている。2007年までアスカ社は、電通と東急エージェンシーを広告代理店として使っていたのだが、この時代のCPOは4万円台から、高くても7万7000円で推移していた。ところが博報堂がアスカ社の業務を独占するようになったころから、上記のようにCPOが悪化して、とうとう1人の客を獲得するのに150万円を要するようになった。
もっとも、視聴率の偽装とCPOの低下をどう関連づけ、どう評価するかは、さまざまな見方があるが、いずれにしてもアスカ側の怒りは心頭に達しており、視聴率問題で新たな訴訟が提訴されるのは避けられないもようだ。また、刑事告訴の動きもある。

東京地裁は今年2月、スカパーで有名なスペースシャワーネットワーク社(社長は伊藤忠出身の清水英明氏)などが新人ジャズシンガー「Shima」のCDを廃盤にしたあと、著作権を無視して音楽配信ビジネスなどを展開していた、として約50万円の支払いを命じる判決を下した。
Shimaは2011年2月に初のCDを発表したが、約1月後に突如として廃盤に。理由は「契約違反行為があった」「苦情があったから」とされたが、それを裏付ける証拠は裁判所に提出されていない。
一方、スペース社などは、廃盤後もCDをレンタルに出したり、国内外の100を超える配信会社に配信して違法に利益を得ていた疑惑があり、裁判所は違法ダウンロード数を207回と認定したが、デビット・マンなど著名なミュージシャンが参加したこのCDの曲が世界中で207回しかダウンロードされていないのはいかにも不自然だ。音楽著作権が盗まれる事件は続発しており、そのあり方が問われている。廃盤から裁判に至るShimaの日々をレポートした。(判決文はPDFダウンロード可)
【Digest】
◇他人の著作権を無断で
◇日本レコード協会の元会長に対する刑事告訴
◇ジャズ発祥の地
◇「廃盤にすることが唯一の手段」
◇成城署に刑事告訴
◇灰色の日々
ひとりの女性ジャズシンガーが法廷に立っている。芸名はShima。優れた歌唱力を持ちながら、不条理の渦に翻弄され、ステージから消えた。【続きはMyNewsJapan】
日本のマスコミが隠してきた2つの「偽装」。それは、新聞部数の「偽装」とテレビ視聴率の「偽装」である。新聞部数の「偽装」については、メディア黒書で指摘してきた「押し紙」問題、つまり新聞の公称部数をかさ上げして、紙面広告の媒体価値をつり上げる手口である。広告代理店が紙面広告の営業で悪用する。
一方、テレビ視聴率の「偽装」は、CMが組み込まれてる番組の視聴率を「偽装」することにより、広告代理店がクライアントに対して、優位にCM営業を展開するための「道具」として悪用される。もちろん、この手口は、CMだけではなく、通販番組などの営業でも使われる。
テレビ視聴率の「偽装」問題は、2003年に起きた日本テレビのケースなど過去にも表面化したことはあるが、その後の実態はベールに包まれてきた。
このほどメディア黒書は、博報堂と広告料金をめぐる係争を取材する中で、この問題を考える上の格好の資料となる詳しいデータを入手した。
まず、その資料をエクセル化したものを紹介しよう。
まず、一覧表の一部を示そう。
この表の基礎資料となったのは、博報堂の担当員・清原(仮名)氏がアスカコーポレーションに提示した番組提案書と、アスカ社がその後、独自に入手したビデオリサーチ社の視聴率データである。各番組ごとに上段が博報堂・清原氏が提示した視聴率(黒文字)で、下段がアスカコーポレーションがビデオリサーチ社から入手した視聴率(赤文字)である。
次に一覧上部のバーの部分にある「M1、M2、M3、F1、F2、F3」について説明しよう。これは性別・年代別の視聴率である。次のように分類される。
M1=男性20~34歳、M2=男性35~49歳、M3=男性50歳以上
F1=女性20~34歳、F2=女性35~49歳、F3=女性50歳以上
アスカコーポレーションは化粧品を主力商品とする通販会社なので、CMや通販番組のターゲット層はF1とF2あたりになる。F1層とF2層の視聴率が偽装されていないかどうかが、ひとつの注目点となる。
ちなみに黄色の箇所は、視聴率が高く偽装されていることを示し、紫の部分は
逆に低く偽装されていることを示している。博報堂、あるいは清原氏が個人的に低く偽装した理由については、本人に質問しなくては分からない。ただ、数値そのものは番組提案書からの転載なので否定のしようがない。
なお、清原氏が提示した番組提案書の中には、ビデオリサーチのデータよりも低く「偽装」されている箇所(紫)もある。これも紛れのない事実である。
◇2つの視聴率データ
念を押すまでもないが、データを提示する際には、その出典を明確にするのが常識である。清原氏が提示した番組提案書には、データの出典であるビデオリサーチ社の名前を記したものも一部あるが、少なくともここで紹介した数値に関してはいずれも出典が明記されていない。
通常、番組提案書には、資料の根拠を明記する。事実、電通など他社の番組提案書には、視聴率の出典としてビデオリサーチ社の社名が記されている。
清原氏が提案した番組提案書だけに限り、出典が記されていないものがあるのだ。しかし、清原氏がビデオリサーチ社のデータを把握していたことは、次の2点で論証できる。
①ビデオリサーチ社のデータと清原氏が提示したデータが、正確に一致している箇所もかなり見受けられる事実。F1~M3までの全数値を、ビデオリサーチ社のデータとは異なるものに変更したのではなく、一部については、そのままビデオリサーチ社の視聴率を使っているのだ。
②今回、視聴率の偽装が疑われている番組が放送された期間、視聴率の調査をしていた機関はビデオリサーチ社を除いて他にはなかった事実。
◇0.1%の偽装の意味
視聴率が及ぼす影響を読み解く場合、たとえば「0.1%」の偽装をどう評価するのかという問題がある。数値そのものは、極めて小さいように見えるが、広告関係者はそのような見方をしない。
1000万人がテレビを視聴している場合、その0.1%は1万人である。従って1%のかさ上げで、10万人。ほんの些細な数値の水増しでも、クライアントが番組提案書を承認するかどうかに決定的な影響を与える。
◇テレビ局も広告代理店と一体化
視聴率のかさ上げによって利益を得るのは、広告代理店だけではない。視聴率が上がればCMや番組の放映料が高く設定できるわけだから、放送局の収益も増える原理になる。それはちょうど、新聞人が新聞の公称部数を偽装して、広告料金を荒稼ぎしている手口によく似ている。
◇BPO (放送倫理・番組向上機構)
筆者は、BPO (放送倫理・番組向上機構)に今回の視聴率の偽装問題についての見解を問うたが、見解は聞けなかった。BPOは、番組の内容を検証する機関なので、視聴率に関しては見解も述べなければ、調査もしないとのことだった。
しかし、BPOは、2003年12月に日本テレビが起こした視聴率偽装事件で、次のような見解を出している。
日本テレビで起きた視聴率操作事件は、放送の自律と放送文化の質の向上を目指す「放送倫理・番組向上機構」[BPO]にとっても、重大な問題を提起した。テレビ局のプロデューサーが担当番組の視聴率を上げるために、制作費を使って視聴率調査対象者に金品を贈るようなことは、放送・広告関係者だけでなく、視聴者や社会を欺く背信行為と言わなければならない。
メディア黒書は、反論を歓迎する。反論があれば、掲載することもお約束したい。

